債務整理を自分でする場合の注意点・リスク・対処法を解説
債務整理は、弁護士に手続きを依頼することが一般的です。
しかし、「弁護士費用を払う余裕がないから自分でしたい」と考える方もいらっしゃいます。
債務整理は、必ず専門家を通さなければならないわけではありません。しかし、自分でするためには、債務整理に関する知識が不可欠です。自力で進める前に知っておくべき注意点があります。
この記事では、債務整理を自分でする場合の注意点を次のとおり解説します。
- 債務整理を自分でする場合の注意点
- 任意整理は自分でできる?
- 個人再生は自分でできる?
- 自己破産は自分でできる?
- 債務整理を自分でできない場合の対処法
- 債務整理を弁護士に依頼するメリット
目次
債務整理を自分でする場合の注意点
債務整理を自分でする前に把握しておくべき事項があります。
ここでは、債務整理全般に共通する注意点として次の4つを紹介します。
- 取立てを止められない
- 取引履歴の開示に時間がかかる
- 引き直し計算で計算ミスが生じる可能性がある
- 周囲の人に気づかれる可能性がある
ひとつずつ見てみましょう。
取立てを止められない
弁護士を通さずに自分で債務整理すると、債権者からの取立てを止められません。債務整理は、書類の準備や債権者・裁判所とのやり取りが必要です。その間も取り立てが続くため、精神的に負担がかかります。
弁護士に依頼すれば、債権者からの取立てを止められます。法律上、弁護士からの受任通知を受領した貸金業者・債権回収会社は、債務者本人へ連絡・督促してはならないと定められているからです。
取引履歴の開示に時間がかかる
債務整理は、取引履歴を取り寄せることからスタートします。しかし、全ての債権者が誠実に対応してくれるとは限りません。
不完全な取引履歴の開示はタイムロスに繋がる
次のようなケースでは、債権者に対して再度の開示請求が必要となり、タイムロスが生じます。
- 開示を拒否する・応答しない
- 債務残高しか明らかにしない
- 数ヶ月分の履歴しか開示しない
- 借り換え前の取引を開示しない
- 完済した取引を開示しない
正確な借金の額を把握するためには、過去の全ての取引を確認しなければなりません。しかし、自分で債務整理すると、債権者から開示されたものに不備・不足があっても、気づけない可能性があります。
弁護士に依頼すれば、開示された書類に不自然な点があれば、それに気づき適切な対処がとれます。
弁護士が請求した場合に開示される取引履歴と様式が異なる場合がある
本人が請求する場合と弁護士が請求する場合で、開示される取引履歴の様式が次のように異なる場合もあります。
- 弁護士による請求:借入と返済を分けて表記している
- 本人による請求:時系列に沿った表記で借入と返済が分けられていない
取引履歴の様式が異なると、読み込みに膨大な時間がかかります。
引き直し計算で計算ミスが生じる可能性がある
近年はインターネット上で引き直し計算ソフトをダウンロードできるので、自分で引き直し計算ができます。しかし、自分で計算すると、次のような理由で正確な借入残高が計算できない可能性があります。
- 入力ミスに気づけない
- 計算を間違える
- 取引履歴を正確に読み取れない
計算ミスを見落としたまま和解してしまうと、本来払わなくてよいお金を払うことになる可能性もあります。
弁護士に依頼すれば、そのような心配はありません。一度完済した後に再び借入した場合も、取引の分断にあたるのか、一連の取引となるのかを判断し、正確な借入残高が把握できます。
周囲の人に気づかれる可能性がある
自分で債務整理すると、債権者や裁判所からの連絡には自ら対応しなければなりません。
債権者・裁判所からの電話や郵便物により、家族に知られる可能性があります。
任意整理は自分でできる?
