消滅時効援用通知書の書き方や注意点を解説|テンプレートあり!
借金も時効で消滅しますが、年月が経過しただけで時効が成立するわけではありません。時効を成立させるためには、時効援用の意思表示が必要です。
この記事では、消滅時効援用通知書ついて、次の点を解説します。
- 消滅時効援用通知書のテンプレート・記載例
- 消滅時効援用通知書を送らなければ借金は消滅しない?
- 消滅時効援用通知書の書き方
- 消滅時効援用通知書を送る際の注意点
ご自身が抱える借金が時効を迎える可能性がある方は、ぜひご参考になさってください。
目次
消滅時効援用通知書のテンプレート・記載例
ここでは、消滅時効援用通知書のテンプレートや記載例をご紹介します。
消滅時効援用通知書のテンプレート
以下から消滅時効援用通知書(内容証明:窓口差出用)のテンプレートをダウンロードしていただけます。
※詳細はこちらをご参照ください。内容証明 ご利用の条件等|郵便局
消滅時効援用通知書の記載例
消滅時効援用通知書(記載例)
令和〇年〇月〇日
〇〇県〇〇市〇〇町〇番〇号 〇〇〇ビル〇階 〇〇〇〇株式会社 代表者代表取締役 〇〇〇〇殿
〇〇県〇〇市〇〇町〇番〇号 (差出人)〇 〇 〇 〇 印 電話番号〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇
前略 貴社は私に対し、下記記載の貸金債権を有している旨主張しておられますが、私が貴社より借入れた当該債務については、既に消滅時効期間が経過しており、時効が完成しております。 記 契約番号:〇〇〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇 債務者:〇〇〇〇(昭和〇〇年〇月〇日生) 借入日:平成〇〇年〇月〇日 当初借入額:〇〇万円
つきましては、私は貴社に対し、本通知書をもって上記貸金債権について、消滅時効を援用しますので、その旨ご通知いたします。 貴社におかれましては、本書面を受領後速やかに信用情報機関宛てに適切な通知をして、登録された事故情報を抹消されますよう、併せてお願い申し上げます。 なお、本書面は債務の存在を承認するものではありませんので、その旨ご承知おきください。 草々 |
消滅時効援用通知書を送らなければ借金は消滅しない?
ここでは、消滅時効と時効の援用について解説します。
消滅時効とは
消滅時効とは、債権者が一定期間その権利を行使しない場合に、権利を失うことを定めた制度です(民法166条)。
2020年4月の民法改正により、消滅時効に関するルールが一部変更されました。2020年4月1日以前の借入れと、2020年4月1日以降の借入れでは、消滅時効の期間が異なります。
2020年3月31日以前の借入 | 2020年4月1日以後の借入 |
---|---|
・債権者が貸金業者 ・消費者金融 ・銀行等の場合は5年 ・債権者が個人・信用金庫・住宅金融支援機構の場合は10年 |
次のいずれかの早い方
・債権者が権利を行使できることを知ったときから5年 ・債権者が権利を行使できるときから10年 |
詳細は下記関連記事をご参照ください。
消滅時効の援用とは
時効の援用とは、時効の完成によって利益を受ける者(債務者)が、消滅時効の制度を利用することを、相手方(債権者)に伝えることです。消滅時効によって借金の返済義務を消滅させるには、時効の援用を行わなければなりません。
時効援用の意思表示の方法は、口頭・書面のいずれでも可能です。ただし、口頭では証拠が残らないため、通常は、時効援用通知書を作成して債権者に送付します。
消滅時効援用通知書の書き方
消滅時効援用通知書はどのように書けばよいのでしょうか。
ここでは、消滅時効援用通知書の書き方を解説します。
消滅時効援用通知書に記載すべき事項
消滅時効援用通知書に記載すべき事項は、以下のとおりです。
- 差出人の住所・氏名・連絡先
- 債権を特定する情報
