強制わいせつの再犯をしてしまった|すぐに弁護士に相談を!
この記事は、2023年7月13日までに発生した性犯罪に適用される強制わいせつ罪について説明した記事です。
2023年6月23日に公布され、2023年7月13日に施行された改正刑法の不同意わいせつ罪については、以下の記事をご参照ください。 |
性犯罪は、被害者の人格や尊厳を著しく侵害する犯罪です。その再犯は厳しく罰するだけではなく、性犯罪者処遇プログラム等により再犯防止対策を充実させ推進していくべきであるとされています。この記事では強制わいせつの再犯をしてしまった場合にどのような対策を取るべきか等について解説します。
目次
強制わいせつの再犯率
平成27年版および令和2年版犯罪白書の再犯・再非行についてのデータ等をもとに解説します。平成2年版白書によると強制わいせつ罪の有前科者率は24.1%、そのうちの同一罪名有前科者は7.5%です。同一罪名の有前科者率は他の刑法犯と比べて低い水準です。
備考 再犯の定義について
刑法第56条に再犯とはどのようなものか規定されています。
刑法第56条 懲役に処せられた者がその執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するときは、再犯とする。
引用:e-GOV法令検索
これによると、刑法上の再犯の要件は以下3つです。
- 懲役に処せられた者
- 刑の執行を終わった日または刑の執行の免除を得た日から5年以内であること
- 更に罪を犯した
一方、犯罪白書では、再犯とは、刑法犯により検挙された者のうち、前に道路交通法違反を除く犯罪により検挙されたことがあり、再び検挙された者とされています。
この記事は、前科(罰金を含む)がある人が再び犯行をしてしまった場合、どう対応するのかを伝える目的で執筆さしています。そのため、記事内での再犯の定義を「以前罰金を含む何らかの罪で検挙されたことがあり再び検挙された者」とします。
刑法での再犯の定義(懲役に処せられた者が更に罪を犯した場合において、その者を有期懲役に処するとき、再犯とする)とは意味が異なる点をご了承ください。
再犯者に対する刑の加重(刑法第57条)
刑法では再犯者に対しては刑を加重できると規定しています。
刑法第57条 再犯の刑は、その罪について定めた懲役の長期の2倍以下とする。
引用:e-GOV法令検索
再犯加重は、最低は法定刑のままで、最高は法定刑の2倍以下とすると規定されています。
強制わいせつ罪は10年以下の懲役が最高限のため、再犯は20年以下の懲役の範囲内で刑罰を科すことができます。
刑法第176条 13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。
引用:e-GOV法令検索
令和元年の強制わいせつ罪の起訴人員の中の有前科者率は31.9%
犯罪白書によると、強制わいせつの再犯者の人員は増加傾向にあり、検挙人員中の有前科者率は令和元年の統計では48.8%です。
令和元年の刑法犯全体の起訴人員中の有前科者率は46.9%であり、強制わいせつ罪の再犯率31.9%は、起訴人員中の有前科者率と比較すると低いです。他方同年の刑法犯全体の検挙人員中の再犯者率は48.8%で、これは強制わいせつ罪の再犯率と同じ率となっていることから、強制わいせつ罪で検挙された人員が起訴される割合は他の刑法犯に比べて若干低いといえます。
強制わいせつ再犯の罰則
強制わいせつ罪再犯の罰則は上述のとおり、6月以上20年以下の懲役となり、裁判所がその範囲内で罰則を言い渡します。
強制わいせつ罪再犯の時期による違い
強制わいせつ罪再犯の罰則は、いつ再犯を行ったかにより変わります。以下、解説します。
執行猶予中の強制わいせつ罪再犯
前の罪の執行猶予期間中に更に強制わいせつ罪を犯した場合について解説します。
執行猶予期間中の強制わいせつ罪に、再び執行猶予がつくこともありますが、その要件は厳しいです。
具体的には以下3つの要件を満たさなければなりません。
- 言い渡される刑が1年以下の懲役・禁錮であること
- 特に酌量すべき情状があること
- 前科について保護観察がつけられ、その期間中の再犯ではないこと
上記要件を満たさない場合には、執行猶予が付かず、実刑判決が言い渡されます。一般的に、執行猶予中の再犯の場合には厳しい判決が予想されます。強制わいせつ罪についての実刑判決が言い渡されると前の罪の執行猶予が取り消され、前の刑罰と合わせた期間刑務所に収容されます。
強制わいせつ罪再犯でも犯行態様が軽微な場合や、被害者との間で示談が成立した場合等では、再度の執行猶予が付けられる可能性もあります。
執行猶予期間終了から5年以内の再犯
前の罪の執行猶予期間が終了すると、刑務所に入ることなく事件が終了します。前の罪に関しては終了していますが、執行猶予期間終了後すぐの再犯の場合には、起訴されて正式裁判になる可能性が高くなります。
再犯で実刑判決が言い渡された場合、前の罪の刑罰は終了しているので、再犯で言い渡された期間だけ刑務所に収容されます。犯行態様が軽微な場合や、被害者との間で示談が成立した場合等では、再度の執行猶予が付けられる可能性もあります。
執行猶予期間終了から数年~10年後の再犯
前の罪の執行猶予期間が終了してから数年以上経過した後の再犯の場合には、前の罪についてあまり考慮されません。場合によっては強制わいせつ罪再犯も不起訴で終了する可能性があります。
実刑判決を受け、その執行を終わった日から5年以内の強制わいせつ罪再犯
前の罪で実刑判決を言い渡された場合、刑の執行の終了とともに前の罪も終了します。再犯で実刑判決を言い渡されると、言い渡された期間だけ再度刑務所に収容されます。被害者との間で示談が成立した場合には、執行猶予が付けられる可能性もありますが、強制わいせつ罪の犯行態様が重い場合にはより重い刑罰を言い渡される可能性が高いです。
略式命令後5年以内の再犯
略式命令も有罪であるため前科となります。略式命令で科される刑は罰金刑のみです。略式命令は罰金を納めるとその場で終了となります。略式命令後の再犯の場合も、前の刑終了後の再犯となるため、強制わいせつ罪の犯行態様が軽微な場合や被害者との間で示談が成立した場合等では、執行猶予が付けられる可能性もあります。強制わいせつ罪の犯行態様が重い場合には、実刑判決を言い渡される可能性もあります。
執行猶予については以下の記事をご参照ください。
強制わいせつ再犯で在宅事件になる?
ポイント 強制わいせつ罪再犯で在宅事件になるかどうかのポイントは、身柄拘束の必要性の有無です。 |


