性犯罪の不起訴は多い?不起訴になる理由や不起訴獲得のポイント
性犯罪事件を起こしたとき、逮捕・起訴されるのか、それとも不起訴になるのかは、今後の人生を左右する問題でしょう。
不起訴処分を獲得できれば、前科が付かず、日常生活への影響も小さいです。
では、どのような場合に不起訴となるのでしょうか?
この記事では、性犯罪事件における不起訴処分の割合や不起訴処分になる理由、その獲得に向けたポイントについて解説します。
目次
性犯罪事件の不起訴の現状【データで見る|不起訴の割合は?】
性犯罪事件は、一概に起訴されるとは言い切れません。
法務省の令和5年度検察統計調査によると、性犯罪事件においては、一定の割合で不起訴処分が下されていることが確認できます。
例えば、不同意わいせつ罪の起訴率は33.7%、不同意性交等罪の起訴率は33.4%と報告されています。
検挙された加害者の一定数が不起訴になった事実を示唆しており、不起訴の可能性は決して低いものではないことがわかるでしょう。
参照:検察統計調査
性犯罪に該当する代表的な罪名
性犯罪には複数の罪名があり、それぞれで構成要件や法定刑が異なります。
自身の容疑がどの罪に該当するのかを正確に把握しましょう。
性犯罪に該当する主な罪名としては、以下のものが挙げられます。
罪名 | 内容 |
---|---|
不同意性交等罪 (旧:強制性交等罪・準強制性交等罪) |
暴行や脅迫、または相手の心神喪失・抗拒不能に乗じて性的な行為を行った場合に成立します。 刑法改正により、被害者の同意がない性的な行為を処罰する罪として再編されました。 |
不同意わいせつ罪 (旧:強制わいせつ罪・準強制わいせつ罪) |
相手の同意なくわいせつな行為を行った場合に成立します。 |
公然わいせつ罪 | 公共の場所などで行われるわいせつな行為や、性的好奇心を満たすための行為を処罰する罪です。 |
撮影罪 | 人の性的な部位や下着、性交中の様子などを、相手の同意を得ずに撮影した場合に成立します。 2023年7月13日から施行されました。 |
そのほか、都道府県が定める迷惑防止条例違反などに該当する行為もあります。

性犯罪の不起訴処分4つの理由
性犯罪の不起訴処分には、主に、次の4つの理由があります。
- 嫌疑なし
- 嫌疑不十分
- 起訴猶予
- その他の理由
それぞれ意味合いが異なります。
不起訴を目指すのであれば、どの理由で不起訴を目指すのか、その目標を明確にすることが重要です。
嫌疑なし|犯罪の疑いなし
嫌疑なしとは、捜査機関の捜査の結果、犯罪の疑いがないと判断される場合です。
例えば、次の場合が挙げられます。
- 犯罪行為の事実を認定すべき証拠がない
- 犯罪行為の事実を認定すべき証拠をもとに真犯人が見つかった
- 被疑者のアリバイが立証された
被疑者が犯人でないことが明らかな場合には、嫌疑なしとして不起訴になります。
嫌疑不十分|証拠が不十分
嫌疑不十分とは、犯罪行為の事実を認定すべき証拠が不十分と判断された場合です。
嫌疑なしとは違い、完全に犯罪の疑いがないわけではありません。
しかし、裁判では、被告人が罪を犯したことを検察官が証明しなければなりません。
十分な証拠がない場合は、嫌疑不十分で不起訴になります。
起訴猶予|様々な事情による起訴の見送り
起訴猶予とは、犯罪の事実は認められるものの、示談の成立、反省の態度、再犯防止策など様々な事情を考慮して検察官が起訴を見送る処分です。
罪を認め、不起訴処分を目指す被疑者にとっては、起訴猶予が現実的で重要な目標となります。
起訴猶予による不起訴処分を目指すには、被害者との示談が重要です。
示談が成立すると、検察官は被害者の処罰感情が和らいだと判断する傾向にあり、起訴される可能性が低くなります。
性犯罪事件において、示談が成立しているか否かは、検察官の起訴・不起訴の判断に影響を与えます。
