債務整理をするための条件とは?種類別に基準を解説 - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

債務整理をするための条件とは?種類別に基準を解説

債務整理をするにはどのような条件があるのでしょうか?

この記事では、主に以下の点を解説します。

  • 債務整理の種類を簡単に説明
  • 各手続きをするための条件
  • 各手続きが適していないケース

ご自身が利用できる手続きと、向いていない手続きがわかる内容になっていますので、ぜひ最後までご参照ください。

債務整理の種類

はじめに、債務整理の代表的な手続きを4種類解説します。借金の額や収入に応じて、適切な手続きを選びましょう。

  1. 任意整理
  2. 個人再生
  3. 自己破産
  4. 特定調停

任意整理

任意整理は、将来利息(合意日以降に発生する利息)をカットし、借金減額を図る手続きです。

債権者と債務者が直接交渉し、合意した内容で借金を返済します。

弁護士に手続きを依頼した場合、利息制限法に従い再計算した金額をもとに、収入の範囲内で返済計画を立てるのが一般的です。

裁判所は関与しない手続きです。

個人再生

個人再生は、借金を減額したうえで収入に見合った返済計画を立てて借金を返済する手続きです。返済計画が裁判所に認められれば、原則3年(最大5年)で返済をします。

自宅不動産を処分せずに手続きできる場合もあります。

任意整理よりも借金の減額割合が高いことが特徴です。

また、自己破産による資格制限・職業制限の対象となる方も利用できます。

個人再生をするには裁判所への申立てが必要です。

自己破産

自己破産は、借金をすべて免除してもらう手続きです。

自己破産が裁判所に認められ免責決定を受けると、借金が免除されます(非免責債権を除く)。

借金が原則として全額免除される代わりに、破産者が保有する一定額以上の財産や資産は処分され、債権者に配当されます。

自己破産も、裁判所に申立てを行う手続きです。

特定調停

特定調停とは、裁判所が債務者と債権者を仲裁して和解を促す手続きです。

裁判所の調停委員が、利息制限法に従い債務の額を確定し、債務者本人の収入等を考慮し支払い可能な和解案を調整します。

特定調停では、当事者本人が出頭するのが原則です。手続きが複雑ではないため、自分で申し立てることも可能です。

特定調停も、裁判所に申立てを行う手続きです。

 

各手続きのメリット・デメリットや費用の相場等は、下記関連ページをご確認ください。

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任意整理をするための条件や基準とは?

では、任意整理をするための条件や基準を見ていきましょう。

任意整理ができる条件・基準

借金の額が比較的少なく、安定した収入が見込めること

任意整理は、将来利息をカットすることによる減額が見込まれますが、原則として元本と経過利息の返済が必要です。

このため、債務額が年収の範囲内に収まり、安定した収入が見込めることが前提となります。

借金を返済した履歴があること

借金を一度も返済していない場合や取引期間が短い場合、債権者が任意整理の交渉に応じてくれない可能性があります。債権者の立場からすると、借金を返済できないと分かっていながら、それを隠して借金を申し込んだと捉えられるからです。

任意整理では、債権者の同意が必要不可欠です。

返済の確実な履行のため、債権者は債務者に返済能力や意思があることを重視します。

一度も返済をしていない借金について任意整理をする場合には、一定期間返済の実績を作ることも必要です。

分割返済額の限度額が収入の2~3割(月額)であること

任意整理は、無理のない範囲で、収入に見合った分割返済額を決定する必要があります。

分割返済の限度額は、1ヵ月の手取収入額の2~3割(収入から最低生活費を差し引いた金額)以下におさえることも重要です。

分割返済年数が3年~5年以内であること

一般的に、任意整理による分割返済年数の目安は3年~5年(分割回数36回~60回)です。

家族・親族等の援助が期待できて、返済のためのまとまった原資を確保できる場合には、一括返済も可能です。

任意整理に適していないケース

反対に、上記の条件や基準に満たない次のような場合には、任意整理ができないことがあります。

借金の額が年収の2倍を超える場合

任意整理では、大幅な借金の減額が見込めないため、年収の2倍を超えるような多額の借金を抱えている場合は、他の手続きを検討しましょう。

分割返済額が収入の3割を超える場合

任意整理は、無理のない返済方法で生活を立て直すことが目的です。分割返済額が収入の3割を超える場合は、最低限必要な生活費等を確保できず、途中で破綻する可能性が高いでしょう。

