債権執行とは|されたらどうなる?手続きや流れをわかりやすく解説 - 債務整理は弁護士に相談【ネクスパート法律事務所】

債権執行とは|されたらどうなる?手続きや流れをわかりやすく解説

借金の滞納が続くと、債権者は裁判所の手続きを通じて、強制的に返済を求めることができます。この手続きの一つが債権執行です。

これは、債務者(お金を借りた人)の財産や給与などを第三者から直接回収する手続きで、強制執行のうちの一つに分類されます。

この記事では、債権執行とは何か、されたらどうなるか、債権執行を避けるための具体的な対策などについて解説します。

債務者(債権執行を受ける側)の目線に立って解説をするので、現在借金を滞納していて、法的措置をとられそうな人は読んでみてください。

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債権執行とは

まずは、債権執行とは何なのかわかりやすく説明します。

借金滞納時にとられる法的手続き

強制執行とは、借金を返済しない債務者に対して、債権者(お金を貸した側)が裁判所を通じて強制的に回収するための手続きです。

債務者が返済の催促に応じなかった場合、裁判所の判決などで認められた債務をもとに、預金や給与などを差し押さえます。

債権執行は強制執行手続きの一種

債権執行は、強制執行手続きの一種です。強制執行には主に3種類あります。

  • 不動産執行:債務者の所有する不動産を差し押さえ、換価して借金を回収する
  • 動産執行:債務者の所有する動産を差し押さえ、換価して借金を回収する
  • 債権執行:債務者の所有する債権を差し押さえ、第三者から借金を回収する

動産執行は、債務者の所有する車屋商品、家財道具、現金などを差し押さえます。債権執行は、その人が持つ債権を差し押さえて、第三者から借金を回収することになります。

「債権とはいったい何?」「債権を差し押さえたらなぜ借金を回収できるのか?」の疑問については次の見出しで説明します。

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対象者の債権を差し押さえる手続きとは?

債権とは、簡単にいうと、債務者からお金を払ってもらう(返済してもらう)権利のことです。つまり、債権執行の場合、債務者から直接借金を回収することはありません。

例えば、口座のお金を差し押さえるにしても、動産執行と債権執行では以下のような違いがあります。

執行の種類 執行の内容の例
動産執行 ・所有者が自宅に置いている現金を差し押さえる(所有者は債務者本人)
債権執行 ・債務者が勤務先から給料を受け取る権利を差し押さえる手続き(勤務先から回収する)

・口座に入っているお金を差し押さえる(銀行から回収する)

動産執行の場合、債務者が所有しているお金を差し押さえることになります。債権執行の場合、債務者が受け取れるはずだった第三者のお金を差し押さえることになります。

本人からではなく、債務者が抱えている債権者から直接回収するという点に着目すると、債権執行は理解しやすくなります。

債権執行されたらどうなる?

それでは、債権執行を受けたらどのようなことが起こるか、具体例を紹介します。

銀行の預金をまとめて差し押さえられる

銀行口座の差し押さえでは、預金口座にある全額が対象になります。

たとえ、光熱費の支払いや生活費として残していた金額であっても、執行が行われた時点でその残高がすべて凍結され、引き出しができなくなります。

口座の凍結が解除されるのは、差し押さえられた金額が債権者に振り込まれ、必要な手続きが完了した後です。

「口座にあるお金を差し押さえるのは動産執行では?」と思う人もいるかもしれませんが、銀行口座に入っているお金は、正確には、債務者本人のものではありません。

口座に入っている段階では、銀行のものです。債務者が持っているのは銀行から自分のお金を引き出す権利(債権)です。

債権執行により、その権利が差し押さえられてしまうことで、銀行口座の中身が空になります。

毎月給料から一定額を差し押さえられる

給与差し押さえの場合、債務者の手取り額の25%が毎月差し押さえられます。この差し押さえは借金の返済が終わるまで続くと考えましょう。

さらに、手取りが33万円を超える部分については全額差し押さえを受けます。以下、差し押さえ金額の例です。

  • 手取り20万円の場合:25%(1/4)にあたる5万円が差し押さえられる
  • 手取り50万円の場合:50万円から33万を超えた分の17万円が差し押さえられる

