発信者情報開示請求にかかる費用はいくら?内訳や相場を紹介

インターネット上で誹謗中傷や名誉棄損を受けた場合、発信者情報開示請求により、情報を発信した人(発信者)を特定できる場合があります。

発信者情報開示請求で発信者を特定するためには、どのくらいの費用が必要になるのでしょうか。

この記事では、発信者情報にかかる費用について、以下の点を解説します。

  • 発信者情報開示請求にかかる費用の内訳と相場
  • 発信者情報開示請求にかかる弁護士費用の相場
  • 発信者情報開示請求にかかった費用は特定した発信者に請求できる?

発信者情報開示請求をご検討中の方は、ぜひご参考になさってください。

目次

発信者情報開示請求にかかる費用の内訳と相場

ここでは、発信者情報開示請求にかかる費用の内訳と相場を解説します。

発信者開示請求では、多くのケースで仮処分や訴訟が必要になります。ウェブフォーム・電子メール等での開示請求やプロバイダ責任制限法ガイドラインに則った開示請求では、サイト管理者等が任意の開示に応じることはほとんどないからです。

法的手続きを用いた発信者情報開示請求には、次の2つの方法があります。

  1. 発信者情報開示請求の仮処分の申立て
  2. 発信者情報開示請求訴訟の提起

各手続きに必要な実費(裁判所に納める費用)を確認しましょう。

仮処分を申立てる場合の実費|10~30万円

仮処分の申立てには、次の費用が必要です。

  • 収入印紙:2,000円
  • 予納郵券:1,000円~2,000円
  • 供託金:10~30万円

仮処分の申立てでは、債権者側の主張が認められると、担保決定がなされます。債権者は、仮処分決定発令のために裁判所が決定した金額を担保金として納めなければなりません。

