勾留とは?|逮捕との違いや釈放される方法等も解説
逮捕と違い、勾留という言葉は聞き慣れないのではないでしょうか?逮捕との違いも分かりにくいと思います。
この記事では、勾留について以下の点を解説します。
- 勾留の基礎知識
- 勾留の流れ
- 勾留の阻止や勾留後の早期釈放のためにできること
勾留の基礎知識
ここでは勾留とは何かについて、解説します。
勾留と逮捕の違い
勾留とは、被疑者や被告人の逃亡や証拠隠滅を防ぐために、警察署の留置場などの刑事施設に身柄を拘束することです。
逮捕も身柄を拘束するものですが、被疑者に対して、最初に行われる強制的な身柄拘束処分が逮捕です。
逮捕後、警察の取り調べの結果検察官に身柄を送致され、検察官が更なる身柄の拘束が必要と判断した場合、勾留請求を裁判所に行い、裁判官が勾留請求に理由があると判断した場合に認められるものを勾留といいます。勾留請求は、被疑者が逮捕されていなければできません(逮捕前置主義といいます)。
このように、勾留は逮捕後に行われます。
なお、同じ「こうりゅう」でも「拘留」と表記されるものは、刑罰の1種であり、1日以上30日未満の期間刑事施設に収容されるものであり、「勾留」とは異なりますので注意しましょう。
勾留とは
勾留とは、被疑者(被告人)の逃亡又は証拠隠滅を防止し刑事裁判を適切に進行させるため、被疑者(被告人)の身柄を長期間拘束することです。
起訴の前後で、起訴前勾留と起訴後勾留とに区別され、それぞれ期間や保釈の有無などに相違点があります。
勾留は、身体の自由という憲法で保障された権利を奪う手続きになるので、厳格な要件が無いと許されません。
勾留の要件
勾留するためには以下の要件が必要です。
- 犯罪の嫌疑
- 勾留の理由(住居不定・罪証隠滅のおそれ・逃亡のおそれ)
- 勾留の必要性
刑事訴訟法第60条第1項 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。
一 被告人が定まった住居を有しないとき。
二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
刑事訴訟法第87条第1項 勾留の理由または勾留の必要がなくなったときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、補佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を持って勾留を取り消さなければならない。
引用:e-Gov法令検索
勾留には、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合であって、かつ以下の3点のうちいずれかが存在する必要があります。
- 住居不定
- 犯罪の証拠を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある
- 逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由がある
勾留の条件を満たしていると裁判官が判断したときにのみ勾留が認められます。
要件の一つである住居不定とは、捜査機関にとって、被疑者に定まった住居があることが確認できない場合をいいます。
- 被疑者が住居を秘匿していて住居が判明しない
- 被疑者が逮捕により解雇され、勤務先の社宅に住めなくなった など
勾留の場所
起訴される前の被疑者勾留の場合には警察署の留置場、起訴後の被告人勾留となった場合には、拘置所に収監されることが一般的です。
留置場と拘置所の違いは、留置場が警察署の管理下にあるのに対し、拘置所は法務省の管理下にある点です。
留置場は全国に約1300か所ありますが、拘置所は全国に8か所、拘置支所は約100か所しかありません。
起訴前の被疑者勾留は、逃亡・罪証隠滅のおそれを防止することにあり、捜査機関による取り調べのためにあるものではありません。拘置所を勾留の場所とすることが妥当ですが、拘置所の数が著しく少ないため、現実的とはいえないのが現状です。
どこに収容するかは裁判官が判断し勾留状に記載しますが、被疑者段階の勾留では実務上90%以上は留置場に勾留される運用です。
勾留される期間
