配偶者の不倫(不貞行為)により心に深い傷を負い、うつ病になる人は少なくありません。
うつ病になったあなたは、気分がひどく落ち込む・眠れないなどの精神的・身体的症状により日常生活に支障をきたし、苦しい日々をお過ごしのことでしょう。医療費もかさむでしょうから、金銭的な不安も抱えているかもしれません。
「うつ病になるほどの苦痛を与えたのだから、慰謝料を増額したい」と考えるのも当然です。
この記事では、不貞行為が原因でうつ病になったら慰謝料は増額できるか等、不倫相手に慰謝料請求する際に知っておくべき事項を詳しく解説します。
不倫相手に相応の責任を追求するにはどうすべきか知っていただき、今後の対応を検討しましょう。
目次
不倫が原因でうつ病になったら慰謝料は増額できる?
不貞行為が原因でうつ病になった事実は、慰謝料の増額事由になり得ます。
うつ病になるほどの精神的苦痛を受けたことが、客観的に立証しやすいためです。
慰謝料の金額は、不貞行為によりどれだけの精神的苦痛を受けたかによって判断されます。そのため、不貞行為によって受けた精神的苦痛が大きければ大きいほど、高額な慰謝料が認められる傾向があります。
不貞行為が原因でうつ病になった場合、不貞行為により受けた精神的苦痛を証明しやすいため、慰謝料の増額事由になり得ます。
うつ病の診断書があれば不倫慰謝料は必ず高額になる?
うつ病の診断書があるからといって、必ず高額な慰謝料が認められるわけではありません。
不貞行為とうつ病との間に因果関係が認められなければ、増額事由として考慮されないためです。
裁判官が、不貞行為とうつ病との間に因果関係が認められるとはいえないと判断した理由を紹介します。
東京地裁令和5年3月27日判決
不倫相手から離婚を前提に関係を持っていると告げられてから(平成29年10月)、受診(初診日は平成30年4月4日)するまでに期間が空いている
東京地裁平成29年9月26日判決
精神科を受診するまでに1年余りが経過しており、配偶者と別居した直後に受診している
うつ病になったことが慰謝料の増額事由となるのは、不貞行為とうつ病の間に因果関係が認められる場合です。
うつ病の診断書があるからといって高額な慰謝料が認められるわけではなく、不貞行為とうつ病との間の因果関係が認められなければ、増額事由として考慮されません。
うつ病になったことが慰謝料の増額事由として考慮された判例
うつ病になったことが慰謝料の増額事由として考慮された、以下の2つの判例を紹介します。
慰謝料200万円|東京地裁令和3年3月17日判決
Xが、夫であるAとYが不貞行為をしたとして、Yに対して不法行為に基づく損害賠償を求めた事案です。
XとAは婚姻11年の夫婦で、婚姻後別居をした事実はなく、平穏な婚姻生活を送っていました。不貞行為が発覚後も同居を継続しています。Aはマンションを購入しYを住まわせていますが、Aがマンションに居住した事実はありません。
YはAとの間の子どもを出産し、Aはその子どもを認知しています。
裁判所は、以下のような事実は、Xの婚姻関係の平穏を大きく侵害しているため、慰謝料を増額する事情になると判断しました。
- YとAとの間で継続的に不貞行為が行われたこと
- YとAは合意の上で避妊を行わずに性交し、1度の流産を経て、子どもを出産していること
- XがAの不貞事実を知った翌日に精神科の病院を受診し、うつ病と診断され、少なくとも約3年は通院していること
裁判所は、Yの不貞行為による不法行為によってXが精神的苦痛を受けたと認め、Yに対し、慰謝料200万円の支払いを命じています。
なお、この事案では、慰謝料のほかに弁護士費用20万円もYの不法行為と相当因果関係のある損害として認めています。
慰謝料300万円|東京地裁令和3年1月20日判決
Aの妻であるXが、YとAとの不貞行為により精神的損害を被ったとして、Yに対して慰謝料の支払いを求めた事案です。
XとAは大学時代に知り合い、約10年の交際期間を経て結婚、いずれも医師としてフルタイムで働きながら円満な家庭生活を営んでいました。
