自己破産は会社にばれる?クビになるかや社員への対応を紹介
自己破産とは、裁判所を通じて借金の返済を免除する手続きのこと。
借りたお金を返せなかったことに対する後ろめたさなのか「会社に知られたらどうしよう」と心配する人が多いです。
基本的に、自己破産は仕事とは関係ないプライベートでの出来事です。
普通であれば会社に知られたりしませんし、処分を受けたりすることもありません。
ここでは、自己破産と会社の関係について説明します。
目次
自己破産が会社にばれる可能性は低い
結論からいいますと、自己破産が会社にばれる可能性は低いです。
自己破産の手続きは、自分(及び弁護士)と裁判所と債権者(貸主)の間で行われるので、基本的に会社は関与しません。
次項で説明するようなケースでない限り、会社に自己破産がばれることはありません。
自己破産したことが会社にばれるケース
自己破産したことが会社にばれるケースとはどのようなものがあるのでしょうか。
会社から借入をしていた
まず、会社から借入をしていたケースです。
会社から借りたお金が返済できない状態で自己破産をすると、会社は他の貸主と同じく、債権者として扱われます。
自己破産を弁護士に依頼をすると、全ての債権者に受任通知が送られます。
受任通知に記載されている内容は、主に以下になります。
- (弁護士が)破産者本人の代理人となったこと
- これから債務整理をすること
- 今後は本人に対して取り立ての連絡などをしてはいけないこと
- 過去の取引履歴を開示すること など
受任通知を受け取った会社は、もう本人に支払い能力がなく、結果として自己破産することも知ることになります。
会社にばれることのないよう、自己破産前に会社の借金だけを返済してしまうのはやめましょう。
特定の債権者だけを優遇することは、偏波弁済(へんぱべんさい)となり、自己破産が認められなくなる可能性があります。
自己破産の際は、すべての債権者を平等に扱わなければならないため、特定の債権者のみに返済をすることは認められていないのです。
給料を差し押さえられた
抱えている借金を返済できず、長期間滞納していると、最終的に債権者から裁判を起こされます。
その結果次第では、給料を差し押さえられてしまうのです。
具体的には、裁判所から通知が届き、毎月の給料から借金返済分を強制的に引き落されるなど。
その時点で、多額の借金を抱えていることは会社にばれてしまいますし、最終的には自己破産でこれを解消することになります。
差し押さえなどの強制執行が行われる前に、弁護士に相談することが大切です。
退職金証明書を請求した
自己破産の際、退職金証明書が必要となります。
自己破産は、自身が所有している財産を売却、換金などした上で、債権者に配当を行いますが、退職金もこれに該当します。
現時点では受け取っていない(まだ受け取る予定のない)退職金も対象となり、今会社を退職したらどのくらいの退職金が支払われるか、にも調査が入ります。
会社に退職金証明書を請求する際、なぜ必要なのか理由を聞かれるかもしれません。
そこで、正直に事情を話してしまうと自己破産をすることが会社にばれますので、うまい言い訳を考える必要があります。
また、必ずしも退職金証明書が必要なわけではありません。
会社の就業規則や退職金規定に照らし合わせ、自分で計算することも可能です。
計算方法がわからない場合には、一度弁護士に相談してみましょう。
会社関係者から借入をしていた
社長や上司、同僚などから借金をしていた場合、間接的に会社にばれてしまう可能性があります。
個人からの借金であっても、自己破産では、他と同じく債権者として扱われます。
「Aさん(破産者本人)にお金を貸していたが、返済ができず、弁護士から通知が来た」などと、貸主が周囲に話してしまえば、それがうわさとなって社内に広がってしまうかもしれません。
どうしても自己破産したことを知られたくないのであれば、貸主に事前に相談し、誰にも口外しないよう約束をしておいた方がいいでしょう。
官報を見られた
珍しいケースですが、官報(かんぽう)を見られたことがきっかけで会社に自己破産がばれてしまうことがあります。
官報とは、国が国民に対してお知らせをするための機関紙で、インターネットでも閲覧可能です。
そして、裁判所で行われた手続きについて、具体的に以下の内容が記載されます。
