【弁護士解説】飲食店における予約キャンセルへの対応方法

飲食店を経営するにあたり、ウェブサイトや電話からの予約を受け付ける店舗も多いでしょう。あらかじめ来店人数が分かっていることで、店舗側もスタッフの手配や材料の確保がしやすく、売り上げの予測が立つなどのメリットがあります。

これに対して、予約がキャンセルされた場合、手配していたリソースが無駄になるばかりか、予約のために他のお客様の来店や別の予約を断っていた場合、大きな損失になり得ます。

それでは、キャンセルされてしまった場合、店舗側としてどのような対応をすべきでしょうか。

本稿では、予約をキャンセルされた場合にどのような対応を取ることができるのかという点をまとめていきます。

目次

キャンセルポリシーの設定

ウェブサイトや電話での予約を受けつけている場合、特に直前で予約がキャンセルされた場合には、飲食店側では材料やスタッフ等の物的・人的リソースが無駄になる可能性があり、また、他のお客様をお断りしているような場合には、売上が下がる等の損失が生じます。

特に、昨今はインターネットが普及したこともあり、対面や電話でキャンセルする場合に対してお客様において気軽にキャンセルできてしまうという実体があると思います。また、新型コロナウイルス感染症を契機として、予約者の中で感染症の発症者が出てしまった場合、店舗としてもキャンセルを認めざるを得ない状況にあると言えるでしょう。

そこで、店舗側としては、キャンセルポリシーを定め、その中でキャンセル料が発生することを明示しておくことが考えられます。具体的には、利用予定日の何日前のキャンセルでサービス料の〇%、当日のキャンセルでサービス料の〇%などと定めておくことが考えられるでしょう。

キャンセル料の法的性質

キャンセルポリシーの中でキャンセル料を定めたとして、ではそれは法的にどのような性質のものなのでしょうか?この点を解説します。

お客様が飲食店の利用を予約した場合、お客様が「利用予定日当日に当該店舗で飲食物及びそれに必要なサービスの提供を受け、それに対する対価を支払う」という契約を申込み、店舗がそれを承諾し、当該契約が成立したことになります。

それにもかかわらず、契約の当事者であるお客様が一方的に契約を破棄した場合、店舗側としては、キャンセルポリシー等の契約の定めに従い、相手方に対して損害賠償を請求することができます。

キャンセルポリシーでキャンセル料をあらかじめ定めておくことは、契約が一方的に破棄された場合に備えた損害賠償の予定(民法第420条1項)の性質を有すると言えます。

コース料理の予約等、あらかじめサービス料が明らかな場合は、キャンセル日と利用予定日との間隔から定めたパーセンテージのサービス料を受ければよいですが、席のみの予約の場合には、キャンセル日の直近の平均単価の一定のパーセンテージを定めておく、もしくは固定費(例えば3日前までのキャンセルで2000円のキャンセル料等)を定めておくことも考えられます。

もっとも、あまりに高額なキャンセル料を定めた場合、消費者契約法9条1項や民法の公序良俗(同法90条)に照らして無効となり得ますので、合理的な金額を設定しておく必要があります。

キャンセル料の請求について

前述の通り、キャンセル料は損害賠償額の予定という性質を有するため、キャンセルポリシー等で合理的な内容の定めが置かれており、お客様もそのポリシーに納得したうえで予約を申し込んでいるとすれば、特段手続きがなくともキャンセル料を支払うよう請求することが可能です。

他方、お客様がキャンセルポリシー等の存在を知らない場合や、キャンセル料の発生に同意していない等として争った場合、キャンセル料があらかじめ契約内容となっていたことを主張・立証しなければならなくなります。

そうならないために、予約の段階でキャンセル料について確り説明し、お客様から同意を得ていることが重要になります。

終わりに

本稿では、飲食店において、予約がキャンセルされた場合にどのような対応を取ることができるかという点を、キャンセル料の請求という形式に着目して解説してきました。

本文中に述べたように、キャンセル料を請求するには、合理的なキャンセルポリシー等を定め、予約キャンセルの場合にはキャンセル料が生じることをあらかじめ定めておく必要があります。

ネクスパート法律事務所では、飲食店経営の法的サポートを専門に行っているチームが、キャンセルポリシーの作成、キャンセル料の請求、その他お客様とのトラブル等を総合的にサポートさせていただいております。

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