更新日:2026年7月27日 (月)
公開日:2026年7月27日 (月)
過失致死罪とは?刑の重さ、業務上・重過失との違いを徹底解説
サマリー
「過失致死罪」とは、故意(わざと)ではないものの、不注意(過失)によって人を死亡させた場合に成立する犯罪です(刑法210条)。
この記事では、過失致死罪の定義(注意義務の存在・予見可能性・結果回避義務)や法律上の意味、他の過失犯と比較した場合の法定刑の特徴についてわかりやすく解説します。
また、殺人罪や傷害致死罪との違いに加え、より重い刑事責任や刑罰が科される業務上過失致死罪や重過失致死罪についても説明します。
万が一、ご自身やご家族が過失致死事件を起こしてしまった場合に備え、対応時の注意点についても解説します。
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過失致死罪とは?|刑法210条不注意による死亡事故の犯罪
過失致死罪は、刑法第210条に規定されている犯罪です。
刑法第210条では、「過失により人を死亡させた者は、50万円以下の罰金に処する」と規定されています。
ここでいう「過失」とは、自身の行為によって他人が死亡するという危険(結果)を予測できた(予見可能性)にもかかわらず、その結果を回避するために必要な注意義務(結果回避義務)を怠ったことを意味します。
つまり、社会通念上、人が死亡する危険を予測できる状況であったにもかかわらず、適切な安全配慮や注意を尽くさなかった結果、死亡事故が発生した場合に成立し得る犯罪です。
過失致死罪においては、犯罪を行う意思(故意)はなく、あくまで不注意(注意義務違反)によって結果が発生したことが前提となります。
過失致死罪が成立する主な要件

過失致死罪が成立するためには、主に以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 注意義務違反があること
- 人が死亡したこと
- 注意義務違反と死亡結果との間に因果関係があること
第一に、加害者側に注意義務違反が認められることです。
これは、行為当時の具体的な状況下において、同種の行為者に通常求められる安全確認や危険回避のための措置を客観的に尽くさなかったことを意味します。
第二に、行為によって人が死亡する結果が発生していることです。
第三に、注意義務違反と死亡結果との間に因果関係が認められることです。
実務上は、加害者が適切な注意義務を尽くしていれば死亡結果を回避できたといえるか(結果回避可能性)が、因果関係を判断するうえで重要なポイントとなります。
重要なのは、加害者に被害者を死亡させる故意、すなわち殺意が認められない点です。
また、暴行や傷害を加える故意が認められないことも、傷害致死罪などの類似犯罪と区別する際の重要なポイントとなります。
過失致死罪の法定刑は50万円以下の罰金
過失致死罪の法定刑は、刑法第210条により「50万円以下の罰金」と定められています。
これは、拘禁刑(旧懲役・禁錮)といった身体拘束を伴う「自由刑」の選択肢がなく、刑事裁判において有罪となった場合でも、「罰金刑」のみが科されることを意味します。
なお、2025年の刑法改正により、従来の懲役刑と禁錮刑は「拘禁刑」に一本化されていますが、過失致死罪の法定刑が罰金刑のみである点に変更はありません。
ただし、法定刑が罰金刑のみであるからといって事件が軽視されるわけではなく、裁判で有罪が確定すれば前科が付きます。
【比較】過失致死罪と殺人罪・傷害致死罪の違い
過失致死罪の法的な位置づけを正しく理解するためには、「故意の有無」に着目し、類似する他の致死罪との違いを理解することが重要です。
「殺意」の有無が重要となる殺人罪との違い

過失致死罪と殺人罪(刑法第199条)の最大の違いは、「殺意」の有無にあります。
殺人罪は、自らの行為によって「相手が死ぬことを積極的に望む(確定的故意)」、または「仮に死んでしまっても構わない(未必の故意)」という殺意を持って犯行に及び、その結果として相手を死亡させた場合に成立します。
