債務名義とは?効力や強制執行までの流れをわかりやすく解説 - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

債務名義とは?効力や強制執行までの流れをわかりやすく解説

借金の返済が滞る場合、債権者は法的手段を用いて借金の回収を図ることができます。

その際、必要となるのが債務名義です。債務名義があれば、裁判所を通じて強制的に借金の回収手続きを進めることが可能です。

債務者は、債務名義がある場合に支払いが遅れたりすると、即座に差し押さえを受ける可能性があるので注意が必要です。

ここでは、債務名義とは何か、その種類や取得方法、強制執行の流れなどを詳しく解説します。

債務名義とは

債務名義とは、借金の返済が滞った場合に、法的に強制執行を行うための基礎となる文書です。

これにより、借金の未払いが明確になり、裁判所を通じて債務者の財産に対する差し押さえが行えるようになります。

債務名義は、単に借金があるという事実を示すだけでなく、債務者がその借金を支払う義務が法的に認められていることを証明するものです。

借金の回収(強制執行)に必要な書類

債務名義は、債権者が借金を回収するために不可欠な書類です。

通常、債権者が借金を回収するためには、まず裁判所に対して強制執行の申立てを行う必要があります。

しかし、強制執行を実行するには、その借金が法的に認められていることを示す証拠、すなわち債務名義がなければなりません。

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債務名義があると差し押さえができる

債務名義を取得すると、債権者は裁判所を通じて債務者の財産を差し押さえる権利を得ます。

これにより、給与や不動産、預貯金など、債務者の資産に対して強制的な回収措置を講じることができます

差し押さえにより、債権者は未払いの借金を弁済させることができます。

債務名義に記されている内容

債務名義に記されている内容の例を紹介します。

  • 債権者と債務者の氏名や住所:借りた人と貸した人の個人情報
  • 債務の内容:債務者が支払うべき債務の内容、借金額、利息、遅延損害金など
  • 支払いの期限や方法:債務者がいつまでに、どのような方法で支払わなければならないか
  • 債務名義の根拠:この債務名義に基づいて、裁判所が強制執行を認めることができるという法的な根拠
  • 裁判所の認証:債務名義は裁判所や公証役場などの公的な機関によって発行されるため、その機関の署名や捺印が含まれる

債務名義で代表的なのは、確定判決や支払督促の確定、和解調書、公正証書などです。これに基づいて、債権者は強制執行を申し立て、債務者の財産を差し押さえることができます。

