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閉館した劇場からの立退きを求められた寿司屋が2000万円の立退料を獲得した事案

東京都新宿区歌舞伎町、繁華街の一角にある劇場公演用ホール兼映画館。1階入口付近で1億近い売上を得てきた寿司屋。しかし、劇場等は閉館し、建物周辺を再開発するとして立退きを求めらてしまいました。裁判所が2000万円の立退料を認めたポイントとは?
裁判所が考慮した事実(東京地判平成22年2月24日)
① 劇場等は閉館し、再開発の計画もあった…
本件建物は、地下2階地上5階の建物でしたが、その大部分が劇場と映画館として用いられていました。講演内容は演歌がメインで、急激に客数が減少し、損失を計上したこと等から閉館しました。また、本件建物は、築50年を超えるビルで、問題個所が特定できない雨漏りの補修工事のため、約10年間で約2億2000万円の費用を投じてきました。さらに、貸主は、周辺地域一帯の再開発の協議会の構成員でした。裁判所は、これらの事情を重視し、立退きに相応の理由があると判断しました。
② 借主は、当初無断転借を受けていた…
借主は、貸主から本件建物を借り受ける前、貸主に無断で、もとの借主から本件建物を借り受けていました。借主を立ち退かせる際に、賃貸人が賃借人の人柄も考えることは当然でしょう。賃貸借契約は貸主と借主の信頼関係に基づき成り立つものですから、契約違反が多ければ多いほど、立退きを求めたくなるのが通常といえ、裁判所もこのような事情を考慮したものといえます。
③ 借主は劇場等の閉館後も営業を続けていた!
借主は、劇場等が閉館し、立退きを求められた際にも営業を続けていました。劇場等の閉館により、売り上げは減少しましたが、立退きを求められた時にも、なお、9名が稼働している状況でした。裁判所は、このような事情を重視して借主が本件建物を使用する必要性があるとして、立退料の支払いを認めています。
④ 借主は本件建物を長年使用し、移転に伴う損失も多額!
借主は、本件建物で約13年間寿司屋等を営んできました。長年使用すればするほど、突然の立退きに対する負担は大きくなるといえます。また、借主は、寿司屋の営業により、高額の売り上げを得てきました。そのため、移転に伴い生じる営業の損失や移転費用は高額になります。裁判所はこのような事情を考慮して、立退料の額を算定しました。
弁護士が解説する立退料算定のポイント
本件で特徴的なのは、貸主側で最も重視されている事情が、劇場等の閉館という事情であることです。そのため、借主側でも、劇場等の閉館によって、寿司屋の営業がどう変わったのかという事情が重視されています。このように、立退料の判断の際には、貸主側の事情と借主側の事情がリンクする形で判断されることがあります。