これに対し、過失致死罪は、殺意が認められず、不注意によって死亡結果が発生した場合に成立します。
この「殺意」の有無は、成立する犯罪類型や法定刑に大きな違いを生じさせます。
殺人罪の法定刑は、「死刑、無期または5年以上の拘禁刑」と定められており、日本の刑罰の中でも非常に重い刑罰が科されます。
暴行・傷害の故意が問題となる傷害致死罪との違い

傷害致死罪(刑法第205条)とは、被害者に対して暴行または傷害を加える故意はあったものの、その結果として発生した死亡という重大な結果までは意図していなかった(殺意はなかった)場合に成立する犯罪です(このような犯罪を法律実務では「結果的加重犯」と呼びます)。
例えば、殴る・蹴るなどの暴行を加えた結果、被害者が死亡した場合などが典型例です。
過失致死罪との大きな違いは、「暴行や傷害を加える故意」の有無にあります。
過失致死罪では、相手の身体を害する故意自体が認められないことが前提となります。
傷害致死罪の法定刑は、「3年以上の有期拘禁刑」とされており、過失致死罪よりも重い処罰が定められています。
【法定刑まとめ】
| 罪名 | 法定刑(刑罰の重さ) |
|---|---|
| 過失致死罪(刑法第210条) | 50万円以下の罰金 (拘禁刑の規定がない) |
| 傷害致死罪(刑法第205条) | 3年以上の有期拘禁刑 |
| 殺人罪(刑法第199条) | 死刑、無期、または5年以上の拘禁刑 |
業務上過失致死罪・重過失致死罪|より重い刑罰が科されるケース

過失致死罪の法定刑は「50万円以下の罰金」という比較的軽い罰金刑に限定されていますが、行為者の社会的立場や過失の程度、発生した状況によっては、より重い犯罪として処罰される場合があります。
代表的なものとして、「業務上過失致死罪(刑法第211条前段)」と「重過失致死罪(刑法第211条後段)」があります。
これらの犯罪で有罪となった場合には、罰金刑だけでなく拘禁刑が科される可能性もあります。
そのため、通常の過失致死罪との違いを理解しておくことが重要です。
業務上過失致死罪|業務中の事故で問題となる
業務上過失致死罪(刑法第211条前段)は、医療行為や建設作業など、社会生活上の地位に基づいて反復継続して行う業務の過程で、必要な注意義務を怠り、人を死亡させた場合に成立し得る犯罪です。
業務従事者には、その職務内容に応じた高度な注意義務が求められるため、通常の過失致死罪よりも重い法定刑が定められています。
法定刑は、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金とされています。
(※なお、自動車の運転による死亡事故については、通常の過失致死罪ではなく、「自動車運転死傷処罰法」が適用されます。)
業務上過失致死罪については、以下の記事で詳しく解説しています。
業務上過失致死傷罪はどんな罪?判例とともに詳しく解説
重過失致死罪|著しい注意義務違反が問題となる
重過失致死罪(刑法第211条後段)は、前述の「業務」とは無関係の日常生活などの場面において、一般人に通常要求される注意義務を「著しく」怠った結果、他人の生命を奪ってしまった場合に成立する犯罪類型です。
ここでいう「重過失」とは、少し注意すれば結果を予見・回避できたにもかかわらず、それを著しく怠ったような重大な注意義務違反を指します。
例えば、スマートフォンを見ながら自転車を運転し、前方不注意のまま歩行者に衝突して死亡させたようなケースです。
法定刑は業務上過失致死罪と同様に、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金と定められています。
過失致死事件で逮捕された後の流れ|刑事手続きの進み方

過失致死事件の容疑で警察に逮捕された場合、その後の刑事手続きは刑事訴訟法などの規定に基づいて進められます。
突然の事態に直面した被疑者本人やそのご家族にとって、逮捕直後から始まる一連の刑事手続きの流れや見通しは、精神的に大きな不安要素となりやすいものです。
一般的に、逮捕後は警察署の留置施設などで身柄を拘束され、家族などとの連絡や面会が制限される場合があります。
