自己破産すると年金はどうなる?没収されるケースや注意点も解説
自己破産すると年金を受給できなくなる、と不安に思われている方もいらっしゃいます。
自己破産をすると、一定額以上の価値のある財産は処分されます。年金も、種類によっては処分される可能性があります。
この記事では、以下の点を解説します。
- 自己破産すると年金はどうなる?
- 自己破産により年金が差し押さえられるケース
- 自己破産と年金に関する注意点
年金受給中に自己破産を検討されている方、まだ受給していないけど年金のことが不安で自己破産を躊躇されている方は、ぜひ参考になさってください。
目次
自己破産すると年金はどうなる?
ここでは、自己破産による年金への影響を種類別に解説します。
公的年金は自己破産しても受給できる
公的年金・企業年金は、差押禁止財産のため、自己破産の処分の対象となりません。そのため、自己破産をしてもこれらの年金を受け取れます。
公的年金・企業年金の種類は次のとおりです。
国民年金・国民年金基金
無職の方や自営業者が加入する年金です。
厚生年金・厚生年金基金
会社員など、企業に勤務している方が加入する年金です。
遺族年金
国民年金・厚生年金保険の被保険者であった方が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。
障害年金
病気・怪我により生活や仕事などが制限される場合に、現役世代の方も含めて受け取れる年金です。
障害年金は、2つの種類があり、それぞれ次の場合に請求できます。
障害基礎年金:病気・怪我で初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合
障害厚生年金:病気・怪我で初めて医師の診療を受けたときに厚生年金に加入していた場合
共済年金
公務員や私立学校の教職員が加入する年金です。
確定給付企業年金
事業主が従業員と給付の内容をあらかじめ約束し、高齢期において従業員がその内容に基づいた給付を受け取れる企業年金です。
確定給付年金には、次の2種類があります。
- 規約型企業年金:労使合意の契約に基づき企業外で年金資産を運用・管理する
- 基金型企業年金:企業年金基金を設立し、基金が年金資産を運用・管理する
確定拠出年金
確定拠出年金は、企業や加入者が拠出した掛け金を個人ごとに明確に区分して積み立て、加入者が自ら資金の運用を指図する企業年金です。掛金と運用益の合計額をもとに給付額が決まります。
確定拠出年金には、次の2種類があります。
- 企業型年金:厚生年金適用事業所の事業主が単独又は共同して実施する年金制度
- 個人型年金:国民年金基金連合会が実施する年金制度
個人年金は自己破産で解約される可能性がある
保険会社等との契約に基づく個人年金は、自己破産による影響を受けます。
個人年金は、保険会社との契約により個人が保険料を積み立てている点で、資産と同一視されます。よって、自己破産すると処分される可能性があります。
自己破産により年金が差し押さえられるケース
ここでは、自己破産で年金が差し押さえられる可能性があるケースを紹介します。
受給した年金が預金または現金として残っている場合
裁判所により異なりますが、差押禁止債権である公的年金・企業年金も、次のとおり、処分の対象となる場合があります。
99万円以上の現金
受給した年金を現金として保管している場合、現金の総額が99万円を超えると、その超えた部分が没収されます。
20万円以上の預金
原則として、預金残高が20万円を超えると、超えた金額が没収されます。年金が銀行口座に振り込まれれば、預金として没収される可能性があります。
個人年金の解約返戻金が20万円以上の場合
裁判所によって異なりますが、個人年金の解約返戻金が20万円を超える場合は、原則として当該保険契約が解約され、解約返戻金全額が没収されます。
ただし、自由財産の拡張申立が裁判所に認められた場合、個人年金を解約せずに済むケースもあります。
自己破産と年金に関する注意点
ここでは、自己破産における年金に関する注意点を解説します。
未払年金は自己破産で免責されない
国民年金保険料を滞納している場合、自己破産しても支払義務は免除されません。
国民年金保険料は、自己破産で免責されない債権(非免責債権)だからです。借金のほとんどが滞納保険料である場合は、自己破産しても解決できない可能性があります。
年金担保貸付は自己破産後も返済義務が残る
年金担保貸付を受けている場合、自己破産しても返済義務は免除されません。
年金担保貸付の返済は、自己破産後も年金から天引きされます。
滞納が続けば財産を差し押さえられるおそれがある
国民年金保険料を滞納すると、財産が差し押さえられる可能性があります。国民年金保険料は、他の借金と異なり、裁判手続きを経ずに差し押さえが可能です。
滞納を放置し続けると滞納者本人だけでなく、世帯主や配偶者の財産が差し押さえられることもあるので注意しましょう。
年金受給用の口座が凍結されるおそれがある
次に当てはまるケースでは、年金受給用の口座が凍結されるおそれがあります。
- 借金の返済口座と年金受給用の口座が同じ場合
- 年金受給用の口座を開設した金融機関から借入がある場合
口座が凍結されると、出金できなくなります。口座凍結のおそれがある場合は、年金を受給する口座を変更しましょう。
年金以外の財産があると自己破産できない可能性がある
年金以外に財産がある場合、その価値によっては自己破産できないことがあります。
例えば、次のような財産をお金に換えて借金を返済できる場合は、自己破産が認められません。
- 預貯金
- 生命保険契約
- 不動産(土地・建物)
- 車
- 貴金属・骨董品
まとめ
自己破産そのものが公的年金の受給に影響することはありません。ただし、受給した年金が現金・預貯金として残っている場合は、金額によっては没収される可能性があります。
他の借金の借入先や利用状況によっては、年金受給用の口座が凍結されるおそれがあるので注意しましょう。
個人年金については、自由財産拡張の申立により裁判所に認められれば解約せず残すことができるケースもあります。
個別の事情については弁護士に相談することをおすすめします。