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東京都豊島区の鉄筋建てのグループホームに対して立退料が認められなかったケース

東京都豊島区にある5階建の鉄筋コンクリート造陸屋根3階建ての建物。これをグループホームの運営のために月60万円で借りてきた借主。しかし、建物を建替えるとして立退きを求められてしまいます!裁判所が借主に対する立退料を認めなかったポイントは?
裁判所が考慮した事実(東京地判平成23年4月14日)
長年医療施設として使用され、老朽化による建て替えの必要性が高かった…
本件建物は、産婦人科を経営していた者によって建てられたもので、建築から長年の間医療現場として使用されてきました。本件建物は、築約40年の建物で、その老朽化のため、病院として改修するためには2億円以上の費用がかかり、改修は現実的に困難な状況にありました。このようなことから、裁判所は、貸主による建て替えの必要性が高い旨の判断をしました。
本件建物はグループホームとしての適性も備えていなかった…
グループホームを運営する際には、施設にスプリンクラーが設置されている必要がありました。しかし、本件建物にはスプリンクラーが設置されておらず、その改修にも多額の費用が掛かる状況にありました。このことは、借主が本件建物を使用する必要性が乏しいとの判断に動く事情であるといえます。
契約当初から立退きについて説明がされていた…
本件建物に関する賃貸借契約の際、老朽化により建て替えの必要等がある場合には、立退きを求める旨の記載が契約書にされ、既に老朽化が進んでいるため、立退きは近い将来ありうることは、契約段階で説明がされていました。このことから、裁判所は、貸主が引続き本件建物を使用する利益は、非常に乏しい旨の判断をしました。
貸主の交渉態度は誠実であった一方借主の態度は誠実でなかった
貸主は、立退きの交渉に当たり、グループホームの基準を満たす移転先を提案したり、立退料の提示をしたりしていました。これに対し、貸主は、自身の信条を前提に移転先の申出を拒み、1億円を超える法外な立退料を要求していましたが、その具体的な必要性等につき、判断材料を示しませんでした。以上のような事情から、裁判所は、立退料なく借主の立退きを認めました。
弁護士が解説する立退料算定のポイント
本件で特徴的なのは、現に使用している建物からの立退きであるにも関わらず、立退料が認められなかった点にあります。
立退料には、立退く借主の損害を補填する機能もあるため、現に使用している建物からの立退きの際には、少額でも立退料が認められるのが通常です。本件では、現実な損害を借主が示さず、自己の都合だけを主張し続けた結果、立退料が認められなかったものと考えられます。
このことからわかるのは、裁判官を説得するためには、現に存在する事実を挙げて、等身大で評価をしたうえで議論をする必要があるということであるといえます。