インターネット上で住所の役割をするのが、IPアドレスです。
自分のIPアドレスが漏洩したら個人情報を特定されるのか、心配ですよね。
この記事では、IPアドレスで個人情報を特定できるのか解説します。
IPアドレスとは?
IPアドレスについて解説します。
IPアドレス
IPアドレスは、インターネットに接続している機器に割り当てられた数値で、以下の種類があります。
IPv4・IPv6
IPv4は、0~255までの数値を「.」で4つ結合した形です。
IPv4の例:123.234.1.0
IPv6は、4桁の英数字を「:」で8つ結合した形です。ブロック先頭の0は省略できますし、0000のブロックが連続する場合は「::」で省略できます。
IPv6の例:ab00:12:34bc:d0::e5f6
グローバルIPアドレス・プライベートIPアドレス
グローバルIPアドレスは、インターネットに直接接続している機器に割り当てられるIPアドレスです。
プライベートIPアドレスは、社内や家庭内のプライベートネットワークに接続している機器に割り当てられるIPアドレスです。
ドメイン名・ホスト名
ドメイン名・ホスト名は、IPアドレスを文字列にした、例えば「www.○○○.com」です。
この例の場合、ドメイン名は「○○○.com」で、ホスト名は「www.」や「www.○○○.com」です。
正引き・逆引き
ホスト名からIPアドレスに変換することを、正引きといいます。
IPアドレスからホスト名に変換することを、逆引きといいます。
接続元IPアドレス・接続先IPアドレス
接続元IPアドレスは、投稿者のIPアドレスです。発信者情報開示請求の対象になります。
接続先IPアドレスは、サイトのIPアドレスです。
IPアドレスで個人情報をどこまで特定できるか?|氏名・住所は特定できない
基本的には、IPアドレスだけでは氏名・住所は特定できません。
国や地域までは推定できる場合があります。
IPアドレスから、接続したプロバイダを特定することはできるので、そのプロバイダに対して、投稿者情報の開示を請求することで、投稿者を特定します。
IPアドレスの特定方法
IPアドレスを特定するためには、発信者情報開示請求権に基づく、発信者情報開示請求によります。
発信者情報開示請求権
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(「プロ責法」と略されます。)第4条第1項で定められた請求権です。
特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。
一 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
二 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
引用元:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
発信者情報開示請求権の要件事実
IPアドレスが開示されるには、以下の要件を満たしていると認められる必要があります。
- 権利侵害の明白性
- 開示を受けるべき正当な理由
- 特定電気通信
権利侵害の明白性
プロ責法第4条第1項第1号に定められている要件です。
違法性阻却事由をうかがわせる事情がないことを立証する必要があります。

開示を受けるべき正当な理由
プロ責法第4条第1項第2号に定められている要件です。
損害賠償請求の行使のために必要であれば、開示を受けるべき正当な理由になります。
特定電気通信
プロ責法第4条第1項は、特定電気通信による情報の流通によって権利を侵害されたことが要件になっています。
特定電気通信については、プロ責法第2条第1項第1号で定義されています。
一 特定電気通信 不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下この号において同じ。)の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)をいう。
引用元:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律
不特定の者によって受信されることを目的としない、個人間のメールは、基本的には要件を充たしません。
サイト管理者へ発信者情報開示請求
IPアドレスの開示を求めたい投稿がされたサイトの管理者に対して、発信者情報開示請求をします。
サイト管理者も個人情報の扱いには慎重ですので、開示請求に応じてもらえない可能性もあります。
裁判所へ発信者情報開示仮処分申立
サイト管理者から開示されなければ、裁判所へ発信者情報開示仮処分命令を申立てます。
開示の命令を受けたサイト管理者から、IPアドレスが開示されます。
IPアドレスから個人情報を特定する方法
サイト管理者から開示されたIPアドレスだけでは、投稿者の氏名・住所は特定できません。
IPアドレスから、個人情報を特定する方法を解説します。
接続プロバイダをWHOISで検索
開示されたIPアドレスが、どの接続プロバイダのIPアドレスか、WHOISで調査します。
WHOISで検索できるサイトはいくつかあります。
接続プロバイダへ発信者情報開示請求
接続プロバイダが特定できたら、発信者情報開示請求をします。
発信者情報開示請求があったことがプロバイダから契約者へ通知され、開示に同意するか否かの意見照会が行われます。投稿者が開示に同意すれば発信者情報が開示されますが、不同意であれば基本的には開示されません。
ほとんどが不同意ですので、開示されることは少ないです。
裁判所へ発信者情報開示請求訴訟提起
プロバイダから開示されなければ、裁判所へ発信者情報開示請求訴訟を提起します。
判決により、発信者情報が開示されます。
ただ、ここで開示される情報は契約者情報ですので、フリーWi-Fiやネットカフェの情報が開示された場合は、投稿者の特定は困難です。
IPアドレスの特定を依頼できるのは?
個人でもIPアドレスの開示請求をすることはできますが、開示理由として権利侵害の説明をしなければいけませんし、裁判手続きとなると専門的な知識が必要になります。
IPアドレスの開示請求を依頼できる弁護士や警察に相談してみてください。
弁護士
損害賠償請求をしたい場合は、弁護士に依頼しましょう。
開示請求では、裁判手続きが必要になることが多いので、インターネットトラブルの対応をしている弁護士に依頼することで、迅速な対応ができます。
投稿者を特定した後の損害賠償請求でも、法的な知識が必要ですので、弁護士に依頼することで、早期解決につながります。
警察
身の危険を感じている場合や、犯人を処罰してほしい場合は、警察に相談してみてください。
刑法犯罪に該当するのであれば、対応してもらえる可能性があります。
警察庁が運営している、インターネット上の犯罪を捜査するための窓口である、サイバー犯罪相談窓口に相談してみるのもいいでしょう。
まとめ
IPアドレスでどこまで特定できるのか?については、以下のとおりです。
- 基本的には、氏名・住所は特定できない
- 国や地域までは推定できる場合がある
- 接続したプロバイダを特定することはできる
IPアドレスを特定する方法は、以下のとおりです。
- サイト管理者へ発信者情報開示請求
- 裁判所へ発信者情報開示仮処分申立
IPアドレスから個人情報を特定する方法は、以下のとおりです。
- 接続プロバイダをWHOISで検索
- 接続プロバイダへ発信者情報開示請求
- 裁判所へ発信者情報開示請求訴訟提起
IPアドレスだけでは投稿者を特定できませんので、投稿者を特定して損害賠償請求をしたいと考えている人は、弁護士に依頼することを検討してみてください。