更新日:2026年7月27日 (月)

公開日:2026年7月27日 (月)

刑事事件で被害者に示談を拒否されたらどうなる?諦める前の対処法

刑事事件で被害者に示談を拒否されたらどうなる?諦める前の対処法 刑事事件で被害者に示談を拒否されたらどうなる?諦める前の対処法

サマリー

刑事事件の被疑者・加害者となってしまった場合、被害者との間で示談が成立するかどうかは、その後の刑事手続に大きな影響を与える重要な要素です。

示談が成立した場合には、不起訴処分の獲得や刑の軽減につながる可能性があります。
一方で、被害者から示談を拒否された場合でも、それだけで起訴や実刑が決まるわけではありません。

もっとも、示談が成立していないことは、被害回復が十分に図られていない事情として評価される可能性があり、検察官の起訴判断や裁判所の量刑判断に一定の影響を与えることがあります。

この記事では、刑事事件において示談が不成立となった場合に想定される影響や、そのような状況でも処分の軽減を目指すために取り得る対応策について、実務上の視点を踏まえて分かりやすく解説します。

示談不成立が刑事事件に及ぼす3つの影響

刑事手続において示談が成立しない場合、被害回復が十分に図られていない事情として評価されることがあり、検察官や裁判所の判断に一定の影響を及ぼす可能性があります。

そもそも示談とは、加害者側が被害者に対して真摯に謝罪し、民事上の損害賠償を行うことで、被害回復に努めたことを示す重要な事情の一つです。

ただし、処分は示談の有無だけで決まるものではなく、事件の悪質性、前科前歴、反省状況なども含めて総合的に判断されます。

①起訴されて前科がつく可能性が高まる

検察官が起訴・不起訴を判断する際、被害者との示談成立は重要な考慮要素となります。

事案の軽重にもよりますが、すでに示談が成立している場合、実質的な被害回復が図られている点や、被害者側の処罰感情が宥恕(和らいでいること)を示す事情として評価され、不起訴処分となる可能性が一般的に高まる傾向があります。

一方で、示談が不成立の場合には、客観的な被害回復がなされておらず、被害者側の処罰感情が依然として強いと評価されやすいため、起訴判断に影響する要素の一つとなることがあります。

起訴されて有罪判決(罰金刑を含む)を受けた場合には前科がつくため、就職・転職や資格への影響を心配する方も少なくありません。

②執行猶予がつかず実刑判決になる可能性がある

起訴後の刑事裁判では、示談の有無が量刑判断に影響することがあります。

示談成立は、被告人が自らの罪を認め、可能な限りの被害回復・金銭的賠償を行ったという事実が裁判所に評価されやすく、刑の執行を猶予する「執行猶予付き判決」の獲得に向けて、被告人に有利な情状として考慮される場合があります。

これに対し、示談が成立していない場合には、被害回復が十分でないと判断される可能性もあり、量刑上不利に考慮されることがあります。

特に重大事件では、示談の有無が実刑か執行猶予かを判断する重要な事情の一つとなることがあります。

③刑事事件とは別に民事訴訟で損害賠償を請求される可能性がある

刑事事件の示談では、通常、民事上の損害賠償問題も含めて解決するケースが多く見られます。

そのため、双方が合意して作成される示談書には、通常、「本件に関し、当事者間に他に債権債務がないことを確認する」といった清算条項が盛り込まれるのが一般的です。

しかし、示談が成立しなければ、民事上の損害賠償問題は未解決のまま残ることになります。

そのため、刑事手続き終了後に、被害者側から別途損害賠償請求訴訟を提起される可能性があります。
その結果、示談時に支払う予定だった金額を上回る損害賠償や訴訟対応の負担が生じることもあります。

刑事事件の示談交渉について、以下の記事で詳しく解説しています。
示談交渉とは?刑事事件の示談の流れや注意点・示談金相場を徹底解説

なぜ被害者は示談を拒否する?示談交渉が難航する4つの主な理由

示談交渉が成立しない理由は、必ずしも示談金の金額だけにあるわけではありません。

被害者の精神的苦痛や加害者への不信感など、金銭では解決できない事情が大きく影響することもあります。

刑事事件における示談交渉が難航・決裂する背景には、被害者側が被った甚大な精神的苦痛や加害者に対する処罰感情、あるいは損害賠償(被害回復)に対する捉え方の相違など、様々な事情が存在します。

