痴漢の罰則|刑罰の重さに影響する要因、罪を軽くするための対応とは

痴漢行為で逮捕された場合、どのような刑罰が科されるのでしょうか。

本コラムでは、以下の点を解説します。

  • 痴漢をした場合に問われる罪
  • 痴漢行為で科される刑罰
  • 痴漢行為で刑罰を軽くする方法

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痴漢をした場合に問われる罪

痴漢をした場合、以下のような罪に問われるおそれがあります。

  • 都道府県迷惑防止条例違反
  • 強制わいせつ罪

都道府県迷惑防止条例違反

各都道府県の迷惑防止条例違反になるおそれがあります。ここでは、東京都の迷惑防止条例を例に、その内容を確認します。

東京都迷惑防止条例(正式名称:公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)第5条は、公共の場所または公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から、または直接に人の身体に触れることを禁止しています。

同条例第8条は、この規定に違反した者を6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処すると定めています。

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常習の場合は刑が加重

同条例第8条第8項は、痴漢の常習者1年以下の懲役または100万円以下の罰金に処すると規定し、常習者は刑が加重されます。

どこからが常習とみなされるかについては、条例に記載されていません。痴漢を行っていた期間や頻度、回数などから判断されます。

神奈川県迷惑行為防止条例は、痴漢行為の罰則を1年以下の懲役または100万円以下の罰金とし、常習者には2年以下の懲役または100万円以下の罰金を科すと定めています。地域によって、痴漢行為の罰則が異なるケースがあります。

強制わいせつ罪

痴漢行為は強制わいせつ罪にあたる可能性もあります。強制わいせつ罪に該当すると、法定刑は迷惑防止条例違反より重いです。

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罰則

強制わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の懲役です。

迷惑防止条例違反との違い

強制わいせつ罪は刑法第176条の規定で、13歳以上の者に対し、暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処すると定められています。

暴行または脅迫を用いてと記載されていますが、暴行・脅迫をしていなければ強制わいせつ罪は成立しないというわけではありません。痴漢行為の態様次第で、わいせつ行為自体が暴行と評価され、強制わいせつ罪が成立することがあります。

例えば、電車で痴漢をしたケースで、女性の下着の中に手を入れた場合、強制わいせつ罪にあたる可能性があります。

また、路上痴漢で女性の胸をわしづかみにした場合も、同罪が適用されるおそれがあります。

相手が13歳未満の場合、暴行または脅迫を伴わなくても、わいせつ行為に及べば強制わいせつ罪が成立します。電車で小学生の服の上からお尻を触った場合、強制わいせつ罪に問われる可能性があります。

痴漢行為の刑罰は?

痴漢行為で逮捕された場合、実際にどれほどの刑罰が科されるのでしょうか。

未遂の場合

痴漢が未遂に終わった場合、迷惑防止条例違反には問われません。

一方、痴漢が未遂に終わったケースでも、場合によっては強制わいせつ未遂罪に問われる可能性はあります。

例えば、路上で女性に痴漢をしようと女性の口を塞いだが、大声を出されてわいせつ行為はせずにその場から逃走したケースでは、強制わいせつ未遂罪が適用される可能性があります。

強制わいせつ未遂罪は強制わいせつ罪と同様に処罰されますが、未遂のため刑が減軽される可能性があります。

初犯の場合

痴漢の初犯のケースでは、起訴されても罰金刑で済むことが多く、20~30万円程度が目安です。罰金刑のみの場合は、略式手続きで事件処理される可能性があります。

略式手続とは、公開の法廷で事件を審理するのではなく、簡易裁判所で事件を審理する手続きです。法廷は開かず、検察官が提出した証拠を裁判官が検討し、書面で審理します。

より簡便な手続きであるため、正式裁判よりも結論が出るのが早い特徴があります。

裁判官が出せる略式命令は100万円以下の罰金または科料(1000円以上1万円未満)に限られ、検察官が略式手続を請求する際は、被疑者の同意が必要です。

略式命令に不服の場合、被告人は正式裁判を申し立てられます。

なお、強制わいせつ罪の法定刑に罰金刑がないため、強制わいせつ罪に問われた場合、略式手続は行われません。

また、痴漢の初犯で、被害者と示談が成立しているケースでは、不起訴になる可能性もあります。示談交渉によって被害者と和解し、被害者が加害者を許す意思を示していれば、被疑者の不起訴に有利に働きます。

