個人再生と任意整理の違いとは?
借金が全て免除される自己破産とは異なり、個人再生と任意整理は、どちらも借金の返済の継続が前提となる手続きです。
では、個人再生と任意整理にはどのような違いがあるのでしょうか。
この記事では、個人整理と任意整理の特徴と相違点をそれぞれ解説します。
目次
個人再生と任意整理の特徴
まずは、個人再生と任意整理の特徴を解説します。
個人再生
個人再生の特徴と個人再生ができる条件は次のとおりです。
個人再生の特徴
個人再生は、裁判所に申立てを行います。
借金を減額し、収入に見合った返済計画を立てます。返済計画が裁判所に認められれば、原則3年(最大5年)で減額後の借金を返済します。
任意整理よりも借金の減額割合が高い(原則、概ね5分の1に縮小する)ことが特徴です。
ただし、返済する金額の最低額が100万円以上と定められているため、借金の総額が100万円以下の場合には、減額のメリットがありません。
その他、次の特徴もあります。
- 自宅不動産を残したまま手続きすることが可能な場合もある
- 自己破産による資格制限・職業制限の対象となる方も利用できる
個人再生ができる条件
個人再生ができる条件は次の4つです。
- 個人の債務者であること
- 将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあること
- 借金の総額(住宅ローンを除く)が5000万円以下であること
- 継続的収入の変動幅が小さいと見込まれること(給与所得者等再生の場合)
任意整理
次に、任意整理の特徴と任意整理ができる条件を解説します。
任意整理の特徴
任意整理は、裁判所が関与しない手続きです。
個々の債権者との直接交渉により合意した内容で借金の返済をします。
弁護士に手続きを依頼した場合、利息制限法に従い再計算(「引き直し計算」といいます。)した金額をベースに、収入の範囲内で返済計画を立てるのが一般的です。
引き直し計算とは、法律で定められた利息の上限に則り、借入当初からの取引の全てを計算しなおす作業です。
利息制限法で定められた利息の上限は、次のとおりです。
- 元本が10万円未満の場合:年20%
- 元本が10万円以上100万円未満の場合:年18%
- 元本が100万円以上の場合:年15%
上記の上限を超える取引があった場合は、引き直し計算により減額した額を、限度内の利息で取引した借金については、合意日までの残高を3~5年をかけて分割返済します。
利息制限法の範囲内の取引であっても、将来利息(合意日以降に発生する利息)をカットされるので、返済総額を減額するメリットがあります。
任意整理ができる条件
任意整理ができる条件は次の3つです。
- 借金の額が比較的少なく、安定した収入が見込めること
- 借金を返済した履歴があること
- 月々の返済額を収入の2~3割(月額)に抑えたうえで、3~5年以内に完済できること
それぞれの条件についての詳細な解説は下記関連記事をご確認ください。
個人再生と任意整理の違い
ここでは、個人再生と任意整理の具体的な相違点を詳しくみていきましょう。
個人再生 | 任意整理 | |
期 間 | ①手続期間 1年~1年半程度
②返済期間 3年~5年 |
①手続期間 3カ月~6カ月程度
②返済期間 3年~5年 |
残せる財産 | 原則、裁判所の指示で処分される財産はありません。
クレジットカードで購入した商品や、ローンを組んで購入した商品等は、債権者から返還を求められる場合があります。 |
クレジットカードで購入した商品や、ローンを組んで購入した商品等は、債権者から返還を求められる場合があります。 |
メリット | ①借金の大幅な減額ができる。
②自宅を残して債務を整理できる。 ③自己破産のように、借金の理由を問われない。 ④自己破産のような資格・職業制限がない。 ⑤債権者の個別の同意が不要である。 ⑥強制執行(給与の差し押さえ等)を停止できる。 |
①裁判所への出頭や書類の提出が不要
②官報には掲載されないので、家族や友人に知られる心配がない。 ③自己破産のように、借金の理由を問われることはない。 ④一部の債権者のみを対象とすることができる。 ⑤自己破産のような資格・職業制限がない。 |
デメリット | ①借金の総額が100万円以下の場合は減額されない。
②生活保護を受給している場合、利用できない。 ③保証人に迷惑がかかる可能性がある。 ④官報への掲載により家族や友人に知られるおそれがある。 ⑤住宅ローンを除く借金の総額が5,000万円を超える場合は利用できない。 ⑥残したい財産がない場合は、手続きを取るメリットが少ない。 ⑦一部の債権者のみを対象とすることができない。 ⑧高価な財産があると返済額が増えることがある。 |
①借金の大幅な減額ができない。
②生活保護を受給している場合、利用できない。 ③保証人がついている借金を対象とする場合、保証人に迷惑がかかる可能性がある。 ④債権者が交渉に応じない場合がある。 ⑤強制執行(給与の差し押さえ等)を停止させる効果がない。 |
上記のとおり、個人再生と任意整理には、違いもありますが、共通点も多くあります。
任意整理後、返済が苦しくなって、個人再生に切り替えられる方も少なくありません。
個人再生と任意整理はどちらが良いのか?
