
相手の弁護士から不倫慰謝料請求の通知が届いたとき、
「無視すればどうにかなるのでは?」と考えるのは自然な心理かもしれません。
しかし、弁護士名義の慰謝料請求を無視することはおすすめしません。
弁護士名義の慰謝料請求は、相手がすでに証拠を確保し、法的な手続き(訴訟)も辞さないという本気度の表れです。
「そうは言っても、請求額が高額で支払えない…。」
請求額が高額で支払えない場合には、無視をするのではなく、減額交渉などの適切な対処法を取ることが大切です。
この記事では、弁護士からの慰謝料請求を無視した場合に生じるリスクの連鎖から、問題を有利に解決するための減額交渉や弁護士に依頼するメリットまでを徹底解説します。
弁護士からの慰謝料請求を無視するのではなく、あなたにとってより良い解決方法を一緒に考えましょう。
目次
弁護士から慰謝料請求されたら無視することはおすすめしない
相手の弁護士から内容証明郵便や通知書を通じて慰謝料請求を受けたとき、多くの人が、「このまま無視すれば、請求が取り下げられるのではないか。」と淡い期待を抱くことがあります。
しかし、この対応はおすすめできません。
なぜなら、弁護士名義での慰謝料請求は、相手がすでに法的な準備を進めており、交渉ではなく訴訟を辞さないとの意思表示であるからです。
したがって、無視するのではなく適切な対処法を取る必要があります。
弁護士からの慰謝料請求を無視するとどうなる?
弁護士からの慰謝料請求を無視し続けた場合、法的なリスクは連鎖的に深刻化します。
生じ得るリスクについて、ひとつずつ解説します。
相手の交渉姿勢を強くする
無視することで、相手の交渉姿勢を強くします。
慰謝料を請求された場合、通常は、法的助言を求めるなど何らかの対応を検討します。
それにもかかわらず、書面を無視したという事実に対し、相手の弁護士は、あなたが弁護士をつけてこない、あるいは請求内容を争う意思がないと判断する可能性が高くなります。
これにより、相手側は自分たちが有利な立場にあると認識し、強気な交渉姿勢を崩さなくなります。
慰謝料増額に繋がる可能性がある
無視することで、慰謝料増額に繋がる可能性があります。
無視し続ける行為=不誠実で反省が見られない態度との考えから、相手の弁護士が慰謝料の増額事由として主張する可能性があります。
不誠実な態度は、その態様や程度によっては、被害者の精神的苦痛を増大させるとして慰謝料増額に繋がる可能性があります。
さらに、無視することで相手が感情的になり、柔軟な解決が難しくなります。
最初の段階で誠実に対応していれば、相手も訴訟を避けるために慰謝料額を減額したり、分割払いに応じたりするなど、一定程度譲歩する可能性があります。
しかし、無視されたことで相手の怒りが増幅し、最終的には訴訟まで争うとの強硬な姿勢に変わり、減額交渉などが難しくなる可能性があります。
訴訟を提起される可能性がある
無視することで、訴訟を提起される可能性があります。
無視することは、相手に対して、【交渉の意思なし】とのサインを送ることと同義です。
この結果、相手は話し合いの余地がないと判断し、交渉段階を飛ばして訴訟提起への準備を加速させるでしょう。
つまり、無視する行為は、問題を終息させるどころか、事態を深刻な局面にエスカレートさせる引き金となるのです。
最終的に強制執行をされる可能性がある
無視することで、最終的に強制執行をされる可能性があります。
相手から訴訟が提起されると、裁判所から訴状が届きます。
訴状が届いたにもかかわらず、指定された期限までに答弁書を提出せず(何らの回答もせず)、裁判期日にも出廷しなかった場合、裁判官は、原告の請求を全面的に認める判決を下す可能性があります(民事訴訟法159条)。
つまり、あなたに慰謝料を支払うことを命じる判決が下されます。
判決で慰謝料の支払いが確定した後も支払いを拒否し続けた場合、相手は最終手段として強制執行を申し立てます。
強制執行とは、裁判所を介して、債務者(請求された人)の財産を強制的に差し押さえ、慰謝料を回収する手続きです。
不倫慰謝料請求の場合は、一般的に、給与や預貯金が差し押さえられることが多いでしょう。
給与が差し押さえられた場合には、勤務先に不倫トラブルを抱えていることや慰謝料の支払いを怠っていることがバレる可能性があり、さらなる問題が生じる可能性もあるでしょう。
相手本人からの慰謝料請求と弁護士からの請求は無視の重みが違う
慰謝料請求が相手本人から届いた場合と、相手の弁護士から届いた場合とでは、無視した場合の重みが異なります。
弁護士からの慰謝料請求は本気度が高い
弁護士からの慰謝料請求は本気度が高いです。
相手が弁護士に依頼し、弁護士名義で内容証明などを送付してきた事実は、相手がすでに法的紛争を想定し、入念な準備を整えていることを意味します。