手取りの給料が少なく、差し押さえてしまうと生活保護基準を下回るようなケースでは、給料の差し押さえは行われない可能性があります。

売掛金を差し押さえられる

事業を営む個人や法人が取引先に対して持つ売掛金も差し押さえの対象です。売掛金とは、取引先から商品やサービスの提供に対して後日支払われるべき金額です。

この差し押さえが行われると、取引先は債務者ではなく債権者に直接支払うよう通知されます。

家賃収入を差し押さえられる

例えば賃貸物件の大家が債権執行を受けた場合、家賃収入が差し押さえられる可能性があります。

債権者が差し押さえを実行した場合、今後の家賃は大家ではなく、債権者に対して直接支払われることになります。

退職金を差し押さえられる

給料と同様に、退職時に受け取る予定の退職金も差し押さえられることがあります。

退職金は老後の生活資金として重要ですが、退職直前に債権者が差し押さえを申請すると、その金額が減額されてしまいます。

差し押さえられる金額は手取りの25%までです。

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債権執行(強制執行)の手続きの流れ

債権者が債務者に対して法的な手続きを通じて未払金を回収するためには、債権執行(強制執行)の流れを踏む必要があります。

債権者は任意の返済を促した上で、それでも支払いがない場合、支払督促や裁判を経て、最終的に差し押さえを実行します。

この手続きには法的な段階がいくつか存在します。以下に、債権執行の全体的な流れを段階ごとに詳しく説明します。

債務者に任意での返済を求める

まず、債権者は債務者に対して、借金の支払いを求めます。この段階では、電話や書面による取り立てが一般的でしょう。

債務者が誠意を持って応じ、支払いの意思を示せば、法的手続きに進まず解決することもあります。

債権執行をするとなれば、お金、時間、手間、色々と大変ですので、債権者としても、できれば債務者から支払いをしてもらうことで、債権執行をしなくて済むのがベストだと考えています。

分割払いの提案や返済猶予の相談など、柔軟な対応が期待できるのもこの段階です。ここで連絡がつかなかったり、返済がなかったりすると、法的なステップへ移行する可能性が高くなります。

支払督促の申し立てをする

債権者は、交渉で借金を回収できないと分かれば次のステップに進みます。具体的には、支払督促の手続きを行います。

支払督促は、裁判所が債務者に支払い命令を出す手続きで、通常の訴訟よりも迅速かつ簡便に進められます。

支払督促を受けた場合に取れる行動は2種類あります。

  1. 速やかに借金を返済する
  2. 2週間以内に異議申し立てをする

2週間以内に異議申し立てをした場合、そのまま、通常の裁判に移行します。

返済もせず、異議申し立てもしないまま2週間が経過してしまった場合、支払督促を受け入れた形になり、債務者の支払いが確定します。

これを仮執行宣言と呼びますが、仮執行宣言が出された時点で、直ちに強制執行を受ける可能性があるので注意しましょう。

通常の裁判で返済を求める

債務者が支払督促に異議を申し立てた場合、あるいは債権者が最初から正式な裁判を選択した場合は、通常訴訟による手続きが行われます。

裁判所での審理を経て、債務者が債務を負っている事実が認められると、判決によって支払い命令が下されます。

貸金業者からお金を借りている場合、契約書もありますし、お金を借りた形跡がはっきりと残っていますので、債務者は裁判までして争うメリットはほとんどありません

裁判で敗訴した場合、債務者の返済義務が確定し、債権者は次のステップに進みます。

債務名義を取得する

債権者が債務名義(裁判所による執行力のある支払命令)を取得することで、強制執行を行う準備が整います。債務名義には以下のような種類があります。

  • 裁判での判決
  • 支払督促の確定
  • 和解調書や公正証書(債務者が支払い義務を認めた書面)

債務者は、債務名義を取られた時点で、いつでも強制執行ができる準備が整っている、と考えなくてはいけません。

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強制執行の申し立てを行う

債務名義を取得した後、債権者は地方裁判所に対して強制執行の申し立てを行います。

この申し立てにより、債権者は債務者の財産を法的に差し押さえることができます。対象となるのは、以下のような債務者の財産です。

  • 銀行預金、給与、売掛金、家賃収入、退職金など
  • 不動産や動産(車や家財道具)