身柄拘束の必要性
身柄を拘束するためには身柄拘束の必要性、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれという要件が必要です。これらの要件が無い場合には身柄を拘束できないため、在宅事件となります。
刑事訴訟法第60条第1項 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の1にあたるときは、これを勾留することができる。
1 被告人が定まった住居を有しないとき。
2 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
3 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
引用:e-GOV法令検索
勾留の要件については以下の記事をご参照ください。
強制わいせつ再犯で起訴される?
ポイント 強制わいせつ罪再犯で起訴されるかどうかは、被害者との示談成立の有無がポイントです。 |


起訴については以下の記事をご参照ください。
強制わいせつ再犯で実刑になる?
ポイント 強制わいせつ罪再犯で実刑になるかどうかのポイントは、被害者との示談成立の有無です。 |


強制わいせつ罪再犯で実刑になるかどうかは、被害者との間で示談が成立しているか否かが重要なポイントです。強制わいせつ罪は被害者の人格や尊厳を著しく侵害する罪であるため、被害者の処罰感情が強い場合には実刑判決が言い渡される可能性が高いです。被害者に真摯に謝罪し、被害回復に尽力し、被害者の赦しを得られれば実刑を回避できる可能性があります。
強制わいせつ再犯で執行猶予は得られる?
ポイント 強制わいせつ罪再犯で執行猶予が得られるかどうかのポイントは、被告人の反省の程度、被害者への謝罪、損害賠償の有無です。 |


