自己破産とは?簡単に説明|内容や条件・注意点をわかりやすく解説
自己破産(じこはさん)の手続きをご存じですか?借金が返済できず、どうすることもできなくなった人が行う最終手段です。
日本弁護士連合会の調査によると、毎年7~8万人が自己破産をしていますが、身近な人が自己破産をした、などのうわさはあまり聞きませんよね。
自己破産は、裁判所を通じた手続きであるため、専門用語が出てきたりして、なんとなく難しい印象を受けがちです。
ここでは、自己破産について簡単に知りたい人のために、内容や特徴、メリットデメリットをわかりやすく解説します。
目次
自己破産とは?重要ポイントを簡単に説明
早速ですが、自己破産とはどんな手続きなのか、簡単に説明します。
ここさえ押さえておけば、ひとまず自己破産に対する理解は問題ないでしょう。
裁判所を通じて行う借金の解消手続き
自己破産は、裁判所を通じて行う借金の解消手続きです。
自己破産の他には、裁判所を通さずに、直接債権者(貸主)に対して借金の減額を求める手続きもあります。
これら借金問題を解決する手続きをまとめて、債務整理(さいむせいり)と呼びます。
ですので、自己破産を一言で表すならば、裁判所を通じて行う債務整理手続き、となるでしょう。
認められると借金の支払いが免除される
裁判所に対して自己破産の申立てを行い、最終的にそれが認められた場合、抱えていた借金全ての返済が免除されます。
免除される借金の額に上限はありません。
破産法1条(目的)には、債務者(借主)に対して経済生活の再生の機会を与えることを目的とする、と記載されています。
つまり自己破産は、法律で認められた合法的な借金の解消手続きです。
自己破産の許可が下りた人は、今までの借金を清算し、新たな生活を送ることができます。
自分の財産で一定の価値があるものは没収される
自己破産の手続きをする際、自分が所有している財産の中で、一定の価値があるものに関しては、裁判所に没収されてしまいます。
破産者の財産を没収し、お金に換えた上で、債権者に配当するためです。
つまり、自己破産をするのであれば、借金がなくなる代わりに、自分も財産を失うことになります。
没収される財産は、家や車が代表的ですが、貴金属や株、生命保険の解約返戻金など、お金に換えたら20万円の価値があるものが対象となります。
一方、最低限の現金や生活に必要な家具家電などは残しておくことができるため、破産後も普通に生活を送ることができます。
自己破産の条件は2つ
自己破産は、裁判所に申立てをすれば誰でも認められるわけではありません。
自己破産をするためには2つの条件を満たす必要があるので、紹介します。
①支払不能の状態であること
まず、支払不能であること。支払不能の状態については、破産法第二条(定義)にこのように説明されています。
支払期限が到来している借金について、一般的かつ継続的に返済することができない状態 |
一般的とは、全ての借金を期限通りに返済していくことです。継続的にとは、一時的ではなく、今後も返済が困難な状態を指します。
つまり、①一時的な収入減などではなく、今後もずっと返済できそうにないこと、②すべての債権者に平等な返済をしていくことができない状態であること、がひとつ目の条件です。
②免責不許可事由にあてはまらないこと
ふたつ目の条件は、免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)に当てはまらないことです。
免責不許可事由とは、これに該当した場合、自己破産が認められなくなる行為、のことを指します。
代表例としては、自己破産時に財産を没収されないよう、事前に財産を売却する、他人に譲渡する、などが挙げられます。
あとは、特定の債権者だけを優遇して返済する行為などもNGです。
これら、免責不許可事由については、このあと自己破産の手続き中にしてはいけないことの項で詳しく説明します。
自己破産のメリットデメリットを簡単に解説
自己破産をするかどうか決断するためには、手続きのメリットやデメリットについて把握しておく必要があるでしょう。
ここでは自己破産のメリットとデメリットを簡単に紹介します。
メリット
まずはメリットから。
- 借金の返済が免除される
- 債権者からの取り立てがストップする
- 債権者が裁判を起こした場合、中断される
- 生活に必須な財産を残して再スタートをきれる
デメリット
次にデメリット。
- 自分の持っている家や車などの財産が没収される
- ブラックリストに登録されて5~10年ほどクレカの新規作成や借入ができなくなる
- 破産手続き中、一部の職業や資格に制限がかかる
- 官報(国の機関紙)で自己破産した事実が公告(お知らせ)される
- 税金や罰金、養育費などは免除されない
- 保証人が返済を引き継ぐことになる
