SNSや掲示板では、誹謗中傷の被害者になることも、加害者になることもあります。
しかし、どこからが誹謗中傷になるのかわからず、不安な人もいると思います。
この記事では、誹謗中傷になるのはどこからか解説します。
誹謗中傷になるのはどこからか
誹謗中傷とは何か、誹謗中傷になるのはどこからか解説します。
誹謗中傷の定義
誹謗中傷とは、誹謗と中傷の元々独立して使われていた言葉が合体して使われるようになった言葉です。
誹謗とは、他人へ悪口を言ったり罵ったりする行為です。
中傷とは、根拠のないことを述べ、他人の名誉を傷つける行為です。
よって、根拠のない悪口を述べ、他人の名誉を傷つけた場合が誹謗中傷になります。
誹謗中傷と批判の違い
批判とは、良い所・悪い所を見分け、評価・判定することです。
悪い意味で使われることが多く、誹謗中傷と似た意味で捉えられていますが、事実を基にマイナス評価だけでなく、プラス評価をする点で誹謗中傷とは異なります。
誹謗中傷はどんな権利侵害になるか
誹謗中傷をした結果として、どのような権利侵害になるか解説します。
名誉権侵害(名誉毀損)
人や会社の社会的評価についての権利が名誉権です。
誹謗中傷が名誉権侵害にあたるかは、以下の点で判断します。
- 社会的評価が低下するか
- 事実摘示か意見論評か
- 違法性阻却事由はないか
社会的評価が低下するか
社会的評価の低下は、一般読者の普通の注意と読み方を基準に判断するのが判例です。
同じスレッドの他の投稿や、対象投稿がされた経緯も考慮して判断します。
疑問文でも社会的評価は低下しないとは言い切れず、一般読者の普通の注意と読み方を基準にして、表現の趣旨により判断します。
事実摘示か意見論評か
社会的評価が低下する表現が、事実摘示なのか意見論評(感想)なのかによって、違法性阻却事由が異なります。
判例の判断基準は、証拠をもってその存否を証明できるかどうかです。
例えば、無能だとの表現は、無能かどうかを証拠で証明することができませんので、意見論評になります。
違法性阻却事由はないか
事実摘示の場合、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実の重要な部分が真実であることの証明があったときは違法性がないとするのが判例です。
意見論評の場合、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、意見論評の前提となる事実の重要な部分が真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶ意見論評の域を逸脱したものでない限り違法性がないとするのが判例です。
名誉感情侵害(侮辱)
自分自身の人格的価値について有する主観的な評価が名誉感情です。
保護法益が社会的評価でなく、名誉感情なので、基本的に法人には成立しません。
誹謗中傷が名誉感情侵害にあたるかは、以下の点で判断します。
- 社会通念上許される限度を超えているか
- 表現と対立する主観的評価があるか
社会通念上許される限度を超えているか
判例の判断基準は、誰でも名誉感情を害される、明確で程度の著しい侵害かです。
単に、バカとだけでは名誉感情侵害にはあたりません。
同じスレッドの他の投稿や、対象投稿がされた経緯も考慮して判断します。
表現に対立する主観的評価があるか
主観的評価が侵害されたといえるためには、主観的評価に対立する表現がされていることが必要です。
あの人は××だと表現されている場合に、私は〇〇だのように××に対立する○○との主観的評価があることが必要です。
誹謗中傷によるトラブルの例
実際にあった誹謗中傷によるトラブルを紹介します。
掲示板
風俗業界で働いている女性に対して、生ビールのアイコンと良かったと投稿された事例があります。
生ビールのアイコンには性的サービスの意味があり、そういった性的サービスは行っていないため、この投稿は真実ではありませんでした。
SNS
あおり運転殴打事件に関連して、同乗者の女と真実ではない情報を投稿された事例があります。
投稿者はFacebookに女性の顔写真と本名を指摘し、早く逮捕されるよう拡散お願いしますと投稿しました。
