自己破産したら引っ越しできない?引っ越しが制限される期間は?
自己破産すると、一定期間引っ越しの制限を受けることがあります。
どのような場合に引っ越しの制限を受けるのでしょうか?引っ越しが制限される期間はどの程度なのでしょうか?
この記事では、自己破産と引っ越しについて次のとおり解説します。
- 自己破産すると引っ越しできない?
- 自己破産で引っ越しに制限がかかる期間は?
- 自己破産手続中に裁判所の許可を得ず引っ越しするとどうなる?
- 自己破産で持ち家が競売にかけられたら引っ越し費用は出る?
- 自己破産すると引っ越し時の入居審査に落ちる?
自己破産と引っ越しを同時に検討中の方は、ぜひご参考になさってください。

自己破産手続中は移動を制限されるためです。
自己破産を検討しており、住居のことで気になる点がある方はお気軽にご相談ください。
目次
自己破産すると引っ越しできない?
自己破産手続中は、住居の移動に裁判所の許可が必要になることがあります。これを居住制限といいます。
ただし、自己破産したからといって全てのケースで居住制限を受けるわけではありません。
ここでは、自己破産で居住制限を受けるケースを紹介します。
次のとおり破産手続きの流れに沿って確認しましょう。
- 自己破産申立前の引っ越し
- 自己破産手続中の引っ越し
- 自己破産手続後の引っ越し
ひとつずつ説明します。
自己破産申立前の引っ越し
自己破産申立前は居住制限を受けませんので、自由に引っ越しできます。
ただし、自己破産は申立時の住所地を管轄する裁判所に申立てるため、引っ越しにより裁判所の管轄が変わる可能性があります。裁判所の管轄が変わると、申立書類の書式や破産手続きの運用も異なります。
弁護士に依頼して自己破産を申立てる場合、引っ越しの時期によっては、申立て準備に影響を及ぼす可能性があるため、事前に弁護士に相談しましょう。
自己破産手続中の引っ越し
自己破産を申立てて、裁判所が破産手続開始決定を出すと、申立人は破産者となります。破産者が居住地を離れる際は裁判所の許可を得なければなりません(破産法37条)。
この制限は、次の点を防ぐ意味合いがあります。
- 居住地を離れて財産を隠匿すること
- 居住地を離れて逃亡すること
居住制限は、自己破産の手続きによっても取り扱いが異なります。自己破産には、次の2つの手続きがあります。
- 同時廃止
- 管財事件
それぞれの手続きにおける居住制限を確認しましょう。
同時廃止の場合
同時廃止の場合は、破産手続きは開始と同時に廃止されるため、原則的として居住制限を受けません。
ただし、破産手続開始決定から免責許可決定確定までの間に住民票を移動した場合は、住民票を裁判所に提出して住所の変更を報告しなければなりません。
管財事件の場合
管財事件では、破産手続開始決定から免責許可決定確定までの間に引っ越しする場合は、裁判所の許可が必要です。つまり、自己破産手続中は、裁判所の許可がなければ引っ越しできません。
引っ越しする場合は、事前に破産管財人の同意を得て、裁判所に許可を求めます。
裁判所は、次のような事情がある場合を除き、引っ越しを認めるのが通常です。
- 破産手続きの進行に支障を及ぼす場合
- 債権者の利益を損なうような特別の事情がある場合
- 財産隠しや逃亡を目的として引っ越しする蓋然性が高い場合
自己破産手続後の引っ越し
免責許可決定確定後は居住制限が解除されますので、自由に引っ越しできます。
自己破産で引っ越しに制限がかかる期間は?
ここでは、自己破産で引っ越しに制限がかかる期間を解説します。
同時廃止の場合は制限がかからない
同時廃止では、居住制限を受けません。
裁判所へ住所変更の報告を要する期間も、破産手続開始決定から免責許可決定確定までの2~3ヶ月間程度です。
管財事件の場合は3~6ヶ月間
管財事件で居住制限を受ける期間は、破産手続開始決定から免責許可決定確定までの3~6ヶ月程度です。
複雑な管財事件の場合、1年程度制限を受けることもあります。
自己破産手続中に裁判所の許可を得ず引っ越しするとどうなる?
自己破産手続中に裁判所の許可を得ずに引っ越しするとどうなるのでしょうか。
ここでは、裁判所の許可なく引っ越しした場合のリスクを解説します。
免責が許可されない可能性がある
裁判所の許可を得ず引っ越しすると、免責が得られない可能性があります。
破産法に定められている義務に違反する行為をした場合は、免責不許可事由となる旨法律で定められているからです(破産法252条第1項第11号)。
自己破産で持ち家が競売にかけられたら引っ越し費用は出る?
自己破産で持ち家が競売にかけられた場合は、売却益から引っ越し費用が出るのでしょうか?
ここでは、自己破産における自宅の売却と引っ越し費用について解説します。
競売では引っ越し費用が出ない
破産手続きにおいて自宅が競売にかけられても、売却益から引っ越し費用は捻出できません。そのため、競売の場合は、引っ越し費用を自ら負担しなければなりません。
任意売却では売却代金から引っ越し費用が捻出できる
任意売却の場合は、売却益から引っ越し費用の捻出が認められる可能性があります。
ただし、引っ越し費用の捻出は法的に認められているものではありません。そのため、債権者や買主によっては、引っ越し費用を負担してくれないケースもあります。
なお、引っ越し費用は原則として不動産の引渡し後に支払われるため、いったんは自分で用意しなければなりません。
自己破産すると引っ越し時の入居審査に落ちる?
ここでは、自己破産による賃貸契約の入居審査への影響を解説します。
信販系の保証会社を避ければ審査に通る可能性が高い
自己破産後は、信販系以外の保証会社を利用できる物件を探しましょう。信販系以外の保証会社であれば、入居審査に通る可能性が高いからです。
信販系の家賃保証会社を利用する場合、入居審査で信用情報を照会されるため、審査に通らない可能性があります。自己破産すると5~10年間は信用情報に事故情報が登録されるからです。
連帯保証人を立てれば審査に通る可能性が高い
保証会社を通さず連帯保証人を立てれば審査に通る可能性があります。
過去に家賃を滞納したことがある方は、信販系以外の家賃保証会社の審査にも落ちる可能性があります。そのような場合は、保証人を立てて契約できる物件を探しましょう。
まとめ
管財事件では、自己破産手続中に居住制限を受けます。裁判所の許可を得ず引っ越しすると、借金が免除されず自己破産に失敗する可能性があります。
自己破産手続中に引っ越しする場合は、必ず裁判所の許可を取りましょう。迷うことがあれば、自己破産申立を依頼している弁護士に相談するとよいでしょう。