デメリットについて詳しく知りたい人は、以下の記事をご覧ください。
自己破産と個人再生・任意整理の違いについて
自己破産と別の選択肢として、個人再生、任意整理がありますが、それぞれがどのように違うか、簡単な表で説明します。
自己破産 | 個人再生 | 任意整理 | |
効果 | 返済免除 | 5~10分の1まで減額 | 利息のカット |
返済 | なし | 分割払い | 分割払い |
差押え | あり | あり | なし |
期間 | 6か月~1年程度 | 6か月程度 | 数か月程度 |
利用条件 | 借金が支払不能 | 収入があるが借金が多額 | 収入が安定している |
自己破産は借金が全額免除されますが、個人再生や任意整理では借金が残り、分割払いで返済します。
個人再生では、住宅ローン特則を使うことで自宅を残せます。
任意整理は、減額額は少ないですが、対象業者を自分で選べるため、物品の引き上げを回避したり、保証人に影響を与えずに済んだりするなど、柔軟性があります。
自己破産の流れをわかりやすく解説
それでは、具体的に自己破産はどのような流れで行われるか、説明します。
基本的には、弁護士にお任せしておけば問題はありません。
①弁護士に相談・依頼する
まずは弁護士に相談しましょう。初回の相談は無料としている事務所が多いです。
ここで、自分の現状や悩み、今後どうしたいかを話しましょう。以下の内容をまとめておくと、相談がスムーズに進みます。
- 現在の借金額・借入件数
- 借入をしている業者の名前
- 現在の収入や貯蓄
- 所有している財産 など
弁護士と相談した上で、自己破産をすべきだと判断したならば、正式に契約をします。
契約後、弁護士は各債権者に受任通知を送付します。以後は、借金の取り立ては来ませんし、返済もストップすることができます。
②弁護士が裁判所に申立てをする
弁護士と契約したら、自己破産の申し立てに必要な書類の作成や収集を開始します。
弁護士から、書類の提出を求められることもありますので、速やかに応じるようにしましょう。
必要書類が揃ったら、管轄の地方裁判所に破産申し立てを行います。
③裁判所で1度目の面談をする
破産申し立てをしてから、基本的に3日以内に裁判所で面談を行います。
これを破産審尋(はさんしんじん)と呼び、裁判官と弁護士が内容を確認するために行われます。
破産者本人は出席する必要はありません。
東京地裁の場合、原則、破産審尋は申立てを行った当日に行われます。
④裁判所が破産手続きの開始を決定する
破産審尋の結果、申立てが受理されれば、正式に破産手続きの開始が決定します。
破産者にこれといった財産や、免責不許可事由がない場合、同時廃止事件として扱われ、破産手続き開始と同時に、手続きの廃止が決定されます。
同時廃止の場合、このまま⑥に進みます。
同時廃止とならなかった場合には、管財事件として扱われ、裁判所や、裁判所が選任した弁護士(破産管財人)が以下のような業務を行います。
- 破産者が所有する財産の調査、換金、債権者への配当
- 債権者への手続きの状況の説明(債権者集会) など
⑤裁判所で2度目の面談をする
裁判所で2度目の面談が行われます。
これを免責審尋(めんせきしんじん)と呼び、裁判官と破産者が面談を行います。
これには弁護士も同席できますので、心配はいりません。
免責審尋は、破産手続きの対象となった借金(債権)について免責(返済の免除)を得るために行われます。
免責審尋では以下のような、破産に関する基本的な内容を質問されます。
- 破産の制度の内容や趣旨を理解しているか
- 氏名や住所などの基本情報に間違いはないか
- 免責不許可事由はないか
- 提出した書類に間違いはないか など
⑥破産の許可が下りる
免責審尋から一週間ほどで、破産者に免責決定書が送付されます。
ここから2週間以内で債権者から異議がなかった場合、正式に借金返済の免除が確定します。
自己破産にかかる期間について
次に、自己破産にかかる期間について説明します。自己破産には、同時廃止・管財事件・少額管財の3種類があります。
それぞれ、手続きが完了するまでにかかる期間が異なりますので、各手続きが適用される条件と合わせて紹介します。
同時廃止事件の場合:6か月程度
同時廃止事件は、破産者の財産がほとんどない場合に適用される手続きです。具体的には、以下のようなケースです。
- 財産がほとんどない、または無価値である場合
- 債務が多いが、返済能力が全くない場合
- 破産者の資産が現金以外のものであり、換金が不可能な場合
この手続きでは、破産者の財産を処分する必要がないため、裁判所が破産を認めると同時に手続きが完了(廃止)します。そのため、他の手続きと比べて短時間で済みます。
破産手続きの開始後、通常6か月程度で終了することが一般的です。
管財事件の場合:1年~1年半程度