裁判では、社会的評価を低下させたと認められました。
口コミ
企業に対する口コミサイトに、この会社にはボーナスがないと投稿された事例があります。
その会社はボーナスを支給しており、この投稿は真実ではありませんでした。
誹謗中傷を受けたときの対応
SNSや掲示板で誹謗中傷を受けた場合の対応を解説します。
削除請求
投稿された誹謗中傷をそのままにすると、自分の社会的評価が低下する投稿や、主観的評価と異なる表現を、多くの人が見てしまいますので、対象投稿を削除できるか検討します。
投稿を削除する方法は、以下のとおりです。
- 投稿者に削除請求をする
- サイト管理者へ削除請求をする
- 裁判所へ削除仮処分命令申立
投稿者に削除請求をする
投稿者の本名・住所がわかっている場合は、直接削除請求することが考えられますが、逆上し被害が拡大するおそれがあります。
サイト管理者へ削除請求をする
サイトによって削除請求の方法は異なり、サイト上に設置されている削除請求フォームから請求できるサイトもあります。
裁判所へ削除仮処分命令申立
サイト管理者へ請求しても削除されない場合は、裁判所の削除仮処分手続きによって削除を求めます。
削除仮処分命令が発令されると、相手方のほとんどが削除に応じます。
発信者情報開示請求
削除するだけでなく、投稿者に損害賠償請求や、再発防止を求めたい場合には、投稿者を特定できるか検討します。
投稿者を特定するための流れは、以下のとおりです。
- サイト管理者へ投稿者IPアドレス開示請求
- 裁判所へ発信者情報開示仮処分申立
- IPアドレスから接続プロバイダを特定
- プロバイダへ投稿者の個人情報開示請求
- 裁判所へ発信者情報開示請求訴訟提起
- 投稿者特定
サイト管理者へ投稿者IPアドレス開示請求
サイトによって開示請求の方法は異なり、裁判手続きによらず発信者情報開示請求書で請求できるサイトもあります。
裁判所へ発信者情報開示仮処分申立
サイト管理者へ請求しても開示されない場合は、裁判所の発信者情報開示仮処分手続きによってIPアドレスの開示を求めます。
IPアドレスから接続プロバイダを特定
開示されたIPアドレスから投稿者が接続したプロバイダを特定します。
プロバイダへ投稿者の個人情報開示請求
プロバイダに対して投稿者の個人情報開示請求をしますが、ほとんどが開示に応じてくれません。
裁判所へ発信者情報開示請求訴訟提起
プロバイダへ請求しても開示されない場合は、裁判所へ発信者情報開示訴訟を提起します。
投稿者特定
開示の判決がでると、投稿者が特定できます。
ただ、開示されるのはプロバイダの契約者情報ですので、ネットカフェのような契約者情報が開示された場合は、投稿者特定のためにはさらに調査が必要になるか、特定が困難になってしまいます。
誹謗中傷を受けたときに弁護士に相談するメリット
誹謗中傷を受けたときに一人で悩まずに、弁護士に相談するメリットを解説します。
誹謗中傷が権利侵害にあたるか判断できる
投稿された誹謗中傷が、権利侵害にあたるかの判断に悩まれると思います。
ご相談いただければ、弁護士が経験も踏まえて判断します。
早期の対応ができる
早期の削除、投稿者特定を望まれていると思いますし、投稿者情報の保存期間は3か月ほどであることが多いので、早期の対応が必要です。
経験や知識を基に、弁護士が早期の解決を図ります。
法律の専門知識が必要な手続きに対応できる
仮処分手続きや発信者情報開示請求訴訟が必要になることもあり、裁判手続きの経験がないと難しいと思います。
弁護士に依頼することで、長期化する可能性もある裁判所や相手方とのやりとりを弁護士にて対応することができます。
まとめ
誹謗中傷になるのはどこからかは、以下のとおりです。
- 根拠のない悪口を述べ、他人の名誉を傷つけた場合
誹謗中傷が、名誉権侵害(名誉毀損)にあたる判断基準
- 社会的評価が低下するか
- 事実摘示か意見論評か
- 違法性阻却事由はないか
誹謗中傷が、名誉感情侵害(侮辱)にあたる判断基準
- 社会通念上許される限度を超えているか
- 表現と対立する主観的評価があるか
誹謗中傷を受けたときには一人で悩まずに、弁護士に相談することを検討してみてください。