任意整理は、債権者と交渉して返済方法を変更してもらう手続きです。弁護士を通さず自ら行うこともできます。ただし、自分で任意整理する場合のデメリットもあります。
ここでは、任意整理を自分でする場合の注意点を解説します。
対等な交渉が出来ない
債権者は、お金の貸し借りに関する専門的な知識を持っています。債務者本人が任意整理の減額の仕組みを理解していなければ、不利な条件で和解を求められる可能性があります。
専門知識があったとしても、お金を借りている立場上、対等に交渉するのは心理的に難しいでしょう。
債権者によっては、社内規定により本人による交渉には応じないと定めているところもあります。
個人再生は自分でできる?
個人再生は、裁判所を通して借金を概ね5分の1に減額する手続きです。自分で申立てられますが、専門家を頼らず自力で進めるには難易度が高い手続きです。
ここでは、自分で個人再生する場合の注意点を紹介します。
失敗するリスクが高くなる
自分で申立てると、失敗するリスクが高まります。自分で手続きした場合の代表的な失敗例は次の3つです。
- 申立書類が受理されない
- 提出期限を守れず手続きが打ち切られる
- 返済計画に問題があり再生計画が不認可となる
ひとつずつ説明します。
申立書類が受理されない
個人再生の申立要件を正しく理解していないと、裁判所から門前払いされます。
次のような場合、裁判所が申立書類を受理せず、申立てを棄却・却下する可能性があります。
- 申立書類に不備がある
- 申立ての要件を満たしていない
- 費用を期限までに納付できなかった
提出期限を守れず手続きが打ち切られる
個人再生では、様々な書類を不備なく準備し、期限までに提出しなければなりません。期限を守っても、書類に不備があると手続きが廃止される可能性があります。
- 提出期限までに再生計画案を提出できなかった
- 提出した再生計画案に不備があったが指定期日までに修正できなかった
- 財産目録の記載漏れがあった
返済計画・返済能力に問題があり再生計画が不認可となる
提出期限までに再生計画案を提出しても、内容に問題があれば不認可となることがあります。裁判所が再生計画を不許可にするのは次のようなケースです。
- 再生計画案の返済額が最低弁済額を満たしていなかった
- 裁判所に再生計画を実行できる資力がないと判断された
- 債権者の反対意見が過半数を超え再生計画が否決された(小規模個人再生の場合)
個人再生委員が選任される
裁判所によっても異なりますが、自分で申立てた場合は、原則として個人再生委員が選任されます。
個人再生委員は、本人が再生手続きを進めるにあたり指導・監督し、裁判所に意見を述べます。個人再生委員の意見者は、裁判所の判断に影響を及ぼします。
予納金が高くなる
個人再生委員が選任されると報酬が発生します。裁判所にもよりますが本人申立ての場合、個人再生委員の報酬は概ね25万円です。
裁判所によりますが、弁護士が就いている場合、個人再生委員の報酬は、概ね15万円です。
自己破産は自分でできる?