管財事件は、破産者が一定の財産を保有している場合や、債権者が多く、手続きが複雑な場合に適用されます。具体的には以下のケースなどです。
- 財産が一定額以上ある場合(不動産や高価な物品など)
- 複数の債権者がいる場合
- 破産者が法人である場合、または複雑な財産関係がある場合
管財事件では、破産管財人(※)が財産の評価や売却を行ったり、債務者のお金の使い方をチェックしたりします。そのため、手続きには時間がかかることが一般的です。
※…破産管財人とは、破産手続きを進めるために裁判所が選任した人物のことで、債務者の監視やサポートを行います。基本的に、弁護士が選任されます。
少額管財の場合:6か月~1年程度
少額管財事件は、少額であるものの、破産者が一定の財産を持っている場合に適用されます。
- 財産が少額だが、価値のある財産がある場合(例えば、車や現金など)
- 債権者が少なく、破産手続きが比較的簡単な場合
- 債務額が大きいが、返済能力がないわけではない場合
管財事件となると、破産管財人への報酬を支払わなければなりません。
破産管財人の業務量が少ないにも関わらず、管財事件と同額の報酬の支払うのは割に合わないため、上記のような場合、少額管財事件として扱います。
かかる期間としては、同時廃止より長く、管財事件よりは短くなります。
自己破産にかかる費用は?
自己破産をするにも費用がかかります。大きく分けて、弁護士に払う費用と、裁判所に払う費用の2種類です。
それぞれの内訳や金額の相場を紹介します。
弁護士にかかる費用
まずは弁護士にかかる費用の内訳の相場です。
名目 | 内容 | 金額 |
相談料 | 弁護士に悩みを聞いてもらうための費用 | 30分/5,000~10,000円 |
着手金 | 弁護士と契約するための費用、破産が失敗に終わったり、途中で依頼をキャンセルしても返金されないことが多い | 30~60万円 |
成功報酬 | 自己破産が成功した際にかかる費用 | 0~30万円 |
その他実費 | 弁護士の交通費などの実費 | – |
自己破産にかかる弁護士費用は、最低でも40万円といったところでしょう。
裁判所にかかる費用
次に裁判所にかかる手続き費用です。
- 申立手数料(収入印紙代):1,500円
- 予納郵券(郵便切手代):数千円程度(裁判所によって異なる※)
- 予納金(官報公告費用):1万円程度
※東京地方裁判所の場合、予納郵券(郵便切手代)は4,950円です(2024年9月24日~)。
上記は、自己破産が同時廃止事件として扱われた場合の裁判所費用です。
破産者が、これといった財産を所有していなかったり、免責不許可事由に当てはまったりしていないことが明らかな場合には、同時廃止となります。
逆に、破産者が財産を所有している場合や、免責不許可事由に当てはまっている場合には、管財事件として扱われます。
管財事件となった場合、破産管財人が、破産者の財産を売却したり、不正がないか調査するなどの業務が発生します。
そのため、管財事件となった場合には、破産管財人への報酬や、裁判所への予納金が追加で必要になります。
自己破産したいけどお金がない人の対処法
自己破産にかかる弁護士費用や、裁判所費用を紹介しましたが、これから自己破産をする人にまとまったお金がないことは明らかです。
これまで自己破産をしてきた人たちは、どのようにして自己破産の費用を捻出してきたのでしょうか。
ここでは、自己破産したいけどお金がない人の対処法を紹介します。
弁護士費用を分割払いにしてもらう
先ほど、自己破産をするには、弁護士費用が最低でも40万円くらいはかかる、と説明しました。
それだけの費用を一括払いできる人はほとんどいないでしょう。
もちろん、これから自己破産する人に、まとまったお金がないことは弁護士も把握しています。
ですので多くの弁護士事務所では、破産者に無理のない形で分割払いできるようなシステムを設けています。
まず、弁護士費用の支払いより先に、弁護士が各債権者への通知を行います。これを受任通知と呼びます。
受任通知には、弁護士が代理人となってこれから債務整理手続きを行うこと、などが記載されています。
受任通知を受け取った債権者は、債務者に対して取り立ての電話や連絡などを行うことができなくなります(貸金業法21条 – 取り立て行為の規制)。
それ以降は返済も止めることができるため、今まで返済に当てていた費用を弁護士費用として積み立てていきます。
弁護士費用が貯まったら、正式に自己破産の業務に着手するイメージです。
債権者への借金返済がストップしている状態で、弁護士費用を分割払いしますので、定期的な収入がある方であれば費用を捻出することができます。
法テラスに費用を肩代わりしてもらう
現在無職など、収入がない方は、弁護士費用の分割払いもできないでしょう。
そういった方は、法テラスに弁護士費用を肩代わりしてもらうのがおすすめです。
