うつ病で借金が返せない時の対処法や利用できる公的制度一覧
うつ病が原因で仕事を休まざる得なくなり、収入が減ってしまったことで借金が返せないと悩む方も多いです。しかし、うつ病で借金が免除されることはありません。うつ病で借金が返せないときは、公的制度の活用や債務整理を検討すべきでしょう。
この記事では、うつ病で借金が返せないときの対処法や利用できる公的制度について解説します。
目次
うつ病でも借金は免除されない
うつ病が原因で仕事ができず、収入が減ったとしても、残念ながら借金が免除されることはありません。うつ病になったとしても、借金は返済していく必要があります。
しかし、債権者との交渉により、事情を説明すれば返済日や返済回数を考慮してもらえる可能性はあるでしょう。また、公的な支援制度を活用し、減った収入をカバーすることで、問題なく返済していける可能性もあります。
公的制度を活用しても、借金を返済できる見込みがない場合は、債務整理を検討してもよいでしょう。債務整理では、借金が全額免除になったり、大幅に減額したりすることが可能です。
うつ病で借金が返せないとどうなる?
取り立てや督促が厳しくなる
うつ病で返済目途が立たずに、借金を滞納すると、債権者からの催促や取り立てが始まります。電話が複数回掛かってきたり、督促状が送られてきたりすることで、心理的なプレッシャーを感じ、精神的な負担も大きいでしょう。場合によっては、うつ病が悪化してしまう恐れもあります。
どうしても支払いが間に合わない場合は、事情を説明することで、少しの期間は待ってくれる可能性があります。ただし、根本的な解決とはならないため、返済できる見込みがなければ、債務整理を検討してください。
債務整理を弁護士に依頼すると、受任通知が債権者に送付され、直接取り立てを行うことができなくなります。債務整理は取り立てや催促を止める効果もあるため、精神的にもつらい状況の方は、まずは弁護士に相談してみましょう。
遅延損害金で返す金額が増える
借金を滞納すると、基本的に遅延損害金が発生します。遅延損害金とは、返済が遅れたことで発生する損害を賠償するために支払うお金です。
遅延損害金の上限利率は20%となっており、通常の金利よりも高く設定されていることが多いです。例えば、アコムのカードローンも遅延損害金は20%です(参考:返済が遅れてしまうと、どうなるんですか?|アコム)。
1日でも返済が遅れると遅延損害金は発生します。滞納期間が長くなるほど、最終的に支払う金額は増えてしまうので、可能な限り早く対処したほうがよいでしょう。
ブラックリストに載る
金融機関からの借金は、2〜3ヵ月以上滞納すると、ブラックリストに登録されてしまう可能性があります。ブラックリストに登録されると、ローンが通らなくなったり、賃貸の審査が通りづらくなったりします。
ブラックリストは、借金を完済してから5年程度が経過するまで消えません。債務整理をした場合も、ブラックリストには登録されます。そのため、借金を返済日までにきちんと支払い完済しない限りは、ブラックリストに載ることは基本的に避けられません。
裁判で訴えられる
借金を滞納した場合、債権者から裁判で訴えられる可能性があります。裁判で判決が下ると、財産を差し押さえることが可能となります。
裁判は時間も手間も掛かります。裁判所に出廷する必要もあるため、うつ病を患っている方にとっては大きな負担となってしまうでしょう。
裁判で訴えられてしまった場合には、弁護士を代理人として裁判を進めてもらうのもひとつの選択肢です。
財産を差し押さえされる
