【弁護士解説】飲食店で従業員を募集する際の留意事項

飲食店を経営するにあたっては、正社員やアルバイトといった様々な形態で従業員を募集する必要があるでしょう。本稿では、従業員を募集する際に注意すべき事項についてまとめます。

目次

従業員の性質

従業員を募集する際には、正社員、パートタイマー、アルバイト等様々な形態で募集する場合があり得ます。それでは、これらの形態は法律上どのように区分されるのでしょうか。

労働基準法9条によれば、労働者について、以下のように定義づけられています。

「この法律で『労働者』とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。」

労働基準法9条

この定義からすると、形態を問わず、雇用契約に基づいて働く者は労働者に該当することになります。したがって、どのような形態の労働者との関係でも、労働基準法や労働契約法といった法律を遵守する必要があります。

採用に際して注意すべき事項

労働条件等の明示

労働者の採用に際しては、まず、労働条件の明示が必要とされています。また、労働条件が明示された場合であっても、明示された条件が実際の条件と異なる場合には、労働者側が一方的に労働契約を解除することができるとされているため、実際の条件を誇張・虚偽等行わず明示しなければなりません。

具体的に明示するべき事項は、労働法施行規則等によれば、次のとおりです。

  1. 労働契約の期間
  2. 就業場所・業務内容
  3. 始業・終業時刻、残業時間の有無、休憩時間、休日・休暇、交代制勤務の場合のローテーション
  4. 賃金の決定、計算・支払方法、締切り、支払時期
  5. 退職に関する事項

また、同規則において、使用者が以下の事項について定める場合には、口頭での明示が必要とされています。

  1. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払方法並びに退職手当の支払時期に関する事項
  2. 臨時に支払われる賃金、賞与及び労働基準法施行規則8条各号に掲げる賃金並びに最低賃金に関する事項
  3. 労働者に負担させる食費、作業用品その他に関する事項
  4. 安全及び衛生に関する事項
  5. 職業訓練に関する事項
  6. 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 表彰及び制裁に関する事項
  8. 休職に関する事項

使用者が合理的な内容の就業規則を定めている場合で、これを労働者に周知させていた場合には、就業規則で定められている条件が労働条件となります(労働契約法7条)。

これらに加え、パートタイマーや有期雇用労働者等の雇用に当たっては、別途パートタイム・有期雇用労働法の定める事項についても書面で提示することが必要です。

どのような形態で人材を雇用するかは、飲食店を経営するにあたって重要な事項になり、雇用する形態ごとにも記載すべき事項や注意点が異なりますので、労働契約書や労働条件通知書の作成に際しては専門家に相談すると良いでしょう。

なお、募集要項として告知していた時給よりも低い時給で雇用する場合の問題点は別稿「募集要項で告知していた条件(賃金)と異なる条件で雇用することの問題点」にまとめていますので、こちらもご参照ください。

職員紹介制度について

昨今においては、従業員の募集をかけてもなかなか人が集まらない、という事態も生じると考えられます。その場合に、既存の従業員から知人等を紹介してもらい、当該知人が入社した場合には紹介した従業員にインセンティブを支払うという所謂「職員紹介制度」を策定することは有用です。

しかしながら、職業安定法40条は、以下のとおり賃金とは別に報酬を支払うことを原則として禁止しています。

労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第三十六条第二項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。

職業安定法40条

他方で、「賃金、給料その他これらに準ずる」ものの支払いは禁じられていないことから、弁護士等と相談のうえ、同法に違反しないような制度を構築すると良いでしょう。

おわりに

本稿では、飲食店で従業員を募集する際に注意すべき事項をまとめました。労働者とトラブルにならないためにも、どのような形態・条件で従業員を雇用するか等をしっかり検討する必要があるでしょう。

ネクスパート法律事務所では、飲食店のサポートに特化したチームが、労働契約書等の作成や労働問題・採用に関するアドバイス等も行っています。また、昨今は外国人の従業員を雇用する企業も多くいらっしゃることと思いますが、ビザ等外国人労働者特有の問題についても、提携する行政書士等の士業と連携し、対応に当たらせていただきます。

飲食店での労働契約書の作成、従業員の採用や労働問題等についてお悩みの際は、初回無料でご相談いただけますので、是非ネクスパート法律事務所にお気軽にお問い合わせください。

目次