起訴されたらどうなる?どこに行く?起訴されてから有罪までの流れ
家族や大切な人が起訴されたら、今後どうなってしまうのかと不安になりますよね。
刑事事件の手続きに関しては、起訴後の流れがわからなかったり、前科がつくのではと思う人がほとんどかもしれません。
起訴された場合の有罪率は極めて高いですが、起訴される割合は半分以下です。
そのため、起訴前はもちろん起訴後も諦めずに弁護士のサポートを受けることが大切です。
この記事では、家族や大切な人が起訴されてしまい、どうしたらいいかわからず不安という人へ、次の点を解説します。
- 起訴されるとどうなるのか?
- 起訴までの流れと起訴後の流れや生活
- 起訴された場合の対処法
起訴されてしまってもできることはありますので、諦めずにすぐに弁護士に相談してください。きっとあなたの力になってくれるでしょう。
目次
「起訴される」とは
起訴とは、捜査が行われた事件に関して、犯罪の事実があったのか、有罪ならどんな罰を科すのか判断してもらうために、裁判所に審理を申し立てることです。
被疑者(容疑者)を起訴する公訴権は検察だけが持っています(起訴独占主義)。
逮捕や捜査などを行う警察や、弁護する弁護士は、被疑者を起訴することはできないのです。
起訴された段階では、裁判官が有罪だと判断したわけではないので、犯人だと断定できませんし、前科もつきません。
犯人だと断定されて前科がつくのは、起訴されて有罪判決が確定した時です。
ここでは、起訴の種類や、起訴率、起訴か判断されるタイミングについて解説します。
起訴の種類
起訴には大きく分けて、2つの種類があります。
種類 | 内容 |
通常起訴(公判請求) | 正式な刑事裁判を求めること |
略式起訴 | 比較的軽微な事件の場合、正式な裁判を行わずに、書面だけで罰金刑の処分を科す手続きを求めること |
通常起訴
通常起訴は正式には公判請求と言います。
通常起訴された場合は、ニュースで見るような裁判が行われ、公開の法廷で判決が言い渡されることになります。
2022年の犯罪白書によると、検察庁で最終的な処分を決定した人数のうち公判請求の割合は約9%でした。
弁護士のサポートを受けることで、起訴されずに済む可能性があります。
参考:令和5年版 犯罪白書 第4節 被疑事件の処理 – 法務省
略式起訴
略式起訴とは、正式な裁判を行わずに、書面だけで罰金刑を科すよう簡易裁判所に求める手続きです(刑事訴訟法第461条)。
次の条件を満たしている場合、略式起訴になる可能性があります。
- 簡易裁判所管轄の事件であること
- 100万円以下の罰金や科料(1,000~1万円未満)に相当する事件であること
- 被疑者が略式起訴に同意していること
簡易裁判所が取り扱う事件は、罰金以下の刑にあたる犯罪や、窃盗や横領など比較的軽微な犯罪です。
略式起訴は刑事事件の迅速な処理を目的としているため、簡易的な書面で罰金刑となり、事件解決までが早いという特徴があります。
しかし、略式起訴されると刑罰が科されて前科がつくことになります。
また、被告人には正式な裁判を受ける権利が保障されているため、必ず被疑者の同意が必要です。
2022年の犯罪白書によると、略式起訴が請求された割合は約20%でした。
参考:令和5年版 犯罪白書 第4節 被疑事件の処理 – 法務省
起訴が判断されるタイミング
起訴が判断されるタイミングは、身柄拘束の有無によって異なります。
事件 | 内容 | 起訴が判断されるタイミング |
身柄事件 | 逮捕後に身柄拘束(勾留)が続く | 勾留期限の10~20日の間 |
在宅事件 | 逮捕後に釈放される
普通に生活しながら検察から呼び出されて取り調べを受ける |
捜査や検察の取り調べが終わった2~4か月後になるケースが多い |
身柄事件も在宅事件も、捜査が行われて起訴か不起訴か判断されることになり、身柄拘束の有無以外は同じです。

起訴されたらどうなるの?