婚姻から11年目、XはAから不貞相手であるYが妊娠したと告げられ、精神的なショックを受け、翌日に心療内科のクリニックを受診しています。クリニックの医師はうつ病、PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断しました。Xは、その後も週1回通院し、投薬やカウンセリング治療を受けていますが、訴訟提起現在も心身に不調をきたしていました。
裁判所は、不貞行為とうつ病等の発症に相当因果関係があるとまではいえないものの、通院を継続している事情は慰謝料の増額事由として考慮することが相当だと判断しました。
裁判所は、以下のような理由から、XとAが離婚していないことを考慮しても、Xは不貞行為によって現在も多大な精神的損害を被っていることが認められるとして、Yに対し、慰謝料300万円の支払いを命じています。
- XとAは不貞行為が発覚するまで約11年間にわたって平穏な家庭生活を営んでいたため、不貞行為によって婚姻関係が破綻したと認められる
- Xは不貞行為が原因で食欲不振や睡眠障害などの心身の不調による通院をするようになった
- XとAの間には未成熟子である小学生の娘が2人いる
- XはAとの離婚を望んでいない
- Xは、Yに対しAとの関係を解消するように告げたが、YはXの申出を拒否し、Aとの間の子どもとAと同居している
なお、この事案では、慰謝料のほかに弁護士費用30万円も不貞行為と相当因果関係のある損害として認めています。
慰謝料請求においてうつ病になった事情を考慮してもらうためのポイント
慰謝料請求においてうつ病になった事情を考慮してもらうために、以下の3つのポイントを意識して行動することをお勧めします。
- うつ病になったら早めに医師の診察を受ける
- 不倫が原因でうつ病になったことがわかる診断書を作成してもらう
- うつ病の程度や治療経過・通院期間がわかる資料を残す
以下で、詳しく紹介します。
うつ病の兆候を感じたら早めに医師の診察を受ける
うつ病の兆候を感じたら、早めに医師の診察を受けましょう。
不貞行為から受診までに期間が空いてしまうと、不貞行為とうつ病との間の因果関係が認められにくい傾向が見られます。
以下のような症状に悩まされている場合は、早めに医師の診察を受けることをお勧めします。
- 何事にも興味がわかず、楽しくない
- 疲れやすく、気力がわかない
- 眠れない
- 食欲がない
- 自分には価値がないと感じる
不倫が原因でうつ病になったことがわかる診断書を作成してもらう
うつ病と診断をされたら、不貞行為による精神的ストレスが影響していることを診断書に記載してもらえるか、医師に相談してみましょう。
病名や療養が必要な期間の記載だけでなく、発病のきっかけとなった心理的・環境的な要因が記されていれば、不貞行為との関連性を示しやすくなります。
ただし、うつ病を含む精神疾患は、さまざまなストレス要因が複合的に作用して発症するケースが多いです。そのため、医師の診断によっては、不貞行為がうつ病の発症に起因していると記載してもらえない場合もあります。
診断書に明記するのは難しいと言われた場合は、うつ病の発症時期が特定できる診断書と併せてカルテや診療録を取得することで、因果関係を証明しやすくなるかもしれません。
うつ病の程度や治療経過・通院期間がわかる資料を残す
うつ病の程度や治療経過・通院期間がわかる資料を残しておきましょう。
不貞行為によりどれほどの精神的苦痛を被ったのか、証明しやすくなります。
通院期間や治療に要した費用を客観的に証明するためにも、医療費の領収書を保管しましょう。医師から受け取った資料や薬剤情報提供書等も、治療経過を示す証拠となるかもしれません。
診断書以外にも、うつ病の程度や治療経過・通院期間がわかる資料があれば、因果関係が認められる可能性が高まるでしょう。
慰謝料請求時にうつ病の診断書があれば治療費も請求できる?
