検察庁からの呼び出しで不起訴や罰金はなし?印鑑は何に使う?
警察に逮捕された後、すぐに身柄を解放されても、検察から呼び出しを受けて捜査が継続する在宅事件になるケースがあります。
検察庁からの呼び出しや、印鑑を持参するように言われると、不起訴になるのか、はたまた罰金になるのではと不安ですよね。
この記事では、検察庁からの呼び出しに関して、次の点について解説しています。
- 検察庁から呼び出されたら不起訴は無理?
- 呼び出しの際に持参する印鑑は何に使うのか?
- 検察庁から呼び出しがこない理由は不起訴だから?
- その他検察庁からの呼び出しに関するよくある質問
また、検察庁から呼び出しを受けた場合、起訴されるおそれもあるため、迷わず弁護士に相談してください。
目次
検察庁から呼び出されたら不起訴は無理?
検察庁から呼び出されたからといって、起訴される(刑事裁判になること)、あるいは不起訴になるとは限りません。
検察が起訴か不起訴を判断するまでに、次のような対策をとることで、不起訴処分を得られる可能性があります。
- 被害者と示談をする
- 反省や更生を示す、再犯防止のために生活を見直す
- 家族が監督できる環境を整える
また、検察庁に呼び出されたら、そのまま逮捕や刑務所に送られる、呼び出されたら前科がつくと思っている人もいるでしょう。
検察庁の呼び出しは任意ですが、応じないと逃亡や証拠隠滅のおそれがあるとして、逮捕される可能性があります。
しかし、呼び出されただけでいきなり刑務所に送られたり、前科がついたりすることはありません。
検察は刑事裁判にかけるかどうかを判断するだけで、有罪かどうか決めるのは裁判官です。
基本的には、刑事裁判で有罪になった後に、刑務所に移送されたり、前科がついたりすることになります。
検察庁から呼び出される理由
ここでは、検察庁から呼び出される理由を解説します。
起訴か不起訴か判断するため
検察庁から呼び出しを受ける理由の1つは、起訴か不起訴か判断するためです。
罪を犯して有罪となると、最終的には刑務所に送られるなどの罰を受けます。
有罪かどうか、量刑をどうするのか決める刑事裁判を申し立てる公訴権を持っているのは検察だけです(刑事訴訟法第247条)。
犯人を逮捕したり、供述をまとめたりするのは警察ですが、その事件を起訴するか、不起訴にするか判断するのは検察が決めることになります。
そのため、事件は全て検察に引き継がれ、検察が警察の捜査を踏まえて取り調べを行い、最終的に起訴か不起訴か判断することになります。
検察庁からの呼び出しは取り調べのため
検察庁から呼び出しを受ける理由の2つ目は、取り調べが行われるためです。
警察が取り調べを行っているから、検察の取り調べは不要に思えますが、両者の取り調べには違いがあります。
警察の取り調べは、事件に関する供述や証拠をまとめます。
検察は、警察の取り調べ内容が真実かどうかチェックしながら、起訴するべきか、不起訴にするべきかの観点から取り調べを行うのです。
参考:捜査について – 検察庁
参考人として事情を聞かれるだけ
検察庁から呼び出される3つ目の理由は、参考人として取り調べを行うためです。
次に該当すると、参考人として検察庁から呼び出される可能性があります。
- 事件を目撃した
- 容疑者(被疑者)と関係がある
- 事件に関して知っていることがある
また、参考人として呼び出されても、事件への関与が疑われる場合は、必要に応じて逮捕されるケースもあります。
参考人でも被疑者でも、検察庁からの呼び出しに応じるかどうかは任意ですが、基本は検察庁に出向いて取り調べを受けた方がよいでしょう。
呼び出しに応じない参考人は、裁判の際に裁判所から証人尋問で呼び出しを受ける可能性があります(刑事訴訟法第226条)。
被疑者の場合は、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるとして逮捕されるケースもあるため、呼び出しに応じるようにしましょう。
検察庁の呼び出しで持参する印鑑は何に使う?