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債務名義の種類

次に、債務名義にはどのようなものがあるのか、その種類を紹介します。

確定判決

確定判決とは、裁判で出された判決が確定したもので、これに基づいて債権者は強制執行を行うことができます。

確定判決は、判決に対する上訴が行われず、法的に最終的な状態となったものです。

仮執行宣言付判決

仮執行宣言付判決は、判決が確定する前に、即座に強制執行を行うことができると認められたものです。

裁判が終わり、判決が下されると、確定を待たずに強制執行が可能となるため、債権者にとって迅速な回収手段となります。

和解調書

和解調書は、裁判所の和解手続きで作成される書類で、裁判中に和解に至った際の和解内容が記録されています。

和解調書に基づいても強制執行が可能で、実質的には確定判決と同じ効力を持ちます。

調停調書

調停調書は、家庭裁判所や簡易裁判所で行われる調停手続きによって作成されるもので、調停が成立した場合に作成されます。

これも債務名義として利用でき、強制執行の根拠となります。

執行認諾文言付公正証書

執行認諾文言付公正証書は、公証役場で作成される書類で、債務者が自ら借金の支払い義務を認める内容が記されたものです。

この文書には執行認諾文言が付されており、債務者が支払いを拒否した場合でも、裁判を経ずに強制執行が可能となります。

仮執行宣言付支払督促

支払督促とは、裁判所から債務者に対して、債務の支払いを督促する簡易手続きです。

債務者には異議申し立てをする権利がありますが、そこで異議申し立てがなかった場合、仮執行宣言付支払督促が確定し、債務名義として用いることができます。

強制執行の種類

債務名義があれば、債務者が債務を果たさなかった場合に強制執行が可能になります。ここでは、強制執行とはどういうものか説明します。

不動産執行

不動産執行とは、債務者が所有する不動産(自宅や土地など)を差し押さえ、競売にかけることで、得られた代金をもとに借金を回収する方法です。

不動産は高額であるため、債権者にとって有力な回収手段となります。

動産執行

動産執行は、債務者が所有する動産(自動車、家財道具、宝石など)を差し押さえて、売却して借金を回収する方法です。

差し押さえた動産は競売にかけられ、その売却益が債権者に配当されます。

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債権執行

債権執行は、債務者が持っている第三者に対する債権(給与、預金など)を差し押さえる方法です。

特に給与差し押さえが一般的で、債務者の収入から直接債権者に返済金が支払われる形になります。

債務名義による強制執行の流れ

次に、債務名義の基づく強制執行の流れについて、以下のステップで紹介します。

  • まず債務名義を取得
  • 執行文の付与または確定証明書の取得
  • 強制執行の申立て
  • 強制執行の実施
  • 競売・換価
  • 配当・弁済
  • 債務の清算

まず債務名義を取得

前提として、債権者はまず債務名義を取得しなければなりません。債務名義として代表的なものをあげます。

  • 確定判決:裁判の判決
  • 執行証書:公証人が作成するお金の貸し借りに関する文書
  • 和解調書や調停調書:裁判所での和解や調停による合意内容
  • 仮執行宣言付判決:裁判において債権者が勝訴した場合に、判決の確定を待たずに強制執行を可能にするもの

執行文の付与または確定証明書の取得

強制執行の申立てをするには、執行文が付与された債務名義が必要です。執行文とは、強制執行ができることを証明する文書です。

また、確定判決や家事審判などの債務名義は、判決が確定したことを証明する確定証明書が必要です。

執行文または確定証明書が不要な債務名義もあります。執行文や確定証明書が不要な債務名義としては、家事調停調書や仮執行宣言付支払督促などが挙げられます。

執行文の付与や確定証明書の取得は、債務名義を作成した裁判所や公証人役場で行います。

強制執行の申立て

債務名義を取得した債権者は、次に裁判所に対して強制執行の申立てを行います。この申立ては、債務者の所在地を管轄する地方裁判所に対して行います。

強制執行の実施

執行文が付与された後、債権者は具体的な強制執行を裁判所に申し立てます。強制執行には、主に以下の方法があります。

  • 動産執行: 債務者の動産(車両、家財など)を差し押さえ、競売にかけて売却する
  • 不動産執行: 債務者の不動産(家、土地など)を差し押さえ、競売にかけて売却する
  • 債権執行: 債務者が持っている第三者に対する債権(銀行口座の預金など)を差し押さえる

競売・換価

差し押さえられた財産は競売にかけられ、売却されます。この売却によって得られた金額が、債権者に対して支払われます。

補足ですが、競売にかけられると、市場価格より安い値段がつきやすいです。ですので、差し押さえで競売にかけられてしまうくらいなら、その前に自分で売却して債権者に返済した方が、より多くの借金を減らすことができます。

配当・弁済

競売で得られた資金は、裁判所を通じて債権者に配当されます。債権者は、この資金を受け取ることで債務が弁済されることになります。

債務の清算

競売などを通じて得られた金額が債務を完全にカバーできれば、債務はこれで清算されます。

ただし、売却金額が債務額に満たない場合、債務は一部残ることもあります。

残った場合、給与口座の差し押さえが続き、毎月の給与から一定額を完済まで返済し続けることになる場合もあります。

債務名義の時効

債務名義は、強制執行されることなく一定期間が経つと、時効を迎え効力を失います。

裁判の判決、または判決と同一の効力を有する債務名義によって確定した債権については、確定日の翌日から起算して10年で時効です。

以下、10年で時効を迎える債務名義の例を挙げます。

  • 確定判決
  • 仮執行宣言付支払督促
  • 和解調書
  • 調停調書 など

下記のような、まだ権利が確定しない債務名義については、通常の債権と同じ期間で時効を迎えます(権利を行使できることを知った時から5年、もしくは、権利を行使できる時から10年)。

