自己破産の申し立て(申請)の方法・流れ・注意点を解説

自己破産の申し立て(申請)をしてから完了するまではどのような流れなのでしょうか。
借金の額や現時点の収入によって、必要な手続きや準備は異なります。
今回は、自己破産の申し立て(申請)について、以下の点を中心に解説します。
- 自己破産申し立て(申請)の方法と流れ
- 必要な書類
- 必要な費用
- 注意すべき点
- 申請を弁護士に依頼するメリット
目次
自己破産申立て(申請)の方法と流れ
自己破産は主に同時廃止事件と管財事件の2つがあります。
ここではそれぞれの申し立て(申請)方法と流れを解説します。
同時廃止事件の場合
同時廃止事件とは、破産手続開始決定と同時に廃止決定を行う事件をいいます。廃止決定とは、破産手続きを終了させる決定をいいます。ここでは同時廃止事件の申請方法や流れについて解説します。
弁護士へ相談・依頼
まずは弁護士へ相談・依頼しましょう。
受任通知の送付により取り立てが止まる
依頼を受けた弁護士は、債権者へ受任通知の送付を行います。
貸金業法では、弁護士の受任通知を受けた貸金業者に対し、債務者に対して正当な理由がないにも関わらず返済を要求することを禁じています。
したがってこの段階で債務者は、取り立てや催促に怯えることなく生活の立て直しだけに集中できます。
必要書類の作成
自己破産の申し立て(申請)を行うにあたって、裁判所に提出する必要書類の作成を行います。
申し立て(申請)に必要な書類は裁判所のホームページでも確認できる場合があります。書式は裁判所ごとに異なります。
裁判所への申し立て(申請)
必要な書類を全て揃えたら、裁判所へ申し立て(申請)を行います。
万が一提出書類に不備があった場合、裁判所から追加の提出や説明を求められます。
破産手続き開始
提出書類に不備がなかった場合、裁判所は破産手続開始決定をします。
同時廃止事件の場合、破産開始決定に併せて廃止決定も出します。
免責許可・不許可の決定
裁判所が免責許可・不許可を決定します。
免責許可が確定すると、その時点で自己破産の手続きは終了。抱えていた借金を返済する義務はなくなります。
破産手続開始決定のタイミングで、就ける職業や取得できる資格に制限がかかりますが、免責許可決定により制限がなくなります。
管財事件の場合
管財事件とは、破産管財人が選任される事件をいいます。ここでは管財事件の申し立て(申請)方法や流れについて解説します。
破産手続き開始まで
管財事件も同時廃止事件と同様に、弁護士への相談から破産手続きの開始まで同じ申し立て(申請)の手続きをします。
破産管財人の選定と調査
管財事件では、破産者の財産や収入を調査する破産管財人が選定されます。
破産者が所有している財産は、必要最低限のものを除いて、破産管財人により処分されます。
破産者は破産管財人の調査に協力しなければなりません。
非協力的な態度をとると、免責不許可になる可能性があるので注意しましょう。
債権者集会
破産管財人が調査を終えると、債権者と裁判所に向けて財産状況や手続きの進行状況について説明します。
財産の分配
債権者に対して配当可能な財産があれば、破産管財人は配当表を作成して配当します。。
免責許可・不許可の決定
債権者集会が終わると、裁判所が破産管財人に対して、免責不許可事由の有無や免責の相当性に関する事情についての調査結果を報告させます。
破産者も意見を述べる機会がありますが、特にない場合ありませんと答えても問題ないです。
裁判所は、破産管財人の報告や意見をもとに、免責許可・不許可の判断を行います。
免責が許可された場合、申請者の氏名及び住所が官報に掲載。その後2週間以内に債権者から異議がなければ、免責が確定します。
自己破産申し立て(申請)に必要な書類
裁判所によって自己破産申し立て(申請)に必要な書類は異なります。申し立て(申請)をする際には、依頼した弁護士や裁判所の指示に従ってください。
主な自己破産の申請における必要な書類は次のとおりです。
- 申立書
- 債権者一覧表
- 住民票
- 家計全体の状況2ヶ月分
- 給与明細・源泉徴収票・確定申告書など収入に関する書類一式
- 課税証明書や非課税証明書
- 退職金に関する規定
- 現在加入しているすべての保険の保険証書
- 有価証券・ゴルフ会員権に関する資料
- 購入金額が20万円以上の財産に関する資料
- 売却したものが20万円以上の財産に関する資料
- 不動産の登記簿及び査定書又は賃貸借契約書
自己破産申立て(申請)必要な費用
ここでは自己破産の申請に必要な費用について解説します。
同時廃止事件
同時廃止事件の場合、次の費用が必要です。
- 申立手数料(収入印紙代):1,500円
- 予納郵券(郵便切手代) :数千円程度(裁判所によって異なる※)
- 予納金(官報公告代):1万円前後(裁判所によって異なる)
東京地方裁判所の場合、予納郵券の金額・内訳は以下のとおりです(2024年9月24日~)。
金額 | 内訳 |
4,950円 | ・500円×4枚 ・180円×1枚 ・110円×22枚 ・50円×4枚 ・10円×15枚 |
※大型合議事件の場合は、金額や内訳が異なります。
その他住民票など、必要書類の発行に際して手数料が必要です。
管財事件
管財事件の場合、上記の手数料に加えて、破産管財人への予納金が必要です。
東京地方裁判所が設けている予納金の額は以下のとおりです。
負債総額 | 予納金 |
5,000万円未満 | 70万円 |
5,000万以上1億円未満 | 100万円 |
1億以上5億円未満 | 200万円 |
5億以上10億円未満 | 300万円 |