検察庁に呼び出された場合、印鑑を持参するように指示を受けるケースが多いです。
印鑑を持参するようにいわれると、恐ろしい刑が確定するのではないかと不安になるかもしれません。
検察庁の呼び出しで持参する印鑑の使い道は次の通りです。
- 供述調書に押印するため
- 略式起訴の同意書で使われる
供述調書に押印するため
検察の呼び出しで印鑑を持参するように指示されるのは、供述調書に押印させるためです(刑事訴訟法第198条第5項)。
供述調書とは、犯罪の内容や犯行に至った経緯、犯行の具体的な方法、事件後の行動など、事件に関する供述が一人称形式でまとめられた書面のことです。
検察の取り調べでは、警察の取り調べ同様に、供述調書が作成されます(刑事訴訟法第198条第3項)。
その調書へ押印してもらうために、印鑑を持参するように指示されるのです。
ただし、供述調書に少しでも事実と異なることがあれば、決して押印してはいけません。
供述調書は、有力な証拠として扱われるため、事実と異なることを認めてしまうと、裁判で不利な処分が下されてしまうおそれがあります。
検察庁に呼び出された場合は、どういう証言をするのか事前に弁護士と打ち合わせをしておきましょう。

略式起訴の同意書で使われるため
検察庁からの呼び出しで、印鑑を持参するように指示されるもう1つの理由は、略式起訴の同意書に押印するためです。
略式起訴とは、起訴の一種で、100万円以下の罰金刑などが科される事件の場合に、正式な裁判を開かずに、書面のみで罰金刑を科す簡易的な手続きを求めることです。
略式起訴に同意した場合、刑事裁判が行われずに簡易的な手続きで処分が決まりますが、罰金刑が科され、前科がつくデメリットがあります。
略式起訴は被疑者の同意が必要ですので、拒否して正式な裁判を求めることも可能です。
略式起訴の場合、検察官から略式起訴について説明を受けて、1~2週間後に罰金を納付するよう納付告知書が郵送されます。
また、呼び出しの段階で印鑑と罰金を用意して出頭するように指示されるケースもあります。
本当に略式起訴に同意すべきかどうか、事前に弁護士に相談しておきましょう。
検察庁からの呼び出しがこない場合は不起訴になる?
検察庁からの呼び出しがなかなか来ないような場合、不起訴になったのではと思う人もいるかもしれません。
ここでは検察庁の呼び出しの期間や不起訴かどうかわかるまでの期間について解説します。
呼び出しまでの期間は決まっていない
在宅事件の場合、検察庁がどのくらいの期間までに呼び出しをするのか決まっていません。
逮捕後に捜査のため留置場に入れられた場合は、身柄拘束できる勾留の期限が10~20日間と決まっているため、検察も期限までに起訴や不起訴を判断します。
在宅事件の場合は、こうした時間的な制限がないため、いつ呼び出されるかは事件の捜査状況によって異なります。
書類送検された後に、警察が捜査を終えた1~2か月後くらいで呼び出されるケースが多いです。

起訴か不起訴かわかるまで約2~4か月くらい
起訴か不起訴か判断されるまでの期間も特段決まりはありません。
一般的には、書類送検から起訴か不起訴の判断が下されるまで、2~4か月かかるケースが多いです。
書類送検から警察の捜査が終わり、呼び出されるまでに1~2か月、検察が取り調べを行い、起訴か不起訴を判断するまでに1~2か月ほどかかると言われています。
ただし、警察や検察の捜査や事件によっては、長いと1年ほどかかるケースもあるようです。
不起訴か起訴か、見通しが立たずに不安な時は、弁護士に相談しましょう。
検察庁から呼び出しが来ない理由
検察からの呼び出しまでに時間がかかるのは前述した通りですが、何か月も呼び出しが来ず、不安になっている人もいるでしょう。
ここでは、検察から呼び出しが来ない理由を紹介します。
捜査に時間がかかっている
検察庁からなかなか呼び出しが来ない理由の1つは、捜査や証拠収集に時間がかかっているからだと考えられます。
取り調べは、捜査や証拠収集を踏まえて行われるため、証拠が出そろってないと、取り調べには至りません。
特に容疑を否認しているような場合は、言い分を裏付ける、あるいは否定するような証拠がないかどうか入念に調べられます。
