【弁護士解説】お客様に食中毒症状が生じた場合の対応

食品を取り扱う以上、常について回るリスクが「食中毒」のリスクです。万一、お客様に食中毒症状が現れてしまった場合、どのような対応をすべきでしょうか?

本稿では、食中毒症状が生じた場合の対応についてまとめていきます。

目次

食中毒症状が生じたときの対応

お客様に食中毒症状が生じるのは、お店でサービスを受けて少し時間がたってからである場合が多いです。そのため、お客様からのご連絡で食中毒症状が生じたことが発覚することがほとんどです。お客様からそのような連絡を受けた場合には、

  1. 食中毒症状の発症日時
  2. 症状の詳細
  3. 来店日時や人数
  4. 提供された食品の内容
  5. 医療機関における受信の有無
  6. 診断内容等

の聞き取りを行います。

ヒアリングを行ったうえで、当該お客様の注文した内容及びHACCPの実施記録(※)の確認と併せて食中毒の原因物質を特定します。

※HACCPの実施記録については以下の記事をご参照ください。

仮に、連絡を受けたお客様以外にも、原因と思料される食品を提供したお客様がいるようであれば、HP等による情報発信を行うべきです。

原因物質等を特定したうえ、食中毒発生の可能性が高い場合には、保健所に連絡し、指示を受けます。保健所で食中毒発生の可能性があると判断した場合には食品衛生監視員による調査が実施されることになります。

調査の結果等を踏まえ、HPや報道機関への申告等で情報開示を行います。当然のことではありますが、隠蔽することなく情報を開示し、被害拡大の防止を最優先に行動するようにしてください。

現状、食品衛生法では、食中毒の疑いがある患者を診断した医師は、保健所長に届出をすることを義務付けているものの、飲食店に対しては何等の義務を定めていません。

しかし、被害拡大を防ぐことは飲食店経営者の重大な責務と言えますので、食中毒発生の可能性があると判断した場合には、迷うことなく保健所に報告し、保健所等と協力のうえ被害拡大・再発防止に努めてください。

食中毒が生じた場合の処分等

飲食店で食中毒が発生した場合には、食品衛生法に基づく処分や、場合によっては刑事罰を受ける可能性があります。

行政処分には、食品衛生法上、①営業停止処分、②営業禁止処分、③許可取消処分が定められています。その他にも、④食品との廃棄命令、⑤危害除去命令、⑥施設の整備改善命令が行われることもあるでしょう。行政処分に至らない場合であっても、行政指導が入る可能性があります。

また、食中毒が生じた場合、食品衛生法では刑事罰も定めています。(個人については3年以下の懲役または300万円以下の罰金またはそれらの併科、法人については1億円以下の罰金)。

更に、生じた結果が重大な場合や、悪質性が高い場合には、業務上過失致死傷罪が成立する可能性もあるでしょう。

当然ではありますが、処分があるからと言って隠蔽するようなことだけは行ってはいけません。万一、食中毒が生じた場合には、真摯にしかるべき対応をとるようにしてください。

終わりに

本稿では、食中毒症状が生じた場合の対応について解説いたしました。

HACCPに基づく衛生管理を行うことはもちろんですが、それでも食中毒が発生してしまった場合には、隠蔽することなく情報を開示し、被害拡大の防止を最優先に行動することが第一です。

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