- 破産した人の名前や住所などの個人情報
- 自己破産手続きの開始が決定したこと(1回目)
- 手続きが完了し、返済が免除されたこと(2回目)
とはいえ、官報に関してはそこまで心配しなくてもいいでしょう。
そもそもほとんどの人が官報の存在について知りませんし、毎日発行されるものの中から、特定の個人の情報を探し当てるのは困難です。
さらに、無料で閲覧できるのは直近90日分まで、などの事情もあるため、時間が経てば経つほど、官報経由で特定の個人を探し当てるのは困難になっていきます。
資格制限によって働けなくなった
自己破産の手続き中は、特定の資格や職業に制限がかかります。その期間、該当する仕事ができなくなるため、必然的に会社にばれてしまいます。
制限がかかるのは自己破産の手続き中のみです。手続きが終わり、免責が認められれば仕事に復帰することができます。
制限を受ける資格(職業)の例を挙げます。
- 弁護士などと呼ばれる士業
- 銀行や貸金業など金融関係
- 不動産鑑定士など不動産関係 など
制限がかかる資格や職業には偏りがあり、かつ限定的なものなので、大半の人にとっては無関係でしょう。
しかし、制限に該当している人は、手続き期間、配置転換をしてもらうなり、休職するなり、何かしらの手を打つ必要があるでしょう。
制限がかかる職業について細かく知りたい方は、下記リンクをご覧ください。
自己破産をしても会社をクビにならない理由
多くの人が本当に心配しているのは、自己破産したことがばれることではなく、それがきっかけでクビになったり、処分を受けたりすることではないでしょうか。
結論からいうと、そういった心配は無用です。
ここでは、自己破産をしても会社をクビにならない理由を説明します。
借金と仕事には何の関係性もないから
まず、借金は仕事とは関係のない、プライベートの事情です。
本人がいくら借金を抱えようが、自己破産をしようが、会社での労働には影響がないケースがほとんどです。
ですので、自己破産を理由に会社をクビになることはありません。
しかし、借金返済のために会社のお金を横領したり、勤務時間中にギャンブルをしていたりなどの事実が発覚すれば、それに関しては何らかの処分を受ける可能性があります。
自己破産でのクビは不当解雇だから
単に、自己破産をしたことを理由に従業員をクビにすることはできません。
それは、労働契約法第16条に記載されています。
(解雇)
第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
【引用:労働契約法 – egov】
労働契約法第16条に関して、裁判所は厳しい判断をします。自己破産が理由の場合、会社は従業員をクビにできないでしょう。
もし自己破産が理由でクビになった場合、それは不当解雇にあたるため、弁護士や労働基準監督署に相談すべきです。
自己破産を会社に知られたくない場合の対処法
会社に借入があるケースでは、自己破産を隠し通すのは難しいでしょう。
しかし、会社に借入がないのであれば、その他の借金の存在を隠すことができるかもしれません。
ここでは、自己破産を会社に知られたくない場合の対処法を紹介します。
裁判を起こされる前に自己破産をする
序盤でも説明した通り、借金を放置していると最終的に裁判を起こされます。
裁判所が下した支払い命令に従わないでいると、強制執行となり、給料を差し押さえられてしまいます。
給料が差し押さえられてしまえば、借金を抱えていることや、これから自己破産をすることが会社にばれてしまいます。
そうなる前に、弁護士に相談して自己破産を行いましょう。
仮に債権者が裁判を起こそうとしていても、破産手続きの開始が決定すれば、その訴訟手続きは中断となります(破産法第44条)。
自己破産には、債権者からの裁判を阻止する効果があるため、弁護士に相談し、早めに破産手続きを開始しましょう。
その他の債務整理をする
借金を解消する方法は、自己破産だけではありません。自己破産以外の債務整理手続きをすることで、会社にばれないように借金を減額できる可能性があります。
借主それぞれが抱えている問題と、それを解決できる債務整理の方法を紹介します。
任意整理:会社を債務整理を対象から外す
まず、会社から借入があるが、自己破産することで会社にばれるのを回避したい人。
そのようなケースでは自己破産ではなく、任意整理を行いましょう。