弁護士名義で請求が来た時点で、相手は不貞行為の事実(肉体関係があったこと)を示す有力な証拠を確保している可能性が高いと推測されます。
弁護士からの請求は、単なる感情的な脅しではなく、法的証拠に基づいており、慰謝料獲得の見込みが高い状況にあることを示唆しています。
この段階で請求を無視することは、相手の本気度をさらに高める結果に繋がるでしょう。
弁護士からの慰謝料請求は断念する可能性が低い
弁護士からの慰謝料請求は断念する可能性が低いです。
慰謝料請求が相手本人から直接行われた場合、感情的な疲弊や、その後の法的手続きの煩雑さ、知識不足などから、途中で請求を断念する可能性も少なくありません。
しかし、弁護士名義で請求が来ている場合、相手はすでに弁護士費用を支払い、弁護士を雇っています。
弁護士は、依頼者の代理人として、感情論ではなく、法的な根拠と手続きに基づいて請求を進めます。
そのため、請求を無視したとしても、弁護士が請求を断念する可能性は低く、むしろ次のステップである訴訟提起へと淡々と手続きを進める可能性が高いでしょう。
弁護士は、内容証明を無視されたとしても、訴訟や強制執行など裁判所を利用した手続きによって慰謝料回収を追求する手段を有しています。
したがって、無視すれば諦めるのではないかと期待するのはおすすめしません。
慰謝料額が高すぎる・納得できないと無視するのではなく減額交渉を
「慰謝料が高額だから払えない。」との問題は、無視をするのではなく、適切な減額交渉によって解決を目指すべきです。
請求されている慰謝料額が適正か確認する
請求されている慰謝料額が適正か確認しましょう。
不倫慰謝料の相場は、数十万から300万円程度です。

相手が最初に請求してくる金額は、多くの場合、この相場よりも高く設定されており、交渉の余地を残しているケースがほとんどです。
そのため、通知書に記載された金額を見ただけで絶望したり、これを拒否するために無視したりするのではなく、その請求額が法的な適正額を超えていないかを確認し、弁護士を通じて減額交渉を行うことが、金銭的な負担を軽減する現実的な方法です。
慰謝料を減額するために交渉すべき要素
不倫慰謝料の金額は、相手夫婦の婚姻期間の長さ、不貞行為の期間や回数、子どもの有無、不貞発覚後の対応など様々な要素を総合的に考慮して決定されます。
特に、相手夫婦の婚姻期間が短い場合(目安として3年以下)は、慰謝料が減額される可能性が高まります。
減額交渉を有利に進めるためには、相手の感情を逆撫でしないよう、謝罪の意思を伝え、誠意ある態度で臨むことが不可欠です。
ただし、誠意ある対応=相手の言う通りにすることではありません。
事実に基づき、冷静に、適正な金額での和解を目指して交渉すべきです。
不倫慰謝料の減額を狙えるケースについて、詳しくは「不倫慰謝料の減額を狙えるケースと狙えないケース 」の記事をご参照ください。
弁護士からの慰謝料請求に応答する際に気を付けるべきこと
弁護士からの慰謝料請求に応答する際に気を付けるべきことは、次の2つです。
- 感情的にならない
- 判断に迷うときはその場での回答を避ける
以下、詳しく解説します。
感情的なやり取りは避ける
感情的なやり取りは避けましょう。
請求書には、相手の強い怒りが込められているケースもあり、それを見て動揺するのは当然です。しかし、感情的に反応すると、あなたに不利になるリスクがあります。
感情的に返信すると、余計なこと(あなたに不利なこと)まで話す可能性があるでしょう。
その内容が、交渉や裁判で不利な証拠として使われる可能性があります。
感情的な対立は、和解の可能性を低下させ、訴訟になる可能性を高めます。
相手の弁護士と話す際は、感情に流されず、冷静な対応を心掛けましょう。
威圧的な弁護士の対処法について、詳しくは「相手の弁護士の態度が悪いのはよくあること?理由や対処法を解説 」の記事をご参照ください。
判断に迷うときはその場での回答を避ける
判断に迷うときはその場での回答を避けることです。
弁護士によっては、その場での回答を急かしてくるかもしれませんが、必ずその場で回答する必要はありません。
「早く終わらせたい」という焦りから、安易に回答することも避けましょう。
請求書に記載された慰謝料額や、不貞行為の事実を「認めます。」などと回答すると、後の交渉でその発言を覆すことは難しいです。
たとえ口頭でも、録音されていれば証拠となります。
判断に迷うときは、「内容を精査し、弁護士と相談したうえで改めて回答します。」等と、冷静に回答を保留する姿勢を見せてください。
これにより、相手に対し「誠実に対応する意思はある。」ことを示しつつ、判断の時間を確保できます。
無視せずあなたも弁護士に依頼することで得られる3つのメリット