- 消滅時効が完成していること
- 消滅時効を援用すること
- 時効援用通知書を送付する日付
ひとつずつ説明します。
差出人の住所・氏名・連絡先
消滅時効援用通知書には、時効援用の意思表示をする方(債務者)を特定する情報を書きましょう。
具体的には、次の事項を記載します。
- 住所
- 氏名
- 生年月日
債権を特定する情報
時効を援用するためには、どの借金について消滅時効が完成しているかを特定しなければなりません。特に、同じ債権者から複数の借り入れがある場合は、明確に特定しなければ時効の援用の意思表示として認められない可能性があるので注意しましょう。
具体的には、債権を特定する情報として、次の事項を記載します。
- 債権者の氏名・名称
- 会員番号または契約番号
- 契約日または借入日
- 契約金額または借入金額
消滅時効が完成していること
時効の援用を意思表示する場合は、時効が完成していることを消滅時効援用通知書に記載しなければなりません。
消滅時効が完成していることが分かる情報として、時効の起算日を書き、その起算日から時効期間が経過していることを記載しましょう。
時効の起算日は、返済期限の定め・返済の有無によって異なりますので、後ほど詳述します。
消滅時効を援用すること
消滅時効援用通知書には、時効が完成したことだけでなく、時効を援用する旨の意思表示を記載しなければなりません。
「時効を援用します」などの文言を必ず記載しましょう。
時効援用通知書を送付する日付
時効援用通知書を送付する日付を書面に明記しましょう。
消滅時効援用通知書に記載しておくとよい事項
信用情報機関からの登録削除依頼
必須記載項目ではありませんが、信用情報機関からの登録削除を依頼する旨を記載することをおすすめします。
信用情報機関に登録される信用情報は、加盟機関(債権者)からの報告によって抹消されるため、債権者から信用情報機関に対し、登録情報の削除依頼をしてもらわなければなりません。
具体的には、「本書面受領後、速やかに信用情報機関に対し、登録された事故情報の抹消手続きを行っていただけますようお願いします。」などと記載します。
消滅時効援用通知書を送る際の注意点
ここでは、時効援用通知書を送る際の注意点について解説します。
内容証明郵便で送る
時効援用の意思表示は、口頭・書面のいずれの方法でも可能です。一般的には時効援用通知書を配達証明付き内容証明郵便で送ります。配達証明付き内容証明郵便とは、文書の内容や配達の事実を郵便局が証明する郵便方法です。
内容証明郵便は、郵便局の窓口または電子内容証明で発送できます。詳細は下記をご参照ください。
内容証明の差出方法等を教えてください。 – 日本郵便 (japanpost.jp)
e内容証明(電子内容証明) – 日本郵便 (japanpost.jp)
消滅時効援用通知書を内容証明郵便で送付する場合の書式
内容証明郵便の謄本の作成方法には、いくつかのルールがあります。
字数・行数
縦書きの場合は、1行20字以内、1枚26行以内で作成しなければなりません。
横書きの場合は、次のいずれかの字数・行数で作成する必要があります。
- 1行20字以内、1枚26行以内
- 1行13字以内、1枚40行以内
- 1行26字以内、1枚20行以内
カッコ、句読点、その他の記号も1字としてカウントされます。
訂正方法
謄本の文字または記号を訂正・挿入・削除するときは、欄外または末尾の余白に次のように記載し、同じく欄外に差出人の印を押印します。
- 〇字訂正
- 〇字削除
- 〇字加入
契印
謄本の枚数が2枚以上にわたるときは、その綴目に契印しなければなりません。
差出人及び受取人の住所氏名の記載と押印
謄本には、郵便物の差出人及び受取人の住所氏名をその末尾または余白に記載します。
差出人の氏名の後に押印が必要です。差出人の押印は実印である必要はなく、認印でも問題ありません(シャチハタ不可)。