個人再生と任意整理どちらを選択すれば良いのでしょうか?
適切な選択をするためには、専門家に相談されることをおすすめしますが、ここでは判断基準を説明します。
個人再生がおすすめのケース
個人再生がおすすめのケースは次の3つです。
- 借金を大幅に減額したい場合
- 自宅不動産を残したい場合
- 自己破産では制限を受ける資格や職業についている場合
ひとつずつ見ていきましょう。
借金を大幅に減額したい場合
借金の総額が100万円以上の場合には、債務整理よりも大幅な減額ができます。
借金の総額・財産によりますが、概ね5分の1程度に減額できます。
自宅不動産を残したい場合
自己破産とは異なり、裁判所に財産を処分されないので、住宅ローンを支払いながら、自宅を残して借金を整理できます。
自己破産では制限を受ける資格や職業についている場合
個人再生では、資格制限・職業制限がありません。士業(弁護士、税理士、行政書士、社労士等)や生命保険募集人、警備員の方も仕事を続けながら手続きできます。
任意整理がおすすめのケース
任意整理がおすすめのケースは次の3つです。
- 借金の総額が比較的少ない場合
- 継続して安定した収入が得られる場合
- 家族や会社に知られずに債務整理をしたい場合
ひとつずつ見ていきましょう。
借金の総額が比較的少ない場合
借金の総額が年収の3分の1程度(最大でも年収の範囲内)に収まっている場合には、任意整理による分割返済ができる見込みがあります。
継続して安定した収入が得られる場合
任意整理では、毎月決まった金額を3~5年をかけて返済します。月々の返済額を確実に確保できる場合には、任意整理が可能です。
家族や会社に知られずに債務整理をしたい場合
自己破産や個人再生と異なり、官報に個人情報や申立ての事実が掲載されません。よって、他の手続きに比べて、会社や家族・友人に任意整理をしたことを知られる心配が少ないです。
個人再生も任意整理も利用できないのはどんなとき?
個人再生も任意整理も利用できない場合があります。
借金の総額が5,000万円以上の場合
住宅ローンを除く借金の総額が5,000万円を超える場合には、個人再生を利用できません。任意整理についても、減額率が低いことを考慮すれば、現実的に利用は難しいでしょう。この場合には、自己破産を検討しましょう。
生活保護を受給している場合
生活保護は、生活に困窮した人が最低限の生活を営むために活用する目的で支給されます。生活費として支給されるお金のため、生活保護費を借金の返済にあてることは適切ではない、と考えられています。生活保護を受給している方は、借金そのものが免責される自己破産を検討するのが一般的です。
まとめ
個人再生と任意整理には、共通点もあれば、大きな違いも存在します。借金問題を解決するためには、個々の事情に応じて、適切な方法を選択することが重要です。
そのためには、各手続きを熟知している専門家に判断してもらうとよいでしょう。
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