更新日:2026年7月22日 (水)
公開日:2026年7月22日 (水)
幇助犯とは?教唆との違い、成立要件から具体例まで解説
サマリー
幇助(ほうじょ)とは、他人による犯罪行為を容易にするために手助けをする行為を指し、このような幇助行為を行った者は、刑法上「幇助犯」として扱われます(刑法62条)。
一般的には、犯罪を直接実行する「正犯」の実行行為を補助・支援する行為が幇助に該当するとされています。
幇助犯は、刑法上「従犯」として位置づけられており、刑法第63条により、正犯の刑を必要的に減軽した範囲で処罰されます。
本記事では、「幇助と教唆、共同正犯の違い」をはじめ、刑法上の幇助犯が成立する要件や共犯関係の実務的な考え方を解説します。
さらに、万が一幇助犯の嫌疑をかけられて逮捕・捜査の対象となった場合に、刑事弁護や示談交渉を含め実務上どのような弁護活動・対応が考えられるのかについて、法律上の留意点を交えて詳しく解説します。
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幇助(ほうじょ)とは?|犯罪の実行を容易にする手助け行為のこと

幇助とは、正犯(犯罪の実行行為を直接行う者)による犯罪の実行について、凶器の用意などの「物理的幇助」や、犯行を励ましたり、犯行方法について助言したりする「心理的幇助」によって、正犯の犯行を容易にする行為を意味します。
実務上は、「幇助行為によって正犯の犯行(実行行為)が容易になったか」が重要な判断要素とされています。
刑法上、幇助犯は「従犯(じゅうはん)」に分類されており、自ら直接実行していない場合であっても、犯罪を手助けした者として狭義の共犯として処罰の対象となります。
例えば、空き巣に使うためのバールを事前に貸し出す行為や、詐欺に利用されると認識しながら銀行口座を譲渡する行為などは、間接的な支援行為であっても、幇助犯に該当すると判断される可能性があります。
特に昨今の特殊詐欺事案においては、口座譲渡行為そのものが犯罪収益移転防止法違反に抵触するだけでなく、詐欺罪の幇助犯として警察に逮捕・摘発されるケースも少なくありません。
重要なのは、その行為に正犯の犯罪を助ける認識や故意があり、実際に犯行を容易にしたと評価できるかという点です。
実務上は、行為と犯罪結果との関連性や因果関係なども踏まえて判断されます。
幇助犯と教唆犯の違い|異なる3つのポイント

幇助犯と混同されやすい共犯類型として、「教唆犯(きょうさはん)」があります。
どちらも「正犯」による他人の犯罪行為に間接的に関与する点では共通していますが、その関与の具体的な態様や法律上の成立要件、実際の量刑の考え方には実務上重要な違いが存在します。
幇助犯は、すでに犯罪の意思を有している者による犯罪実行を補助する立場であるのに対し、教唆犯は、もともと犯罪意思のなかった者に働きかけ、犯罪の実行を決意させる(犯意を形成させる)点に特徴があります。
ここでは、幇助犯と教唆犯の違いについて、①行為内容、②成立要件、③量刑の3つの観点から詳しく解説します。
① 行為内容の違い|犯罪実行の手助けか、犯意形成か
幇助と教唆の基本的な違いは、共犯として正犯の犯罪行為に対して「どのように関与したか」という具体的な行為内容にあります。
幇助とは、すでに特定の犯罪を実行する意思を有している正犯に対し、物理的または心理的な手段によってその実行行為を補助し、犯行を容易にする行為を指します。
例えば、強盗を決意している者に対して逃走用の車両を貸し与える行為などは、犯行準備や逃走支援として幇助に該当する可能性があります。
一方、教唆とは、もともと特定の犯罪を行う意思を有していなかった者に対して、そそのかすなどの働きかけを行い、新たに犯罪を実行する意思を生じさせ、その結果として実際に犯罪が実行されるに至る行為を指します。
例えば、知人に対して「あの家は留守がちで裕福だから、今空き巣(窃盗)をすれば簡単に大金を得られる」などと働きかけ、それによって犯意を抱いた知人が実際に窃盗を働いたケースなどは、教唆に該当する可能性があります。
② 成立要件の違い|犯行を容易にしたか、犯意を形成させたか
幇助犯と教唆犯では、成立要件にも明確な違いがあります。
幇助犯が成立するためには、その手助け・支援行為によって、正犯の実行行為や結果の発生が「物理的または心理的に容易になった」と客観的に評価できることが必要とされています。
