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衣料品リサイクル店に対し立退料5000万円が認められた事例

東京都豊島区目白駅前の商業ビル。その2階部分で、年間8000万円を超える売上を得てきた衣料品のリサイクルブティック。しかし、老朽化によりビルを建て替えるという理由で、貸主から立退きを求められました。裁判所が5000万円の立退料を認めたポイントとは?
裁判所が考慮した事実(東京地判平成21年10月8日)
① 建物が老朽化しており、建替計画も進行していた…
本件建物は築32年のビルで、現状のままで建物を維持管理していくことが困難な状況にありました。また、貸主は、被告以外の借主の退去に関してすべて交渉を終えており、残る借主は被告のみの状況でした。
老朽化や建替計画の具体性・進捗状況は、多くの裁判例で重視されているポイントの一つで、裁判所は、これを重視して借主の立退きを認めました。
② 借主には本件建物を使用する必要性があった!
貸主は、貸主による解約申入れの後、立退きの交渉がまとまる前に本件店舗を別の場所に移しています。このことから、借主は、貸主が本件建物を使用する必要性が無くなったとの主張をしています。
しかし、裁判所は、かかる行動は、解約申入れから6か月の期間が経過した後の事情であるから、解約申入れの正当事由を補完する立退料の額を検討するにあたり、考慮することはできないとの判断をしています。つまり、解約申入れから6か月の期間内は、借主が本件建物を使用する必要性があったといえます。
逆に、解約申入れ前や、解約申入れから6か月の期間内に、店舗を積極的に移すような行動をとっていたとすれば、立退料の算定に大きな影響があることが考えられます。
③ 借主の売り上げは高額で、貸主は額へのこだわりが弱かった!
最終的な立退料の算定においては、貸主が、当初借家権価格約700万円に相当する額、次に3800万円を支払うことを申し出たことから、裁判所は、貸主が立退料の額に固執しているわけではないとの判断をしています。このことと、被告の年間売り上げが8000万円を超えることが考慮され、5000万円の立退料の支払いが認められています。
④ 立退きの可否の判断タイミング
借主の立退きを認めるかは、解約申入れ時に「正当事由」があるかにより判断されます。正当事由は、貸主と借主の利益が天秤に乗せられ、貸主の利益の方が重たい場合に認められます。立退料は、少し貸主の利益の方が重たい場合の調整材料になります。
本判決では、解約申入れ後に立退料の提供を申し出た場合や途中で立退料の申出額を増額した場合にも、当初の解約申入れの正当事由の存在が判断できるとの判断を示した最判平成3年3月22日を引用し、当初の解約申入れ時から正当事由があると判断しました。このことから、当初の申出額が低額だったからといって、立退きを拒否できるわけではないことがいえます。
弁護士が解説する立退料算定のポイント
本件では、立退きの可否につき重点的に主張立証がされたため、細かな立退料の算定はされていません。また、本件では、立退きの可否や立退料の算定に当たり、使える事実の範囲について、時的要素も重視されている特徴があります。立退きを求められた時点というタイミングを意識しつつ、建物を使用する利益がどの程度あるのか、立退きによりどれ程損してしまうのかを十分検討することが重要といえます。