自己破産で賃貸はどうなる?破産後の住居を確保するには
「自己破産すると賃貸中の居住物件から追い出されてしまう?」
「自己破産後、賃貸物件は借りられない?」
自己破産を検討中の方の中には、このような不安を抱く方もいらっしゃるでしょう。
この記事では、次の点を解説します。
- 自己破産をしても賃貸に住み続けられる?
- 自己破産後も新たな賃貸借契約は結べる?
- 自己破産後に賃貸物件を探すコツ
自己破産を検討中の方に限らず、すでに自己破産した方も賃貸物件を借りる際のご参考になさってください。
目次
自己破産をしても賃貸に住み続けられる?
ここでは、自己破産による賃貸借契約への影響を解説します。
自己破産しても原則賃貸借契約は解除されない
原則として、自己破産そのものを理由に、賃貸物件から追い出されることはありません。
改正前の民法では、借主が自己破産すると貸主が賃貸借契約を解約できましたが、平成16年の改正によりその規定が削除されました。
自己破産後に賃貸借契約が解除される可能性があるケース
自己破産により賃貸借契約が解除される可能性があるのは、次のケースです。
- 家賃の滞納がある場合
- 収入に見合わない賃料の物件に住んでいる場合
- 家主が「信頼関係が破壊された」と判断した場合
家賃の滞納がある場合
家賃の滞納している場合、賃貸借契約が解除される可能性があります。
自己破産では、滞納賃料の支払義務も免除されます。このため、貸主は賃貸借契約を解除し、居室の明け渡しを求めることがあります。
借金の返済が困難となった後に滞納賃料を支払った場合、免責不許可事由の一つである偏頗弁済(へんぱべんさい)に該当する可能性があります。
ただし、滞納賃料が1~2ヶ月分であれば、裁判所が返済を認める可能性があります。賃貸物件への居住を継続したい場合は、弁護士に相談しましょう。
収入に見合わない賃料の物件に住んでいる場合
収入に対して賃料が高いと判断された場合、賃貸借契約が解除されることがあります。
免責制度の目的には、破産者の経済的な更生があります。身の丈に合わない生活をすると、再び経済的に困窮する可能性があります。
家賃の金額に明確な基準はありませんが、手取収入の3分の1を超える賃料を支払っている場合は、破産管財人の権限により賃貸借契約が解約される可能性があります。
家主が「信頼関係が破壊された」と判断した場合
契約書の解除条項に「自己破産した場合」との記載があっても、家主は賃貸借契約を解除できません。しかし、次のように信頼関係を破壊する事項があった場合、契約が解除される可能性があります。
- 家主に無断で賃借人の地位を譲渡したとき
- 家主に無断で第三者に転貸したとき
- 賃貸物件の使用目的に違反したとき
- 騒音等近隣の迷惑行為がある場合
自己破産で契約解除されるのを回避するために、家族や友人に賃借人の地位を譲渡したり、転貸したりすると契約が解除されますので注意しましょう。
自己破産後も新たな賃貸借契約は結べる?
自己破産をしても、新たに賃貸借契約を結べます。しかし、自己破産したことが賃貸借契約に影響する場合があります。
ここでは、次の2つにわけて解説します。
- 賃貸人(大家)による審査
- 保証会社による審査
賃貸人(大家)による審査
賃貸物件の契約にあたり、賃貸人(大家)が審査します。
賃貸人に自己破産の事実を告げなければならない法律はありません。賃貸人が問題なく家賃を払えるだろうと判断すれば、審査に通る可能性があります。
ただし、賃貸人の判断基準によっては、審査に通らないこともあります。
保証会社による審査
自己破産すると、家賃保証会社による審査に通らない可能性があります。
特に、信販系の家賃保証会社は、審査時に個人信用情報を照会するため、自己破産したことを把握されます。
自己破産後に賃貸物件を探すコツ
ここでは、自己破産後に賃貸物件を探すコツを紹介します。
連帯保証人を立てて契約できる物件を選ぶ
保証会社を通さず連帯保証人を付けることで、賃貸借契約できる可能性が高まります。連帯保証人は、安定した収入のある家族・親族に限られる場合がほとんどです。事前に連帯保証人になってもらえるか相談しましょう。
敷金を上乗せする
敷金を上乗せすることで、連帯保証人なしで賃貸借契約を締結できる場合があります。
信販系以外の家賃保証会社を利用できる物件を選ぶ
信用情報機関に加盟していない信販系以外の保証会社であれば、審査が通りやすくなります。
次の機関に加盟している家賃保証会社は、原則として独自の基準により審査します。
- 一般社団法人 全国保証機構(CGO)
- 一般社団法人 賃貸保証機構(LGO)
ただし、自己破産により解約された賃貸借契約の保証会社が上記加盟業者に該当する場合は、情報が共有されますので、審査が通らない可能性があります。
保証人不要の公営住宅やUR住宅を選ぶ
都道府県・市町村などの公的機関が運営する公営住宅や、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)が管理するUR住宅は、自己破産後も入居しやすい物件です。
- 公営住宅:保証会社が不要
- UR住宅:保証会社・保証人のいずれも不要
ただし、物件数が限られるため、希望するエリアに空き部屋がないこともあります。UR住宅や公営住宅を探す際は、広範囲のエリアで探すことをおすすめします。
実家や社宅に住む
信用情報機関への事故情報が抹消されるまでの間、実家や社宅に住むのも一つの手段です。
実家に住むことで家賃を抑えることができます。
勤務先に社宅がある場合、社宅の賃借人は勤務先会社となるので、自己破産の前後も審査の心配がありません。

まとめ
自己破産したことを理由に、賃貸借契約が解除されることはありません。しかし、家賃を滞納している場合は、契約が解除される可能性があります。自己破産後も賃貸物件への居住を継続したい場合は、弁護士に相談し対応策のアドバイスを受けましょう。
自己破産後も、賃貸物件を借りられる可能性は十分にあります。この記事を参考に、審査に通りやすい物件を見極めましょう。