親告罪とは?趣旨や罪の一覧、弁護活動について解説

被害者らの告訴との関係で罪を分類するとすれば、あらゆる罪が親告罪か非親告罪かに分類されます。

このうち、今回は親告罪について詳しく解説してまいります。

親告罪とは

親告罪とは、検察官が起訴するにあたって告訴権者による告訴が必要となる罪のことをいいます。

つまり、検察官が起訴する直前で、告訴権者の告訴状が検察官の手元になければ、検察官はその罪についていくら有罪の心証を抱いていたとしても起訴できないということです。

警察から検察へ事件記録(書類等)が送致される場合は、通常、その段階で、被害者等の告訴状が事件記録と一緒に綴(つづ)られています。

親告罪については、一部の罪を除き、告訴権者が犯人を知ったときから6か月を経過した後は告訴することができない、という告訴期間が設けられています。

親告罪と告訴

告訴とは告訴権者が捜査機関に対して犯罪事実を申告して犯人の処罰を求める意思表示のことです。

そして、告訴の内容を記載した書面のことを告訴状といいます。

捜査機関に対して告訴できる人(告訴権者)は法律で規定されています。

まず、犯罪により罪を被った被害者はもちろん、被害者の法定代理人(被害者の両親など)も告訴権者です。

また、被害者が死亡したときは、被害者の配偶者、直系の親族(祖父母など)、兄弟姉妹も、被害者の明示の意思に反しない限り、告訴することができるとされています。

告訴権者が告訴をするには捜査機関に告訴状を提出しなければなりません

以上、親告罪については告訴権者による告訴が必要ですが、これは親告罪ではない非親告罪(検察官が起訴するにあたって告訴を必要としない罪)について告訴をしてはいけないという意味ではありません。

窃盗罪(刑法235条)、強盗罪(刑法236条)、業務上横領罪(刑法253条)などをはじめとする非親告罪であっても、捜査機関に対して犯人の処罰を求めるという意思表示をする意味で、あえて告訴がなされる(告訴状が提出される)ことがあります。

親告罪が設けられた趣旨と主な親告罪の一覧

親告罪が設けられた趣旨は犯罪類型によって様々ですが、どの罪にも共通していえることは被害者意思の尊重です。

そもそも、刑事事件において、法律上起訴できるとされているのは、基本的には検察官だけです。

しかし、その検察官は犯罪により害を被った被害者ではありません。

基本的に実際の被害者ではない検察官のみが起訴できる、という仕組みとなっているのが刑事事件の特徴です。

起訴という法制度が、被害者一個人の利益の保護を目的というよりかは、公共の福祉を維持すること(社会の秩序、安全を守ること)を目的としているからです。

そのため、法律では公益の代表者といわれる検察官に起訴権限を独占させ、基本的に被害者らは、検察官が起訴するかどうかの意思決定に関与できないとされています。

もっとも、犯罪の中には、公共の福祉の維持を考えるよりも、被害者の意思を尊重すべきと考えられる罪もあります。それが以下でご紹介する親告罪というわけです。

仮に、以下の罪であっても、検察官が告訴権者の告訴なく起訴できるとなければ、被害者らは自己の意思に反して刑事裁判に付き合わされなければならない可能性が出てきます。

そうした事態を回避する意味でも親告罪が設けられた意義は大きいといえます。

【主な親告罪の一覧】
罪名 罰則
信書開封罪(刑法133条) 1年以下の懲役又は20万円以下の罰金
秘密漏示罪(刑法134条) 6月以下の懲役又は10万円以下の罰金
過失傷害罪(刑法209条1項) 30万円以下の罰金又は科料
私用文書等毀棄罪(刑法259条) 5年以下の懲役
器物損壊罪(刑法261条) 3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料
未成年者略取誘拐罪(刑法224条) 3月以上7年以下の懲役
名誉棄損罪(刑法230条) 3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金
侮辱罪(刑法231条) 拘留又は科料
親族間の窃盗罪(刑法244条等) 10年以下の懲役又は50万円以下の罰金
親族間の横領罪(刑法255条等) 5年以下の懲役

親告罪における弁護活動

親告罪における主な弁護活動は被害者との示談交渉です。

しかし、場合によっては、被害者と面識がなく、被害者の連絡先を知らないため、示談交渉ができないこともあるでしょう。

その場合、捜査機関から被害者の連絡先を教えてもらって被害者とコンタクトを取る方法が考えられますが(事件が捜査機関に送致されている場合)、捜査機関が加害者に被害者の連絡先等を教えることはまずありえません

また、仮に、加害者が被害者の連絡先を知っていたとしても、被害者が示談交渉のテーブルについてくれない、という事態も考えられます。

そのため、示談交渉は弁護士に任せた方がよいと考えます。

弁護士であれば、被害者の意思で捜査機関から被害者の連絡先を入手し、示談交渉が可能です。また、弁護士であれば交渉に応じてもよいという被害者も少なくありません。

示談を成立させることによって得られる利益は、いつ示談が成立したかによって異なります。

すなわち、事件が捜査機関に発覚する前に示談が成立した場合は、捜査機関からの捜査(出頭要請、取調べ、逮捕など)を受ける可能性がなくなるでしょう。

もちろん、懲役などの刑罰を受ける可能性もありません

他方で、事件が捜査機関に発覚した後(告訴権者が捜査機関に告訴状を提出した後)、起訴される前に示談が成立した場合は、告訴取消しによる不送致(警察から検察に事件を送致しない)、あるいは告訴取消しによる不起訴となるでしょう。

なお、告訴の取消しは起訴前まで可能ですから、示談は起訴前に成立させる必要があります。

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非親告罪なのに親告罪と誤解されやすい罪

なお、罪の中には非親告罪であるのに親告罪と誤解されやすい罪もあります。以下の罪はすべて非親告罪です。

【非親告罪なのに親告罪と誤解されやすい罪】

  • 強制わいせつ罪(刑法176条)
  • 準強制わいせつ罪(刑法178条1項)
  • 強制性交等罪(旧強姦罪)(刑法177条)
  • 準強制性交等罪(旧準強姦罪)(刑法178条2項)
  • 営利目的等略取・誘拐の罪(刑法225条)

誤解されやすい理由として、これらの罪は平成29年改正刑法が施行される(=施行日=効力発生日=平成29年7月13日)まではすべて親告罪でした。

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同日以降に犯した罪については、告訴権者による告訴がなくても検察官による起訴が可能となっていますので注意が必要です。

まとめ

親告罪については告訴権者の告訴がなければ起訴されません。

しかし、親告罪に問われたら、早めに弁護士に相談し対応を検討しましょう。

当事務所は、24時間365日無料相談を受け付けしている法律事務所です。

親告罪に問われるなどの刑事事件に対する悩みがあるようでしたら、お気軽にお問い合わせください。

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