飲食店におけるHACCPについて ~ その2 ~

前回の記事ではHACCPの概説を行いました。本稿ではHACCPの導入方法についてまとめていきます。

  1. HACCPに関する情報収集手段
  2. 衛生管理の種類および策定について
  3. 衛生管理計画と社内規定の連携
  4. 終わりに
目次

HACCPに関する情報収集手段

前回の記事で記載したとおり、飲食店では、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を導入する必要があります。

HACCPの考え方を取り入れた衛生管理とは、各業界団体が作成する手引書をもとに行う、HACCPそのものより簡略化された衛生管理方法です。

公益社団法人日本食品衛生協会は、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)」を作成しています(以下単に「手引書」と言います。)飲食店において、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を導入するに際しては、まず、この手引書を確認しましょう。

この手引書は、厚生労働省のHPからダウンロードすることで誰でも簡単に入手できます。

参考:食品等事業者団体が作成した業種別手引書 |厚生労働省(mhlw.go.jp) (2023年9月19日現在)

また、衛生管理計画・記録簿の様式は、同協会のHP上で販売されています。

衛生管理計画の種類及び策定について

衛生管理計画には、①一般衛生管理と②重要管理の2種類があり、それぞれに分けて作成しなければなりません。各管理計画について、手引書に様式が記載例とともに載っているため、これらを参考にして記載します。

①一般衛生管理について

手引書の「一般衛生管理計画のポイント」の様式には、具体的なチェック方法が記載されています。端的に言うと5Sの徹底(整理、整頓、清掃、清潔、躾け)原材料の受入の確認手洗いの実施等です。

飲食店を運営するにあたって当然の事項が記載されていますので、様式を改変せずに利用して良いでしょう。様式に列挙されている各項目について対応方法を整備し、従業員と共有してください。

もちろん、店舗の状況や提供する食品の種類等を考慮して様式に項目を追加することも可能です。

②重要管理について

一般衛生管理に対して、手引書の「重要管理のポイント」の様式には、具体的なチェック方法が記載されていません。つまり、店舗の状況や提供する食品の種類に応じて各店舗で個別具体的に作成しなければなりません。

重要管理の策定においては、まず、提供する食品を様式の「分類」欄の記載によって分類します。例えば、お刺身や生野菜のサラダ等は「非加熱のもの(冷蔵品を冷たいまま提供)」に分類されるでしょう。

上記の分類が終わったら、次に分類したグループごとに具体的なチェック方法を決めます。チェック方法については、手引書に例と考え方の要点がまとめられていますので、これらを参考に定めると良いでしょう。

ただし、例をそのまま使用するのではなく、店舗ごとの既存ルールや、従業員にとってわかりやすい表現かどうか等を全従業員で確認しながら査定するとなお良いでしょう。記載方法がわからなければ、専門家に相談しながら策定するのも有効です。

具体的なチェック方法を決めるにあたっては、細菌等の特徴を把握していることも重要です。どのような環境下で細菌が繁殖しやすいか、逆に殺菌するにはどのような手段が必要かなどを意識して作成するようにしてください。

衛生管理計画を策定したら、当該計画にしたがって毎日実施状況を確認し、記録してください。手引書において、一般衛生管理、重要管理の「実施記録」の様式が記載例とともに載っていますので、こちらを参考にすると良いでしょう。

当然のことながら、管理計画を策定しても、これにしたがって実施しなければ当該計画は無意味なものに帰すと言わざるを得ません。これらの計画が、お客様に重大な健康被害を出すことを防ぎ、また、自店舗を守るためのものであることを常に念頭に置きましょう。適宜の見直しや従業員相互に確認をすることも有用です。

衛生管理計画と社内規定の連携

上記のような衛生管理計画の重要性を踏まえると、衛生管理計画の策定及びこれに基づく実施は、就業規則等の社内規則にも定めておくことが望ましいです。

具体的には、就業規則の中の服務規程に衛生管理計画に従うことを定めたり、就業規則とは別に、衛生管理規程を設けたりするなどが考えられます。筆者の前職では、後者を採用しており、飲食部隊の関係者を中心に全従業員が周知徹底していました。会社として、衛生管理計画を重視しており、違反した場合には厳格な処分を下す、そのような姿勢を明確にしておくと良いでしょう。

終わりに

本稿では、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の導入方法を概説しました。特に重要管理については、個別具体的にチェック方法を定める必要性があり、有事の際に確認可能か、という視点が重要になります。具体的なチェック方法の妥当性については全従業員が分かりやすいように慎重に定めましょう。

また、全従業員共通のルールとして定めるためにも、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理の導入に際しては、併せて就業規則等の社内規程を見直すことが望ましいです。これらのルールの徹底が、昨今話題の従業員によるSNSの運用による損害のリスクの低減にもつながります。

ネクスパート法律事務所では、飲食店運営者向けのチームが、衛生管理の策定や社内規程の見直しのサポートをさせていただきます。是非お悩みの際には当事務所までお問い合わせください。

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