法テラスとは、正式名称が日本司法支援センターで、国が設立した法的トラブル解決の総合案内所です。
法テラスは、収入や資産が一定の条件を下回る人などを対象に、自己破産の弁護士費用の肩代わりをしています。
この法テラスの業務のことを民事法律扶助(みんじほうりつふじょ)といいますが、これを利用した場合、弁護士費用を半額近くまで押さえることができます。
債権者数 | 法テラスの自己破産費用 |
1~10社 | 実費23,000円、着手金132,000円 |
11~20社 | 実費23,000円、着手金154,000円 |
21社 | 実費23,000円、着手金187,000円 |
民事法律扶助の利用条件などは、下記の記事を参考にしてください。
自己破産の手続き中にしてはいけないこと
序盤で、自己破産が認められるための条件として、免責不許可事由に当てはまっていないこと、と説明しました。
ここでは、自己破産の手続き中にしてはいけないこととして、免責不許可事由について詳しく説明します。
実際には、自己破産の手続き中だけではなく、手続き前もしてはいけない行為になりますので、破産を予定している人は注意してください。
①破産前に財産を隠す・壊す・不当に価値を下げる
自己破産をする際、自分が所有している財産の中で、価値があるものは没収されてしまいます。
それは、財産を換金して債権者に配当するためです。
それを阻止するために財産を隠したり、壊したり、名義を変更したりなどする行為は免責不許可事由にあたります。
ただし、破産法の条文には債権者を害する目的で…とありますので、やむを得ない事情で上記の行為を行った場合、免責不許可事由には当てはまりません。
②クレカの現金化や不利な条件での転売などをする
自己破産を遅らせる、時間稼ぎをするなどの目的で、割に合わない借金を増やす行為も免責不許可事由に当てはまります。
- クレジットカードの現金化
- カードで購入したものを相場より安く転売
- 金利の高い闇金などからの借入
「どうせ自己破産するなら、借りられるだけ借りて、使い切ってからにしよう」という考えは通用しないので注意しましょう。
③一部の債権者にこっそり返済をする
自己破産をする際は、すべての債権者を平等に扱わなければいけません。これを債権者平等の原則といいます。
一部の債権者にのみ返済を続ける行為は偏波弁済(へんぱべんさい)と呼ばれ、免責不許可事由に該当します。
一部の債権者を優遇する行為によって、他の債権者が損をすることになります。
例え、知人からの借金であっても、こっそり返済を続けるなどはしてはいけません。
④ギャンブルや浪費、投資で借金を作る
借金を作った原因が、ギャンブルや浪費、投資などであった場合も免責不許可事由に該当します。
破産法では、ギャンブルや投資のことを射幸行為(偶然得られる利益を狙う行為)と呼び、パチンコや競馬はもちろんのこと、株やFXなどの投資も対象となります。
浪費に関しては、明確な定義はありません。破産者の収入とお金の使い道が、浪費に該当するかどうかを裁判所が判断します。
⑤返済できるふりをして借入を増やす
破産の申し立てをした日から過去1年以内に、嘘をついて借入をしていると免責不許可事由となります。
具体的には、もう返済能力がないのに、返済できるふりをして借入を増やす行為です。
借入をしてから一度も返済しないまま自己破産の申し立てをしたりすると、これに該当する可能性が高くなります。
⑥財産や収入に関する書類を隠す・偽造する
自己破産をする際、自分の収入や財産に関する書類の提出を求められます。
裁判所が破産者の状況を調べるのに必要な書類を隠したり、偽造したりすると、免責不許可事由に該当します。
裁判所は、破産者名義のすべての銀行口座を1~2年ほどさかのぼって調査します。
小細工は通用しないので覚えておきましょう。
⑦虚偽の債権者名簿を提出する
自己破産の際、お金を借りている人のリスト(債権者名簿)を提出します。
ここで悪意を持って、特定の相手を記入しないなどの行為を行うと免責不許可事由に該当します。
債権者名簿に記載されていない債権者に対しては、裏でこっそり返済を続けることも可能ですし、他の債権者が損をすることになります。
これは虚偽であることが条件であるため、昔の借金など、単に記入漏れがあった場合には問題となりません。
⑧裁判所の許可なく引っ越すこと
破産手続き中は、裁判所の許可なく引っ越しをすることはできません。
これには、裁判所が破産者の居所を把握し、スムーズに業務を進めるためという目的があります。
破産手続き中に無断で引っ越しをすることは、免責不許可事由には該当しません。
ですが、裁判所の手続きが遅延するなど、破産者にとってメリットがありませんので、しっかりと許可を取ってから引っ越しをしましょう。
⑨裁判所の業務に協力しない・嘘をつく