もっとも、初犯であっても懲役刑が言い渡される可能性は否定できません。刑事裁判の量刑では、犯行態様や被害の程度、被害者の処罰感情や常習性などが考慮されます。

初犯とはいえ犯行の手口が悪質で、被害者の数が多く、被害者が厳しい処罰感情を抱いているようなケースでは、懲役刑が科される可能性があります。

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再犯の場合

一方、痴漢の再犯の場合は、実刑が科される可能性があります。

執行猶予期間中の再犯

執行猶予期間中に再犯に及んだ場合、実刑になる可能性があります。

再犯の刑事裁判で禁錮以上の刑を言い渡され、執行猶予が付かないときは、前に出された執行猶予が取り消されます。この場合、前回の懲役刑が今回の懲役刑に加算され、刑が重くなります。

一方、執行猶予期間中の再犯で罰金刑を言い渡された場合、必ず執行猶予が取り消されるわけではありません。執行猶予が取り消されるかどうかは、裁判所の判断次第です。

また、執行猶予期間中の再犯に対して再び執行猶予が付くかどうかは、以下の要件を満たしている必要があります。

  • 新たに言い渡される刑が1年以下の懲役または禁錮
  • 情状に特に酌量すべきものがある
  • 保護観察中の再犯ではない

執行猶予期間外の再犯

前回の罪に対する刑罰が罰金刑のみだった場合、再犯でも執行猶予が付く可能性はあります。ただし、初犯の場合と比べて、執行猶予は付きにくいです。

前回の罪で禁錮以上の刑を言い渡された場合でも、刑の執行を終わった日または刑の執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑を科されていないケースでは、執行猶予が付く可能性があります。ただし、こうしたケースでも、初犯に比べれば執行猶予は付きにくいです。

痴漢の刑罰が重くなりうる要因

以下の痴漢のケースは、刑罰が重くなる可能性があります。

被害者が未成年

痴漢の被害者が未成年の場合、刑が重くなるおそれがあります。未成年は成人と比べて大きな精神的ショックを受けている可能性があり、両親が加害者に厳しい感情を抱いていれば、示談交渉が進まないことも想定されます。

痴漢の現場から逃走した

痴漢現場からの逃走も刑罰を重くする可能性があります。

痴漢現場から逃走すると、反省がみられず罪を逃れようとしているとみなされます。こうした要素は被告人にとって不利な情状となります。

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犯罪の程度が重い

犯罪の程度が重い場合も、刑罰が重くなりやすいです。

例えば、痴漢行為に及ぶ際に相手を押し倒し、ケガを負わせた場合、強制わいせつ致傷罪に問われる可能性があります。強制わいせつ致傷罪の法定刑は無期または3年以上の懲役です。

痴漢事件で刑罰を軽くするには?

痴漢事件で刑罰を軽くするにはどうしたらよいのでしょうか。

弁護士に刑事弁護を依頼

まずは弁護士に相談し、刑事弁護を依頼しましょう。弁護士は以下の活動を実施し、被疑者・被告人をサポートします。

取調べへの助言

痴漢事件で逮捕されると、捜査機関の取調べを受けます。取調べにどう臨むかは重要で、早期の釈放や不起訴の成否にかかわります。

痴漢が冤罪であるなら、明確に無実を主張していく必要がありますが、痴漢行為をしたにもかかわらず不合理な供述を続けていると、被疑者が不利になる一方です。

また、捜査機関が作成する供述調書に一度サインすると、供述調書は証拠能力を持ちます。内容に納得できないときは訂正を求めたりサインを拒んだりできます。

弁護士をつければ、そうした点も含めて、取調べにあたっての助言を得られます。

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被害者との示談交渉

痴漢事件で刑罰を軽くするには、被害者と示談交渉を行うことも重要です。検察官は被疑者を起訴するか不起訴にするか判断する際、被害者がどのような処罰感情を抱いているか考慮します。

示談が成立し、被害者が加害者の処罰を望んでいないのであれば、検察官は不起訴に傾きやすくなります。

弁護士をつければ、示談交渉を任せられます。

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再犯防止の手立て

痴漢は再犯傾向が強い犯罪と考えられています。再犯のおそれありとみなされれば、被疑者・被告人に不利に働きます。

再犯を防ぐために、性依存症専門の医療機関に通院するなど、再犯防止策を講じることも必要です。

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まとめ

痴漢行為に対する刑罰は、初犯か再犯かで異なります。初犯の場合、示談が成立していれば不起訴になる可能性があり、起訴されても罰金刑のみで済むことが多いです。罰金刑のみの場合、略式手続きで事件処理される可能性があります。

一方、再犯のケースでは、懲役刑が言い渡される可能性が上がり、実刑のおそれもあります。

痴漢事件で刑罰を軽くするには、弁護士に刑事弁護を依頼することが肝要です。痴漢事件で弁護士のサポートが必要な方は、ネクスパート法律事務所にご相談ください。

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