検察から起訴されると言われた場合、今後どうなってしまうのか本人も家族も不安になりますね。
ここでは、起訴されたらどうなるのか、わかりやすく解説します。
被疑者から被告人へと変わる
犯罪の関与を疑われ、逮捕されると被疑者(ひぎしゃ)と呼ばれることになります。
その後起訴されると、呼び方は被疑者から被告人へと変わります。
被告人というのは、犯罪を犯した人という意味ではなく、裁判で訴えられた側のことを指します。
起訴後に被告人になっても、有罪判決が確定していないため、本当に犯人なのか断言できませんし、前科もつきません。
身柄が拘置所に移送される
起訴された場合は、身柄が拘置所に移送されます(刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第3条、15条)。
しかし近年は拘置所の収容人数の限界や、移送の手間もあり、起訴前同様に留置場に留められることが多いです。
起訴後の生活は、裁判の開始や審理を待つことになるため、読書や勉強以外に特にやることはありません。
例外的に余罪で取り調べを受ける可能性はありますが、基本的には弁護士と接見(面会)を行い、裁判の準備を進めることになるでしょう。
起訴後も勾留される
起訴後であっても、証拠隠滅をしたり、裁判に出廷せず逃亡したりする疑いがあると判断されると、勾留が継続されます(起訴後勾留)。
法務省の犯罪白書によると、2022年の起訴後の勾留率は60~70%と高い割合となっており、起訴前から起訴後まで勾留を受けるケースが多いです。
起訴後の勾留は、基本的に2か月ですが、罪名によっては刑事裁判終了まで勾留が更新されてしまうおそれがあります(刑事訴訟法第60条)。
起訴後に勾留を受けた場合は、保釈金を支払って保釈してもらう保釈制度があるので、弁護士に相談してください。
起訴されたら99%有罪となる
日本の裁判は、起訴されると99%と高い確率で有罪になります。犯罪白書によると、2022年の有罪率は99.97%でした。
有罪率が高い理由は、検察が犯罪の事実が証明できる事件だけ起訴しているからです。
2022年の起訴率は32.2%と、実は7割ほどが起訴されていません。
そのため、起訴される前に、被害者と示談をするなど不起訴処分を目指すことが非常に重要です。
また、起訴されてしまっても、初公判(最初の裁判)までは時間があるため、重い処分が下されないよう、諦めずに弁護士にサポートをしてもらいましょう。
起訴されるまでの流れ
刑事事件は、警察が事件を捜査し、それを踏まえて検察が起訴か不起訴か判断するのが基本的な流れです。
ここでは、起訴されるまでの流れを解説します。
①逮捕
事件が起きた場合、警察は捜査を行い、罪を犯したと疑わしい者を被疑者として逮捕します。
その後逮捕から48時間以内に、身柄や書類などが一度検察に送られます。
これは、警察が捜査した事件の起訴や不起訴を検察に判断してもらうためです。
身柄事件の場合は、身柄拘束を受けたまま検察庁に移送されます。
在宅事件の場合は、身柄が解放されて、書類だけが検察庁に送られることになります。
②勾留
検察は警察から引き継いだ事件に対して、24時間以内に起訴か不起訴か、さらに捜査を行うかどうかを判断します。
ほとんどのケースでは、捜査が必要だと判断されるため、検察が裁判所の許可の元勾留を行います(勾留請求)。
取り調べのために勾留が決定されると、基本は10日間、延長が認められるとさらに10日間、警察の留置場に入れられます。
勾留されている間は、警察や検察が取り調べを行い、この勾留期限の10~20日までに、検察は起訴か不起訴か判断します。
在宅事件の場合は、身柄拘束を受けないため、起訴までに特に期限は決められていません。
一般的には2~4か月ほどで起訴か不起訴か判断されることになりますが、長いと半年や1年かかることもあります。
③起訴・不起訴の決定
勾留の期限までには起訴か不起訴か判断されます。
起訴が決定すると、身柄事件の場合は勾留満期までに起訴が確定したことを知らせる起訴通知書が渡され、その後裁判所から勾留先に起訴状が送達されます。
裁判所が起訴後の勾留を必要だと判断すれば、拘置所か留置場に入れられて裁判が行われるのを待つことになります。
在宅事件の場合は、自宅に起訴状が届き、その後裁判所から、出廷日や法定番号などが記載された召喚状が届きます。
起訴された後の流れ
ここでは、起訴された後の流れを解説します。
「通常の起訴」の場合
裁判の開廷を待つ
検察から通常の起訴、公判請求をされた場合は、留置場か拘置所で刑事裁判が開廷するのを待つことになります。
