飲食店を経営していると、様々な方が来店されることと思います。中には、暴力団関係者も含まれている可能性もあります。暴力団関係者であると気付かないで料理やサービスを提供したとしても特に問題になることはありませんが、暴力団関係者であることを明らかにして近づいてくる場合もあるでしょう。そのような場合、企業として暴力団関係者とかかわりを持つことは暴力団排除条例等と抵触してしまうなど、問題があります。
そのようなとき、どのような対応をするべきでしょうか?本稿では、暴力団関係者とのかかわり方について解説していきます。

入店拒否と対応方法
まず、特定の人の入店をお断りすること、所謂入店拒否をすることができるかという疑問をお持ちになる方もいらっしゃるかもしれませんが、結論からすると、特定の方に対して入店拒否をお断りすることは可能です。というのも、誰と契約するか、契約しないかという判断は、店舗経営者において契約自由の原則のひとつとして当然に認められます。無論、入店拒否の理由如何によっては、相手方から不法行為等で訴えられる可能性があったり、お店の評判が悪くなったりと、マイナスになることもあり得ますが、例えば暴力団関係者など、関係性を持つことが望ましくないような方々を入店拒否することはむしろ社会的意義を果たしていくこととも言え、合理的理由があると言えるでしょう。
予め暴力団の入店を断ることを示すために、入り口に暴力団排除のステッカー等を貼ったり、HPに明示したりすることも有用です。また、各都道府県にある「暴力追放運動推進センター」の賛助会員になったり、暴追センター主催の講演に参加したりするのも良いでしょう。筆者も暴追センターの講演を何度か聞いたことがありますが、暴力団の実態や具体的な対応方法を聞くことができるため、とても参考になりました。
ステッカー等を貼っていたにもかかわらず、明らかに暴力団関係者が来店した際には、毅然とした態度で暴力団排除条例に基づき、入店をお断りする旨お伝えします。併せて、その後の対策等を警察や弁護士に相談すると良いでしょう。
また、暴力団関係者と疑わしい方に対して、疑わしいことだけをもって入店拒否することは逆に不法行為で訴えられかねませんので、このような場合にも警察や弁護士、あるいは上述の暴追センターと連携すると良いでしょう。
暴力団排除条例について
現在、我が国のすべての都道府県において、暴力団の排除・根絶を目的とした所謂暴力団排除条例が定められており、暴力団に対する利益供与が禁じられています。
例えば、東京都の東京都暴力団排除条例においては、その24条3項において、
事業者は、…その行う事業に関し、暴力団の活動を助長し、又は暴力団の運営に資することとなることの情を知って、規制対象者又は規制対象者が指定した者に対して、利益供与をしてはならない。ただし、法令上の義務又は情を知らないでした契約にかかる債務の履行としてする場合その他正当な理由がある場合には、この限りでない。
東京都暴力団排除条例24条3項より一部抜粋
と定めています。この規定に違反した場合には、公安委員会による勧告等が行われます。
暴力団に対して、用心棒を頼み、または所謂みかじめ料を支払った場合、利益供与に該当します。同様に、暴力団関係者と知りながらに宴会場を提供するような場合も、利益供与に該当すると考えられます。
終わりに
本稿では、暴力団関係者の来店に備えて対応すべきことを、暴力団排除条例と絡めて解説しました。
ネクスパート法律事務所では、暴力団関係者や、その他のクレーム対応等を企業法務を専門に扱うチームで取り扱っております。
また、暴力団関係者と疑わしいに方の調査や、そのような方に対してどう対応すべきか等のアドバイスも行っています。
飲食店の経営に際してお悩みの際は、是非ネクスパート法律事務所にお問い合わせください。