強制わいせつ罪再犯で執行猶予を得るためには?
強制わいせつ罪は被害者の人格や尊厳を著しく侵害する犯罪であるため罰金刑の定めのない重い罪です。強制わいせつ罪で再度有罪判決を受けた場合には、基本的に執行猶予の可能性は低いです。
上述した通り、再度の執行猶予をつけるための条件は以下3つです。
- 今回言い渡される刑の刑期が1年以下
- 前の執行猶予で保護観察をつけられていない
- 犯行の内容や程度、結果などにおいて特に酌量すべき情状がある
強制わいせつ罪再犯で執行猶予を獲得する条件は厳しいです。執行猶予を獲得するためには、被害者に真摯に謝罪し、被害者との示談成立が重要です。
執行猶予については以下の記事をご参照ください。
強制わいせつ再犯で懲役刑になる?
ポイント 強制わいせつ再犯で懲役刑になるかどうかは被害者との間で示談が成立するか否かに加えて、被告人の反省の程度がポイントです。 |


強制わいせつ再犯で懲役刑にならないためにすべきこと
強制わいせつ再犯で懲役刑にならないためにすべきことは以下2つです。
- 被害者と示談する
- 再犯の可能性が無いことを示す
早期に弁護士に依頼し、被害者と示談交渉をしてもらいましょう。示談の成立には加害者の真摯な反省と謝罪が必要です。
加害者は今後二度と同じような罪を犯さないために心療内科等に通院し、犯行の原因を探りましょう。原因をなるべく除去するため、例えば仕事を変えたり、実家に戻ったりする必要があるかもしれません。再犯防止に役立つことは全てやらない限り懲役刑の回避は困難でしょう。
強制わいせつの再犯を防止するには
ポイント 再犯の原因を突き止め、同様の事件を起こさないように治療を継続し、家族の監護下に置くこと等がポイントです。 |
強制わいせつ罪の再犯防止のためには犯行の原因を突き止め、除去するための治療が必要です。
再犯防止対策
主な再犯防止対策は以下のとおりです。
家族と同居する
強制わいせつ罪の単身居住率は30.7%あります。単身で居住している加害者は家族との同居によりストレスが軽減する可能性があります。
通勤経路等を変更する
被害者と会わないために通勤経路を変更したり、通勤時間を減らすために勤務先近辺に引越したりすることにより、強制わいせつ罪を犯す可能性が低くなることもあります。
定期的に通院する
強制わいせつ罪防止のため、専門のクリニックへの定期的な通院も必要です。
再犯防止プログラムを受講する
同じような罪を犯す人を対象にした、再犯防止プログラムの講座が各地域で開講されています。同じように悩みを抱える人と話をすることでストレスが軽減する可能性や、罪を犯したときの状況等の情報交換により再犯防止へのヒントを得られる可能性があります。
強制わいせつ再犯の刑事弁護の方針とサポート内容
ポイント 強制わいせつ再犯は被害者と示談すること、再犯防止策をしっかり立てることがポイントです。 |
強制わいせつ罪再犯者に対して弁護士がする弁護活動について解説します。
被害者と示談交渉をする
強制わいせつ罪は被害者の人格や尊厳を著しく侵害する罪であるため、被害者の処罰感情が強い場合には実刑判決がくだされる可能性があります。被害者に真摯に謝罪のうえ被害回復に尽力し、被害者の赦しを得られなければ実刑もありうる罪です。
加害者の謝罪や反省を弁護士が被害者に伝えることで、被害者が示談交渉に応じてくれる可能性があります。強制わいせつ罪再犯で逮捕されたらすぐに弁護士に相談をしましょう。
示談については以下の記事をご参照ください。
再犯防止対策のアドバイスをする
強制わいせつ罪再犯で逮捕された場合には、今後二度と罪を犯さないための対策を立てる必要があります。
性犯罪を行った人の中には依存症になっているケースが多くあります。依存症の方は治療をしない限りまた同様の罪を犯してしまいます。
刑事事件を多く扱う弁護士は、再犯防止対策についても様々な情報を有しています。依存症になっている可能性がある場合には専門の医療機関への通院や、家族によるサポートなどについてもアドバイスを行います。
まとめ
強制わいせつ罪再犯で逮捕されると、実刑になる可能性があります。逮捕後早期に弁護士に依頼し、被害者と示談交渉をしてもらいましょう。
強制わいせつ罪は治療できる可能性があります。今後二度と罪を犯さないために弁護士のアドバイスやサポートを受けることをお勧めします。