在宅事件や、保釈が認められた場合は、召喚状に記載された日に裁判に出廷することになります。
裁判が開始されるまでの期間はおおよそ1か月半~2か月後です。
また、裁判員裁判の対象事件や、争点が多岐にわたり複雑な事件は、裁判が長期化しないように、裁判前に公判前整理手続が行われることがあります。
公判前整理手続とは、裁判官と検察官、弁護士、希望があれば被告人が参加して、裁判前に争点を絞り込んで、裁判をスムーズに進められるようにする手続きです。
初公判
1回目の裁判が行われた場合は次の流れで裁判が進められます。
流れ | 内容 |
①冒頭手続 | 人定質問:被告人の本人確認
起訴状朗読:起訴状にある犯罪行為を読み上げる 黙秘権の告知:裁判官から被告人に黙秘権の告知 罪状認否:起訴事実に誤りがないかどうか被告人と弁護士に確認 |
②証拠調べ | 冒頭陳述:検察官が被告人の人物像や動機を読み上げる
証拠調べ:供述調書の確認や証人の尋問、弁護士側の証拠の提出、被告人への質問が行われる |
③証拠調べの終了 | 論告求刑:検察官が刑を求刑する
弁論:弁護士が弁論を行う |
④最終意見陳述 | 最後に被告人が意見を述べる |
基本的な流れは、検察官が今までの捜査の結果、犯罪の事実があり、このくらいの刑を科してほしいと裁判官に訴えます。
反対に、弁護士は事件の当時の被告人の状態や、今後更生の可能性などを伝えて、このくらいの刑が妥当ではないかと裁判官に訴えます。
裁判官は、最後に被告人の意見を聞いて、次回の裁判で判決を言い渡します。
争いのない事件であれば、次の裁判で判決が下され、2回ほどで終了することがほとんどです。
判決期日
2回目の裁判では、初公判の内容を踏まえて、裁判官が判決を言い渡します。
判決で懲役の有罪判決が下され、執行猶予がつかない場合は、そのまま身柄を拘束されて、入所する刑務所の決定を待つことになります。
保釈中の場合は、実刑に備えて、刑務所に持っていきたい荷物を整理しておく必要があります。
在宅事件の場合、ただちに身柄が拘束されることはなく、後日検察から呼び出し後に収監されるため、一度は自宅に戻ることが許されます。
執行猶予や無罪判決となった場合は、身柄が解放され、帰宅できます。
「略式起訴」の場合
略式起訴の場合は、被疑者の同意を得た上で、検察官が簡易裁判所に略式起訴を求めます。
簡易裁判所は略式起訴の請求から14日以内に略式命令を発します。
勾留されている場合は、略式命令が下されることで、身柄が解放されます。
在宅事件の場合は、略式命令と納付告知書が届くため、これに従い罰金を納付しましょう。
もし、略式命令に従って罰金を納付しなければ、労役場(強制労働施設のようなもの)に収容される可能性があります(刑法第18条)。
また、身柄事件、在宅事件共に、起訴から命令が下され、罰金の納付まで1日で終わらせる在庁略式という手続きもあります。
起訴前後で弁護士に依頼してすべきこと
起訴されてしまうと高確率で有罪になるため、起訴を回避するための弁護活動が非常に重要です。
また、仮に起訴されてしまっても、諦めずに示談などを行えば、執行猶予などが得られる可能性もあります。
ここでは、起訴前後で弁護士に依頼すべきことを解説します。
起訴される前に示談をして不起訴を目指す
検察は被害者がいる事件に関して、示談の成否を重視するため、被害者との示談が成立していれば、不起訴になる可能性があります。
被害者に与えた損害に対して、金銭で賠償して、許しを得ることで、法律上被害者と和解したと判断されるからです。
ただし、ご家族や、在宅事件の被疑者が、被害者と直接示談交渉をするのは現実的ではありません。
特に、身柄事件の場合は、勾留の満了となる20日間という制限時間の中で、許せないと感じている被害者に謝罪を行い、示談に応じてもらう必要があります。
時間的な制限もあるため、早期に弁護士に依頼して、被害者も納得した形で示談交渉を行ってもらうようにしてください。
起訴された後は執行猶予の獲得と保釈請求
起訴されてしまったからといって、何もしないでいると刑の執行も猶予されずに、懲役など実刑が科される可能性があります。
起訴後であっても、被害者との示談の成否は、執行猶予や保釈にも大きく影響するため、引き続き示談交渉を行ってもらいましょう。
他にも、家族に監督してもらうなどの生活環境を整え、再犯防止に努める、あるいは、贖罪寄付(謝罪を表して行う寄付)をするなどやれることは残されています。
また、起訴後は保釈制度が利用できるので、弁護士に依頼して保釈申請を行ってもらいましょう。
こんなケースで起訴されたらどうなる?