内容証明 ご利用の条件等 – 日本郵便 (japanpost.jp)
時効が完成しているか確認する
時効援用通知書を送る前に、時効が完成しているかどうかを十分確認しましょう
時効完成前に債権者に時効援用通知書を送ると、債権者から遅延損害金を含めた借金の残高を一括請求されるおそれがあります。
時効が完成しているかどうかは、次の2点から確認します。
- 時効の起算点
- 時効の更新の有無
ひとつずつ説明します。
時効の起算日
時効期間は、次のいずれかの時点から進行します。
- 債権者が権利を行使することができることを知ったとき
- 債権者が権利を行使することができるとき
具体的な起算日は、以下の表をご確認ください。
契約の内容や返済の有無 | 消滅時効の起算日 |
返済期日を定めた契約で、一度も返済しなかった場合 | 初回の返済期日の翌日 |
返済期日を定めた契約で、一回以上返済した場合 | 返済できなかった返済期日の翌日 |
返済期日を定めない契約で、一度も返済しなかった場合 | 契約日の翌日 |
返済期日を定めない契約で、一回以上返済した場合 | 最終返済日の翌日 |
時効の更新の有無
時効の起算日から5年または10年が経過していても、時効が完成しないケースがあります。
以下の事由がある場合、時効の更新(もしくは完成猶予)により、時効のカウントがリセットされることがあるからです。
- 債務の承認
- 催告
- 裁判上の請求・支払督促
- 強制執行
ひとつずつ説明します。
債務の承認
債務を承認すると時効が更新します。債務の承認とは、次のような行為です。
- 口頭または文書により借金の存在を認めること
- 借金の一部を返済すること
- 返済猶予を求めるなど返済の意思表示をすること
「後日必ず返すから返済を待って欲しい」と債権者に告げたり、1円でも返済したりすれば、債務を承認したとみなされます。
催告
債権者が債務者に対し、裁判外で返済を求めた場合は、その時点から6か月間は時効の進行がストップします。その後、6か月以内に訴訟提起や支払督促の申立てがあれば時効は正式に更新します。
裁判上の請求・支払督促
債権者が訴訟を提起したり、支払督促を申立てたりした場合は、その手続きが継続している間は時効が成立しません(時効の完成猶予)。以下のとおり債権者の権利が確定した時点で、時効が更新されます。
- 判決が確定したとき又は裁判上の和解が成立したとき
- 支払督促が確定したとき
確定判決や裁判上の和解、支払督促が確定した場合は、以後10年間時効が成立しません。
取下げ等によって手続きが途中で終了した場合は、その終了時から6か月が経過するまでは時効は完成しません。
強制執行
債権者が、債務者の財産について差し押さえを申立てた場合も、その手続きが継続している間は時効が成立しません(時効の完成猶予)。申立てが取下げられずに手続きが終了すれば、その終了時に時効が更新されます。
債権者が、仮差し押さえを申立てた場合は、その手続きの終了時から6か月間は時効の完成が猶予されます。
時効援用の結果の確認は慎重に
消滅時効援用通知書を配達証明付き内容証明郵便で送付した後、2週間~1か月経っても債権者から連絡がなければ、基本的には債権者が時効の援用を承認したとみなしてよいでしょう。
時効を援用できたか気になり、債権者に直接連絡すると、債務の承認支払いの約束を取られるリスクもあります。
時効期間が経過した後に借金の一部を弁済した場合は、時効の援用権を放棄したとみなされる可能性があるため、時効援用の結果確認は慎重に検討しましょう。
まとめ
時効を援用する場合は、確実に時効が成立していることを確かめてから行いましょう。
時効が成立前に消滅時効援用通知書を送付すると、債権者に居場所を知られたり、遅延損害金を含めた残金を一括請求されたりするおそれがあります。
時効が完成しているかどうかや、時効援用通知書の書き方について不安がある場合は、弁護士に相談することをおすすめします。