借金の滞納が続く場合、最終的には財産を差し押さえられる可能性があります。差し押さえ対象となる財産は、預貯金や給与、不動産などです。
うつ病で仕事を休んでおり、収入や財産が全くない場合には、差し押さえができません。ただし、基本的に差し押さえは回収できるまで繰り返し行われます。
うつ病が完治し、仕事を再開したタイミングで差し押さえが実行される可能性もあるでしょう。給与を差し押さえられると、会社にも借金問題がバレてしまいます。
せっかくうつ病が治り、気持ちを新たに仕事を再開しても、差し押さえや借金がバレて職場での居心地が悪くなってしまう恐れもあるため注意しましょう。
うつ病で借金が返せない時に考えること
まずは治療に専念する
うつ病を患ってしまった際には、まずは治療に専念することが大切です。うつ病の治療を後回しにすることで症状が悪化し、完治までの期間が長引いてしまう恐れがあります。
治療が長引くと、仕事ができない期間も長くなり、結果的に返済も遅れてしまうでしょう。「休職したら職場の人に迷惑がかかる」と考える人も多いですが、ご自身の身体が一番大切ですので、まずはうつ病を治すことに専念しましょう。
公的支援制度を探す
うつ病で仕事ができなくなった方は、公的な支援制度を活用することも考えましょう。代表的なものとして、会社を休職した際は傷病手当や労災保険、失業した際には失業保険や生活保護などが挙げられます。
傷病手当を例に挙げると、病気で休職した際に、給料の2/3程度の金額を最大で1年6ヵ月受け取ることができます(参考:傷病手当金|全国健康保険協会)。
「休職したら借金の返済が難しくなる」と考えている方も、傷病手当金を受け取ることができれば、返済していきながら治療に専念することも可能です。
親族に立て替えてもらう
うつ病で借金の返済が困難になった際は、親族に一時的に立て替えてもらうのも現実的な手段のひとつでしょう。
借金やうつ病の悩みは、家族に相談しづらい部分もありますが、身近な人からのサポートを受けることで、早期の解決に繋がる可能性もあります。
特にうつ病は、家族や周囲の人から理解を得ることも大事です。何も言わないままの状態で借金が発覚したり、会社を休みがちになったりすると、周囲の方との信頼関係も損なってしまう可能性があります。
ひとりで悩みを抱え込まず、まずは身近な人に相談することも大切でしょう。
債務整理を検討する
うつ病で借金が現実的に返せない場合は、債務整理を検討してもよいでしょう。債務整理には、自己破産や個人再生、任意整理などがあります。
債務整理の種類 | 特徴 |
自己破産 | 裁判所を通して、借金が全額免除になる手続き |
個人再生 | 裁判所を通して、借金が大幅に減額される手続き |
任意整理 | 裁判所を通さず、債権者との交渉により利息をカットする手続き |
自己破産の場合だと、借金は全額免除になりますが、すべての人が自己破産の手続きを利用できるわけではありません。
支払不能であることなどの条件を満たす場合に、自己破産することが可能です。うつ病で収入が著しく減ってしまった方は、支払不能の条件を満たしている可能性があります。
個人再生や任意整理は、借金を減額することができますが、返済は続いていきます。減額後の借金を返済していける見込みがあれば、個人再生や任意整理でもよいでしょう。
いずれにしても債務整理の手続きは、弁護士に依頼するのが一般的です。ご自身の状況を説明し、弁護士から意見をもらいながら、どの手続きにするか判断するとよいでしょう。
債務整理をすると借金はいくら減る?