債権者は、差し押さえ対象の財産に応じて、適切な執行手続きを選択します。

差し押さえを実行する

裁判所が差し押さえ命令を発行し、債務者の財産を凍結します。たとえば、銀行口座の差し押さえであれば、銀行は該当口座を凍結し、残高を債権者に振り込む準備を行います。

給与の差し押さえでは、債務者の勤務先が給与の一部を天引きし、債権者に送金します。

一度差し押さえられた財産は取り戻すことができないので注意しましょう。

差し押さえた分を配当して終了

裁判所が差し押さえた財産のうち、確保できた金額は債権者に配当されます。

債務が全額回収となる場合もありますが、そもそも借金が返済できなくて困っている状況ですから、金額が足らず、回収しきれない可能性もあります。

給料を差し押さえる場合は完済となるまで毎月差し押さえが続きますが、それ以外のものを差し押さえる場合、一旦強制執行の手続きは終了となります。

債権執行を阻止するための方法

債権執行は、債務者の財産や収入を強制的に差し押さえる厳しい手続きです。

しかし、債務者にもいくつかの対策があり、正しい対応を取れば債権執行の回避や一時停止が可能な場合があります。

ここでは、債権執行を阻止するための具体的な方法を紹介します。

まずは債権者と連絡を取る

債務者が最初に取るべき行動は、債権者に連絡を取ることです。債権者は、債務者と連絡が取れず、返済もない状態だと、法的手段を取らざるを得なくなります。

債権執行となると、裁判や執行手続きにコストがかかるため、任意で返済してくれるのならその方がよいと債権者は考えているのです。

執行される前に、返済する意思があることや、今はお金がないことをなどを正直に伝えましょう。

今後返済の見込みがあるのであれば、債権者も寛大な対応を取ってくれる可能性があります。

返済できるならすぐにする

もし返済可能な状況にある場合、すぐに支払うことが最も効果的な方法です。

少額であっても一部返済を行えば、債権者に対して誠意を示すことができ、交渉が有利に進む場合があります。

特に、支払督促が届いた段階で支払いを行えば、裁判や強制執行に進むのを防ぐことができます。

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支払督促に対して異議申し立てをする

支払督促が届いた場合、異議を申し立てることで自動的に通常訴訟に移行させ、強制執行を遅らせることができます。

支払督促は、債権者が申し立てる簡易な手続きであり、異議申し立てをしないと確定してしまいます。

しかし、異議を申し立てれば強制執行の準備がストップするため、解決のための時間を確保できます。

ただしこれは時間稼ぎであり、本質的な解決にはならないことを覚えておきましょう。

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裁判になっても和解を目指す

もし通常の訴訟に移行した場合でも、裁判中に和解を成立させることが可能です。

裁判は最終的な判決を目指しますが、途中で双方の合意による和解が認められることが多く、裁判所も和解を勧める傾向があります。

和解するメリット ・強制執行を阻止できる
・債務者にとっては、分割払いなどの柔軟な条件が認められることがある
・債権者も裁判を長期化させずに済む
和解案の例 ・毎月〇〇円ずつの分割払い
・〇日までに一部の返済を行う など

弁護士を通じて債務整理をする

借金が返済できなければ、最終的には強制執行を受けることになります。そうなる前に、弁護士を通じて債務整理をするのも有効な手段です。

債務整理とは、借金を減額したり、返済を免除したりできる手続きのことをいいます。債務整理には、主に以下の3つの手続きがあります。

任意整理 ・債権者と直接交渉し、利息のカットや返済計画の見直しを図る手続き
・裁判所を通さないため、コストが比較的安く、比較的早く解決できることが特徴
個人再生 ・裁判所に申し立て、借金の一部を免除してもらう手続き
・マイホームなどの財産を残しながら借金を整理したい場合に有効
自己破産 ・裁判所を通じて、借金の返済を免除する手続き
・破産手続きの開始決定後は、給与の差し押さえも停止される

債権執行が行われたあとに債務整理をしても、差し押さえられた分のお金は戻ってこない可能性が高いです。

債務整理をするのであれば、早めに対処したほうがいいでしょう。債務整理についてもっと知りたいひとは 以下の記事をご覧ください。

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差し押さえが禁止されている財産の例

強制執行では、債務者の財産や収入が差し押さえの対象となりますが、債務者の生活や最低限の生計を守るために、法律で差し押さえが禁止されている財産も存在します。

これらの財産を保護することで、債務者が生活を立て直すための最低限の環境を維持することができます。以下に、差し押さえが禁止されている代表的な財産を紹介します。

差し押さえ禁止財産 財産の例
生活必需品 ・家具・家電・衣類・寝具・食器・調理器具など
現金の一部 ・生活ほどの基準額を参考に、最低限の現金を残して差し押さえる
給与・年金の一部 ・給与:基本的に手取りの4分の3まで
・年金:差し押さえできない
生活保護費 ・生活保護費は差し押さえできない
仕事に必要な道具・器具 ・PC、工具、作業着、船、車など、収入を得るのに必要な道具
義肢・医療機器 ・義肢、補聴器、車いすなど健康的な生活に必要な医療機器
子どもの学用品や通学道具 ・教科書、文房具、制服、通学用の自転車など
宗教的・個人的価値のある品物 ・仏壇、神棚、お墓など

債権執行に関するよくある質問

債権の差し押さえで給与はどうなる?

会社から従業員(債務者)に支払われるはずだった給料が、会社から債権者に直接支払われる形になります。

金額は、手取りの1/4までと制限がありますが、借金を全額返済できるまで毎月差し押さえが続きます。

債権執行の管轄は?

債権執行の管轄は、債務者の住所地の地方裁判所が担当します。

預貯金の差し押さえは、該当する金融機関がある支店所在地の裁判所も関わる場合があります。

まとめ

債権執行は、債務者が借金を返済できない場合に、債権者が法的手続きによって財産や収入を差し押さえる手続きです。

具体的には、債務者が持つ債権を差し押さえることで、給料や退職金が直接債権者に支払われるようになったり、銀行口座に入っているお金(預金債権)が差し押さえられたりします。

財産のすべてが差し押さえられるわけではなく、給与の一部や生活必需品など、法律によって保護されている財産も存在します。

債権執行に至る前に、債権者との交渉や返済計画の相談を行えば、強制執行を回避できる可能性があります。

他には、支払督促への異議申し立てや裁判中の和解を利用することも、債務者にとって有効な対策です。

どうしても返済が難しい場合には、弁護士に相談し、債務整理をすることをおすすめします。

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