加害者側が、被害者感情や事件の事情を十分に考慮せず、自己の刑事処分の軽減ばかりを求めて一方的に示談交渉を迫ろうとした場合、かえって被害者の反発や不信感を招き、事態が悪化する可能性があります。

被害者がなぜ示談を拒否するのか、その心理や背景事情を理解することは、適切な示談対応や円滑な交渉方針を検討するうえで重要です。

ここでは、被害者が示談を拒否する代表的な理由について解説します。

①加害者を許せないという処罰感情が強い

被害者が事件によって被った精神的・身体的苦痛が大きい場合、「お金で解決する問題ではない」「加害者には法に基づく厳しい刑事処分を受けてほしい」といった強い処罰感情を抱くことがあります。

特に、性犯罪や悪質な暴行・傷害事件では、被害者の怒りや悲しみが大きくなる傾向があります。

このようなケースでは、加害者側が謝罪や高額な示談金の提示を行ったとしても、感情的に許すことができず、示談に応じたくないと考える被害者も少なくありません。

ただし、事件直後は被害者の感情が整理できておらず、当初は示談を拒否していたものの、一定期間経過後に示談へ応じるケースもあります。

②提示された示談金の金額に納得できない

被害者が実際に被った財産的・精神的損害に対し、加害者側から提示された示談金の額が被害内容に見合わない、あるいは不十分であると感じた場合、被害者が示談を拒否することがあります。

被害回復の対象には、治療費や休業損害などの直接的な財産的損害(実費)だけでなく、精神的苦痛に対する慰謝料などの損害賠償も含まれます。
示談金は事件類型や被害内容によって大きく異なるため、一般的な相場を大きく下回る提示では交渉が進まないケースもあります。

したがって、事件内容や被害状況に応じた適正な賠償額を提示することが、示談交渉を進めるうえで重要な前提となります。

③加害者本人と直接会ったり連絡したりしたくない

事件によって受けた恐怖や精神的ショックにより、加害者本人と顔を合わせたり、直接話をしたりすること自体に強い抵抗感を抱く被害者は少なくありません。

加害者側にどれほど純粋な謝罪や被害弁償の意図があったとしても、加害者(あるいはその家族)からの直接連絡は被害者にとって大きな精神的負担となり、かえって恐怖心を強める可能性があります。

このような状況では、加害者側がどれだけ誠意を尽くそうと試みても交渉の糸口が見つからず、被害者が話し合い自体を避けたいと考え、示談を拒否するケースがあります。
そのため、実務上は中立的な第三者である弁護士を代理人に立てることが推奨されます。

④加害者の謝罪に誠意が感じられない

示談交渉の場において、加害者の謝罪の態度や言葉に十分な反省や誠意が感じられない場合、被害者が示談に応じる意思を失うケースがあります。

例えば、謝罪をしながらも言い訳を繰り返したり、自身の刑事処分を軽くすることばかりを気にしているような態度が見られたりすると、被害者は「本当に反省しているとは思えない」と感じる傾向があります。

形式的な謝罪のみでは、被害者の不信感を強め、結果として示談交渉の決裂につながる可能性があります。
実務上は、弁護士を通じて謝罪文を作成・送付することで、被害者に反省の意思を伝えられる場合もあります。

被害者感情に配慮し、真摯な反省の情を適切な法的手続きの中で伝えるためには、弁護士のアドバイスのもとで慎重に対応を進めることが重要です。

もっとも、被害者が一度示談を拒否したからといって、今後一切示談が成立しないとは限りません。

示談を拒否した理由によっては、時間の経過や交渉方法の見直し、適切な賠償提案などによって、後に示談が成立するケースもあります。

示談を拒否された後はどうする? 4つの対処法

被害者から一度示談を拒否されたとしても、その時点で直ちに全ての示談交渉の可能性がなくなるわけではありません。

加害者として真摯に反省の意を示し、被害回復のために努力を続ける姿勢は、検察官による処分判断や裁判所の量刑判断において考慮される余地が残されています。

ここでは、示談を拒否された後に検討すべき具体的な対処法について解説します。

①弁護士を通じて謝罪文を提出し、反省の気持ちを伝える

被害者感情への配慮から直接会って謝罪することが難しい場合でも、謝罪文を通じて反省と謝罪の気持ちを伝えることは可能です。

手紙であれば、被害者側は自身の精神的なタイミングに合わせて内容を確認できるため、加害者側と直接対面することによる多大な恐怖心や精神的負担を回避しやすくなるというメリットがあります。