その後は、検察官による起訴・不起訴の判断に至るまで、段階的に刑事手続きが進行します。
こうした手続きの流れを理解しておくことは、今後の対応方針を検討するうえで重要です。
警察の取り調べから検察官送致までの流れ
逮捕後は、まず警察による事情聴取や取り調べが行われます。
警察は、逮捕から48時間以内に、被疑者の身柄および関係書類・証拠物を検察官へ送致する必要があります。
この手続きは「送致(送検)」と呼ばれます。
送致を受けた検察官は、身柄を受け取ってから24時間以内に、裁判官へ勾留請求を行うか、または釈放するかを判断します。
そのため、逮捕から最大72時間程度は、家族など一般の人との面会が制限されます。
ただし、弁護士であれば、この72時間以内であっても面会(接見)することが可能です。
弁護士の接見については、以下の記事で詳しく解説しています。
接見と面会の違いは?接見禁止も解説
検察官による起訴・不起訴の判断
裁判官が勾留を認めた場合、被疑者は原則として10日間身柄を拘束されます。
さらに、やむを得ない事情がある場合には、最大10日間の勾留延長が認められることがあります。
検察官は、この最長20日間の勾留期間中に証拠関係を精査し、被疑者を起訴するか、不起訴とするかを最終的に判断します。
被害者遺族との示談の成立状況や、被疑者の反省状況などは、検察官が起訴・不起訴を判断する際の重要な事情の一つとして考慮されます。
起訴後に開かれる刑事裁判の流れ
検察官が起訴を決定した場合、事件は刑事裁判へと進みます。
日本の刑事裁判では、起訴後に有罪判決となるケースが多いとされています。
刑事裁判では、検察官が犯罪事実の立証を行い、弁護側は被告人に有利な事情や情状面などを主張・立証します。
最終的には、裁判官が証拠や過去の裁判例などを踏まえ、有罪・無罪の判断や、有罪の場合の量刑判断を行います。
そのため、起訴前の段階から適切な弁護活動を行うことが重要となります。
なお、法定刑が罰金刑のみである通常の過失致死罪では、公開の法廷を開かず、書類審理によって罰金刑を科す「略式手続(略式命令)」によって終結するケースも少なくありません。
一方、業務上過失致死罪や重過失致死罪など、拘禁刑が法定刑として予定されている事件では、原則として正式な公開裁判が開かれることになります。
略式手続については、以下の記事で詳しく解説しています。
略式起訴とは|手続きの流れや罰金の相場・前科等について解説
不起訴や刑の軽減を目指すために重要な示談・弁護士対応
過失によって人を死亡させた場合、加害者は刑事責任だけでなく、民法第709条の不法行為責任に基づき、被害者のご遺族に対する民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。
刑事手続きにおいては、加害者側による誠実な謝罪や被害回復への対応が、不起訴処分や量刑判断における重要な事情として考慮されます。
被害者遺族との示談交渉を早期に進める重要性
過失致死事件では、被害者遺族に対する真摯な謝罪と、適切な示談交渉を進めることが重要な対応の一つとなります。
示談とは、当事者間の協議によって、民事上の損害賠償問題などを解決する合意をいいます。
示談が成立し、遺族から宥恕(加害者を許す意思表示)を得られた場合には、その事情が、加害者の反省状況や被害回復が進んでいる事情として、検察官や裁判所に有利な情状として考慮される可能性があります。
これにより、不起訴処分や量刑上有利な判断につながる可能性があります。
刑事事件の示談交渉については、以下の記事で詳しく解説しています。
示談交渉とは?刑事事件の示談の流れや注意点・示談金相場を徹底解説
過失致死事件における示談金の目安
過失致死事件における示談金や損害賠償額は、法律で一律に定められているものではありません。
実務上は、被害者本人の死亡慰謝料や遺族固有の慰謝料、逸失利益(被害者が将来得られたはずの収入)、葬儀費用などを基礎として算定されるため、被害者の年齢、収入、職業、家族構成などによって金額は大きく異なります。
