飲食店の経営に際しては、正社員、パート、アルバイトを含め、従業員の採用を行うことになるでしょう。従業員の種別を問わず、採用面接にあたって何か注意すべきことはあるでしょうか?本稿では、採用面接時に注意する点をまとめます。

採用面接において質問できること
飲食店の経営においては、店舗の営業時間や、酒類を提供するのか否か等といった営業内容、華やかな空間なのか落ち着いた雰囲気を楽しむ場なのかといったお店の雰囲気等、各店舗でコンセプトがさまざまでしょう。そのような中で、従業員を採用するにあたっては、学歴や経歴などの他に色々なことを確認したいところだと思います。
他方、雇用にあたりおよそ必要でない情報に関する質問や、店舗での業務に関係のない事柄にわたる質問を行うことはできるのでしょうか?
この点、応募者のプライバシー権との関係が問題になります。
職業安定法5条の5第1項本文においては、応募者のプライバシーを考慮し、次のように定めています。
「労働者の募集を行う者…は、…その業務に関し、求職者、労働者になろうとする者又は供給される労働者の個人情報(以下この条において「求職者等の個人情報」という。)を収集し、保管し、又は使用するに当たっては、その業務の目的の達成に必要な範囲内で、…当該目的を明らかにして求職者等の個人情報を収集し、並びに当該収集の目的の範囲内でこれを保管し、及び使用しなければならない。」
職業安定法5条の5第1項
(以下,脚注)
下線部は筆者による。
この規定からすると、業務上の必要がない限り、業務に直接関係のない事項で、応募者の個人的な領域について深く立ち入った質問をすることは避けるべきでしょう。
履歴書等書面の確認
これに対し、企業側も従業員の属性について合理的範囲の情報を取得する必要があるわけですから、応募者に履歴書の提出を求めることは当然認められます。
経歴詐称等のリスクを排除する意味でも、採用面接に際しては、履歴書の事前の提出を求め、事前に確認しておくと良いでしょう。採用が進み、内定等を出す段階になっては、履歴書等に詐称がないか、入社したあかつきには会社に対し誠実に業務を実行する意思があるか(例えば、情報管理を徹底し、所謂バイトテロなどを起こさないか、といったことも盛り込む余地もあります。)を確認するための誓約書を用意しておくことも重要です。
採用に際して準備しておく書面については、別稿でまとめていますのでそちらを参照してください。
【弁護士解説】採用する際に準備しておくべき書類
男女雇用機会均等法について
雇用にあたっては、男女の別について、差別することなく均等な機会を与えることが必要とされています。
所謂男女雇用機会均等法5条においては、以下のように定められています。
「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。」
男女雇用機会均等法5条
具体的には、以下の事項が禁止されます。
- 募集・採用の対象から男女のいずれかを排除すること
- 募集・採用の条件を男女で異なるものとすること
- 選考にあたり、能力・資質の有無の判断方法・判断基準について男女で異なる取扱いをすること
- 募集・採用にあたり男女のいずれかを優先すること
- 求人の内容の説明等に際して、男女で異なる取扱いをすること
- 募集・採用にあたり労働者の身長・体重・体力等を要件とすること
- 募集・採用にあたり、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とするもの
ただし、男女雇用機会均等法は、募集・採用にあたって男女に均等の機会を与えることを目的とするものですから、必ずしも同数の雇用をしなければならないということではありません。結果的に業務の種類や応募者の適正からどちらかの性別に偏ったとしても違法となるものではないので、その点は誤解のないようにしてください。
おわりに
本稿では、採用面接時に注意する点をまとめてきました。ネクスパート法律事務所では、飲食店の経営サポートに特化したチームが、従業員の採用に際しての注意すべき点の解説や誓約書及び雇用契約書の作成、その後従業員となった後に何らかのトラブルが発生した際の労務問題の相談等を行っております。
飲食店の経営に際して、従業員とのトラブルが生じたとき、生じることを未然に防ぎたいときは、初回相談は無料でご対応いたしますので、是非ネクスパート法律事務所にご相談ください。