一般的には、主観として正犯を支援する意図(幇助の故意)があったとしても、その行為が正犯の実際の犯行に対して実質的な影響を与えていない(因果関係が認められない)と判断される場合には、幇助犯の成立が否定される可能性があります。
これに対して教唆犯では、自身の教唆行為(働きかけ)によって相手方に初めて犯罪の意思が形成され、その結果として相手方が実際に犯罪の実行を決意し、かつ「実行に着手した」事実が求められます。
(もっとも、そそのかした相手が犯意を抱かなかったり、実際に犯罪の実行に着手しなかった場合には、通常は教唆犯は成立しません。)
つまり、教唆行為が相手方の犯意形成に影響を与え、その結果として犯罪実行に至ったかが重要な判断要素となります。
③ 刑罰の重さの違い|必要的減軽か、正犯と同等か
幇助犯と教唆犯では、量刑の考え方にも大きな違いがあります。
刑法第63条では、幇助犯(従犯)の刑は「正犯の刑を減軽する」と明記されており、法律上必ず減軽される(必要的減軽)仕組みになっています。
一方、刑法第61条に定められる教唆犯は、「正犯の刑を科する」と規定されているため、原則として正犯と同等の法定刑が適用されます。
このように、刑法上は、他人に犯罪を決意させる教唆犯のほうが、幇助犯より重い法的責任を負う仕組みとなっています。
幇助犯が成立するために必要な4つの条件

ある行為が幇助行為として認定され、行為者が幇助犯として処罰されるためには、刑法上定められた4つの構成要件(成立要件)を満たす必要があります。
具体的には、
- 幇助行為の存在
- 幇助の故意
- 正犯による犯罪の着手・実行
- 幇助行為と犯罪実行との因果関係
が重要な判断要素となります。
以下では、幇助犯の成立を左右する4つの構成要件について、裁判例や実務の考え方を交えてそれぞれ詳しく解説します。
条件1:正犯の犯罪実行を助ける幇助行為が存在する
まず、正犯による特定の犯罪(実行行為)について、物理的または心理的に支援する幇助行為が現実に存在することが必要です。
物理的な幇助とは、犯行に使用される凶器や車両などを提供し、正犯の犯罪の準備や実行を客観的に容易にする行為を指します。
心理的な幇助には、犯行計画に関する助言や、実行をためらう正犯を励まして犯行意思を維持・補強させる行為などがこれに該当します。
いずれの方法であっても、結果として正犯による犯罪実行を容易にしたと評価できる場合には、幇助行為として認められる可能性があります。
条件2:犯罪を手助けする認識と意思がある(幇助の故意)
幇助犯が成立するためには、主観的要件として幇助の故意が必要です。
これは、「自分の行為が正犯による特定の犯罪行為を容易にする」という事実を認識・認容したうえで、その行為をあえて行う主観的な意思があることを指します。
例えば、友人に車を貸す際、その車両が強盗に利用されることを認識していた場合には、幇助の故意が認められる可能性があります。
これに対し、犯罪に利用されることを認識・予見しないまま結果的に手助けしてしまったという「過失」にとどまる場合には、幇助の故意が認められないため、原則として幇助犯は成立しないと解されています。(過失による幇助の不処罰)。
ただし、確実な確信はなくとも「もしかしたら何らかの犯罪に使われるかもしれない」と予見しつつ、それをあえて容認して行為に及んでいた場合には、「未必の故意」があったと認定され、幇助犯が成立する可能性があるため注意が必要です。
条件3:正犯者が実際に犯罪へ着手・実行した
幇助犯は、正犯による犯罪の存在を前提として初めて成立する、従属性を有する共犯類型です。
そのため、事前にどれだけ手助けをしていたとしても、支援を受けた正犯が、実際に特定の犯罪の実行に着手していることが必要となります。
たとえ道具の提供などの幇助行為が完了していても、正犯が最終的に犯行を思いとどまり、実際の犯罪に着手しなかった(未遂にも至らなかった)場合には、原則として幇助犯は不成立となります。
ただし、行為そのものが別の独立した罪(予備罪や特別法違反など)を構成し、個別事情により別途処罰される余地はあるため、具体的な見極めには専門的な法律判断が必要となります。
なお、正犯が実行に着手したものの犯罪が未遂に終わった事案(未遂処罰規定がある罪に限る)においては、幇助者についても未遂罪の従犯として処罰される可能性があります。
条件4:幇助行為によって犯罪実行が容易になった(因果関係)
最後の要件として、幇助行為と正犯による犯罪実行との間に、法的な因果関係が認められることが必要です。
つまり、その支援行為によって正犯の犯行が容易化されたと評価できなければならないということです。