10億以上50億円未満 | 400万円 |
50億以上100億円未満 | 500万円 |
100億以上250億円未満 | 700万円 |
250億以上500円未満 | 800万円 |
500億以上1,000億円未満 | 1,000万円 |
1,000億円以上 | 1,000万円以上 |
参考:破産・個人再生事件の手続き費用一覧|東京地方裁判所立川支部民事第4部破産係
少額管財事件
少額管財事件の場合、裁判所へ支払わなければならない費用は以下のとおりです。
- 収入印紙代(申立手数料)1,500円※事案により申立手数料は異なります。
- 郵便切手代 数千円※申立てする裁判所や事例(債権者数など)によって、郵便切手代は上記とは異なります。
- 官報公告代(予納金)1万円前後※事案により官報公告費用が異なります。
- 引継与納金 最低20万円 ※基本的に20万円となっているが、困難な管財業務が必要とされる場合は事案に応じて20万円を超える引継与納金が必要
このほかそれぞれの事件において、弁護士に支払わなければならない費用もあります。
当事務所の自己破産の弁護士費用はについては、以下をご参照ください。弁護士費用は分割可能ですので、無理なくお支払いいただけます。
自己破産の費用が払えずお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
自己破産申立て(申請)で注意すべき点
ここでは自己破産の申請で注意すべき点について解説します。
書類の記載は正確に行なう
書類の記載は正確に行いましょう。
必要書類の記載に嘘を書いたり、書くべきことを隠して記載しなかったりすると、免責許可を受けられず、自己破産できなくなります。
債権者の記載漏れ
本来記載するべきはずだった債権者を申請の時に書き漏らしてしまった場合、書き忘れていた債権があったとしても原則免責が認められます。
しかし悪意や過失があった場合、免責不許可事由や非免責債権となる可能性があります。
記載漏れに気付いたタイミング別に、免責されるかどうかを以下に表としてまとめました。
記載漏れに気付いたタイミング | 免責となるかどうか |
申し立て(申請)から破産手続き開始決定までの間 | ・追加で裁判所に上申書を提出すれば問題とならない
・ただしわざと記載しなかった場合、免責不許可事由になり全ての債権者の免責許可が下りなくなる |
免責確定後に債権者漏れに気付いた場合 | ・原則免責が認められる
・ただし故意や過失があった場合、記載漏れしていた債権は免責にならない |
提出書類作成・手続きへの対応する時間を確保しておく
自己破産は申し立て(申請)したらすぐに借金がなくなるわけではありません。
必要な提出書類の作成や裁判官・破産管財人との面接など、様々な手続きに対応する必要があります。
あらかじめ書類の作成や手続きへ対応する時間を確保しておかなければ、自己破産の手続きをスムーズに終えられません。
迅速に手続きを終え借金から解放されるためにも、弁護士と相談して書類作成や手続きへ対応する時間がどのくらい必要なのか確認し、前もって時間を確保しましょう。
自己破産の申し立て(申請)手続きを弁護士に依頼するメリット
自己破産の申し立て(申請)手続きはなぜ弁護士に依頼する方が良いのでしょうか?
ここでは申し立て(申請)手続きを弁護士に依頼するメリットを解説します。
複雑な手続きを委任できる
自己破産を裁判所に申し立て(申請)する場合、手続きのために専門知識が必要な書類や資料の作成・提出が必要です。個人で行う場合、必要な書類は何か調べるところから作成まで1人で行わなければいけません。
専門知識のない人が、何もわからない状況で必要な書類や資料の作成・提出を完了させるのは難しいです。手続きが遅れれば遅れるほど、借金に苦しむ生活は長引いてしまいます。
弁護士に依頼すれば、複雑な手続きを全て委任できます。手続きの負担がなく、生活を立て直すことだけに集中できます。
手続きのミスを防げる
確かに自己破産の申し立て(申請)に必要な手続きは、個人で行うことも可能です。
しかし作成した書類や資料の内容にミスがあると、裁判所にやり直しを命じられます。
弁護士に依頼すれば、手続きのミスを防ぎ迅速に借金問題を解決することが可能です。
予納金を抑えることができる場合も
本人による自己破産の申し立て(申請)の場合、管財事件になります。
管財事件は裁判所に払わなければならない費用が高く、引継予納金だけでも最低50万円が必要になります。弁護士に依頼することなく、債権者から返済の督促を受け続けながら引継予納金を確保することは困難な場合が多いです。
しかし、弁護士に依頼すれば、受任通知により債権者からの督促を止めてもらえる上、裁判所へ支払う費用を半分程度に抑えられる少額管財事件が利用可能です。
少額管財事件として処理されるためには、個人ではなく弁護士が破産者の代理人になって申請をしなければなりません。
裁量免責を得やすい
裁量免責とは、免責不許可事由があったとしても諸般の事情を考慮して、裁判所が免責を許可することです。
借金で苦しんでいる人の中には、免責不許可事由があるから自己破産はできないと諦めてしまっている人も多いです。しかし弁護士に依頼すれば、裁量免責が認められやすい方法を提案してくれるため、免責が許可される可能性が高まります。
まとめ
自己破産の申請手続きは難解で複雑です。申請手続きに時間がかかってしまうと、借金で苦しむ期間が長引いてしまい生活を立て直すのが遅れてしまいます。
自己破産するかどうかお悩みの方は、手続きに時間をかけないためにも弁護士に相談しましょう。