謝罪文には、事件に対する心からの反省、被害者への謝罪の気持ち、そして二度と過ちを繰り返さないという更生への意思を、自分の言葉で具体的かつ誠実に綴ることが重要です。

なお、作成した謝罪文を直接郵送等することは被害者をさらに追いつめるリスクがあるため、弁護士を通じて渡してもらうのが望ましいでしょう。

②示談金の増額や支払い方法など条件を見直して再交渉する

示談金の金額面が原因で交渉が決裂した場合、提示額が被害の実態や慰謝料相場などに見合っているかを再度検討する必要があります。

弁護士に相談し、適切な賠償額を算出したうえで、再提案することが有効となる場合があります。

このように、被害者側の個別事情や要望に寄り添った条件を再提示することで、一度は拒絶された示談交渉の話し合いが再開へと向かう可能性が生じます。

もっとも、被害者が示談を拒否する理由は金銭面だけとは限りません。

加害者に対する強い処罰感情や精神的苦痛が大きい場合には、示談金を増額しても示談に応じてもらえないケースがあります。

③法務局に示談金を預ける「供託」という手続きを行う

被害者が示談金の受け取りを拒否する場合や、被害者の連絡先が分からず賠償金を支払えない場合には、法務局に金銭を預ける「供託(きょうたく)」という手続きを利用できる場合があります。

これは、損害賠償金に相当する金銭を法務局に寄託することにより、加害者側に賠償の意思と支払い準備があることを客観的に示す制です。

ただし、供託手続きを完了したからといって、被害者側から刑事上の宥恕(許し)を得たことにはならず、実務上も「示談成立」と同等の効果として扱われるわけではありません。

しかし、何もしない場合に比べて、被害回復に向けた具体的な努力を示す事情として、検察官による起訴・不起訴の判断や、裁判所の量刑判断において考慮される可能性があります。

④弁護士会や慈善団体に金銭を寄付する「贖罪寄付」を検討する

被害者が供託金の受け取りに必要な手続きを拒絶している場合や、被害者の氏名・住所が完全非開示のため法務局への供託手続き自体が実務上進められないといった場合には、「贖罪寄付(しょくざいきふ)」を検討することも選択肢の一つです。

これは、犯罪被害者支援団体や交通遺児育英会などの公益性のある団体や慈善団体に金銭を寄付することで、反省の意を示す方法です。

贖罪寄付を行った事実は、反省の情を示す一事情として、検察官や裁判所に考慮されることがあります。

ただし、刑事実務上は被害者への直接的な賠償や示談成立が優先して重視される傾向にあるため、贖罪寄付は示談や供託が困難な場合の補完的手段として位置づけられます。

また、贖罪寄付のみで不起訴処分や執行猶予が保証されるわけではありません。

示談交渉を弁護士に依頼する3つのメリット

被害者側から一度示談を拒否されたという厳しい状況を打開するためには、刑事事件に詳しい弁護士へ交渉を依頼することが有効となる場合があります。

被害者が一度示談を拒否しているケースほど、加害者本人による対応には限界があるため、早期に弁護士へ相談することが重要です。

弁護士へ依頼することで、示談成立の可能性を高められるだけでなく、最終的な刑事処分において有利な事情として主張するための様々な弁護活動が期待できます。

①弁護士が間に入ることで被害者が交渉に応じやすくなる

加害者本人との接触を拒んでいる被害者であっても、弁護士が代理人として交渉の窓口となることで、話し合いに応じてもらえるケースは少なくありません。

弁護士は被害者感情に配慮しながら、冷静かつ客観的な立場で示談交渉を進めることができます。

これにより、加害者本人では伝えきれなかった謝罪の気持ちや賠償の意思が被害者に伝わりやすくなり、一度は途絶えた交渉が再開される可能性があります。

②検察官を通じて被害者の連絡先を入手できる可能性がある

そもそも被害者の連絡先が分からなければ、示談交渉を開始すること自体が困難になります。

警察や検察は、被害者保護の観点から、原則として加害者本人に被害者の連絡先を開示しません。
しかし、弁護士が正式に代理人として就任した場合には、検察官に対して被害者連絡先の照会を行える場合があります。

