更新日:2024年4月24日 (水)

公開日:2024年4月24日 (水)

遺産分割請求権とはどんな権利?時効はある?裁判上も行使できる?

遺産分割請求権とはどんな権利?時効はある?裁判上も行使できる? 遺産分割請求権とはどんな権利?時効はある?裁判上も行使できる?

サマリー

遺産分割とは、亡くなった方の財産を共同相続人間で分けることです。

相続人が1人であれば、遺産分割は不要ですが、相続人が2名以上いる場合は、有効な遺言がない限り、共同相続人間で遺産の分け方を決める必要があります。

共同相続人に対して、遺産分割を求めるには、具体的にどうすればよいのでしょうか。遺産分割を請求する権利に時効はあるのでしょうか。

この記事では、遺産分割請求権について、以下のとおり解説します。

・遺産分割請求権の概要
・遺産分割請求はいつまでにすればいいのか
・遺産分割請求の流れ

遺産分割をご予定の方は、ぜひご参考になさってください。

遺産分割請求権とは

ここでは、遺産分割請求権とは具体的にどういうものか解説します。

共同相続人に遺産分割を求める権利

遺産分割請求権とは、相続人が他の相続人に対して遺産分割を求める権利です。

相続財産が共有状態にある場合、共同相続人はいつでも、その協議で、遺産の一部または全部を分割できます。

遺産の分割について、共同相続人間で協議が調わないとき、または協議ができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求できます。

遺産分割請求権を行使できる人

遺産分割請求権を行使できるのは、法定相続人です。

相続放棄をした人や審判確定により相続人から排除された人は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなされるため、遺産分割を請求する権利がありません。

遺産分割請求権を代位行使できる人

相続人の債権者は、相続人の遺産分割請求権を代位行使できるとされています。

債権者が債務者に対して有する債権を保全するため、債務者が有する権利を、債権者が債務者に代わって(代位して)行使する権利を債権者代位といいます。

債権者がこの権利を行使する代表的な例に、債権者代位による相続登記があります。

債務者(相続人)が借金を滞納している場合や、税金を滞納している場合に、貸付金や税金を保全するために、金融機関や行政機関等が相続人の代わりに相続登記を申請することがあります。

相続人が複数いる場合は、債権者は債務者である相続人の持分だけを登記できないため、法定相続分に従って相続人全員分の登記を申請します。このとき、債権者は相続人全員の同意を得る必要がないため、相続人が知らないうちに登記されることも珍しくありません。

遺産分割請求権を行使する方法

遺産分割請求権は、基本的に共同相続人に遺産分割協議を申し入れる方法で行使します。

権利行使の方法は法律で特に規定されていないため、口頭でも書面でも構いません。

遺産分割請求権を行使できないケース

以下のいずれかに該当するケースは、遺産分割の禁止期間中は遺産分割請求権を行使できません。

  • 被相続人が遺言により遺産分割を禁止している場合
  • 共同相続人間で遺産分割禁止の合意を締結した場合
  • 遺産分割禁止の審判が確定した場合

・被相続人が遺言により遺産分割を禁止している場合

被相続人(遺言者)は、遺言により、最大で相続開始のときから5年を超えない期間を定めて、遺産分割を禁止できます。

遺言により遺産分割が禁止されている場合で、かつ、遺言執行者が指定されている場合は、その禁止期間中は遺産分割請求権を行使できません。

遺言執行者がいない場合は、共同相続人全員が合意の上で遺産分割を実施した場合、その遺産分割協議は有効に成立すると解されています。

共同相続人間で遺産分割禁止の合意を締結した場合

共同相続人の遺産分割協議によって、5年を超えない期間で遺産分割を禁止できます。

共同相続人間で遺産分割禁止の合意に至った場合は、禁止期間中は遺産分割請求権を行使できません。禁止期間満了前に、遺産分割を禁止する理由が消滅した場合は、共同相続人間でこの合意を解除することも可能です。

遺産分割禁止の審判が確定した場合

家庭裁判所の審判によって、遺産分割を禁止することも可能です。

遺産分割の審判の過程において、家庭裁判所は、特別の事由があるときには、期間を定めて遺産の全部または一部について、分割を禁止できます。

分割禁止期間については規定がありませんが、遺言による分割禁止期間との釣り合いで、5年を超えない期間が定められるのが通常です。

遺産分割請求はいつまでにすればいい?請求権に時効はある?