例えば、拳銃を提供して殺人を支援したつもりであっても、正犯がその拳銃を使用せず別の方法で犯行に及んだケースなど、提供行為と実際の犯行との関連性が乏しいと判断される場合には、幇助犯の成立に必要な因果関係が否定される可能性があります。
その場合、幇助犯は成立しません。
幇助犯にあたる可能性のある行為の具体例・ケース
幇助犯に該当し得る幇助行為は、多岐にわたります。
直接的に犯行へ関与していない場合であっても、間接的な支援行為によって正犯の犯罪を容易にしたと裁判所において評価され、幇助犯として刑事責任を問われるケースも少なくありません。
ここでは、どのような行為が法律上・実務上の幇助行為と判断される傾向にあるのかについて、警察の摘発事例や裁判例でみられる具体例を交えながら分かりやすく解説します。
凶器・犯行道具・犯行場所などを提供するケース
犯罪に利用されることを事前に認識しながら、その犯行のための凶器や道具、拠点となる場所を提供する行為は、実務における典型的な「物理的幇助」に該当します。
例えば、知人が強盗を計画していることを認識しながら拳銃やナイフを貸与する行為や、特殊詐欺グループに対して「かけ子」が電話をかけるための拠点としてマンションの一室を提供する行為などがこれに該当します。
このような行為は、提供した物や場所が犯罪遂行に直接関与するため、実務上も幇助犯として刑事責任を問われる可能性があります。
犯行現場への送迎や逃走支援を行うケース
正犯を自動車などで犯行現場まで送迎したり、犯行後の逃走を補助したりする行為も、幇助犯に該当する可能性があります。
例えば、友人が空き巣(侵入窃盗)を行うことを認識しながら、車で犯行現場まで送り届けたうえで、犯行後に再び車へ乗せて逃走を支援するケースなどが該当します。
このような場合、運転手自身が直接窃盗を実行していなくても、犯行遂行や逃走を容易にしたと評価される可能性があり、幇助犯として刑事責任を問われることがあります。
幇助犯の疑いをかけられた場合は早めに弁護士へ相談を
身に覚えがないにもかかわらず警察などの捜査機関から幇助犯の嫌疑(疑い)をかけられた場合や、自身の軽率な行動が刑事上の幇助行為と評価されるのではないかと不安を感じた場合には、できるだけ早い段階で刑事事件の弁護実務に精通した弁護士へ相談することが重要です。
刑事手続きにおいては、逮捕・勾留直後を含む捜査初期の対応や、取調べにおける供述調書の内容が、その後の検察官による起訴・不起訴の処分や、裁判結果に大きな影響を与えることがあります。
弁護士へ相談することで、法的観点から適切なアドバイスを受けられるほか、不起訴処分の可能性を踏まえた弁護活動や、逮捕・勾留された場合の早期の身柄解放に向けた対応などを進めてもらえる場合があります。
故意がなかったこと(故意の不存在)を客観的証拠で主張する
前述の通り、刑法上において幇助犯が成立するためには、主観的構成要件として「幇助の故意」が必要とされています。
そのため、幇助犯の疑いを受けた場合には、犯罪を助ける認識や犯意がなかったことを具体的に主張することが重要なポイントとなります。
弁護士は、本人からの詳細な事情聴取や供述内容の整理を踏まえながら、故意の不存在(犯罪事実の不認識)を客観的に裏付けるための証拠の収集・精査を行います。
例えば、友人とのメールやSNSでのやり取り、通話履歴などを精査し、「犯罪に利用されるとは認識していなかった」ことについて、捜査機関や裁判所に対して客観的に主張していきます。
早期の示談交渉が処分判断に影響する可能性がある
客観的な事実関係から幇助行為を認めざるを得ない事案であっても、財産犯など被害者が存在する刑事事件では、早期の被害弁償や示談交渉を迅速に進めることが重要となります。
通常、捜査機関は加害者本人に被害者の連絡先を開示しませんが、弁護士であれば守秘義務等を前提に連絡先を取得できる場合もあり、代理人として誠実に被害者側と交渉を行い、適切な示談金(被害弁償)の支払いを通じて示談の成立を目指すことが可能です。
被害者側から加害者を許すという「宥恕(ゆうじょ)文言」付きの示談が成立した場合には、検察官が「当事者間で一定の解決が図られている」と評価し、不起訴処分の判断において有利な事情として考慮される可能性があります。
不起訴処分となった場合、一般的には前科は付きません。
ただし、捜査対象となった事実自体が「前歴」として扱われる場合はあります。
刑事事件の示談交渉について、詳しくは以下の記事をご参照ください。