不貞行為とうつ病の間に因果関係が認められたら、慰謝料のほかに治療費等を支払ってもらえるかもしれません。
実際に、以下の事実から治療費等が不貞行為と相当因果関係のある損害として認められ、慰謝料250万円のほかに、治療費等1万3470円の支払いが認められた事案があります(東京地裁平成27年3月17日判決)。
- 夫に不貞行為を告げられた後、重度の精神的苦痛を被ったこと
- 当初は我慢していたが耐えられず、3か月後に診察を受けてうつ病と診断されたこと
- 医師から原因がはっきりしているから薬も気休めに過ぎないなどと言われたために通院を継続しなかったこと
- 再び精神状態が悪化し、約5か月後に別のクリニックで診察を受けて適応障害と診断されたこと
不貞行為とうつ病の間に因果関係が認められたら、慰謝料のほかに治療費等も支払ってもらえる可能性があります。
不倫が原因でうつ病になり慰謝料請求するなら弁護士に相談を
不貞行為が原因でうつ病になり慰謝料請求するなら、弁護士に相談することも検討しましょう。
弁護士に依頼すれば、以下のようなメリットが得られます。
- 不貞行為の証拠の集め方についてアドバイスを得られる
- 精神的な負担を最小限に抑えられる
- あなたが受けた精神的苦痛に応じた適切な慰謝料額を請求できる
以下で、詳しく紹介します。
不倫の証拠の集め方についてアドバイスを得られる
不貞行為の証拠の集め方についてアドバイスを得られます。
弁護士は不貞行為を立証するための証拠について熟知しているため、どのような証拠をどのように集めるべきか、適切にアドバイスしてもらえます。
交渉段階では不貞行為の証拠は必須ではないため、証拠がなくても慰謝料を請求できます。しかし、不倫相手が不貞行為を認めなかったり、言い逃れをしたりすれば、責任を追及できません。
以下のようなものは、不貞行為の有力な証拠になり得ます。
- 配偶者と不倫相手が肉体関係を持ったことがわかるLINEやメッセージのやり取り
- ラブホテルに出入りしていることがわかる写真や動画
- 裸や下着姿で2人きりでいることがわかる写真や動画
有力な証拠があれば慰謝料を獲得できる可能性は高まりますが、不貞行為は密室や人目につかないところで行われるケースが多いため、証拠を確保するのは容易ではありません。
「証拠を掴まなければ」との焦りから過度な行動をしてしまい、違法行為をするおそれもあります。
弁護士に相談すれば、証拠の集め方をアドバイスしてもらえるため、適切な方法で証拠を集められるでしょう。
不貞行為の証拠になるものについては、「浮気の証拠になるもの13選と自力で証拠を集めるポイント・注意点」で詳しく解説しています。
精神的な負担を最小限に抑えられる
精神的な負担を最小限に抑えられます。
弁護士に依頼すれば、不倫相手とのやり取りはすべて弁護士が行うため、不倫相手との直接交渉を避けられます。
ご自身でも慰謝料請求できますが、不倫相手と直接やり取りするとなれば、精神的にさらなる負担がかかることが予想されます。不倫相手とやり取りすることで、うつ病が悪化するリスクもあります。
弁護士に依頼すれば、弁護士に慰謝料請求の交渉・手続き等を一任できるため、精神的な負担を最小限に抑えて解決できるでしょう。
あなたが受けた精神的苦痛に応じた適切な慰謝料額を請求できる
あなたが受けた精神的苦痛に応じた適切な慰謝料額を請求できます。
慰謝料額は法律で定められているわけではないため、請求額はあなたが自由に決められます。しかし、闇雲に高額な慰謝料を請求しても、慰謝料を獲得できる可能性は低いです。
弁護士であれば、あなたの状況を総合的に考慮し、法的根拠に基づいた適切な慰謝料額を算出できます。
法的根拠に基づいた適切な金額を請求すれば、交渉をスムーズに進めやすいため、早期に解決できる可能性も高まります。
弁護士に依頼すれば、あなたが受けた精神的苦痛に応じた適切な慰謝料を獲得しやすくなるでしょう。
まとめ
うつ病の診断書があるからといって、必ずしも高額な慰謝料が獲得できるわけではありません。
不貞行為とうつ病との間に因果関係が認められなければ増額事由として考慮されないため、うつ病の兆候を感じたら早めに医師の診察を受けることをお勧めします。
不貞行為が原因でうつ病になり慰謝料請求するなら、ぜひネクスパート法律事務所にご相談ください。
ネクスパート法律事務所には、これまで不貞問題に関する累計15,000件を超えるお問い合わせが寄せられています。
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