証拠収集に時間がかかったり、事件が複雑だったりすると、検察庁からの呼び出しも時間がかかることになるでしょう。
また、在宅事件では身柄拘束の勾留期限というものがなく、検察も急がずに捜査を行えるため、事件終了まで長期化する傾向があります。
検察官が忙しい
検察庁から呼び出しが来ない理由として、担当検察官が多忙であることも考えられます。
担当の検察官が事件をいくつも抱えており、先に送致された事件の捜査が終わっていないなどもあり得るでしょう。
犯罪白書によると、2022年に検挙された刑法犯の数は25万件にものぼります。
しかし、2019年の日本弁護士連合会の統計によると、副検事を除く検察官の人数は1,976名とされているため、検察官一人が抱える事件の総数も多いことがわかります。
また、検察官は勾留期限のある身柄事件も抱えており、期限のある事件を優先的に処理していかなければなりません。
他にも、12月や3~5月は検察の繁忙期と言われているため、そうした時期も呼び出しに時間がかかることが考えられます。
参考:令和5年版 犯罪白書 1認知件数と発生率 – 法務省
参考:諸外国との弁護士・裁判官・検察官の総数比較 – 日本弁護士連合会
不起訴処分になった
検察からなかなか呼び出しが来ない最後の理由は、既に不起訴処分になっているからです。
起訴された場合は、自宅に届く起訴状によって起訴されたことがわかります。
不起訴の場合、検察は被疑者に不起訴を通知する義務はありません。そのため知らぬ間に不起訴処分になっているということもあり得ます。
不起訴が決まった後であれば、検察に不起訴処分通知を請求できます(刑事訴訟法第259条)。
連絡がない以上、不起訴なのか、捜査の最中なのかわからないため、呼び出しから2~3か月経っても連絡がないような場合は、一度検察に捜査中かどうか確認してみましょう。
検察庁から呼び出しを受けたその後はどうなる?
検察からの呼び出しは、呼び出される日の1~2週間前に、電話や出頭要請の手紙で受けることになります。
平日の午前10時か、午後2時頃に呼び出されるケースが多いですが、その日が難しいようなら電話で日程調整できるか相談してみましょう。
検察官によっては、日程調整に応じてくれるケースもあります。
ここでは、検察庁から呼び出しを受けたその後の流れを解説します。
検察から取り調べを受ける
検察庁に呼び出されると次のような部屋で、検察官から取り調べを受けることになります。
※模擬の取り調べ室であくまでもイメージ
検察の取り調べで聞かれる内容は、警察の取り調べと大きく違いません。
警察の取り調べを踏まえて、証言に食い違いがないかどうか確認されます。
取り調べは、罪を認めていれば1~2時間ほどで終わりますが、否認したり、検察が疑問を持ち念入りに調べたりすると半日~1日かかることもあります。
取り調べで作成される供述調書は、有力な証拠となるため、内容をしっかり確認して、押印するかどうか慎重に判断しましょう。
どのように供述するべきか、不利な処分を受けたくないなど困っている人は、どのような供述をすべきなのか事前に弁護士と打ち合わせておきましょう。
起訴か不起訴か判断される
罪を認めていて、取り調べがスムーズなら、検察からの呼び出しも1~2回で済み、処分が決まります。
否認していると、捜査や証拠収集に時間がかかり、取り調べの回数も増える可能性があるため、処分まで時間がかかることになるでしょう。
検察の取り調べが済んだ後は、起訴か不起訴か判断されます。
処遇 | 流れ |
起訴される場合 | 自宅に起訴状が届く |
略式起訴される場合 | 印鑑を持参するように指示される
場合によっては罰金を用意するように言われる |
不起訴処分になる場合 | 不起訴処分にすると言われるケースがある
何も言われずにその後呼び出しがないケースもある |
起訴されると刑事裁判になる
検察から起訴される場合、正式裁判と略式手続きのいずれかになります。
正式裁判の場合は、刑事裁判が行われ、裁判で有罪か無罪か、有罪ならどのくらいの量刑になるのか決まります。
在宅事件の場合は、早ければ起訴されてから1~2日、遅くても1~2週間で起訴状が届きます。
起訴状が届いた後、刑事裁判の日程が決められ、裁判所から出廷日時や法定番号などが記載された召喚状が届きます。