示談が成功すれば、不起訴処分の可能性が高まるため、罪を認めるケースでは、早期に弁護士に依頼し、優先して示談成立の活動に取り組むことが大切です。
その他の理由
不起訴処分には、嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予以外の理由による場合もあります。
- 例えば、以下のものが挙げられます。
- 心神喪失
- 刑事未成年(被疑者が14歳未満)
- 被疑者死亡
- 時効完成
- 犯罪の構成要件に該当しない など
これらの事由に該当する場合は、不起訴になります。
性犯罪事件が不起訴になるまでの流れ【時系列で解説】
性犯罪事件は、事件発生から不起訴に至るまで、時間の制約が厳しい刑事手続きの中で進行します。
不起訴までの流れを理解し、各段階で取るべき行動を把握することが、不起訴獲得の鍵を握ります。
①事件発生〜警察の捜査
事件発生後、事件が発覚すると、警察は、被害届の受理、取り調べ、現場検証などの捜査を開始します。
この段階では、自首の検討や任意捜査への対応など、逮捕回避のための活動が重要です。
弁護士に依頼すれば、自首すべきかどうかの判断や取り調べに対するアドバイスがもらえるため、逮捕回避の可能性が高まります。
②逮捕・勾留
容疑者として逮捕されると、最長で48時間以内に検察庁に身柄が送致されます。
その後、検察官が勾留の必要性を判断し、最長20日間(逮捕から最長23日間)の身体拘束を受ける可能性があります。
この段階では、早期釈放に向けた活動が重要です。
弁護士に依頼すれば、弁護士が、勾留回避のために、検察官に勾留請求しないよう働きかけたり、検察官が勾留請求をした場合には、裁判官に勾留請求を却下するよう求めたりするため、早期釈放の可能性が高まります。
③起訴・不起訴の決定
警察や検察の捜査結果を踏まえ、検察官が起訴・不起訴を決定します。
この段階では、被害者との示談成立が重要です。
弁護士に依頼すれば、早い段階から被害者との示談交渉に着手してもらえ、被害者との示談が成立する可能性も高くなることから、不起訴獲得の可能性が高まります。
性犯罪で起訴された場合に生じるデメリット
性犯罪で起訴された場合に生じるデメリットとして、次の2つが挙げられます。
- 起訴されたら有罪率99.9%
- 拘禁刑や前科が今後の生活にも影響
以下、詳しく解説します。
起訴されたら有罪率99.9%
日本の刑事裁判は、起訴されると99.9%と高い確率で有罪となります。
この事実が示すのは、検察官が有罪を証明できると確信した場合にのみ起訴する日本の刑事司法の運用実態です。
つまり、一度起訴されると、無罪を勝ち取ることは簡単ではありません。 前科がつく可能性が高くなるでしょう。
拘禁刑や前科が今後の生活にも影響
有罪判決を受ければ、前科がつきます。 前科は、様々な社会生活上の不利益をもたらします。
特に、不同意性交等罪など法定刑が重い性犯罪の場合、実刑判決となる可能性が高いとされています。
実刑となれば、長期にわたる身体拘束により、これまでの社会生活に影響が生じることは避けられないでしょう。
性犯罪の不起訴を目指すためにあなたがすべき5つのこと
不起訴獲得のためにあなたが取るべき5つの具体的な行動を解説します。
早めに弁護士に相談する
早めに弁護士に相談しましょう。
刑事手続きは、逮捕後すぐに始まります。
特に、逮捕直後の72時間は、家族でも面会が制限されます。
しかし、弁護士はいつでも接見が可能です。
この早期の段階から弁護士に相談することで、取り調べへの適切な対応方法のアドバイスを受けたり、迅速な示談交渉を開始したりが可能となり、不起訴の可能性を高められます。
示談交渉を進める
弁護士に依頼し、示談交渉を進めましょう。
罪を認める場合は、起訴猶予による不起訴を目指すことが現実的な目標となります。
その最大のポイントは示談です。
示談が成立すれば、被害者の処罰感情が和らいだ事実を検察官に示せるため、起訴猶予の可能性が向上します。