ここでは、遺産分割請求権に時効があるかどうかを解説します。

遺産分割請求権に時効はない

遺産分割請求権に時効や期限はありません。

遺産分割の取消権には時効がある

遺産分割協議は共同相続人間の契約行為であるため、遺産分割協議において詐欺や脅迫などがあれば、遺産分割協議を取り消せます。

詐欺または脅迫による意思表示の取消権は、追認が可能な時から5年が経過すると消滅時効にかかります。

その他留意すべき相続手続きの期限がある

相続手続きには期限が定められているものがあります。期限のある手続きの代表例は以下のとおりです。

  • 相続放棄・限定承認|3か月以内
  • 被相続人の所得税の準確定申告|4か月以内
  • 相続税の申告・納税|10か月以内
  • 遺留分侵害額の請求|1年以内
  • 死亡保険金の請求|3年以内

いつ遺産分割を行うかは相続人の自由ですが、上記手続きの期限を念頭において、早めに取りかかることをおすすめします。

期限のある相続手続きの詳細は、下記関連記事をご参照ください。

遺産分割請求は裁判(訴訟)できない?

ここでは、遺産分割について、訴えの提起が認められているかどうかについて解説します。

遺産分割は協議・調停・審判で解決する

遺産分割は、家事事件手続法別表第二事件に分類されています。別表第二事件は、訴訟の提起が認められていません。

そのため、共同相続人間で遺産分割協議が調わないときや、協議ができないときは、家庭裁判所の調停手続きないし審判手続きで解決します。

遺産分割に関連する裁判

遺産分割の前提問題については、以下の訴訟(裁判)で解決することがあります。

  • 遺言無効確認請求訴訟
  • 遺産確認訴訟
  • 遺産分割協議無効確認請求訴訟

遺言無効確認請求訴訟

遺言の無効を争う場合は、調停で解決できないときは訴訟を提起しなければなりません。調停期日を重ねても結局合意に達しないことが予想される場合は、初めから訴訟を提起することも可能です。

遺産確認訴訟

遺産の名義人と実質的な所有者との間に不一致がある場合など、遺産の範囲に争いが生じる場合は、遺産分割協議に先立ち、遺産の範囲に関する争いを解決する必要があります。

遺産の範囲を確定させるための訴訟として遺産確認訴訟があります。調停で解決できないときは訴訟を提起する必要がありますが、最初から訴訟を提起することも可能です。

遺産確認訴訟には、共同相続人全員が当事者として参加する必要があります。

遺産分割協議無効確認請求訴訟

遺産分割協議に無効原因があるかどうかについて争いが生じた場合、遺産分割協議無効確認請求訴訟を提起できます。

訴訟において当該遺産分割協議が無効と判断された場合は、共同相続人間であらためて遺産分割協議を行います。

遺産分割請求の流れ

ここでは、遺産分割請求の流れについて解説します。

前提問題を整理する

遺産分割協議に先立ち、以下のような前提問題を確認・整理します。

  • 遺言の有無を確認する
  • 相続人を確定する
  • 相続放棄した人の有無を調査する
  • 相続欠格・推定相続人排除の有無を確認する
  • 遺産の範囲を確定する
  • 遺産を評価する
  • 特別受益の有無を確認する
  • 寄与分の有無を確認する
  • 相続分を算定する

共同相続人に協議を申し入れる

共同相続人全員に遺産分割協議を申し入れます。

遺産分割協議を行う

前提問題に争いがなく、共同相続人全員が協議に参加できる場合は、遺産分割協議を行います。

共同相続人間で合意に至れば、遺産分割協議が成立した証として、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、相続人全員の署名・押印と印鑑証明書を取り付けます。

調停を申立てる

当事者間で協議が調わないときは、家庭裁判所に遺産分割調停を申立てます。当事者間の協議では、遺産分割とは無関係な長年の親族間の問題が蒸し返されることが多く、なかなか話が進まないことがあります。

調停手続きを利用し、第三者である調停委員を介すことで、合意への道筋を見いだせることもあります。調停で話し合いがまとまれば、調停調書の内容に基づいて遺産を分割します。

審判を申立てる

調停で話し合いがまとまらない場合は、審判手続きに移行します。審判手続きでは、裁判所が当事者双方の主張を聞いた上で、遺産の分割方法を決定します。

審判が確定したら、審判書の内容に基づいて遺産を分割します。

まとめ

共同相続人は、いつでも、その協議で、遺産を分割できます。

遺産分割請求に時効はありませんが、期限のある相続手続きのスケジュールを相続人間で共有し、なるべく早く協議することをおすすめします。

協議に応じない相続人がいる場合は、家庭裁判所の調停・審判手続きが利用できます。

弁護士に遺産分割請求を依頼することも、円滑に手続きを進める上で有効な手段です。

遺産分割にお悩みの方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。司法書士や税理士等の他士業と連携し、ワンストップで遺産分割をサポートします。

コラム監修者

Shunsuke Teragaki

Shunsuke Teragaki

所属:東京本店

広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。

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