自己破産の際、裁判所や破産管財人が様々な手続きや業務、書類のチェックなどを行います。
そこで、裁判所の業務に協力しなかったり、嘘をついたりする行為は免責不許可事由に該当します。
裁判所や破産管財人から質問されたり、書類の提出を求められたりした際には、速やかに対応しましょう。
自己破産でなくならない非免責債権とは
自己破産をすることにより、多くの借金は免除されますが、すべての債務が免除されるわけではありません。
特定の債権は、自己破産をしても免除されない非免責債権として扱われます。
ここでは、見落としがちな非免責債権について説明します。
税金や社会保険料
自己破産をしても、税金や社会保険料などの公的負担は免除されません。
これには、国税(所得税、消費税、法人税など)、地方税(住民税、固定資産税など)、年金保険料、健康保険料、雇用保険料などが含まれます。
これらの支払い義務は、自己破産によって免除されることなく、破産手続き後も引き続き支払いが求められます。
養育費や婚姻費
養育費や婚姻費用も非免責債権に該当します。これらは、支払い義務があるものの、借金としては扱われません。
- 養育費:離婚した子どもを養育するための費用
- 婚姻日:別居中の配偶者が生活するための費用
これらは、家庭内の支援義務に基づくものであり、債務者が自己破産をしても、引き続き支払う責任があります。
罰金や過料
罰金や過料などの行政的な制裁金も、自己破産で免除されることはありません。
これには、交通違反の罰金や、行政の規制に違反した場合の過料などが含まれます。
これらは刑事罰または行政罰としての性格を持っており、自己破産手続きで支払い義務を免れることはできません。
故意や重過失による不法行為に基づく損害賠償請求権
故意や重過失による不法行為に基づく損害賠償請求権も非免責債権に該当します。
わかりにくいので、具体例を挙げて紹介します。
【暴力や傷害事件】
故意に他人を殴って怪我をさせた場合、被害者からの損害賠償請求
【飲酒運転による事故】
飲酒運転中に事故を起こして他人に怪我をさせた場合、重過失として損害賠償請求を受ける
【詐欺行為】
故意に他人を騙して金銭を奪った場合、被害者が詐欺による損害賠償を請求する
【名誉毀損や誹謗中傷】
故意に他人の名誉を傷つける発言や行動をした場合、被害者から損害賠償を求められる
故意でも重過失でもない損害賠償請求権については、自己破産で免除される可能性があります。
例えば、交通ルールをきちんと守って運転していたにも関わらず、交通事故で人をけがさせてしまった場合などです。
自己破産について相談できる窓口
実際に自己破産を検討する際に相談できる窓口を紹介します。
弁護士
弁護士は、自己破産の手続き全般をサポートする専門家です。
自己破産の申立てに必要な書類作成から、裁判所とのやり取り、債権者との交渉、免責不許可事由に対する対応まで、幅広くサポートを行います。
弁護士に依頼することで、自己破産手続きがスムーズに進行し、複雑な状況にも対応してもらうことができます。
特段のこだわりや事情がなければ、まずは弁護士に相談するのがいいでしょう。
司法書士
司法書士にも自己破産の相談をすることができます。相談には乗ってもらえるものの、弁護士のように、依頼者の代理人となって手続きを進めることができないので注意してください。
裁判所に提出する書類の作成などは依頼できるので、必要に応じて利用しましょう。
法テラス
記事の前半にも出てきた法テラスです。法テラスが定める収入や資産のラインを下回る人は、民事法律扶助として、弁護士に無料相談できます。
無料相談後に自己破産を依頼するとなった場合、普通に弁護士事務所より安く依頼できるうえに、その費用を法テラスが立て替えてくれます。
経済的に厳しい人は、一度法テラスに相談してみましょう。
【関連:法テラス】
市役所の市民相談窓口
市区町村の役場には、住民向けの相談窓口が設置されています。そこで、弁護士に無料相談することができます。
一回あたり20~30分で、費用は無料であることが多いです。時間が短いため、具体的な相談をするには向いていません。
他にも、相談枠が限られていて予約が取れなかったり、一人当たりの相談できる回数も限られていたりするので、本格的に相談したい人は弁護士事務所を利用しましょう。
消費生活センター
消費生活センターは、消費者問題全般に関する相談を受け付けており、自己破産に関する基本的なアドバイスを提供しています。
消費生活センターは、債務整理に関する情報提供や、必要に応じて専門家の紹介などを行っていますが、実際に破産手続きを依頼できるわけではありません。
自己破産の初歩的な相談や、情報収集をするのに適しています。
自己破産に関するよくある質問
最後に、自己破産に関するよくある質問を紹介します。
自己破産できないケースは?
