昨今、ポーカーバー等のアミューズメントカジノが流行っています。アミューズメントカジノでは、お金を賭けずにカジノゲームを楽しむことができます。施設内で独自に用意されているチップを賭けて遊びますが、チップが増えても換金や景品交換などはできないことが前提とされているため、アミューズメントカジノで遊戯を行ったとしても賭博行為に当たらず、違法性はありません。
他方、施設を営業している者は、アミューズメントカジノの営業に関し、遊技の結果に応じて賞品を提供することは風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」といいます。)により禁じられています。
しかし、アミューズメントカジノでイベントを行う場合等にあっては、イベントを盛り上げるために、参加者に賞品を提供したいと思われる経営者様もいらっしゃるでしょう。
本稿においては、アミューズメントカジノ営業者が賞品提供を行うことができないか、行う場合の注意点について解説していきます。

風営法の規制
まずは風営法の規制の概要を説明していきます。
大前提として、ポーカーバーなどの所謂アミューズメントカジノを経営するためには、風営法2条1項5号に定める遊技場を経営するための許可を得なければなりません(風営法3条1項)。
そのうえで、風営法は遊技場営業者の禁止行為として、23条2項に次の規制を置いています。
第二条第一項…第五号の営業を営む者は、前条第一項の規定によるほか、その営業に関し、遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない。
風営法第23条2項
つまり、アミューズメントカジノの営業者は、施設の営業に関し、遊技の結果に応じて賞品を提供することは禁じられています。
わが国では、一部の例外を除いて、賭博行為が禁止されていますから、それとの平仄をとるために、遊技により賞品等の経済的利益を与えることを一般的に禁止しているということになります。
ここにいう「賞品」には、金品や有価証券はもちろん、物品や割引券、施設で使えるポイントカードにポイントを付与すること等のあらゆる経済的利益の提供が含まれます。
他方、ゲームセンター等におかれている所謂クレーンゲームの景品等は小売価格が概ね1000円未満の景品については、「賞品」に含まれないとの解釈がとられています。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準について (通達)
賞品提供の可否
クレーンゲーム等による例外を除き、アミューズメントカジノ等の通常の営業の中で賞品を提供することは、上記のとおり禁止されることになります。実際に遊技の結果として賞品提供を行っていた施設によっては、立入検査、逮捕等の事例も出てきているので、これらは現に行わないよう注意が必要です。
他方、当該施設でポーカー大会等のスポットでのイベントを開催する場合はどうでしょうか。
これについては、当該賞品提供が、施設の営業に関する賞品提供に該当するかどうか、という点が重要になります。
風営法23条2項は、上記のとおり、「その営業に関し、遊技の結果に応じて賞品を提供してはならない。」と定めているため、当該賞品提供が、施設の通常の営業と無関係で行われたものといえるだけの体制を整えている場合には、風営法23条2項による規制を受けません。
実際に、経済産業省の実施する「グレーゾーン解消制度」において、国家公安委員会が次のように回答しています。
同大会(※ポーカー大会のこと。注釈は筆者。)における賞品の提供についても、照会書のとおり運営されることを前提とすれば、風営適正化法第23条第2項による規制を受けないと解して差し支えない。ただし、照会書において触れられていない事由によって、大会の営利性が生じる場合や、通常営業と大会との区分が失われる場合にはこの限りではない。
新事業活動に関する確認の求めに対する回答の内容の公表 令和3年7月2日回答
以上を踏まえると、アミューズメントカジノの設備を利用し、条件を整備したうえで、通常の施設の営業と明確に区別したイベント等において、イベントの優勝者等に賞品を提供することは認められるということができます。
運用上の留意点
もっとも、注意が必要な点としては、上記の例のように、通常の営業とイベントを明確に区別する必要がある、ということです。
上記のグレーゾーン解消制度により適法性が認められた例は一例にすぎず、必ずしも同一の条件を付すべきということではありませんが、上記の例に準じるような方法で通常の営業との区別を行うことが望ましいでしょう。
賞品提供については、風営法の規制のみならず、賭博行為及び賭博場の開設を禁じている刑法との関係でも問題になるため、慎重な運用が必要なことは改めて言及するまでもないでしょう。
適法性の担保のためにも、賞品提供を伴うイベントを開催する場合には、専門家に事業スキームについて相談をするようにしてください。
おわりに
本稿では、風営法23条2項の概説とともに、アミューズメントカジノでの賞品提供の可否についてまとめてきました。
ネクスパート法律事務所では、アミューズメントカジノを含む飲食店経営サポートに特化したチームが、事業スキームの適法性審査、利用規約・契約書等の各書面作成、意見書の作成、労務問題に関する法律相談等を行っています。
初回相談は30分無料で対応しておりますので、アミューズメントカジノの営業等に関してお困りの際には、是非お気軽にお問合せください。