任意整理手続きを簡単にまとめます。
- 裁判所を通さず、債権者(貸金業者)に対して、直接借金減額の交渉をする手続き
- 借金の利息のカットが期待できる
- 減額された借金は3~5年程度で分割払いしていく
- 債権者1社ごとに任意整理するかしないか選択できる
例えば、会社以外の借入先すべてを任意整理することで、大幅な借金減額ができれば、自己破産をせずに済むかもしれません。
任意整理は裁判所を通じた手続きではないので、時間や費用が比較的かからない代わりに、相手方にも交渉を拒否する権利があることも覚えておきましょう。
大手の銀行や貸金業者であれば、たいてい任意整理には応じてくれます。
しかし、借入期間が浅かったり、借入から一度も返済していなかったりなどの事情があると、任意整理に応じてもらえない可能性があります。
個人再生:破産による資格制限を回避する
次に、自己破産の職業制限に引っかかることで自己破産がばれるのを回避したい人。
その場合には、個人再生をするのがおすすめです。
個人再生について簡単にまとめます。
- 自己破産と同じく裁判所を通じて行う債務整理手続き
- 5,000万円までの借金を5~10分の1まで減額できる
- 減額された借金は、原則3年で分割払いしていく
- 自己破産と違い、手続きに資格や職業の制限がかからない
個人再生は、自己破産と違い、資格や職業に制限がかからないため、会社にばれることはありません。
しかし、任意整理のように、借入先ごとに対応を変えることはできません。
会社に借入がある場合は、自己破産と同じように、債務整理手続きをすることがばれてしまいます。
個人再生は、会社からお金を借りていないが、借金額が大きく、返済が苦しい状態の人におすすめです。
自己破産に関するよくある質問
最後に、自己破産に関するよくある質問に回答します。
自己破産した社員への対応は?
自己破産した社員に対して、会社から何らかの対応をしたり、ペナルティを与えたりすることは基本的にありません。
借金や自己破産は、会社や仕事には関係ない個人的な事情だからです。
普段の仕事を問題なく行えているのであれば、会社が自己破産に関与してくることはないでしょう。
自己破産は家族にばれる?
自己破産は、同居している家族にはばれてしまう可能性があります。
破産手続きの際、裁判所は、破産者のお金の使い道を細かくチェックするため、世帯での収入も調査します。
具体的には、配偶者の給与明細や預金通帳をチェックする可能性があるため、ここをうまくごまかすことができれば、家族に秘密で自己破産できるかもしれません。
同居していない家族であれば、自己破産はばれる可能性は低いといえます。
ただし、自己破産をすると、家や車は差し押さえられてしまう可能性が高いため、それをきっかけにばれてしまう可能性があります。
自己破産したら会社に報告がある?
会社から借入をしているなどの事情がないかぎり、弁護士や裁判所から会社に報告をすることはありません。
自己破産は、自分(及び依頼した弁護士)と、裁判所と、債権者(貸主)が関わる手続きです。
会社(勤務先)は一切関係ありません。
自己破産は市役所でばれる?
自己破産したかどうかは、市役所で調べることはできません。
まれに、「戸籍や住民票に、自己破産をした記録が残ってしまうのではないか」と心配する人がいますが、これは誤解です。
戸籍や住民票に、自己破産したことを記入する欄はありませんので、ご安心ください。
まとめ
自己破産したら会社にばれるかどうか、について説明しました。
会社に借入があるなどの特殊なケースを除けば、自己破産したことがばれる可能性は低いです。
また、自己破産したことがばれたところで、クビにされたり、処分を受けたりする心配もありません。
自己破産は、仕事とは関係ないプライベートでの出来事だからです。
自己破産を理由に会社をクビにするのは不当解雇にあたるため、弁護士に依頼するなどして撤回を求めましょう。
また、借金問題の解決法は自己破産だけではありません。
任意整理や個人再生など、他の手段もありますので、自分に合った手続きを行うようにしましょう。
一番よくないのは、借金を放置すること。やがて裁判所から裁判を起こされてしまいます。
そうなる前に弁護士に相談し、どうすれば借金問題を解決できるか、アドバイスをもらいましょう。