分割返済年数が5年を超える場合

5年を超える長期の返済計画は、途中で破綻する可能性が高く、債権者が難色を示します。交渉が難航、あるいは合意を得られない場合があります。

借金を一度も返済していない場合

一度も返済の実績がない場合、債権者が交渉に応じないことや、将来利息のカットなどの返済条件の変更に応じないことがあります。返済の見込みがないのに借金をする行為は、

詐術による借入等として、他の債務整理でも、手続きが困難になるおそれがありますので、注意しましょう。

生活保護を受給している場合

生活保護は、憲法の生存権に基づいて、生活に困窮した人が最低限の生活を営むために活用する目的で支給されています。そのため、これを借金の返済などに充てることは適切ではない、と考えられています。生活保護を受給している方は、借金そのものが免責される自己破産を検討するのが一般的です。

任意整理の条件について、さらに詳細な解説は下記関連記事をご覧ください。

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個人再生をするための条件や基準とは?

次に、個人再生について見ていきましょう。

個人再生をするための条件や基準は、以下のとおりです。

個人再生ができる条件・基準

小規模個人再生または給与所得者等再生(以下、併せて「個人再生」といいます。)の利用条件・基準について解説します。

小規模個人再生と給与所得者再生の手続きの違いは、関連記事をご参照ください。

個人の債務者であること

個人再生は、個人の債務者(個人事業主を含む)を対象とした手続きです。

将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること

個人再生は、借金を概ね5分の1に圧縮できます(借金の総額が100万円未満の場合を除く)。

ただし、再生計画に沿った弁済を続けなくてはならないため、継続または反復した収入がなければ個人再生できません。

借金の総額(住宅ローンを除く)が5,000万円以下であること

借金の総額が5,000万円を超える場合には個人再生はできません。

個人再生では、住宅ローン及び抵当権など担保権の実行により回収できる額を除いた借金の総額が5,000万円を超えないことを手続開始の要件としています。これを5,000万円要件といいます。

継続的収入の変動幅が小さいと見込まれること(給与所得者等再生の場合)

給与所得者等再生の場合は、前記の3つの条件に加えて、給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと認められることが必要です。

個人再生に適していないケース

上記記載の個人再生の条件・基準を満たしていない場合は、個人再生以外の債務整理を検討しましょう。

借金の総額が5,000万円を超える場合

借金の総額が住宅ローン等を除いて5,000万円を超える場合は、個人再生を利用できません。自己破産を検討しましょう。

借金の総額が100万円未満の場合

個人再生において返済する金額は、法律で100万円以上と定められています。よって、借金の総額が100万円未満の場合は、個人再生を選択するメリットがありません。

安定した収入がない場合

個人再生では、再生計画案に基づいた確実な債務の履行が必須条件となります。継続的かつ安定した収入がない場合は、申立てを行っても裁判所に棄却される場合があります。

換価価値のある財産が多い場合

個人再生には、持っている財産以上の金額を返済する(清算価値補償原則)というルールがあります。このため、個人再生を利用する人が、借金の額以上の財産(不動産、生命保険、退職金等)を保有している場合は、返済額が増額されるので、他の債務整理を検討した方がよいかもしれません。

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自己破産をするための条件や基準とは?

では、自己破産はどうでしょうか。

ここでは自己破産をするための条件・基準を解説します。

自己破産ができる条件・基準

自己破産ができる条件・基準は以下のとおりです。

支払不能の状態にあること

支払不能とは、次の状態をいいます。

  1. 返済能力が欠乏した状態
  2. 返済期に返済すべき債務を返済できない
  3. 継続的に返済できないことが客観的に明らかな状態

支払不能の判断は、裁判所が行うものであり、自分で「払えない」と思うだけでは認められません。

支払不能の判断に関する明確な基準は法的に示されていませんが、債権者の数、借金の総額、毎月の返済額などに対して、債務者の返済能力、同居の家族の収入と債務などを考慮して判断されます。

免責不許可事由に該当しないこと

免責不許可とは、借金の返済免除を受けられないということです。免責不許可事由には、浪費やギャンブルで支払不能な借金をした、嘘をついて借りた、財産を隠したなどのケースがあります。

免責不許可事由に該当するケースでも、その事実が軽微である、破産者の経済的更生を助けるため免責が必要であるなどの特段の事情がある場合には、裁判所が裁量によって、免責を許可する場合もあります。

