任意整理の将来利息とは?将来利息以外にカットできる利息は?
任意整理とは、債権者と交渉し、将来利息のカットや返済期間を延長してもらうことで、毎月の返済負担を軽減する手続きです。
将来利息とは具体的にどのようなものなのでしょうか?将来利息をカットしてもらうための条件はあるのでしょうか?
この記事では、任意整理の将来利息について、以下のとおり解説します。
- 任意整理では将来利息がカットされる?
- 将来利息以外に任意整理で減額・免除できる利息とは?
- 任意整理ではなぜ将来利息をカットしてもらえるの?
- 将来利息は任意整理で必ずカットされる?
- 任意整理で将来利息がカットされないケースとは?
- 任意整理で将来利息をカットするには弁護士の交渉力が不可欠
任意整理を検討中の方は、ぜひご参考になさってください。
目次
任意整理では将来利息がカットされる?
ここでは、任意整理で借金を減額する仕組みの一つである将来利息について解説します。
将来利息とは?
将来利息とは、どういう利息なのでしょうか。
残っている元金に対して将来発生する利息
将来利息は、借金の残元金に対して将来発生する利息を指します。具体的には、任意整理による和解日以降に発生する利息です。
借金に対する利息は、通常、返済が終わるまで負担し続けなければなりません。しかし、任意整理で債権者に合意が得られれば、将来利息の支払いが免除されます。
将来発生する利息をカットしてもらうことで、総返済額を減らせるため、毎月の負担も軽減されます。
将来利息以外に任意整理で減額・免除できる利息とは?
ここでは、将来利息以外に任意整理で減額・免除できる利息を解説します。
将来利息の他に、任意整理で減額や免除を交渉する利息には以下のものがあります。
- 利息制限法の上限利率を超えた利息
- 最終返済日から和解日までの経過利息
- 最終返済日から和解日までの延滞利息(遅延損害金)
ひとつずつ説明します。
利息制限法の上限利率を超えた利息
任意整理では、利息制限法の上限金利を超える取引があれば、同法の適正利率で引き直し計算を行います。法定の上限を超える利息は、本来支払う必要がないからです。払い過ぎた利息を元金に充当することで借金を減額します。
利息制限法とは、借金にかかる利息に関して、その上限を定める法律です。金融機関は、この法律で定められた金利の上限を超えて貸し付けることを禁止されています。
その上限は貸付金額に応じて定められており、以下のとおり、借金の金額が増えるほど利率が小さくなります。
- 元本が10万円未満の借金:年20%まで
- 元本が10万円以上100万円未満の借金:年18%まで
- 元本が100万円以上の借金:年15%まで
最終返済日から和解日までの経過利息
経過利息とは、最終返済日から任意整理による和解日までに発生する利息です。
任意整理では、原則として経過利息の免除を債権者に交渉します。
最終返済日から和解日までの延滞利息(遅延損害金)
遅延損害金とは、借金を滞納した場合にかかる損害賠償金の一つです。返済期日に返済できなかった場合、その翌日から遅延損害金が発生します。完済するまで支払えなかった元本に対して上限年20%の損害金が上乗せされます。
任意整理では、原則として和解日までの遅延損害金の免除を債権者に交渉します。

任意整理ではなぜ将来利息をカットしてもらえるの?
利息は本来、貸金業者の売上になるお金です。将来利息をカットすると、貸金業者も損をするのに、なぜ貸金業者は将来利息カットに応じてくれるのでしょうか?
ここでは、任意整理で将来利息をカットしてもらえる理由を解説します。
任意整理は貸金業者にとってもメリットがある
任意整理は、個人再生や自己破産に比べ、債権者側の損失を抑えられます。
債務者が自己破産すると貸したお金の全てを、個人再生すると約8割が回収不能となりますが、任意整理では、少なくとも元本が回収できるからです。
将来利息は任意整理で必ずカットされる?
ここでは、任意整理において将来利息は必ずカットされるかどうかを解説します。
将来利息のカットに応じない債権者もいる
任意整理しても、債権者の合意が得られなければ将来利息をカットできません。
弁護士に任意整理を依頼すると、弁護士は弁護士会の統一基準に則り、債権者への和解案の提示に際し、遅延損害金や将来利息の免除を求めます。大手の貸金業者であれば、この統一基準に従って和解交渉に応じてくれますが、中には、将来利息のカットを拒む貸金業者もいます。
弁護士会の統一基準に法的拘束力はなく、統一基準とは異なる条件で和解しても債権者に罰則が科されることはないからです。
将来利息はカットしても経過利息をカットしない債権者もいる
債権者によっては、将来利息はカットしても和解日までの経過利息はカットしないケースがあります。会社の方針で経過利息のカットに応じない債権者も珍しくありません。
任意整理で将来利息がカットされないケースとは?
ここでは、任意整理で将来利息がカットされない可能性があるケースを紹介します。
取引期間が1年以下の場合
取引期間が短い場合は、将来利息のカットに応じてもらえない可能性があります。債権者の立場からすれば、最初から踏み倒すつもりだったのではないかと疑われることがあるからです。
ほとんど返済額していない場合
次のようなケースでは、将来利息のカットに応じてもらえない可能性が高くなります。
- お金を借りてから一度も返済していない
- お金を借りてから数回しか返済していない
和解後の債権者との間で2回目の任意整理(再和解)をする場合
一度任意整理によって和解した債権者との間で、和解内容を変更して再度任意整理(再和解交渉)する場合では、1度目に既に将来利息がカットされているので、借金そのものは減額できません。そもそも再和解に応じるかどうかは完全に債権者次第となりますが、再和解に応じてもらうにしても、再和解の条件として将来利息の付加を求められたり、懈怠約款に基づく再和解日までの遅延損害金の支払いを求められたりすることがほとんどです。
既に差し押さえを受けている場合
借金滞納により既に差し押さえを受けている場合は、原則として任意整理による解決が困難です。将来利息のカットどころか、任意整理そのものに応じてもらえない可能性があります。
債権者の経営状況が厳しい場合
債権者の経営状況が厳しい場合は、将来利息のカットに応じない可能性が高いです。
債権者のグループ企業全体が任意整理に応じない方針を打ち出している場合
新規貸付を受け付けておらず債権回収のみ対応している貸金業者などでは、企業全体の方針として将来利息をカットしない傾向があります。
任意整理で将来利息をカットするには弁護士の交渉力が不可欠
ここでは、任意整理で将来利息をカットするために必要な交渉力について解説します。
自力で交渉すると不利な条件で和解せざるを得ない可能性がある
任意整理で将来利息のカットを実現させるためには、交渉力が不可欠です。借金や利息に関する知識がないまま、自力で交渉に挑むと、将来利息のカットどころか不利な条件で和解が成立してしまう可能性もあります。
弁護士に依頼すれば利息のカット以外の交渉(返済期間の延長)も可能
任意整理は、知識や経験が豊富な弁護士に相談・依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼すれば、法律の知識や実務経験を駆使して、利息のカットのほか返済期間の延長等も交渉してもらえます。
まとめ
今回は任意整理の将来利息について紹介しました。債権者にとっては、他の債務整理に比べて損失が少ないため、任意整理で将来利息のカットに応じてくれるケースがほとんどです。
ただし、必ずしも将来利息がカットされるわけではありません。
任意整理は、交渉の知識や経験・実績が豊富な弁護士に依頼しましょう。