【不貞行為の定義とは】どこからが不倫?簡単にわかりやすく解説

  • 最終更新日: 2024.04.18

今回は不貞行為(読み方:ふていこうい)について法的な観点から深堀し、不貞行為の定義や該当する行為、該当しない行為などを紹介しますので、是非ご一読ください。

不貞行為の定義とは

不貞行為(ふていこうい)とは、簡単に言うと「既婚者が他人と性的な関係を結ぶ」ことです。また、過去の判例(昭和48年の最高裁での判決)では不貞行為は以下のように定義されています。

不貞な行為とは、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいい、相手方の自由な意思にもとづくものであるか否かは問わない。

引用元:裁判例結果詳細 | 裁判所

上記の判例では「自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと」とされています。つまり不貞行為とは「性的関係(肉体関係)」があるかどうかが重要なポイントなります。

性的な関係とはどこからか

不貞行為の定義で述べた「性的関係」には、性交渉(男女が性器を結合させる行為)のほか口腔性交(口を使って性器を刺激する行為)などの性交類似行為が含まれます。

上記のような行為がない場合は「不貞行為」ではありません。しかし、性行為をしている現場を確認することは難しいものです。そのため、性的な関係を伺わせる場合も、不貞行為があったと認められています。

例えば長時間ラブホテルに2人きりで過ごしていた場合には、不貞行為とみなされる可能性は高いでしょう。ラブホテルは性交渉をするための場所として社会通念上広く知られているからです。

不貞行為は法律違反で犯罪?

不貞行為は刑法に規定はなく、逮捕される訳でも犯罪でもありません。しかし、不貞行為は民法上の責任が問われます。

不貞行為は民法第709条の「不法行為」にあたります。

(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

不法行為(不貞行為)により夫婦の権利を侵害したことで、不貞行為をした方は損害賠償責任を負うのです。

権利を侵害するとはどういうことかと言うと、夫婦には第752条「同居、協力及び扶助の義務」があり、この中には貞操義務も含まれているとされています。

(同居、協力及び扶助の義務)
第七百五十二条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

貞操義務(ていそうぎむ)とは、簡単に言うと「配偶者以外と性的な関係をもたない」ということを意味します。つまり、不貞行為は犯罪でありませんが、夫婦の権利を侵害する民法上の違法行為なのです。

不貞行為とは違う?浮気や不倫の定義とは

不貞行為は「不倫」や「浮気」といった行為と同じように思えます。しかし、不貞行為には民法上の定義があり、浮気や不倫といった言葉は法律用語ではありません。

一般的には「浮気」や「不倫」といった行為には、肉体関係がない場合の男女関係も含まれるでしょう。例えば、デートをした、キスをしたなどのケースです。しかし、肉体関係がないのであれば、それは不貞行為ではありません。そのため、不貞行為は世間で使われる不倫や浮気といった言葉よりも狭義な用語と言えるでしょう。

不貞行為にならない代表例

不貞行為にならない行為とはどんな行為なのでしょうか。まず先にも触れましたが、性的な行為がない関係なら不貞行為とは言えません。不貞行為にはならない代表的なケースをご紹介します。

食事やデート

食事やデートをしただけでは、そこに性的な関係はないので不貞行為ではありません。ただし、何回も同じ異性と2人だけで食事・デートをしている場合、かなり親密な関係であることは間違いないでしょう。食事の席でお酒も吞んでいる場合は、酔った勢いで不貞行為に発展してしまう可能性もあります。

キス、手を繋ぐ

キスや手を繋ぐ行為は浮気とは言えるかもしれませんが、不貞行為にはあたりません。ただ一般的な感覚ですと、配偶者が誰かと「キス」をしていたら、ショックを受け感情的になってしまう方は多いでしょう。キスをきっかけに夫婦関係が悪化していけば、法律上の離婚事由(婚姻を継続し難い重大な事由)に該当し、離婚や慰謝料が認められる可能性もあります。

LINEやメール

異性とLINEやメールなどでやり取りをしていただけの場合、もちろん性的な関係はありませんから不貞行為ではありません。しかし、肉体関係があったことを伺わせるやり取りをしていた場合は、不貞行為があったとみなされ離婚や慰謝料が認められることがあります。

実際、性行為をしている現場を押さえるのは困難であるため、性的な関係を伺わせる場合も、不貞行為があったと認められています。

不貞行為を証明する有力な証拠

不貞行為を理由に離婚や慰謝料請求をするには、知っておくべきコツはあるのでしょうか。不貞行為は冒頭でも触れたように、性的関係の有無が鍵となります。

そのため二人の情事を匂わせるものを証拠として押さえておくことが大切です。では、どんな証拠が有力でしょうか。主な証拠を4つ紹介します。

写真や動画

肉体関係があったことを推認できる写真や動画は有効な証拠となります。例えば、ラブホテルに不倫相手と出入りしている写真、相手の裸体の写真などが証拠として認められやすいです。

肉体関係を伺わせるやり取り

肉体関係があったことを伺わせる内容のLINEやメールは有効な証拠となります。証拠を保存するときは、性行為を匂わせるようなやり取りをしていた部分を証拠として押さえましょう。また、やり取りをしていた日時や前後の文章なども保存しておくと良いでしょう。

音声の録音

不貞行為を認めている録音データも有効な証拠となります。また、浮気相手と肉体関係があったことを匂わせる会話を録音できた場合も証拠となります。

しかし、相手に自白を強要し、脅しのような言葉で問い詰めた場合には、証拠として認められない可能性もあります。また、逆に強要罪などで訴えられてしまう可能性もあるので注意しましょう。