勾留には起訴前勾留と起訴後勾留の2種類があり、それぞれ以下のようになります。
- 起訴前勾留|原則として10日間
- 起訴後勾留|原則として2か月間
起訴前勾留は原則として10日間です。10日経過すると、原則として身柄釈放となりますが、例外的に勾留延長があり、更に10日間勾留期間を延長できます。その場合、最長で20日間勾留されてしまいます。
被疑者が勾留中に起訴された場合には、そのまま勾留されつづけます。この、起訴後の勾留期間は最初2カ月間ですが、その後は1カ月毎に更新され、判決が下るまで続きます。
勾留の流れ
逮捕から勾留の流れは以下の図のようになります。
<流れ>
以下、解説します。
逮捕後取り調べ
逮捕されると最大72時間、警察官による取り調べがあり、その後48時間以内に検察官に身柄を送致されます。
検察官の勾留請求
身柄の送致後、検察官は勾留の必要性の有無を確認し、勾留の必要があると判断したときには裁判官に勾留請求をします。
勾留質問
検察官が勾留請求をした場合、被疑者は裁判所に移送され、裁判官の勾留質問を受けます。
勾留質問の際に、裁判官は被疑者に対して勾留の理由とされている被疑事実を告げ、これに対する意見・弁解を聴取し、陳述調書を作成します。
身に覚えがない容疑をかけられている場合には、ここで、しっかりとその旨を主張する必要があります。
勾留状の発布
勾留質問により裁判官が勾留の必要性を認めると、勾留状の発付をします。
勾留の執行
勾留状が発付されると検察事務官または司法警察職員が勾留を執行し、基本的に10日間身柄拘束されます。
勾留延長
起訴前の10日間の勾留では終わらず、さらに10日間の勾留延長がなされる場合があります。
勾留延長が認められるためには、勾留を延長するやむを得ない事由があることが必要です。
やむを得ない事由とは、事件の困難性、あるいは証拠収集の遅延若しくは困難等により、勾留期間を延長して更に調べなければ起訴もしくは不起訴の決定が困難な場合とされています。
勾留延長されやすいケースは、以下のとおりです。
- 被疑者が罪を認めていない
- 罪が重い
- 組織的犯罪である など
これらのケースでは、捜査が長引く可能性が高く、勾留延長される可能性も高くなります。
公訴提起
起訴後の勾留(被告人勾留)は、被疑者勾留の要件に加えて、起訴された被告人について裁判を進めるために身柄の拘束が必要な場合に行われます。
勾留期間は2カ月で、特に証拠を隠滅するおそれがあるなど、必要性が認められる限り、1カ月毎に更新されます。期間の定めはありません。
保釈等により釈放されなければ、判決が下るまで身柄拘束は継続していきます。
勾留の阻止や勾留後の早期釈放のためにできること
逮捕後に勾留が認められると、勾留請求した日から、原則10日間、延長により更に10日間勾留されます。起訴後勾留の場合には更に2カ月間、その後1カ月毎に更新されます。
勾留請求されると約95%が認容されます。起訴されると、日本の刑事裁判では約99%が有罪となります。
ここでは、勾留の阻止や、勾留後早期に釈放されるためにできることについて解説します。
当番弁護士に相談
逮捕後、1回だけ無料で接見してくれる当番弁護士制度があるので、まずは当番弁護士を呼んでもらって相談しましょう。
当番弁護士からは、主に以下の点を教えてもらえます。
- 被疑者が置かれている状況
- 今後の流れの説明
- 取り調べへの対応方法 など
反省を示す
逮捕された被疑者が早期に釈放されるためには、被疑者本人の反省が重要です。
罪を認めなかったり、反省をしていなかったりする場合には、勾留の要件である証拠隠滅や逃亡のおそれがあるとみなされ、勾留請求されやすくなります。
当然、冤罪の場合にはそのことを捜査機関に対してしっかり主張していかなければなりません。
この場合には、捜査機関は自白を得ようとして、強引な取り調べを行う可能性が高くなります。
そのため、身に覚えがない容疑で逮捕されてしまった場合には、すぐさま弁護士に依頼することをお勧めします。
私選弁護士・国選弁護人に依頼をする
逮捕から勾留請求までは最大で72時間しかありません。早期釈放を目指すためには逮捕直後から弁護活動を行う必要があります。