免責不許可事由に該当するか、該当するが裁量免責が認められる事情があるかについては、裁判所が判断します。

ご自身で懸念している事由があっても、裁量により免責を得られるケースもありますので、まずは弁護士に相談されるとよいでしょう。

自己破産に適していないケース

自己破産に適していないケースは次のとりです。

借金の大半が非免責債権であるとき

非免責債権とは、自己破産をしても免責されない債権をいいます。

具体的には、主に次の債権です。

  • 税金
  • 公共料金
  • 不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 婚姻費用
  • 養育費
  • 罰金

仮に、借金の総額が500万円で、そのうち400万円が税金や養育費の未払分であったとき、自己破産をしても400万円については免責を受けられません。よって、自己破産以外の解決方法を検討する必要があります。

前回の免責許可決定確定日から7年経過しない場合

一度目の免責許可決定の後、その確定日から7年を経過しないと再度の免責許可の申立てが認められないのが原則です。

資格制限・職業制限の対象となる方

自己破産をすることによって、一定期間、制限が生じる資格や職業があります。代表的な資格・職業は、士業(弁護士、税理士、行政書士、社会保険労務士等)、警備員、生命保険募集人などです。

具体的には、自己破産を申し立ててから、免責許可決定がなされるまでの間、資格や職業が制限されます。

免責許可決定がなされた後は、元通り資格を用いた仕事や職業を行うことができますが(「復権」といいます。)、一定期間仕事ができなくなり収入が途絶えるため、生活再建が困難となる場合もあります。自己破産をするタイミングや、自己破産以外の債務整理で手続きできないかを検討する必要があります。個別の事情については弁護士に相談することをおすすめします。

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特定調停をするための条件や基準とは?

最後に、特定調停をするための条件や基準を解説します。

特定調停ができる条件・基準

特定調停ができる条件・基準は次のとおりです。

借金の額が比較的少なく、安定した収入が見込めること

任意整理と同様に、履行可能な借金の返済計画を示さなければ調停は成立しません。また、将来利息のカットはされても、元本と経過利息は返済しなければなりません。継続的な返済をするため、安定した収入を得る必要があります。

期日への出頭や書類の準備を行うことができる

通常、特定調停は、債務者本人が自ら裁判所に申し立てを行います。申立てに必要な用紙は簡易裁判所に用意されており、債務者本人で対応ができるよう工夫されています。

申立てより1ヵ月くらいの間で調停期日が指定され、期日への出頭が必要です。

負債・返済状況、資産状況、債権者一覧表等を可能な限り用意し、正当な権利の主張、生活の実態の説明ができるよう準備が必要です。

分割返済年数が3年~5年以内であること

分割返済期間は原則3~5年です。収入に見合わない多額の分割返済額では調停委員が申立ての取り下げを促すこともありますので、無理のない返済計画の検討が必要です。

特定調停に適していないケース

特定調停に適していないケースは次のとおりです。

平日に裁判所に出頭することができない

仕事の都合で平日に裁判所に行けない場合、必要書類を自分で準備することができない場合には、他の債務整理手続きの検討をおすすめします。

もちろん、特定調停も弁護士に依頼することも可能ですが、弁護士に依頼する場合はあえて裁判所を介した手続きを取る必要がないため、特定調停と同じ効果が得られる任意整理を検討するのが良いでしょう。

借金の額が年収の2倍を超える場合

将来利息のカットだけでは、大幅な借金の減額が見込まれません。そのため、年収の2倍を超える多額の借金を抱えている場合は、他の手続きによる債務整理を検討するとよいでしょう。

債務整理ができない債権

自己破産に適していないケースでも解説したとおり、非免責債権は、減額や免除の対象となりません。

  • 税金、公共料金や社会保険料
  • 悪意・重大な過失による不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 婚姻費用・養育費・慰謝料等
  • 雇用関係に基づいて生じる請求権等
  • 罰金
  • 自己破産において債権者一覧表に記載していなかった債権

などは、債務整理を行っても、返済義務が残ります。

なお、非免責債権であっても、交渉により分割返済や支払猶予が認められる場合があります。また、損害賠償請求権や慰謝料については過失がない場合は免責が認められる余地もあります。

ご自身のケースではどうなるか分からない場合、一人で悩まず、まずは弁護士にご相談ください。

まとめ

債務整理をするための条件や基準は以上のとおりです。

借金の総額、収入、持っている財産等の個々の事情によってどの手続きが最適か、弁護士であれば判断が可能です。

当事務所では、お一人お一人の事情に応じた解決を図り、皆様がいち早く借金から解放された生活に戻れるよう尽力いたします。

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