不貞行為をしてしまい、慰謝料を1000万円請求されたら驚いてしまいますよね。
大丈夫です、1000万円支払わなければならないことはほぼありません。「ほぼない」ということは、もしかしたら払わなければならない可能性もあるのか?と不安に思われた方も安心なさってください。
この記事では、次の2つを中心にご紹介します。
- 不貞行為での慰謝料が1000万円にはならない理由
- 1000万円請求されても減額できた事例
1000万円請求されて焦っている方は、相手に連絡をする前に、まずはこの記事をご覧になってください。
ネクスパート法律事務所では、これまでに9800件を超える不貞慰謝料請求に関するご相談を受けてきました。これまでの経験や多くの判例をもとに書きましたので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
不貞行為の慰謝料が1000万円になるケースはほぼない
不貞行為の慰謝料が1000万円になるケースはほぼありません。
ほぼありませんが、全くないわけでもありません。
中里和伸(弁護士)著『判例による不貞慰謝料請求の実務』(弁護士会館ブックセンター出版部LABO、2020年5月)に掲載されている、平成28年1月29日以降令和元年9月18日までの判例290件中、1000万円以上の慰謝料が認められたのは1件だけです。
その1件も、被告が婚姻中の不貞の事実を認め、慰謝料1000万円を支払うという内容の念書に署名捺印しており、原告はその念書に基づいて慰謝料を請求したという事案です。
実はもう1件この書籍では1023万9315円を支払う内容の判決が掲載されていますが、こちらはマンション売却関連費用などが含まれており、慰謝料として認められている金額は300万円です。
この書籍に掲載されている平成28年より前にも1000万円の支払いを認めた判決はいくつか存在します。しかし、どの事例でも単純に不貞行為があっただけではなく、次のような事情もありました。
- 長期にわたり生活費を支払っていなかった
- 不貞相手が複数いたり、DVがあったりした
- 不貞が長期であったことや、不貞相手との間に子ができ認知していた
- 被告(請求された側)の社会的地位が高く収入が多かった
これらのような特殊な事情がない限り、慰謝料不貞行為の慰謝料が1000万円になるケースはほぼないと考えておいてよいでしょう。
不貞行為で慰謝料が1000万円にならない理由
不貞行為で慰謝料が1000万円にならない理由は、現在の不倫慰謝料の相場が50万円~300万円程度だからです。
この相場は、これまで蓄積されてきた不貞慰謝料に関する裁判例が目安になっています。
不貞行為が原因となる慰謝料請求の場合、いきなり裁判せずに、まずは交渉から始まることがほとんどです。交渉においては、双方が合意すればその金額が慰謝料になります。しかし、請求する側はより多くの金額をもらわなければ納得できないでしょうし、請求された側はできるだけ支払う金額は抑えたいと考えるはずです。そこで、裁判になったらいくらくらいの判決が出るのかを目安に交渉することになります。
実際に弁護士が介入する交渉においては、
- 請求する側があまりにも相場からかけ離れた請求をしていて譲らない場合
- 請求された側が相場に全く満たない金額しか支払わないと言っている場合
などには、「それでは裁判にしましょう」となるので、裁判例を意識しながら交渉します。
第1章でご紹介したとおり、1000万円を支払う内容の判決が出ることは稀です。現在裁判では、事案により50万円~300万円程度の慰謝料になることが多く、不倫慰謝料の相場となっています。そのため、交渉の場でも同様の相場感となっているのです。
1000万円以上請求された裁判の実際の判例4つ
いくら不倫慰謝料の相場は50万円~300万円だと言われていても、1000万円を請求できないわけではありません。1000万円以上を請求された裁判の実際の判例を4つご紹介します。
ケース1 請求額1500万円→裁判所の認容額0円(平成28年1月29日 東京地方裁判所)
妻が、夫とAが不倫をしていたとして1500万円の慰謝料を請求した裁判です。
夫はA宅を訪れたり、一緒にイベント会場へ行ったりしたものの、宿泊せず帰宅していることなどから、2人の関係が性的関係を伴うものであったとまで推認することは困難だとして、裁判所は不法行為が成立しないと判断しました。そのため慰謝料は0円となっています。
ケース2 請求額1100万円→裁判所の認容額99万円(平成28年2月25日 東京地方裁判所)
妻が、夫の不貞相手Aに対し、不貞行為によって精神的苦痛を被ったとして慰謝料1000万円及び弁護士費用100万円を請求した裁判です。
Aと夫の不貞関係は認められた一方で、不貞行為があった時点での夫婦の婚姻関係は、完全な破綻とはいわないとしても、すでに良好とは言えない状況にあって、妻も離婚という選択肢が存在していた程度には破綻状態が進行していたことは否定できないとして、慰謝料90万円と弁護士費用9万円を認める内容の判決が出ました。
ケース3 請求額1000万円→裁判所の認容額150万円(平成28年10月17日 東京地方裁判所)
夫が、妻の不貞相手Aに対して、不貞行為による損害賠償請求権に基づき慰謝料1000万円を請求した裁判です。
夫の主張は次のとおりです。
- 妻とは仲睦まじい家庭生活を送っていたが、Aと不貞行為をするに至ってから妻の態度は急変し、家庭生活は崩壊し、最終的に離婚するに至った。
- 円満な家庭生活を奪われ、精神的苦痛を受け、体重も20㎏以上減少した。
- 警告にもかかわらず、謝罪もせず不貞関係を継続している。
裁判所は、妻とAが不貞関係に至るまで婚姻生活が14年余り継続していたこと、夫婦には子が2人いること、妻とAの不貞関係が開始してから夫婦が別居し、夫が離婚やむなしと決意するまでが短期間であったこと等の事情を総合考慮し、慰謝料は150万円と認めるのが相当と判断しました。
ケース4 請求額1000万円→裁判所の認容額250万円(平成28年2月26日 東京地方裁判所)
妻が、夫の不貞相手Aに対し、不貞行為を継続したことによって婚姻関係が破綻したと主張し、慰謝料1000万円を請求した裁判です。
妻は、不貞行為によって婚姻関係を踏みにじられ、正常な婚姻生活から得られる精神的安定を得られず、著しい精神的苦痛を受け、様々な疾患に罹患し、通院を余儀なくされているとして1000万円の請求をしています。
裁判所は、夫とAの不貞行為により婚姻関係が破綻したことは認め、婚姻生活の期間及び状況、破綻に至る経緯、その他本件において認められる一切の事情を考慮すると、妻の損害である慰謝料額は250万円と認めるのが相当という判断をしました。
以上のように、特殊な事情等がなければ、たとえ1000万円以上請求を受けたとしても、原則的には相場と言われる範囲内での判決が出ることがおわかりいただけたと思います。
不貞行為をして慰謝料1000万円請求されたらすぐに弁護士に相談
不貞行為の慰謝料として1000万円請求されても慌てないでください。1000万円支払わなければならないケースはほぼありません。1000万円払うと言ってしまったり、1000万円を支払う内容の合意書へのサインをしてしまったりする前に、弁護士に相談してください。
ネクスパート法律事務所では、慰謝料を減額できなかった場合の着手金返還制度も用意しています。不貞行為をしてしまい、1000万円の請求を受けたらぜひネクスパート法律事務所へご相談ください。
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