不貞慰謝料請求について弁護士が相談・依頼を受ける際には、相談者・依頼者の氏名・不貞配偶者の氏名・不貞相手の氏名等が確認されます。
それは、利益相反の有無を確認するためです。
弁護士は、相談者・依頼者と利害が対立する人の相談・依頼を受ける行為が禁止されています(利益相反行為の禁止、弁護士法25条、弁護士職務基本規程27条)。
具体的にどのような事案が利益相反にあたるのかを知りたい人も多いでしょう。
この記事では、不貞慰謝料請求と弁護士の利益相反に関するよくある質問について解説しています。ぜひ参考にしてください。
目次
不貞に基づく慰謝料請求と弁護士の利益相反に関するQ&A5選
不貞に基づく慰謝料請求と弁護士の利益相反に関するよくある質問について解説します。
弁護士に相談をしたら利益相反を理由に断られました。なぜでしょうか?
不貞配偶者もしくは不貞相手、その双方が当該弁護士に相談・依頼をしているからでしょう。
不貞慰謝料請求において、慰謝料を請求する側(あなた)と慰謝料を請求される側(不貞配偶者・不貞相手)は利害が対立する関係にあります。
当該弁護士は、慰謝料を請求される側である不貞配偶者もしくは不貞相手、その双方から相談・依頼を受けた以上、慰謝料を請求する側であるあなたの相談・依頼は受けられません。
ダブル不倫の場合、夫婦一緒に同じ弁護士に依頼できますか?
ダブル不倫の場合、夫婦一緒に同じ弁護士に依頼できない場合があります。
例えば、次のような事案では、夫婦(AとB)で同じ弁護士には依頼できません。
- A(あなた)からD(不倫相手)に慰謝料請求
- C(不倫相手の夫)からB(あなたの夫)に慰謝料請求
AとBに同じ弁護士がついた場合、一方に有利な主張が、他方には不利な主張になります。
Aの代理人の立場で、Aの利益を最大にするためには、不貞の態様が悪いこと(例えば、交際期間が長い等)を主張するでしょう。しかし、この主張はBの代理人の立場で見ると、Bに不利益を与えることになり、矛盾が生じます。
したがって、このようなケースでは、夫婦で同じ弁護士に依頼するのは難しい可能性があります。
もっとも、四者和解を目指すために夫婦で同じ弁護士に依頼できる場合もありますので、このようなケースでは、一度弁護士に相談することをおすすめします。
不貞配偶者と不貞相手が同じ弁護士に依頼したら利益相反にならないのでしょうか?
利益相反になるかはケースバイケースです。
不貞配偶者と不貞相手は、慰謝料請求権が認められた場合に、その後求償権の問題が生じる関係にあります。求償権の問題においては、不貞配偶者と不貞相手とは利害が対立する関係にあります。
利益相反にあたるかの判断については、依頼の時点で利害対立が顕在化しているかがポイントになります。
不貞配偶者と不貞相手が共に不貞行為を否定しているケース
不貞配偶者と不貞相手が共に不貞行為を否定している場合には、利益相反にならないでしょう。
不貞配偶者と不貞相手は、慰謝料を請求する側とされる側のような対立関係にはありません。さらに、共に不貞行為を否定していることから、主張が共通しています。
この時点では、未だ慰謝料請求権が認められているわけではなく、求償権の問題も現実化していないことから、利害対立が顕在化しているとは言えません。
不貞配偶者と不貞相手とが共同で主張・立証することで、双方にとって利益となると考えられます。
したがって、不貞配偶者と不貞相手が共に不貞行為を否定している場合には、同じ弁護士に依頼しても利益相反にならないでしょう。
もっとも、「不貞行為がなかった」という主張が崩れた場合や、示談や訴訟の進め方について双方の意見に食い違いが生じた場合には、この限りではありません。
不貞配偶者と不貞相手の主張が異なるケース
不貞配偶者と不貞相手の主張が異なる場合には、利益相反にあたるでしょう。
例えば、不貞相手は既婚者とは知らずに付き合ったとして、不貞関係を否定するケースもあるでしょう。
不貞配偶者、不貞相手共に不貞行為は認めているものの、交際の経緯について主張が異なるケースもあります。
このような場合には、利害対立が顕在化していると言えることから利益相反にあたるでしょう。
配偶者が不貞相手から逆に慰謝料を請求されました。私の弁護士に依頼できますか?
弁護士の判断にもよりますが、あなたの弁護士には依頼できない可能性があります。
例えば、次のような事案で検討してみましょう。
- あなた(A)が不貞相手(C)に対して不貞に基づく慰謝料を請求した
- 不貞相手(C)があなたの配偶者(B)に対する貞操権侵害に基づく慰謝料を請求した
この場合、CがAB間の婚姻関係を認識していたことを主張立証する点では、AB双方の利益が一致しているように見えます。
しかし、Bが「そもそも不貞行為はなかった」と主張し、仮にその主張が認められると、AのCに対する慰謝料請求が認められない可能性があります。Aの「Cが婚姻関係の存在を認識しながら不貞行為に及んだ」という主張が認められると、将来的にAがBに対して慰謝料を請求する場合や離婚を検討する場合に、AとBの利害の対立が生じる可能性もあります。
そのため、相談の段階ではあなたと配偶者双方の利益が一致するように見えても、将来的に利害の対立が生じる可能性がある場合には、弁護士が双方からの依頼を受けることに消極的な姿勢を示すかもしれません。
もっとも、依頼者双方の利害対立が顕在化していない段階では、利益相反には該当しないと解するのが一般的な理解です。
したがって、あなたと配偶者に対して、不利益事実を説明した上で、夫婦双方の依頼を受けてもらえる可能性もあります。
一度弁護士に相談してみましょう。
配偶者が依頼する弁護士と同じ事務所の別の弁護士さんに依頼できますか?
同じ事務所の別の弁護士には依頼できません。
利益相反の禁止は、同じ事務所の別の弁護士にも適用されます。
したがって、配偶者が依頼する弁護士と同じ事務所の別の弁護士には依頼できません。
まとめ
不倫慰謝料請求と利益相反についてお分かりいただけたでしょうか。
弁護士は、利益相反にあたる事件の相談・依頼は受けられません。
現時点では利益相反にあたらないとしても、後に利益相反が生じ得る事件についての相談・依頼は断られる可能性もあるでしょう。
利益相反を理由に相談・依頼を断られたと考えられる場合には、別の弁護士への依頼を検討しましょう。