刑事裁判で有罪判決が下されてしまうと、前科がつくことになります。
前科や実刑を回避できるように、早急に弁護士に相談するようにしてください。
略式起訴されると罰金刑で前科になる
略式起訴される場合は、検察から取り調べ後に略式起訴の説明を受ける可能性があります。
また、呼び出し前に、印鑑や罰金の持参が伝えられるケースもあります。
略式起訴された場合は、正式裁判は行われません。
略式起訴に同意すると、後日自宅に略式命令の謄本、その1~2週間後に罰金の納付告知書が届きます。
その告知書にしたがい、指定された金融機関や検察庁の窓口で罰金を納付します。
場合によっては検察庁に出向いた日に、検察が簡易裁判所に略式起訴して、裁判所から略式命令が下された後に、その場で罰金を納付する在庁略式といった方法がとられることもあります。
不起訴になると事件は終了する
検察が事件を捜査した結果、不起訴処分を判断すれば、事件は終了することになります。
不起訴処分の場合、検察官によっては、次のように言われるケースもあります。
- 不起訴にする
- 〇月までに呼び出しがなければ不起訴になる
検察官は被疑者に不起訴を通知する義務はないため、場合によっては呼び出しが来ないまま不起訴になっているケースもあります。
検察庁からなかなか呼び出しが来ない場合は、捜査の進捗を確認してみてもよいでしょう。
検察庁からの呼び出しでよくある質問
ここでは、検察庁からの呼び出しでよくある質問に回答します。
印鑑を忘れた場合どうなる?
供述調書への押印が必要な場合は、印鑑を忘れると拇印を求められる可能性があります。
供述調書への押印なら、印鑑を忘れても特段問題はありませんが、基本は忘れずに持参するようにしましょう。
交通違反で検察庁に呼び出されるのはなぜ?
交通違反をして、行政処分を受けるような場合は、警察署や公安委員会などに呼び出されて、意見聴取が行われます。
検察庁に呼び出されるのは、交通違反が事件として捜査されており、罰金刑が科される可能性が考えられます。
取り調べの結果、罪名によって略式起訴で罰金刑になるか、正式な裁判で処分が下されることになります。
検察庁に呼び出された場合所要時間はどのくらいかかる?
検察庁に呼び出された場合の所要時間は、短ければ1~2時間ほど、長いと半日~1日かかる可能性があります。
これは事件の状況によりますが、例えば罪を認めて、取り調べる内容が少なければ、1~2時間ほどで済むでしょう。
否認して、検察官がもっと取り調べが必要だと判断すれば、半日~1日かかり、さらに複数回呼び出されることも考えられます。
検察庁の呼び出しは平日?何回くらいある?
検察庁からの呼び出しは、平日の午前10時か、午後2時頃に行われるケースが多いです。
呼び出しの回数は決まっていませんが、一般的には1~2回ほどで処分が決まるケースが多いです。
事件を否認しているような場合は、入念な取り調べのために何度も呼び出しを受ける可能性があります。
処分までは長いと半年や1年ほどかかるケースもあります。
家族が呼び出される理由は?
検察庁からの呼び出しには、家族が呼び出されるケースもあります。
家族が呼び出しを受ける理由は、今後処分を決めるにあたって、家族が監督できる環境があるかどうか確認するためです。
家族の監督や協力のもと、再犯防止になるという事情は、不起訴処分を得る上で重要です。
弁護士に相談して、家族が監督できる環境を整えるようにしましょう。
まとめ
この記事では、検察庁から呼び出しの理由や、呼び出しが来ない理由、呼び出しがあった場合の流れなどについて解説しました。
検察からの呼び出しがあっても、刑事裁判になったり、刑務所に送られたり、前科がついたりするわけではありません。
刑務所に送られたり、前科がついたりするのは、呼び出し後に検察が起訴をすると決めて、裁判で有罪が確定した後です。
しかし、被害者と示談をしたり、反省を示したりしなければ、起訴されて有罪になるおそれがあります。
身柄拘束を受けていなくても重い処分が下される可能性があるため、弁護士に相談して示談をするなど、適切な対処を行いましょう。
ネクスパート法律事務所では、在宅事件や示談に豊富な実績があります。不安な方はお気軽にご相談ください。