担保金の額は、事案によって異なりますが、発信者情報開示の仮処分の場合は10万円~30万円となることが多いです。

なお、削除の仮処分や発信者情報消去禁止仮処分を申立てる場合の担保金額の基準は、概ね以下のとおりです。

  • 削除の仮処分:30~50万円
  • 発信者情報消去禁止仮処分:10~30万円

いずれも、対象とする投稿の分量が多い場合(掲示板であれば30~40レスを超える場合等)や、無審尋による発令の場合は、金額が増額されることもあります。

担保金は、事件終了後、裁判所から担保取消決定や担保取戻しの許可を得ることで、返還を受けられるのが通常です。

訴訟を提起する場合の実費|2万円程度

発信者情報開示請求訴訟の提起に必要な費用は、以下のとおりです。

  • 収入印紙:1万3,000円
  • 予納郵券:6,000円前後

予納郵券(郵便切手)の額は、裁判所によって異なりますので、事前に確認しましょう。

発信者情報開示請求にかかる弁護士費用の相場

ここでは、発信者情報開示請求にかかる弁護士費用の相場を解説します。

任意開示請求の場合|15~30万円

サイト管理者やプロバイダへの任意開示請求にかかる弁護士費用の相場は、以下のとおりです。

  • 着手金:5~10万円程度
  • 成功報酬:10~20万円程度

対象とする投稿の分量や発信者の数・事案の複雑さによって金額が異なる場合がありますので、実際に依頼する弁護士に確認しましょう。

仮処分命令の申立てが必要な場合|30~60万円

仮処分命令の申立てが必要な場合の弁護士費用の相場は、以下のとおりです。

  • 着手金:20~40万円程度
  • 成功報酬:10~20万円程度

対象とする投稿の分量や発信者の数・事案の複雑さによって金額が異なる場合がありますので、実際に依頼する弁護士に確認しましょう。

発信者情報開示請求訴訟を提起する場合|30~50万円

発信者情報開示請求訴訟の提起にかかる弁護士費用の相場は、以下のとおりです。

  • 着手金:20~30万円程度
  • 成功報酬:10~20万円程度

対象とする投稿の分量や発信者の数・事案の複雑さによって金額が異なる場合がありますので、実際に依頼する弁護士に確認しましょう。

損害賠償請求を提起する場合|20~30万円以上

インターネット上で誹謗中傷等の被害を受けた個人や企業は、発信者情報開示請求による発信者特定後、発信者に対して不法行為に基づく損害賠償を請求できます。

弁護士に損害賠償請求訴訟を依頼する場合の弁護士費用の相場は、以下のとおりです。

  • 着手金:20~30万円程度
  • 報酬金:経済的利益の16%程度

成功報酬の額は、実際に得られた金額(裁判所の認容額)に応じて異なります。法律事務所によっては、固定額の報酬金が定められている場合もあります。

なお、インターネット上の誹謗中傷等による損害賠償金(慰謝料)の相場は、数十万円〜100万円程度です。

刑事告訴する場合の費用|30~60万円

インターネット上で悪質な誹謗中傷等の被害を受けた個人や企業は、発信者情報開示請求による発信者特定後、刑事告訴を提訴することも可能です。

弁護士に刑事告訴を依頼する場合の弁護士費用の相場は、以下のとおりです。

  • 着手金:10~30万円程度
  • 報酬金:20~30万円程度

対象とする投稿の分量や発信者の数・事案の複雑さによって金額が異なる場合がありますので、実際に依頼する弁護士に確認しましょう。

発信者情報開示請求にかかった弁護士費用は特定した発信者に請求できる?

ここでは、発信者情報開示請求にかかった弁護士費用を発信者に請求できるかどうかを解説します。

不法行為に基づく損害賠償として請求認容額の10%程度を請求できる可能性がある

インターネット上の名誉棄損等を理由とする発信者への損害賠償請求においては、請求認容額の10%程度であれば、弁護士費用を発信者に請求できる可能性があります。

不法行為に基づく損害賠償請求について、判例は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、弁護士費用についても相手方に請求できると示しています(最高裁判所昭和44年2月27日付判決)。

一般には、弁護士費用を除いた請求認容額の10%程度を、弁護士費用として相手方に請求できる余地があると考えられています。

開示請求にかかる弁護士費用全額の請求を認めた事例もある

損害賠償請求の認容額の10%程度では、開示請求に要した弁護士費用を十分に補填できない可能性が低くありません。発信者の特定にはさまざまな手続きが必要であるため、開示請求にかかる弁護士費用に30万円~80万円程度かかることがあるからです。

このような開示請求に要した弁護士費用も発信者に請求できる可能性があります。

東京高等裁判所平成24年6月28日判決では、以下の手続きに要した弁護士費用全額が、不法行為と相当因果関係のある存在と認められ、被告(発信者)に支払いが命じられました。

  • IPアドレスの発信者情報開示の仮処分
  • 住所氏名の発信者情報開示請求訴訟
  • 削除の仮処分
  • 仮処分
  • 発信者情報消去禁止仮処分

上記判例以外にも、開示請求にかかった弁護士費用を、不法行為(名誉棄損等)と相当因果関係のある損害と認める判例が多数あります。

インターネット上の誹謗中傷に基づく損害賠償請求においては、発信者を特定するために必要な手続きには法律の専門的知識が不可欠で、弁護士に手続きを委任せざるを得ないからです。

まとめ

インターネット上で誹謗中傷等による被害を受けた場合には、投稿者に対する損害賠償請求に先立ち、発信者情報開示請求を行う必要があります。

発信者情報開示請求を弁護士に依頼する場合は、弁護士費用がかかります。

開示請求に要した弁護士費用は、損害賠償請求に際して、発信者にその一部又は全部を請求できる余地があります。

必ずしも開示請求に要した費用全額を相手方に請求できるわけではありませんが、この点も踏まえて発信者情報開示請求を検討されてみると良いでしょう。

インターネット上の悪質な投稿により被害に遭われた方は、ネクスパート法律事務所にご相談ください。ネット上の誹謗中傷に関する知識・経験が豊富な弁護士が、スムーズな解決を全力でサポートします。

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