相手に弁護士がついている場合には、あなたも弁護士への依頼を検討することをおすすめします。
弁護士に依頼することで得られる3つのメリットについて解説します。
交渉の矢面に立ってもらい精神的な負担軽減
弁護士に依頼するメリットの一つは、精神的負担からの解放です。
弁護士が代理人となることで、相手弁護士とのやりとりや書面作成、交渉対応を代行してもらえます。
これにより、あなたは直接相手の感情的な追及や法的なプレッシャーを受けることがなくなります。
弁護士が介入することで、感情的な対立を避けられ、結果として事件の早期解決が期待できるでしょう。
適正な慰謝料額への減額交渉と訴訟の阻止
弁護士は、過去の判例や請求の法的根拠を分析し、請求額が相場に対して適正であるかを判断します。
自分で交渉するよりも減額交渉を実現できる可能性が高まります。
さらに、弁護士は、訴訟のリスクと見通しを踏まえ、可能な限り、訴訟になる前に適切な条件での示談成立を目指します。
これにより、訴訟に発展した場合に生じる時間や費用、精神的ストレスを未然に防げるでしょう。
勤務先や家族にバレるリスクを最小限に
弁護士に依頼することで、強制執行による給与差し押さえなど、不倫の事実が、勤務先や家族に露呈するリスクを回避できる可能性が高まります。
弁護士は、訴訟を避け、当事者間の示談交渉を通じて柔軟で内密な解決を目指します。
これにより、勤務先や家族にバレるリスクを最小限に抑えられるでしょう。
弁護士に慰謝料請求の減額交渉を依頼する場合の費用は?
弁護士に減額交渉のみを依頼する場合の費用相場は、以下のとおりです。

各項目の詳細は、「不貞行為した側の弁護士費用の相場は?弁護士に頼るべき3つの理由 」の記事をご参照ください。
なお、実際の費用については、法律事務所の料金体系によって異なりますので、相談時にご確認ください。
弁護士から慰謝料請求に関するよくあるQ&A4選
弁護士からの慰謝料請求に関するよくある質問について、一問一答形式で解説します。
弁護士からの慰謝料請求に手紙で返事する場合の書き方は?
弁護士へ手紙で回答する際は、感情的にならず、法的根拠と事実に基づいた文書(回答書)を作成することが求められます。
タイトルは簡潔に【回答書】とし、相手の請求書に記載された事項(不貞の事実、請求金額など)に対し、一つ一つ論理的かつ端的に回答するのが原則です。
回答書の内容は、後の交渉に直結することから、安易な自己対応は、あなたに不利に働くリスクがあります。
弁護士への手紙を書く前に、ぜひ一度弁護士にご相談ください。
相手の弁護士に直接会いに行く場合に準備すべきことは?
相手の弁護士に会う前に準備すべきことは、次の3つです。
- 事実関係の整理
- 慰謝料相場の確認
- 自分の意向や希望の明確化
ただし、準備万端で臨んでも、あなた一人での対応はリスクを招く可能性が否定できません。
交渉の相手が弁護士の場合、法的知識や交渉力の差から主導権を握られやすいでしょう。
対等な交渉を実現するためには、相手の弁護士に会う前に、あなたも一度弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士から慰謝料請求されたがお金がない場合はどうすればよい?
慰謝料請求されたけれどお金がない場合の適切な対処法としては、減額交渉と分割払いの交渉の2つの方法が挙げられます。
慰謝料の支払いが困難な場合でも、無視をしてはいけません。
お金がない場合の対処法について、詳しくは「慰謝料請求されたけどお金がない場合の対処法や無視した場合のリスク」の記事をご参照ください。
慰謝料は踏み倒せると聞いたことがあるけれど本当?
慰謝料を踏み倒せるのではと考えるのはやめましょう。
特に、訴訟で慰謝料の支払いが確定した場合、踏み倒しを続ければ、相手は強制執行により給与や預金などの財産を差し押さえができます。
裁判外の請求段階でも、無視や支払い拒否を続ければ訴訟に発展し、最終的に強制執行のリスクに直面します。
慰謝料の踏み倒しを考えるのではなく、弁護士に相談して適正な金額での和解や分割払いの交渉を行うことが、問題を最小限に抑えるための対処法です。
慰謝料を踏み倒すリスクについて、詳しくは「不貞慰謝料は踏み倒せる?踏み倒した場合のリスクと強制執行について」の記事をご参照ください。
まとめ
弁護士から慰謝料請求をされた場合に、無視することは避けましょう。
弁護士名義での慰謝料請求は、相手の本気度が高く、無視しても相手が引き下がる可能性は低いです。
弁護士に依頼することで、減額できる可能性が高く、あなたにとってより良い解決を望めます。
ネクスパート法律事務所では、不倫問題に強い弁護士が多数在籍しています。
初回の相談は30分無料ですので、お気軽にご相談ください。









