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飲食店経営会社が8500万円の立退料を勝ち取った事案

日本橋三越前、当時大規模な再開発がされていた地域にある9階建てのテナントビル。ここで約12年間飲食店を経営してきた借主。しかし、再開発のために取り壊すとして、貸主から立退きを求められました。裁判所が8500万円の立退料を認めたポイントとは?
裁判所が考慮した事実(東京地裁平成21年12月22日)
① 改修費用が高額だった…
本件建物は、築約35年の建物で、老朽化による影響が強い状況でした。改修には、建物の躯体の耐震補強工事に加えて、東京都の条例により設置が義務付けられた駐車場設備が耐用年数を大幅に経過し、空調設備、給水設備、電気設備の一部も耐用年数を超えているなど、耐震補強工事以外の改修工事もする必要があり、数億円にも上る費用が必要な状況にありました。裁判所は、このことを重視して、立退きはやむなしとの判断をしています。
② 他の部分の退去がほぼ完了していた…
以上の状況から、貸主は本件建物を含めた再開発計画を進めていました。本件建物についても、被告以外の借主は1名を残して退去済みで、残りの1名も、立退きの交渉がまとまりそうな段階に至っていました。そのため、被告の立退きを認めないと、貸主にとって大きな不利益になる状況にありました。裁判所は、このことも重視して立退きの可否を判断しています。
③ 借主には、飲食店の営業を継続する利益がある!
裁判所は、上記のように、借主の立退きはやむなしとの判断をしていますが、借主は、これまで本件建物で約12年間継続している飲食店を経営してきました。立退きを余儀なくされれば、代替物件を探し、引越しをする必要があります。これには大きな額の費用が必要になりますし、営業により得られたはずの収益が得られなくなります。そのため、裁判所は、相当な額の立退料が必要であるとの判断をしました。
④ 鑑定を使って立退料の計算をした!
本裁判例の特徴は、立退料の算定のために鑑定を使っていることです。鑑定では、転居に伴う賃料の差額や、建物の耐用年数、借主の営業利益、移転費用等様々な事情が考慮されています。客観的にみて妥当な立退料を算定したい場合には、鑑定も1つの方法でしょう。
ただ、裁判所は、鑑定の結果に1点誤りがあるとして、その点について計算をし直しています。鑑定が出たからといって、裁判上完全にその結果に乗らなければならないわけでないことがわかります。
弁護士が解説する本件のポイント
立退料の算定は、借主が立退きによりどれくらい損をするのかということをお金に換算する作業になります。鑑定は、客観的に妥当な額の立退料の算定に役に立つツールといえます。ただ、自身に不利な鑑定結果でも、こちらが合理的な主張をすることができれば鑑定結果を覆すこともできなくはありません。裁判では、借主がいかに損をしたかを主張していきましょう。