刑事事件の示談を弁護士に依頼するメリットや示談の重要性を解説
逮捕された場合でも早期の身柄解放を目指すことができる
万が一、特定の犯罪の幇助容疑で警察に逮捕された場合には、弁護士は逮捕から勾留決定までの最大72時間という制限時間内に、検察官による勾留請求の回避や、裁判所に対する早期の身柄解放に向けた弁護活動を行います。
具体的には、捜査機関や裁判所に対し、「逃亡や証拠隠滅のおそれがない」ことについて、身元引受人の存在や生活状況、本人の反省状況などの事情を示しながら主張していきます。
こうした弁護活動により、裁判官が検察官の勾留請求を却下したり、万が一勾留が決定した場合でも、弁護人が提起した準抗告が認められたりすることで、身柄拘束から早期に解放(釈放)される余地が生じます。
早期に社会復帰できれば、仕事や学業、家庭生活などへの影響をできる限り抑えやすくなるため、早期の身柄解放には大きな意味があります。
幇助に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、幇助犯やそれに関する刑事責任・処罰について、実務上多くの方が疑問や不安に思いやすいポイントをQ&A形式で詳しく解説します。
Q. 犯罪と知らずに手伝ってしまった場合も罪になりますか?
自分の行為が他人の犯罪行為に加担していると認識せずに行った手助け(過失行為)については、法律上「故意」が認められないため、通常は幇助犯として処罰されません。
幇助犯が成立するためには、自分の行為が他人の特定の犯罪実行を容易にするという認識、すなわち「幇助の故意」が必要です。
例えば、友人に頼まれて荷物を運搬した際、その荷物が盗品であることを認識していなかった場合には、原則として故意が否定されるため、窃盗の幇助犯には該当しないと考えられます。
ただし、客観的状況から「犯罪に関わる怪しい荷物かもしれない」と予見できた場合は、未必の故意が認定される余地もあるため注意が必要です。
Q. 実行犯が捕まっていなくても幇助犯だけで罪に問われますか?
はい。実行犯(正犯)が逮捕・起訴されていない場合であっても、あるいは逃亡中である場合であっても、手助けをした幇助犯のみが先に刑事責任を問われ、処罰される可能性は実務上あります。
正犯による犯罪(実行行為)が現実に実行されたという客観的な事実が認められる場合には、幇助犯は成立し得ると考えられています。
必ずしも正犯の身柄が警察に確保されていることや、正犯が有罪判決を受けていることまでは必要ではありません。
そのため、警察や検察の捜査結果として正犯の氏名や所在が特定に至らなかった場合であっても、特定の犯罪行為が存在したこと、および自身の幇助行為がその犯行を容易にしたという因果関係が証拠上認められれば、幇助に関与した人物のみが検察官に起訴され、刑事裁判で処罰されるケースが実務上想定されます。
Q. 会社の業務命令が結果として犯罪の幇助になった場合はどうなりますか?
たとえ上司や会社からの業務命令(指示)であったとしても、その行っている業務や行為が他人の犯罪への加担・手助けにあたると認識しながら従った場合には、幇助犯として刑事責任を問われる可能性があります。
「会社の指示だった」という理由だけで、当然に刑事責任を免れるわけではありません。
一方で、会社側から事情を隠されるなどして、違法性を認識しないまま業務を遂行していた場合には、原則として故意が否定され、幇助犯は成立しないと考えられます。
まとめ
幇助とは、他人による犯罪実行を容易にする行為であり、刑法上は「従犯」として共犯処罰の対象となります。
軽率な気持ちで行った手伝いであっても、結果として犯罪への加担と認定される可能性があります。
幇助の疑いを受けた場合には、故意の有無や示談交渉、供述対応などが重要なポイントとなるため、早い段階で弁護士へ相談し、適切な対応を検討することが望ましいといえます。
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コラム監修者
RUI SATO
所属:代表(東京オフィス)
明治大学付属中野高校卒業、明治大学法学部・法科大学院修了。2012年弁護士登録(東京弁護士会)、2016年ネクスパート法律事務所を創設。一般民事・企業法務に加え、ブロックチェーン分野にも注力し、海外法人設立支援業務などにも取り組む。AIを活用した弁護士業務の改善・事業開発に取り組み、一般社団法人 イノベーション法務支援機構代表理事就任。公正取引委員会・中小企業庁講師、日弁連代議員、東京弁護士会常議員等を歴任。