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鶏肉惣菜店に470万円の立退料が認められた事案

東京都の下町、駒込駅から徒歩5分の昔ながらの商店街にある2階建の店舗兼住宅。その1階南半分の部分を使用し、鶏肉惣菜店を経営してきた借主。しかし、建物を建替えるとして立退きを求められました。裁判所が470万円の立退料を認めたポイントとは?
裁判所が考慮した事実(東京地判平成24年3月29日)
① 老朽化が激しかった…
本件建物は、50年を超える建物で、柱等に無数のひびが入っているほか、シロアリ、害虫、ネズミの被害が発生しているなど、老朽化により限界が近い状態にありました。
このことから、裁判所は、本件建物の建替えの必要性があるとの判断をしました。
② 建替えを認めないと貸主に酷だった…
貸主は当時70歳の高齢で、収入源は借主からの賃料収入6万3000円だけでした。貸主は本件建物に住んでおり、引っ越しの予定はありませんでした。貸主は、20年ほど前から建替えの計画をしており、建替え後にはテナント2店舗からの収入が見込まれ、安定した収入が得られる見込みでしたが、借主の反対により、長年建替え計画が頓挫してきました。
これらのことから、裁判所は、立ち退きを認めないと貸主に国であると判断しました。
③ 借主は、長年、唯一の収入を店舗の経営により得てきた!
借主の鶏肉惣菜店は、本件建物で約50年もの間続いてきました。貸主は、同店を娘およびその子の3人で切り盛りし、その売り上げが唯一の収入源でした。このような地元密着型の店舗としては、固定客の獲得が非常に重要でした。
これらのことから、裁判所は、貸主が本件建物を使用する必要性が高いと判断しています。
④ とはいえ、代替物件の発見は不可能ではなかった…
貸主の鶏肉惣菜店は、テレビや雑誌、新聞の特集などで取り上げられており、一定の知名度を得ていました。そのため、移転をしたとしても、顧客が大きく減少するとはいい難い状況でした。
このことから、裁判所は、借主の必要性が高いと判断しつつも、貸主の必要性ほど切実ではない旨の判断をしています。
弁護士が解説する立退料算定のポイント
本件で特徴的なのは、貸主側も借主側も必要性が非常に大きい点にあります。そのため、立ち退きを認めつつも、立退料は相応に高額になっています。
また、知名度が高いという事実は、貸主の経営が成功しており建物を使用する必要性を基礎づける事情としても、移転により離れる顧客が少なく建物を使用する必要性を減少させる事情としても使える事情であるといます。このように、一見有利に見える事情が不利にも働きうることには注意が必要です。