  • 仮執行宣言付判決
  • 仮差押命令、仮処分命令
  • 執行証書 など

強制執行を避けるために債務者ができること

借金をすぐに返済する

最も確実な方法は、借金をできるだけ早く返済することです。

債権者が債務名義を取得して強制執行を申し立てる前に借金を返済すれば、財産の差し押さえを回避することができます。

万が一、支払いが困難な場合でも、債権者と早期に交渉し、返済計画を立てることで強制執行の回避が可能です。

分割払いの交渉

一度に全額返済が難しい場合、債権者と分割払いの交渉を行うことが有効です。

債権者は全額の支払いを求めることが一般的ですが、現実的な返済計画を提案することで、交渉に応じてもらえる可能性があります

債務名義がある場合でも、債権者との話し合いによって差し押さえが停止することがあります。

自己破産を検討する

どうしても返済が不可能な場合は、自己破産を検討することも一つの手段です。

自己破産を申請し、裁判所に認められれば、借金の返済義務が免除される可能性があります

ただし、自己破産は、借金がなくなる代わりに自身の財産も差し押さえられてしまうなどのデメリットもあります。

弁護士に相談したうえで慎重に判断するようにしましょう。

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消滅時効を援用する

借金には時効が存在します。業者や銀行からの借り入れであれば、最後の返済期日から5年経過した場合、時効を迎え、返済の義務がなくなります(債務が消滅する)。

ただ5年経っただけでは時効は成立しません。援用という手続きを債務者側が行う必要があります。

ここで債権者に連絡を取ったりすると、時効の起算日が更新され、1日目から数えなおしとなる可能性があります。時効を援用したい人は、債権者との接触は避けながら、弁護士に相談するといいでしょう。

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債務名義に関するよくある質問

最後に債務名義に関するよくある質問を紹介します。

債務名義を取られている場合はどうなる?

債権者が債務名義を取得している場合、債務者は法的に借金の返済を強制される可能性があります。

債務名義が存在することで、債権者は差し押さえなどの強制執行手続きを行うことができます。

不動産や動産、預金などの資産が差し押さえられ、競売や換価によって回収が行われるため、債務者は速やかに対応する必要があります。

もし債務名義が取られている場合でも、返済が困難な場合は債権者と交渉し、返済スケジュールを見直すことで、強制執行を避けることができる可能性があるので、速やかに債権者と連絡を取るようにしましょう。

債務名義とならないものは?

以下のようなものは債務名義としては認められません。

  • 個人的な合意や口約束:口頭での借金の約束や、契約書がない個人的な合意は債務名義にならない、債務名義とするためには、裁判所での手続きが必要
  • 請求書や領収書:債権者が発行した請求書や領収書は、借金の証拠にはなるものの、強制執行の根拠とはならない。これらを債務名義にするには、裁判所での確定判決や公正証書の作成が必要
  • 未確定の金銭請求:まだ金額が確定していない請求や、将来発生するかもしれない債務は、債務名義とすることができない

その他、債務者が返済を拒んでいる場合でも、債権者が裁判所に訴えを起こさなければ、債務名義として成立しません。したがって、債務者が支払い義務を負っている場合でも、必ずしもすぐに強制執行が行われるわけではなく、法的手続きを経る必要があります。

まとめ

債務名義は、債権者が借金の回収を強制するために必要な法的書類であり、差し押さえや強制執行を行うための根拠となります。

確定判決や公正証書などを通じて債務名義が取得されると、債権者は強制執行を申し立てることが可能になります。

債務名義に基づく強制執行では、不動産や動産、預金などが差し押さえられ、競売や換価によって債権が回収されます。

債務者が強制執行を防ぐためには、債務名義が取られる前に返済を済ませたり、分割払いの交渉を行う必要があります。返済が難しい場合には、弁護士に相談しましょう。

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