探偵の調査報告書

不貞行為の証拠を確保するために、探偵に浮気調査を依頼する方もいます。確かに探偵は尾行のプロで、調査報告書も丁寧にまとめています。一方で調査期間や調査内容によっては高額の費用が発生することもあります。利用時には費用もしっかりと確認することが大切です。

この他にも、領収書や不貞行為そのものが撮影された写真や動画も有力です。証拠集めに関しては相手にばれないように、慎重に行う必要があります。

不貞行為と慰謝料

不倫慰謝料の請求方法

不貞行為が発覚した場合は、配偶者に対して慰謝料を請求することが可能です。請求方法としては、以下のような方法があります。

  • 直接請求する
  • 内容証明郵便で請求する
  • 調停や訴訟で請求する

また、浮気相手だけに慰謝料を請求することも可能ですので、詳しくは「浮気相手だけに慰謝料請求する方法と慰謝料の相場」をご覧ください。

不倫の慰謝料相場

不貞行為の慰謝料相場は「50~300万円」程度と言われています。慰謝料の金額は様々な要因によって変わりますが、基本的には「夫婦関係に与えた影響」が大きいほど金額は上がります。また、いくら請求するのが妥当なのかは一般の人では検討が付かないこともあるでしょうから、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

慰謝料請求の時効

慰謝料の請求には時効もあるため注意が必要です。時効になるケースとしては以下の2パターンです。

  1. 不倫の事実と浮気相手を知った日から3年が経過している
  2. 20年以上前の不倫

時効が迫っている事案で慰謝料を請求したい場合には、早急に行動する必要があります。また、時効のカウントを中断・更新することもできますので、詳しくは「不倫慰謝料の消滅時効とは|民法改正による変更点」をご覧ください。

慰謝料請求できないケース

不貞行為で慰謝料を請求できないケースとしては、以下のようなケースが考えられます。

  • すでに夫婦関係が破綻していた
  • 時効を迎えている
  • 不貞行為の証拠がない

しかし、何をもって夫婦関係が破綻していたのか、不貞行為の証拠になるのかは判断が難しい部分でもありますので、不安な方は弁護士に相談してアドバイスを貰うことをおすすめします。

不貞行為で離婚したい場合

不貞行為は民法で定められた離婚事由

不貞行為は民法770条で定めらている離婚事由です。不貞行為をした配偶者に対しては慰謝料のほか、離婚を求めることも可能です。

(裁判上の離婚)

第七百七十条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
2 裁判所は、前項第一号から第四号までに掲げる事由がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができる。

引用元:民法 | e-Gov法令検索

また、不貞行為が原因で離婚する場合、夫婦に与えた影響は大きいため、慰謝料の金額も高くなる傾向があります。

有責配偶者からの離婚請求は原則認められない

中には「浮気相手と結婚したいから離婚してほしい」というケースもありますが、原則不貞行為をした配偶者からの離婚請求は認められません。ただし、夫婦関係がすでに破綻していた場合や長期間別居している、子どもがいない、その他婚姻を継続し難い重大な理由があるケースでは、例え有責配偶者からの離婚請求であっても、離婚が認められる可能性があります。

まとめ

この記事では不貞行為の定義、該当する行為や証拠集めなどを中心に解説しました。不貞行為の事実と向き合い、離婚や慰謝料の請求を行うことは大変なストレスです。

また、有利な状況に導くためには、必要な証拠を集めしっかりと準備をすることが大切です。そんな時はお気軽に弁護士にご相談ください。不貞行為にどう立ち向かうかアドバイスし、解決への道筋も提案しています。

不貞行為でよくある質問

別居後の不貞行為で慰謝料の請求はできる?

夫婦がすでに別居しており、別居後に新しい恋人を見つけ不貞行為に及んだ際には、慰謝料請求などを行うのは可能なのでしょうか。

結論から言うと、夫婦関係がすでに破綻している場合、慰謝料の請求は原則認められません。過去の判例では「夫婦関係がすでに破綻していた場合、不法行為責任を負わない」という判決が出ています。

 甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙との婚姻関係がその当時既に破綻していたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不法行為責任を負わない。

裁判年月日 平成8年3月26日 裁判例結果詳細 | 裁判所

しかし、正当な理由があり別居している場合(単身赴任など)や、同居中に不貞行為があった場合は不法行為に該当します。何をもって夫婦関係が破綻しているかは判断が難しく、別居した理由や別居期間など様々な事情を考慮して判断されます。

また、不貞行為の証拠が掴めていないまま別居してしまうと、不貞行為は認められず慰謝料の請求もできない「泣き寝入り」の可能性があります。夫婦関係で疑わしい点や悩みがあったら、まずは弁護士などの専門家からアドバイスを受けて別居の準備を進めることが大切です。

既婚者だと知らずに交際している相手に慰謝料は請求できる?

不貞行為の中には、片方が未婚の方というケースもよくあります。そんな場合に気になるのは、既婚者と知らずに交際していた相手に慰謝料を請求することは可能でしょうか。結論から言うと、既婚者と知らずに交際していた方に慰謝料を請求するのは難しいです。不貞行為は「故意または過失」によって行われたものである必要があります。

例えば、夫が配偶者であることを隠し未婚の女性と交際していた場合、未婚の女性は一般的な恋愛関係だと思っていたため不貞行為を犯すつもりはなく、故意や過失は認められません。そのため、慰謝料を請求することが難しいのです。

しかし、交際していた女性が本当は既婚者と知っていたにも関わらず、知らなかったと主張することも考えられます。裁判例によっては既婚者と知らなかったとする主張を退けているケースもあります。

もしも、既婚者であると知らなかったと主張する相手に慰謝料を請求する場合は、証拠を積み上げて証明をする必要がありますし、訴えられた方も故意や過失がなかったことを証明することが求められます。

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