逮捕直後から弁護活動ができるのは私選弁護士です。私選弁護士を選任すると、逮捕期間中から、いつでも回数制限なく接見ができ、勾留を阻止するための活動も行ってもらえます。
具体的には、勾留請求権者である検察官に対し、主に以下の内容を主張します。
- 捜査を行うにあたり、身柄拘束する必要が無いこと
- 在宅事件でも捜査できること
- 被疑者に逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがないこと など
検察官が勾留請求をした場合には、弁護士は勾留決定権を持つ裁判官に対し、主に以下の内容を主張します。
- 勾留の必要性がないこと
- 勾留しなくても捜査目的が達成されること
- 場合によっては勾留質問前に、直接裁判官と面談し事情を説明する など
国選弁護人は、勾留決定後から弁護活動を依頼できます。勾留質問の時に、裁判官から国選弁護人についての説明があります。
私選弁護士を依頼する金銭的余裕がない場合には、逮捕期間中に1回当番弁護士を呼んでもらい、勾留決定後に国選弁護人に依頼することをお勧めします。
準抗告の申し立て
勾留を免れるためにできる限りの事をしても、勾留されてしまうことはあります。勾留されてしまったら、次は身柄解放のためにできることをやります。
勾留決定は裁判官が判断するので、裁判官が出した勾留決定に対して異議を述べる手続きである、準抗告の申し立てします。
準抗告とは、勾留の要件を満たしていないことを主張し、別の裁判官に再度確認してもらう制度ですが、同じ裁判所の別の裁判官が判断するので、準抗告が認められる可能性はそれほど高くありません。
準抗告が認められるほとんどのケースでは、勾留の必要性がないと判断されているようです。
なお、検察官が勾留延長を請求し、裁判官が勾留延長を決定した場合にも、準抗告の申し立てができます。勾留が延長された場合には早急に弁護士に申し立てをしてもらいましょう。
勾留延長が認められる要件は、勾留の要件に加えて、勾留延長を認めなければならないやむを得ない事由が存在することが必要とされています。弁護士はそのやむを得ない事由が存在しないことも主張します。
いずれにしても、法律の知識がないと徒労に終わるだけになるため、準抗告の申し立てをしたい場合には弁護士に依頼しましょう。
勾留取消の申し立て
勾留決定後に状況が変わったことで、勾留の必要性が無くなることもあります。
例えば、勾留決定時にはまだ被害者と示談出来ていなかったが、勾留後に示談が成立したり、証拠が全て出尽くしたりして、証拠隠滅のおそれが無くなる場合があります。
この場合は状況変化により、勾留する必要は無くなったとして、勾留取り消しの申し立てをします。
不起訴獲得
勾留の取り消しをしてもらうべく手を尽くしてみたけれどなかなか取り消してもらえず勾留が続く場合もあります。そのまま起訴されてしまうと、有罪判決になる可能性が高いです。
そこで、起訴されないための活動が重要になります。
被害者のいる犯罪では、弁護士が被害者と示談をすることで、早期に不起訴処分が出る可能性あります。弁護士に示談交渉を依頼して、不起訴処分の獲得を目指すことをお勧めします。
保釈
保釈は、起訴されてしまった後に、身柄を解放してもらうことです。起訴後、裁判所に保釈請求書を持参し被告人の釈放を求めます。
保釈が認められるためには、その後開かれる刑事裁判に必ず出廷することが約束されなければなりません。そのため、保釈中の生活場所、被告人を監督する人がしっかりと決まっていることが最低条件となります。
保釈中に出社する場合には、職場の上司にも監督者として協力をしてもらえることも、有効です。
保釈許可決定が出された後は、保釈保証金を裁判所に納付し、身柄を解放してもらいます。
まとめ
逮捕後に勾留されてしまうと、最悪の場合、逮捕から刑期満了で出所するまで一回も身柄解放されることなく拘束され続けることになります。
逮捕されてしまったが勾留を回避したい、勾留されてしまったが釈放あるいは保釈して欲しい、という方は多いと思います。
身柄を解放してもらうためには、法的な知識や迅速な対応が不可欠です。
逮捕後少しでも早い段階で弁護士に相談することで、身柄拘束から解放される可能性が高くなります。
逮捕されてしまったら、早急に弁護士に相談することをお勧めします。