もっとも、被害者が連絡先の開示を希望しない場合には、弁護士が就任していても開示されないことがあります。

検察官が被害者に対して弁護士へ連絡先を伝えてよいか確認し、被害者の同意が得られた場合には、「弁護士限り」という形で連絡先が開示されることがあります。

これは、示談交渉を開始するための重要な第一歩となります。

③示談不成立でも処分軽減に向けた弁護活動が可能

万が一、弁護士が尽力しても示談が成立しなかった場合でも、直ちに不利な結果(実刑など)が確定するわけではありません。

弁護士は、示談交渉の経緯や供託、贖罪寄付など、加害者が行った反省や被害回復に向けた具体的な行動を意見書として整理し、検察官や裁判所へ提出します。
また、加害者の反省の深さ、家族による監督体制の構築、再犯防止策などを具体的に主張することで、有利な情状として考慮してもらえるよう働きかけます。

こうした弁護活動によって、検察官の処分判断や裁判所の量刑判断において、有利な事情として考慮される可能性があります。

「刑事 示談を拒否されたらどうなる?」に関するよくある質問(FAQ)

ここでは、示談に応じてもらえない状況に関して寄せられることが多い質問と、その回答をまとめています。

供託すれば、示談が成立したのと同じ効果がありますか?

原則として、同じ効果が認められるわけではありません。

示談は被害者の許し(宥恕)を得たことを意味する一方、供託は加害者側による賠償意思を示す手続きであるためです。

しかし、被害回復の意思と努力を客観的に示す事情として、何もしない場合と比較すれば、検察官の処分判断や裁判所の量刑判断において、有利な情状として考慮される可能性があります。

供託が利用できるかどうかは事案によって異なるため、弁護士へ相談することが重要です。

被害者の連絡先が分かりません。どうすれば示談交渉を始められますか?

まずは刑事事件に詳しい弁護士へ相談することを検討しましょう。

捜査機関は、被害者のプライバシー保護の観点から、原則として加害者本人に連絡先を開示しません。
しかし、弁護士であれば、検察官へ照会を行い、被害者本人の同意を条件として、連絡先を開示してもらえる可能性があります。

示談交渉を進める上では、早い段階で弁護士へ相談することが重要になります。

示談が成立しなければ不起訴になることはありませんか?

いいえ、示談が成立していないからといって、必ず起訴されるわけではありません。

示談の成立は、検察官が起訴・不起訴を判断する際の重要な考慮要素の一つですが、それだけで処分が決まるものではありません。

例えば、

    初犯であること
    事件について深く反省していること
    被害が比較的軽微であること
    供託など被害回復に向けた努力を行っていること
    再犯防止策を講じていること
    などの事情が総合的に考慮され、不起訴処分となるケースもあります。

    もっとも、示談が成立している場合と比較すると、被害回復や被害者感情の面で有利な事情が少なくなるため、不起訴処分を獲得するハードルは高くなる傾向があります。

    まとめ

    刑事事件で被害者に示談を拒否された場合、事案によっては起訴や実刑判決のリスクが高まるなど、加害者にとって厳しい状況となる可能性があります。

    しかし、被害回復に向けた対応を行わなければ、反省や更生への取り組みが十分に伝わらない可能性があります。

    一度示談を拒否された後でも、弁護士を通じて謝罪の意を伝えたり、示談条件を見直したりするほか、供託や贖罪寄付といった代替的な対応を講じることで、反省や被害回復への姿勢を示すことは可能です。

    どのような状況であっても、最後まで誠意を持って対応を続けることが、事件の適切な解決に向けて重要となります。

    ネクスパート法律事務では、刑事事件に強い弁護士が多数在籍しています。
    初回相談は、30分無料です。
    ぜひ一度ご相談ください。

コラム監修者

Shunsuke Teragaki

Shunsuke Teragaki

所属:代表(東京オフィス)

広島県広島市出身。修道高校、慶應義塾大学商学部、青山学院大学法科大学院を卒業後、新司法試験に合格し最高裁判所司法研修所を修了。弁護士として法曹界に入り、個人・法人問わず幅広い分野の相談・交渉に取り組む。ネクスパート法律事務所の代表弁護士として、依頼者に最適な見通しと戦略的な解決策を示すことを信条とし、丁寧かつ粘り強い対応で信頼を築いている。

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