死亡事故の損害賠償額は事案によって大きく異なりますが、裁判実務上、数千万円規模となるケースもあります。
適切な条件で示談交渉を進めるためには、弁護士へ相談することが重要です。
早期に弁護士へ依頼する主なメリット
過失致死事件では、早期に弁護士へ相談・依頼することで、その後の対応を適切に進めやすくなります。
① 被害者遺族に配慮した示談交渉を進められる
遺族は深い悲しみの中にあるため、加害者本人が直接交渉を行うことで、かえって感情的対立が生じるケースもあります。
弁護士が代理人として対応することで、法律実務に基づいた冷静かつ客観的な交渉を進めやすくなります。
弁護士は、法的根拠に基づいて賠償条件を整理するとともに、加害者の謝罪や反省の意思を適切に伝えながら、示談成立に向けた交渉を進めます。
② 不起訴処分や執行猶予付き判決を目指した弁護活動を受けられる
弁護士は、示談成立の有無に加え、加害者の反省状況、再発防止策、家族による監督体制など、量刑上有利となり得る事情を整理し、証拠とともに検察官や裁判所へ主張します。
こうした弁護活動は、不起訴処分や量刑軽減に向けた有利な事情として考慮される可能性があります。
仮に起訴された場合でも、業務上過失致死罪など拘禁刑が予定される事件では、執行猶予付き判決を目指した弁護活動が行われます。
執行猶予付き判決となった場合には、直ちに刑務所へ収容されず、社会生活を継続できる場合があります。
③ 早期の身柄解放に向けた弁護活動を受けられる
逮捕・勾留による身柄拘束が長期化すると、仕事や家庭生活などに大きな影響が及ぶ可能性があります。
弁護士は、証拠隠滅や逃亡のおそれが低いことなどを主張し、意見書の提出を通じて、勾留請求の却下や早期釈放を求める活動を行います。
その結果、身体拘束を受けない「在宅事件」として捜査が継続される可能性があります。
また、社会生活への影響を最小限に抑える観点からも、早期の身柄解放に向けた弁護活動は重要とされています。
過失致死に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、過失致死に関して寄せられることの多い質問について、Q&A形式で簡潔に解説します。
Q. 過失致死罪の公訴時効は何年ですか?
過失致死罪(刑法第210条)の公訴時効は3年です。
公訴時効の期間は法定刑の重さに応じて定められており、5年以下の拘禁刑が定められている「業務上過失致死罪」や「重過失致死罪」の場合は、公訴時効は5年となります。
Q. 予見できない事故でも罪に問われてしまいますか?
結果の発生を予見することが全く不可能だった場合には、一般的には過失責任を問われません。
過失致死罪が成立するには、行為者に結果発生の予見可能性があり、それを回避すべき注意義務が認められることが前提となります。
落雷や突発的な自然災害など、誰にも予見できない不可抗力による事故の場合には、過失が否定され、犯罪は成立しません。
Q. 会社の従業員が業務中に死亡事故を起こした場合、会社の責任はどうなりますか?
一般的には、直接事故を起こした従業員個人が刑事責任を負い、会社側は民事上・行政上の責任を負うことになります。
会社という法人そのものが、過失致死罪で直接処罰されることは原則としてありません。
ただし、会社の安全管理体制に重大な不備があり、それが事故原因となった場合には、代表者や安全管理担当者が業務上過失致死罪などの責任を問われる可能性があります。
まとめ
過失致死罪は、不注意(注意義務違反)によって人の命を奪ってしまう重大な犯罪です。
業務上の事故や著しい注意義務違反が原因となった場合には、業務上過失致死罪や重過失致死罪として、より重い刑罰が科される可能性があります。
万が一、事件の当事者となった場合には、速やかに被害者遺族への謝罪や示談交渉を進めるとともに、早期に弁護士へ相談することが重要です。
ネクスパート法律事務所では、刑事事件に強い弁護士が多数在籍しています。
初回相談は、30分無料です。
ぜひ一度ご相談ください。
コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。