ネット上での病院への誹謗中傷・風評被害を放置すると、患者さんが減ってしまうかもしれません。
例えば、2019年のメディケア生命保険株式会社の調査では、病院を選ぶ際に参考にしている情報として、「病院のホームページ」、「家族や知人の評判」に次いで「病院検索サイト」となっています。2014年の調査と比べ、「病院検索サイト」の割合は増加しており、ネット上の情報を参考にする人が増えているようです。

引用元:メディケア生命調べ「病院選び・医者選びは難しいと思う」と半数が実感 「病院に行って不快な思いをしたことがある」3人に2人
誹謗中傷・風評被害には、どのような対応をすればいいのでしょうか。
- ホームページでの注意喚起
- (権利侵害にあたる場合は)削除請求
- (悪質性が高い場合は)投稿者を特定し、慰謝料請求
以下、ネット上で病院が誹謗中傷・風評被害を受けた場合の対応方法をご案内いたします。悪質な投稿にお困りの病院関係者の方はぜひ最後までご参考ください。
ネット上で誹謗中傷・風評被害を受けた病院のリスク
患者さんに丁寧な診療をしていても、身に覚えのない誹謗中傷を受けることもあります。ネット上での誹謗中傷・風評被害の例と、受けた場合のリスクを解説します。
病院に対する誹謗中傷の例
病院に対して、患者さんやスタッフ(または元スタッフ)が以下の不満を感じて、誹謗中傷にあたる投稿をすることが考えられます。
- 医師、その他のスタッフの対応について(予約時間から〇時間も待たされた)
- 診療内容について(〇〇病院では大した検査をせずに薬だけ出されて終わった)
- 診療結果について(○○医師は過去に医療ミス、手術の失敗をしている)
- 労働環境について(医師の〇〇はパワハラをしている)
- 給料について(給料が支払われない)
- 新型コロナウイルスの感染について(感染予防をしていない)
誹謗中傷を受けた病院のリスク
ネット上で誹謗中傷・風評被害を受けて放置した場合、以下のリスクが考えられます。
- 新規の患者さんが減り、経営に悪影響を及ぼすおそれがある
- 既存の患者さんが不安になり、通院をやめてしまう
- スタッフのモチベーションが低下し離職につながる
- 採用活動の際に、応募者が減る
誹謗中傷・風評被害を受けた病院ができる対応
誹謗中傷・風評被害を受けた場合には、以下の対応を検討します。
真偽確認
投稿された内容が真実か虚偽かによって対応が異なりますので、真偽を確認する必要があります。院長が把握しきれていないスタッフの現場対応についての投稿もありますので、慎重に確認しましょう。
投稿内容が真実なら、真摯な対応で投稿者に誠意を伝えます。返信可能な口コミなら真摯な返信をすることが考えられますが、感情的な反論にならないよう気を付けてください。感情的になると、投稿者を逆上させるおそれがあるだけでなく、自分が加害者になる可能性もあります。
投稿内容が虚偽なら、権利侵害にあたる可能性があります。もっとも、内容が真実でもスタッフの個人情報にあたる内容なら、プライバシー侵害にあたる可能性があります。
権利侵害にあたるなら、削除請求や慰謝料請求について検討してください。
ホームページでの注意喚起
病院のホームページを病院選びの際の参考にしている人は多いので、ホームページ上に誹謗中傷について真偽確認した結果を掲載し、閲覧者に注意喚起をすることが考えられます。
ただし、投稿者が逆上するおそれや、誹謗中傷を知らなかった人にわざわざ知らせてしまうことになるかもしれませんので、ホームページに掲載する際は、慎重に検討してください。
削除請求
対象投稿が掲載されているサイトに削除請求をします。サイトによって削除請求方法は異なります。
削除請求の理由として、権利侵害にあたることを的確に説明することで、削除してもらえる可能性が高くなります。
ただし、投稿者を特定し慰謝料請求も考えている場合は、先に削除すると必要な情報が無くなる可能性がありますので、注意してください。
弁護士に相談
以下の場合は、一人で悩まずにぜひ弁護士にご相談ください。
- 対象投稿が権利侵害にあたるかわからない
- 投稿を削除したいけど、方法がわからない
- 投稿者を特定したいけど、方法がわからない
- 投稿者は特定できていて慰謝料請求したいけど、いくら請求していいかわからない
病院への誹謗中傷・風評被害に対する弁護士のサポート
弁護士が対応することで誹謗中傷を早期に削除できる可能性が高くなります。
具体的なサポート内容は次のとおりです。

