強制性交等罪と準強制性交等罪との違いとは?

この記事は、2023年7月13日までに発生した性犯罪に適用される強制性交等罪について説明した記事です。

2023年6月23日に公布され、2023年7月13日に施行された改正刑法の不同意性交等罪については、以下の記事をご参照ください。

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強制性交等罪と準強制性交等罪とは性交等に至るまでの手段が異なるだけで、罪の本質や刑の重さは何ら異なるところがありません

以下では両罪の違いや示談を検討する際の留意点などについて詳しく解説してまいります。

強制性交等罪とは

強制性交等罪は刑法177条に規定されています。

(強制性交等)
第百七十七条
十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。

強制性交等罪は、「暴行又は脅迫」を手段とする点が、準強制性交等罪と異なります。(ただし、被害者が13歳未満の場合は、「暴行は又は脅迫」がなくても強制性交等罪は成立します。)。

暴行」とは、殴る、蹴る、叩く、押し倒す、など人の身体に対して有形力を行使することです。

脅迫」とは「殺されなくなければやらせろ」などと言うように、人の生命、身体等に害を加えることを告知する(言う)ことです。

強制性交等罪の暴行、脅迫の程度は、被害者が完全に反抗(抵抗)できない程度までは必要でなく、被害者の反抗を著しく困難ならしめる程度であればよいと解されています。

被害者の反抗が著しく困難ならしめる程度であるか否かは、被害差の年齢、精神状態、健康状態、犯行の時刻・場所・態様その他諸般の事情を考慮し、社会通念に従って判断されます。

準強制性交等罪とは

準強制性交等罪は刑法178条2項に規定されています。なお、同条1項は準強制わいせつ罪に関する規定です。

(準強制わいせつ及び準強制性交等)
第百七十八条
1 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。
2 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、性交等をした者は、前条の例による。

準強制性交等罪は、強制性交等罪と異なり、暴行又は脅迫ではなく

  • 人の心神喪失若しくは抗拒不能な状態を利用すること
  • 人を心神喪失若しくは抗拒不能状態にさせること

のいずれかを手段とする点に特徴があります。

心神喪失とは、精神の障害によって正常な判断能力を失っている状態をいいます。たとえば、被害者の【熟睡・泥酔・麻酔状態、高度な精神病】などがこれに当たります。

抗拒不能とは、心神喪失以外の理由によって心理的・物理的に抵抗することが不可能又は著しく困難な状態をいいます。たとえば、恐怖、錯誤などによって行動の自由を失っている場合などがこれに当たります。

~乗じ」とは、(第三者によって)すでに作出された心神喪失若しくは抗拒不能の状態を利用して、という意味です。すでに泥酔状態の被害者と性交等をすることは「心神喪失に乗じ」に当たり得る典型事例です。

~させて」とは、自ら被害者を心神喪失若しくは抗拒不能の状態にして、という意味です。その手段に制限はありません。熟睡に対しては睡眠薬の投与、泥酔に対してはお酒を大量に摂取させるなどがあります。

また、錯誤については、医師が患者に必要な治療だと働きかけて患者を誤信させるなどがあります。

なお、当初から性交等に至る目的での暴行又は脅迫を用いて被害者を心神喪失させ若しくは抗拒不能の状態にさせた上、性交等した場合は準強制性交等罪ではなく強制性交等罪に問われます。

強制性交等罪と準強制性交等罪との違い、共通点

強制性交等罪は性交等に至る目的での暴行又は脅迫をするのに対して、準強制性交等罪は人の心神喪失若しくは抗拒不能な状態を利用すること、あるいは、人を心神喪失若しくは抗拒不能状態にさせることを手段とする点が違いとなります。

他方で、

  • 性交等(性交のほか肛門性交、口腔性交)をすることが成立要件である
  • 罰則は「5年以上の有期懲役」である

という点は共通しています。準強制性交等罪には「準」とついていますが、強制性交等罪より罪が軽いということではありませんので注意が必要です。

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準強制性交等罪、強制性交等罪で逮捕を回避する、刑を軽くするには?

準強制性交等罪、強制性交等罪で逮捕を回避する、刑を軽くするには被害者と示談を成立させることです。

警察に被害届を出される前に示談を成立させることができれば、警察や検察の捜査そのものを受けることを回避することができます。もちろん、逮捕も回避できるでしょう。

他方で、警察に被害届を出されてしまうと逮捕される可能性は高くなりますが、逮捕後であっても示談を成立させることは可能です。

逮捕後に示談を成立させることができれば、刑事手続きの進行具合で、早期釈放、不起訴、執行猶予付き判決へとつながる可能性が高まります。

もっとも、被害者との示談を検討するにあたっては次の2点に留意する必要があります。

留意点の1つ目は、そもそも被害者と示談交渉できない可能性がある、ということです。

この示談交渉できないとは3つの意味を含んでいます。

まず、そもそも被害者と面識がない場合や被害者の氏名・連絡先等を入手することが難しく、被害者と接触することができないという点です。

次に、警察に被害届を提出された後、警察に被害者の氏名、連絡先等を教えてくれるよう頼んでも教えてくれないという点です。

最後に、仮に、被害者と接触できたとしても、被害者の処罰感情が高く、示談交渉のテーブルにすらついてもらえないという点です。

もっとも、2点目と3点目については、弁護士に依頼することで解決できる可能性もあります。

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留意点の2つ目は、示談金が高額となる可能性があるということです。

同じ性犯罪でも盗撮や痴漢であれば50万円以内の金額におさまることが多いです。

しかし、準強制性交等罪、強制性交等罪は性犯罪の中でも特に悪質性、違法性が高い犯罪ですから、示談金は50万円を優に超える金額となることが予想されます。

具体的な金額は個別の事情により増減しますが、示談を検討するにあたってはこの点もしっかり頭に入れておきましょう。

まとめ

準強制性交等罪と強制性交等罪とは手段が異なるだけで、罪の本質や刑の重さは何ら異なるところがありません

「準」とついているからといって軽く考えないようにしましょう。

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