自己破産は、裁判所の免責を得て借金の返済義務を免除してもらう手続きです。自分で申立てられますが、専門家を頼らず自力で進めるには難易度が高い手続きです。
失敗するリスクが高くなる
自己破産は、申立てさえすれば免責が認められるものではありません。自分で申立てると、失敗するリスクが高まります。自分で手続きした場合の代表的な失敗例は次の3つです。
- 支払不能と認められない
- 債権者一覧表に記載漏れがある
- 免責不許可事由がある場合に適切な対応が取れない
ひとつずつ説明します。
支払不能と認められない
債務者が支払不能の状態にある場合に破産手続きが開始されます。自分で払えないと思うだけでは支払不能の状態にあるといえません。
裁判所に借金を返済できるだけの資力があると判断されると、申立てが退けられることがあります。
債権者一覧表に記載漏れがある
債務者が知りながら債権者一覧表に記載しなかった債権は、原則として非免責債権に該当します。債権者一覧表から漏れた借金の返済義務は免除されません。
免責不許可事由がある場合に適切な対応が取れない
免責不許可事由がある場合、裁判官の裁量による免責を受けるために何をすればよいか分からず、適切な対応を取れない可能性があります。
裁判所は、様々な調査を経て本人の経済的更生のために借金を免除することが不可欠と判断した場合に、免責を認めます。免責不許可事由がある場合、裁量免責を求めて手続きを進めなければなりません。
手続がスムーズに進まない可能性がある
自己破産を自分ですると、手続きがスムーズに進まず経済的更生が遅れる可能性があります。手続きが円滑に進まない理由は、次のとおりです。
- 書類の収集に手間や労力がかかる
- 手続きを迅速化する制度を利用できない
ひとつずつ説明します。
書類の収集に手間や労力がかかる
自己破産を自分ですると、書類の準備・作成や裁判所とのやり取りの全てを自分で対応しなければなりません。専門的な内容が書かれた書類の意味を理解して内容を記入するだけでも膨大な時間がかかります。
手続きを迅速化する制度を利用できない
弁護士に依頼した場合と比べて手続きが遅れてしまうことがあります。
本人申立ての場合、弁護士に依頼した場合に利用できる次の2つの制度が利用できないからです。
- 即日面接制度:申立日に裁判官と面談する制度
- 少額管財制度:手続きを簡素化し費用を安くする制度
予納金が高くなる場合がある
自分で手続きすると、原則として破産管財人が選任されます。破産管財人が選任されると、その報酬として引継予納金を支払わなければなりません。少額管財制度を利用できないため、50万円以上の予納金を準備しなければならない可能性があります。
債務整理を自分でできない場合の対処法
ここでは、債務整理を自分でできない場合の対象法を紹介します。
特定調停を選択する
特定調停は、簡易裁判所の調停委員を交えて債権者と借金の返済方法を話し合う手続きです。調停では調停委員会が仲介役となるので、法律の知識が乏しくても利用できます。
弁護士に依頼する
弁護士に依頼すれば、手続きの全てを任せられます。弁護士に依頼すると弁護士費用がかかりますが、それ以上のメリットを受けられます。
債務整理を弁護士に依頼するメリット
ここでは、債務整理を弁護士に依頼するメリットを紹介します。
自身に適した債務整理の方法を選択できる
借金を根本的に解決するためには、ご自身に適した手続きを選択することが重要です。
弁護士に依頼して自分に合った解決方法を選べれば、債務整理後の生活再建もしやすくなります。
取立てが止まる
債務整理の依頼を受けた弁護士は、債権者に受任通知を送付します。受任通知は、債権者からの直接の連絡・督促を停止させる効果があります。債権者からの請求が止まることで精神的な負担が軽減されます。
債権者との交渉を任せられる
債権者との交渉は、全て弁護士が引き受けます。交渉にかかる時間・手間・ストレスが軽減されます。
面倒な事務手続きから解放される
債務整理では、様々の書類を取り寄せなければなりません。裁判所に提出書類に不備があれば、修正を求められることもあります。
弁護士に依頼すれば、ご自身で準備するよりも迅速かつ正確な書類を作成・準備できます。
周囲の人に気づかれないよう配慮してもらえる
債務整理を自分ですると、債権者・裁判所からの電話や郵便で周りの人に気づかれる可能性があります。
弁護士に依頼すれば、ご本人の申出に応じて、次のような方法で配慮してもらえます。
- 郵便物の差出人を個人名にする
- 事務所封筒の使用を控える
- 連絡先を携帯電話番号に限定する
- 書類は事務所で受け渡しする
- 重要書類以外はメール添付で送信する
まとめ
債務整理はどの手続きも自分でできますが、費用を抑えようとして自分で行った結果、失敗したり、余計に費用がかったりする可能性があります。
債務整理は専門的な知識が求められます。自力での対応が困難なときは、早めに弁護士に依頼しましょう。
弁護士に依頼することで債権者の督促から解放され、迅速かつスムーズに借金問題を解決できます。