削除請求
権利侵害にあたる投稿なら、悪影響が出る前にできるだけ早く削除を検討します。
サイト管理者へ削除請求
対象投稿がされているサイト管理者へ、削除請求をします。自力で削除請求をして削除されなかった場合でも、弁護士から改めて権利侵害にあたることを論理的に説明して請求することで、削除請求に応じてくれる場合もあります。
裁判所へ削除仮処分命令申立
サイト管理者に削除請求しても削除されなければ、裁判所に削除仮処分命令を申立てます。

発信者情報開示請求
悪質性が高く、投稿者に慰謝料請求や再発防止を求めたい場合は、投稿者を特定します。
サイト管理者へ発信者情報開示請求
対象投稿がされているサイト管理者へ、発信者情報開示請求をします。
サイト管理者が投稿者の氏名・住所を把握していなければ、投稿者のIPアドレスやタイムスタンプの開示を求めます。
裁判所へ発信者情報開示仮処分命令申立
サイト管理者から開示されなければ、裁判所に発信者情報開示仮処分命令を申立てます。
プロバイダへ発信者情報開示請求
開示されたIPアドレスから投稿者が接続したプロバイダを特定し、発信者情報開示請求をします。
裁判所へ発信者情報開示請求訴訟提起
プロバイダから開示されなければ、裁判所に発信者情報開示請求訴訟を提起します。

損害賠償請求
投稿者が特定できたら、投稿者に損害賠償請求をします。
投稿者へ損害賠償請求
投稿者に損害賠償請求をして、示談による合意の成立を試みます。
裁判所へ損害賠償請求訴訟提起
示談では合意が成立しなければ、裁判所に損害賠償請求訴訟を提起します。
誹謗中傷・風評被害を受けた病院が弁護士に依頼するメリット
ネット上の誹謗中傷・風評被害について弁護士に依頼することで、以下のメリットが考えられます。
削除依頼の代理ができるのは弁護士だけ
ネット上の誹謗中傷の削除依頼を代理できるのは弁護士だけです。
弁護士でない者が報酬を得る目的で、ネット上の誹謗中傷の削除請求を代理することはできないと弁護士法で定められているからです。
損害賠償請求まで対応できる
投稿者を特定し損害賠償請求もしたいと考えた場合でも、どのような手続きが必要なのか、損害賠償請求でどれくらい請求していいか、よくわかりませんよね。
弁護士に依頼することで、投稿者を特定する手続き(発信者情報開示請求)、損害賠償請求での事案に応じた請求内容の判断や示談を任せられます。
裁判手続きに対応できる
裁判所に削除仮処分命令を申立てる際や、発信者情報開示請求訴訟、損害賠償請求訴訟でも裁判所に提出する書類の準備や裁判所の対応が必要です。専門用語も使われ、手続きの知識が必要です。訴訟が長期化する可能性もあります。
弁護士に依頼することで、裁判所や相手方の対応を任せられます。
今後の対応も依頼できる
悪質な投稿が続く可能性もあり、継続的な対応を依頼した方が効率的な場合もあります。
誹謗中傷の対応だけでなく、患者さんとの治療費トラブルやスタッフとの労務トラブルについても顧問契約で対応をしてくれる弁護士もいますので確認してみてください。
まとめ
ネット上の投稿を、病院を選ぶ際の参考にしている人も多いので、誹謗中傷・風評被害を受けた場合に放置すると、病院の経営に悪影響を及ぼすおそれがあります。
できるだけ早い対応が必要ですが、自力での対応は難しいと感じた方、自力で対応しても功を奏さなかった方は、ぜひ弁護士に依頼することを検討してみてください。