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東京都練馬の日用品雑貨・宝石の輸入販売店が使用していた木造他店の立退きに対し3000万円の立退料が認められたケース

東京都荒川区にある鉄筋コンクリート造陸屋根地下1階地上11階建の建物(延べ床面積約5913.39㎡)。その一部を月40万4250円で借り、日用品雑貨及び宝石の輸入販売店として使用してきた借主。しかし、本件建物を建て替えるとして立退きを求められた!裁判所が借主に3000万円の立退料を認めたポイントは?
裁判所が考慮した事実(東京地判平成28年3月18日)
本件建物には崩壊する危険があり補強工事も割に合わなかった…
本件建物は、老朽化等により、大地震時に崩壊する可能性が高く、非常に危険な状態にあった。そのため、耐震診断報告書にも改築を強く推奨する旨の意見が付されていました。
また、仮に耐震補強工事を行う場合ったとしても、一時的な安全を保持することができるにすぎないにもかかわらず、工事費用が2億4000万円に上ることが推定される状況でした。そのため、補強工事を行うことは現実的ではありませんでした。
以上のことから、裁判所は、本件建物を建て替える必要性がある旨の判断をしました。
借主は本件建物を長年使用し売上を上げてきた!
借主は、本件建物を約20年間使用してきました。その間に、借主の店舗は、地元に根付き、幅広い年齢層の顧客が来店する店舗へと成長した。また、借主は、本件店舗の他にも4店舗経営していましたが、合計5店舗の売上の約3割が本件店舗による売上でした。
裁判所は、このことから、借主が本件建物を使用する利益は高いものと判断しました。
とはいえ、借主の営業は本件建物以外でも行うことができた…
借主の営業は、その業態的に、本件建物の近隣に移動して行うことも可能でした。このことは、借主が本件店舗の他にも4店舗経営していることからも明らかです。また、上述のように、構造上危険のある建物で営業を続ければ、借主の顧客にも危険が及ぶ恐れがありました。
そのため、裁判所は、借主の営業の継続は本件建物から立ち退いても困難ではない旨の判断をしました。
弁護士が解説する立退料算定のポイント
本件で特徴的なのは、本件建物の崩壊の危険を貸主側の利益でも、借主側の利益でも考慮している点にあります。
建物が崩壊しそうな状態であれば、その所有者である貸主は、他人に危険が及ばないように建替える必要性がありますし、土地の有効利用という点でも建替えたいと思うのは通常でしょう。他方、借主としても、そのまま建物を使用し続けたい気持ちもわかりますが、店舗経営者である以上、顧客に危険が及ばないように注意すべき義務があると言っても過言ではありません。さらに、判決文には記載がありませんが、正当な利益の実現を図る裁判所としても、甚大な被害を生じさせる危険のある建物を放置することはできないという考えがあるのでしょう。
このことからわかることは、崩壊の危険等、建物それ自体の危険性は、立退きの可否や立退料の算定の判断で非常に重視される事情の1つであるということです。