ここでは、罪名別で起訴されたらどうなるのか解説します。
参考:不起訴人員及び起訴率の累年比較 (1993年~) – e-Stat 政府統計の総合窓口
「窃盗」で起訴され たら
窃盗で起訴されたら、10年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科される可能性があります(刑法第235条)。
そのため、起訴された場合、正式な裁判が行われるか、略式起訴で罰金刑が科せられることになります。
検察の統計によると、2021年の窃盗罪の起訴率は43.6%と半分近くにのぼります。
「傷害罪」で起訴され たら
傷害罪で起訴されたら、15年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科される可能性があります(刑法第204条)。
起訴された場合、略式起訴で罰金刑が科されるか、正式な裁判が行われることになります。
検察の統計による2021年の傷害罪の起訴率は30.2%です。
被害者との示談が成立すれば、不起訴になる可能性もあります。
「過失運転致傷」起訴されたら
過失運転致傷で起訴されたら、7年以下の懲役、もしくは禁固、または100万円以下の罰金が科される可能性があります(自動車運転処罰法第5条)。
犯罪白書によると2022年の過失運転致傷の起訴率は13.5%でした。
初犯であれば、略式起訴で罰金刑になるケースもあります。
また、被害者としっかり示談をすることで不起訴処分になる可能性もあります。
被害者が重傷であるような場合は、正式な裁判が行われて、懲役刑が科されるケースもあります。
「公務員」が起訴されたら
公務員が起訴された場合、それが通常起訴なのか、略式起訴なのかによって次のように処分が異なります。
起訴 | 処分 |
通常起訴 | 起訴休暇となり起訴された日から判決確定日まで休職になる(国家公務員法79条、地方公務員法28条2項)
給料は60%まで支給される |
略式起訴 | 罰金刑の確定により懲戒処分を受ける可能性がある |
公務員の場合、逮捕や起訴では失職することはありません。
ただし、執行猶予付きでも懲役刑や禁固刑を受ける場合、欠格となり失職することになります。
一部例外として、地方公務員によっては、過失かつ執行猶予付き判決であれば失職しないケースもあります。
公務員の場合は、実名報道をされるリスクもあるため、身柄拘束が続く前に対処することが重要です。
起訴についてよくある質問
最後に起訴についてよくある質問に回答します。
起訴されたら家族に連絡はある?
身柄事件で、ご家族やご本人が弁護士に依頼している場合は、その私選弁護人を通して家族に起訴された旨が伝えられることになります。
国選弁護人の場合は、家族へ連絡する義務はありません。
そのため、家族への連絡は不要であると考える国選弁護人ですと、連絡をしてくれない可能性もあります。
あるいは、被告人が家族に知られたくないからと国選弁護人に連絡しないようにお願いしている場合もあります。
家族が起訴されたかどうか、事件の進捗を細かく知りたいという人は、私選弁護人に依頼をするのがおすすめです。
起訴されたら会社にバレる?
起訴や略式起訴された事実は、会社に連絡が行くことはないため、バレる可能性はないと言えます。
ただし、勾留されているような場合は、弁護士経由で会社に伝えるケースがほとんどでしょう。
もっとも法律上は、犯罪行為があったからといって、ただちに解雇にはなりません。
解雇されるかどうかは、次の事情から総合的に判断される可能性があります。
- その犯罪の性質
- 処分の重さ
- 職種や従業員の地位
- 報道の有無
- その企業の過去の処分例など
起訴されたらどこに行く?
身柄事件で起訴後に勾留された場合は、引き続き留置場か、拘置所に入れられることになります。
在宅事件だと、逮捕される可能性は低いため、身柄拘束が行われず、自宅から裁判に出廷することになります。
起訴されたら家族は何をすればいい?
起訴された場合、家族にできることは次の通りです。
- 弁護士がついておらず、費用が負担できるなら弁護士に依頼をする
- 勾留されている人とこまめに面会をする
- 勾留されている人が必要とする現金や衣類など差し入れをする
もし弁護士費用が負担できない場合は、国が費用を負担してくれる国選弁護人が選任されるケースがほとんどですので、そこまで心配しなくても大丈夫です。
在宅事件でも、重い処分が下されないように、弁護士に相談してください。
勾留されている場合は、必要なものの差し入れはもちろんですが、こまめに面会をして、一緒に乗り越えようと励ましてあげることが大切です。
まとめ
この記事では、起訴された場合について、起訴後どうなってしまうのか、起訴前後の流れやすべきことなどを解説しました。
起訴されてしまった場合、勾留されている人や被告になった人は非常に不安に感じているでしょう。
起訴されてしまっても、執行猶予や保釈など、まだできることはあります。
また大切な人を支えられるのはあなただけです。
ネクスパート法律事務所では、示談や保釈など、豊富な実績を活かしてあなたの大切な人を助けるお手伝いをします。お気軽にご相談ください。