自己破産できないケースはいくつかあります。
- 自力での返済が可能だと裁判所が判断した場合
- 免責不許可事由に該当する場合
- 自己破産にかかる裁判所の費用が払えない場合
- 過去7年以内に自己破産や個人再生の一部の手続きを行っている場合
自己破産ができない場合、個人再生や任意整理など、別の債務整理手続きを検討する必要があるでしょう。
自己破産による家族への影響は?
基本的に、自己破産で影響を受けるのは、本人のみです。家族に影響は及びません。
しかし、間接的な形で影響を受ける可能性はあります。
- 家や車がなくなることで家族の生活に影響が出る
- 夫の借金の保証人が妻だったため、妻が返済をすることになる
- 息子や娘の奨学金の保証人になれない など
心配ごとがある場合には、自己破産の手続きを始める前に、弁護士としっかり話し合いをしておきましょう。
自己破産の個人でのやり方は?
自己破産は、弁護士に依頼せずとも、個人で行うことも可能です。
やり方は、弁護士に依頼した場合と基本的に変わりません。
- 必要書類を集めて管轄の地方裁判所に申立てをする
- 裁判所で面談を行う
- 破産手続きの開始が決定する
- 裁判所や破産管財人が、破産者の財産の処分や債権者集会などの業務を行う
- 再び裁判所で面談を行う
- 破産の許可が下りる
個人で行う場合、必要書類の収集や記入に手間取る可能性が高いです。
結果として遠回りになる可能性もあるため、個人で行う場合にも、弁護士に相談することをおすすめします。
【関連】自己破産のやり方と自己破産したいけどお金がない場合の対処法
自己破産後の生活は?
自己破産後は、ブラックリストに登録されるため、5~10年の間、クレジットカードの新規作成や、貸金業者からの借り入れが困難になります。
ですが、それ以外の面では、普通の人と変わらない生活を送ることができます。
借金を清算し、新しい生活のスタートをきりましょう。
【関連】自己破産した人の末路は?デメリットやその後の生活・結婚について解説
自己破産は2回目も可能?
自己破産は2回目も可能です。特に上限回数などは決められていませんが、2回目が認められるには、1回目より審査が厳しくなると考えましょう。
例えば、前回と同じ理由で自己破産をしようとすると、反省していないとして裁判所に認められない可能性が高いです。
まとめ
自己破産とはどんな手続きなのか、簡単にまとめました。
自己破産は、破産法に定められた手続きで、債務者に対して経済生活の再生の機会を与えることを目的としています。
裁判所を通じて行う手続きで、認められれば借金の返済が免除されます。
その代わり、自分が所有している財産で価値の高いものは没収、換金され、債権者に配当されます。
自己破産が認められるための条件は2つ、支払不能の状態であること、免責不許可事由に当てはまらないことです。
自己破産の手続きは弁護士に依頼するのが一般的で、費用は40万円~となります。
多くの弁護士事務所は、破産者にまとまったお金がないことを理解し、無理のない形での分割払いを提案してくれます。
借金でお悩みの方は、一度弁護士に相談してみましょう。
今後どうすべきかが明確になるはずです。