自己破産では借金が全額免除になりますが、個人再生や任意整理だと借金が実際いくら減るのか気になる方もいるでしょう。
例を挙げると、借金が200万円(金利15%)、3年間(36回払い)で返済する場合、最終的な返済総額は2,498,898円になります。月々の返済金額は69,000円です。この借金を債務整理した場合、目安としては次の金額になります。
借金が200万円(金利15%で返済総額は2,498,898円)の債務整理シミュレーション
債務整理の種類 | 減額後の金額 | 月々の返済額 (36回払い) |
減額効果 |
自己破産 | 0円 | 0円 | 全額免除 |
個人再生 | 100万円 | 27,778円 | 法律で定められた「最低弁済額」までカット(参考:個人再生とは) |
任意整理 | 200万円 | 55,556円 | 利息分の498,898円をカット |
上記の通り、自己破産は借金が全額免除となりますが、原則として持ち家や車などの財産は処分する必要があります。
個人再生では、月々の返済額が69,000円から27,778円まで大幅に減っています。個人再生は、法律で定められた最低弁済額まで、借金を減額することが可能です(住宅ローン以外)。
最低弁済額の基準については、裁判所が借金を減免してくれる個人再生とは?メリットとデメリットについての記事をご覧ください。
任意整理では、利息がカットされたことで、月々の返済額が69,000 円から55,556円に減額されました。自己破産や個人再生と比べると減額効果は低いですが、任意整理では財産を処分する必要がなかったり、手続きの負担が比較的軽かったり、などのメリットがあります。
うつ病で働けなくなった時に利用できる公的制度
傷病手当
傷病手当とは、健康保険に加入している方が、病気や怪我で会社を休み、事業主から十分な報酬がもらえないときに利用できる制度です(参考:傷病手当金|全国健康保険協会)。傷病手当金は、最長で1年6ヵ月、給与の2/3程度の金額が支給されます。
なお、フリーランスや個人事業主の方が加入する国民健康保険には、傷病手当金の制度はありません。主に会社の社会保険に加入している方(アルバイトやパート含む)が対象です。
傷病手当金は最長で1年6ヵ月もの間、一定の収入を確保できるため、うつ病の治療にも専念することができるでしょう。
傷病手当金の支給を受けるためには、健康保険傷病手当金支給申請書を加入している協会けんぽ支部に提出します。申請書には事業主や医師が記入する箇所があるため、会社にも病気のことを伝え、相談する必要があるでしょう。
失業保険
失業保険とは、雇用保険の加入者が失業し、求職活動を行っている方が利用できる制度です。正規名称は基本手当と言います(基本手当について|ハローワークインターネットサービス)。
失業保険は、求職活動を行っている失業中の方が対象のため、うつ病が原因で会社を退職し、次の就職先を探していない方は受給できない可能性があります。うつ病で仕事を休まざるを得なくなった方は、基本的に傷病手当を利用することが多いでしょう。
労災保険
労災保険とは、業務中や通勤中に怪我を負い、働けなくなった場合に利用できる制度です(労災補償|厚生労働省)。パワハラや重労働が原因でうつ病になってしまった方は、労災保険を受給できる可能性があります。
労災保険はすべての労働者が対象となるため、社会保険に加入していないアルバイトやパートの方も利用できます。労災保険は要件を満たす限り、支給を受けられる期限に上限はありません。
生活保護
生活保護とは、生活に困窮している方を保護し、最低限度の生活を保障するための制度です(生活保護制度|厚生労働省)。
生活保護を受けられる条件としては、国が定める最低生活費を下回る収入であること、一定以上の財産がないこと、などが挙げられます。
生活保護に年齢制限はないため、うつ病で働けなくなった年齢が若い方も、もちろん生活保護を受給できる可能性があります。生活保護も受給できる期間に制限はありません。
障害年金
障害年金とは、厚生年金や国民年金に加入している方が、国が定める障害認定基準に該当した場合に受給できる年金です(障害年金の制度をご存じですか?|政府広報オンライン)。
うつ病であっても、症状次第で障害年金を受け取れる可能性があります。障害年金の支給額は、加入していた年金や障害の程度によって異なります。
1級だと年間993,750円、2級だと年間795,000円です(令和5年度)。子どもがいる場合は、人数に応じてさらに加算されます。
その他
うつ病で借金にお悩みの方は、他にも次のような制度の活用が考えられます。
- 自立支援医療制度|医療費の負担を軽減できる
- 生活福祉資金貸付制度|低金利また無利子で小口資金を借入できる
- 特別障害者給付金制度|介護を必要とする特別障害者が受給できる
うつ病で仕事ができず、収入が減ってしまった際には、様々な公的制度を利用できる可能性があります。こういった制度を活用することで、うつ病の治療に専念できたり、借金を返済していけたりするため、まずは活用できる制度がないか調べてみましょう。
まとめ
うつ病で借金を返せないときは、周囲の方にも相談し、必要に応じて債務整理や公的制度の活用を考えましょう。まずは治療に専念できる環境を整えることが第一です。
すでに借金を滞納しており、取り立てや催促が精神的な負担になっている場合は、債務整理を弁護士に依頼することで止めることができます。
残念ながら、うつ病を理由に借金が免除されることはありません。根本的な解決を目指すためにも、まずは弁護士に相談してみてください。