被害者との示談交渉は、加害者本人が直接行うことは避けるべきでしょう。
示談交渉をするためには、当然、被害者との接触が必要ですが、性犯罪の被害者は、加害者に対し強い怒りや恐怖心を抱いていることが多く、直接の接触は、被害者感情をさらに逆なでする可能性が高いです。
通常、警察や検察官は、被疑者やその家族に対しては、被害者の情報を教えません。
弁護士であれば、被害者の連絡先を秘匿扱いすることを前提として、被害弁償や示談交渉のために、連絡先を開示してもらえる可能性があります。
弁護士に依頼することで、早い段階から被害者との示談交渉が可能となり、示談が成立する可能性も高いでしょう。
取り調べに適切に対応する
取り調べに適切に対応しましょう。
不起訴獲得を目指す上で、取り調べへの対応は重要です。
不利な内容の供述調書が一度作成されると、後から撤回することは困難です。
弁護士から、取り調べのアドバイスを受け、誘導的な質問や不当なプレッシャーに対し適切に対応することが、不利な状況を防ぐことにつながります。
再犯防止策を講じる
再発防止策を講じましょう。
真摯な反省と再犯防止に向けた具体的な取り組みは、検察官の起訴・不起訴の判断において有利な情状となります。
必要に応じて性障害専門医の診断を受けたり、カウンセリングを受けたりするなど、再犯防止に向けた積極的な行動を示すことが重要です。
身元引受人を確保する
身元引受人を確保しましょう。
家族による監督体制を構築し、検察官にアピールすることも有効です。
再犯の可能性が低いことを示すために、家族が身元引受人となり、今後、本人の監督を行う旨を誓約することは、不起訴獲得に繋がります。
性犯罪事件を弁護士に依頼すべき5つの理由
性犯罪事件を弁護士に依頼すべき理由は、次の5つです。
- 被害者との示談交渉を任せられる
- 不利な供述調書作成の防止できる
- 早期釈放の可能性が高まる
- 不起訴処分獲得の可能性が高まる
- 裁判での執行猶予付き判決・減刑獲得の可能性が高まる
以下、詳しく解説します。
被害者との示談交渉を任せられる
被害者との示談交渉を任せられます。
被害者の感情に配慮し、冷静かつ円滑な示談交渉を代行することで、被害者感情の悪化や無用なトラブルを防ぎます。
不利な供述調書作成を防止できる
不利な供述調書作成を防止できます。
逮捕直後から接見し、取り調べへの適切な対応をアドバイスすることで、不利な調書が作成されるのを防ぎます。
早期釈放の可能性が高まる
早期釈放の可能性が高まります。
弁護士は、勾留の必要性がないことを捜査機関に訴えたり、勾留の取り消しを求めたりすることで、身体拘束を解くための活動を行います。
不起訴処分獲得の可能性が高まる
不起訴処分獲得の可能性が高まります。
示談交渉や再犯防止策の証明など、不起訴獲得に向けたあらゆる弁護活動を迅速に進めます。
裁判での執行猶予付き判決・減刑獲得の可能性が高まる
裁判での執行猶予付き判決・減刑獲得の可能性が高まります。
万が一起訴された場合でも、示談の成立や反省の態度などを主張し、執行猶予や減刑を求めて弁護活動を行います。
まとめ
性犯罪の容疑をかけられたとき、不起訴を獲得できるか否かは、その後の人生を左右するでしょう。
漠然とした不安を抱え、ただ時間が過ぎるのを待つことは、起訴されるリスクを不必要に高めることにつながります。
不起訴を目指すためには、早めに弁護士に相談することが重要です。
刑事事件は、一刻一刻と手続きが進むため、早期に弁護士に依頼することで、弁護活動の幅が広がり、不起訴獲得の可能性も高まります。
ネクスパート法律事務所では、性犯罪事件に強い弁護士が多数在籍しています。
特に、被害者との示談においては、経験豊富な弁護士が迅速丁寧に示談成立を目指します。
スピーディーな対応で、家族や勤務先にバレるリスクも最小限に抑えます。
ぜひ一度ご相談ください。