自己破産で債権者一覧表に記載漏れがあるとどうなる?免責されない?
自己破産の申立時には、債権者一覧表を提出しなければなりません。
債権者一覧表に記載された債権は、免責許可決定の確定により支払義務が免除されます。
自己破産を申立てた後に、債権者一覧表の記載漏れが判明した場合はどうすればよいのでしょうか?記載が漏れていた借金は免除されるのでしょうか?
この記事では、自己破産で債権者一覧表に記載漏れがあった場合の対処法や記載漏れの債権に免責の効力が及ぶかどうかについて解説します。
目次
自己破産で債権者一覧表の記載漏れが発覚した場合の対処法
ここでは、自己破産で債権者一覧表の記載漏れが発覚した場合の対処法を解説します。
破産手続開始決定前に記載漏れに気付いた場合
自己破産の申立後、債権者一覧表の記載漏れに気付いた場合は、速やかに裁判所に報告しなければなりません。
破産手続開始決前であれば、以下の書類を裁判所に提出することで問題なく手続きが進みます。
- 上申書
- 漏れていた債権者を追加した債権者一覧表
破産手続開始決定後に記載漏れに気付いた場合
破産手続開始決定後に債権者一覧表の記載漏れに気付いた場合は、漏れていた債権者に開始決定通知書が送付できていません。この場合の対処は、当該破産手続きが同時廃止事件として処理されるか、管財事件として処理されるかで異なります。
同時廃止事件の場合
申立人(申立代理人)は、以下の書類を裁判所に提出するとともに、開始決定通知書等を当該債権者に送付して裁判所に報告しなければなりません。
- 上申書
- 漏れていた債権者を追加した債権者一覧表
管財事件の場合
申立人(申立代理人)は、以下の書類を裁判所および破産管財人に提出します。
- 上申書
- 漏れていた債権者を追加した債権者一覧表
破産管財人には、以下の事項を依頼します。
- 漏れていた債権者への開始決定通知書等の送付
- 裁判所への新たに知れたる債権者等への発送報告書の提出
なお、破産手続きでは、破産者を免責することについて債権者が意見を申述する期間が設けられています。この意見申述期間の終期までなら、漏れていた債権者の追加が認められます。
免責許可決定確定後に記載漏れに気付いた場合
免責許可決定の確定後、債権者からの請求により債権者漏れに気付くケースもあります。
自己破産の手続きは免責決定の確定により終結するため、この時点で債権者漏れに気付いても、債権者一覧表を修正できません。
この場合、債権者一覧表に記載のない債権者にも免責の効力が及ぶかどうかは、以下の事情により異なります。
- 記載漏れが破産者の故意や過失によるものか
- 記載漏れが破産者の過失による場合、その過失が軽微かどうか
- 当該債権者が破産手続きの開始を知っていたか
自己破産で債権者漏れが問題となるケースは?
ここでは、自己破産で債権者漏れが問題となるケースについて解説します。
破産者が特定の債権者をわざと記載しなかった場合
破産者がその存在を知りながら債権者一覧表に記載しなかった借金は非免責債権となるため、支払義務が免除されません。
虚偽の債権者一覧表を提出する行為は、免責不許可事由にも該当します。
家族や友人から借りたお金の支払義務が免除されないようにわざと債権者一覧表から外すと、すべての借金の支払義務が免除されないおそれがあります。
悪意がなくても非免責債権となる可能性もある
債権者一覧表の記載漏れが破産者の単なる失念による場合でも、借金の存在自体を知っていたのであれば非免責債権となります。
そのため、申立前の段階で十分に債権調査を行い、すべての借金を債権者一覧表に記載することが大切です。
自己破産で債権者漏れがあっても問題とならないケースは?
ここでは、債権者一覧表に記載漏れがあっても問題とならないケースを紹介します。
債権者が破産手続きの開始を知っていた場合
債権者一覧表に記載されていなくても、債権者が破産手続きの開始を知っていた場合は、当該債権者が有する債権にも免責の効力が及びます。
記載漏れに対する破産者の過失が小さい
債権者一覧表の記載漏れに免責を認めないほどの過失がない場合は、債権者一覧表に記載のない債権にも免責の効力が及ぶことがあります。
例えば、借入れの時期が古く契約書や請求書を紛失しており、債権者から一度も請求されずに数年が経過して債務の存在に気付けなかった場合などです。
一般的な金融機関は問題視しないことが多い
一般的な金融機関は、自社の債権が債権者一覧表に記載されておらず、かつ、破産手続きの開始を知らなかった場合でも免責の効力を受け入れることが多いです。
免責の効力を否定しても、現実的に債権を回収できる見込みがないからです。
自己破産で債権者漏れのリスクを回避する方法
ここでは、債権者漏れにより生じるリスクを回避する方法を紹介します。
家族・友人等の債権者も正直に申告する
特定の債権者を債権者一覧表にわざと記載しない行為は、免責不許可事由に該当します。
一部の借金の存在を隠すと、すべての借金の支払義務が免除されないおそれがあるので、家族や友人からの借金も正直に申告しましょう。
信用情報開示請求をする
以下のような理由で、債務者本人も借入先を正確に把握できていないケースがあります。
- 他人の債務を保証した記憶があるけど債権者が分からない
- 債権譲渡が繰り返されて現在の債権者が把握できない
- 名義が悪用された可能性がある
- 長期間滞納している借金があるが債権者を覚えていない
このような場合には、信用情報機関に開示請求を行うことで借入先が判明する可能性があります。
ただし、信用情報機関への開示請求では、個人や一般企業からの借入は調査できません。
弁護士に手続きを依頼する
弁護士に自己破産の手続きを依頼すれば、申立前の準備段階で債務者が失念している債権者がいないかチェックしてもらえます。
具体的には、以下のような方法で債権調査を行います。
- 預貯金通帳に記載されている入出金から債権者を特定する
- 不動産の登記簿謄本の乙区欄に設定されている抵当権者・根抵当権者を確認する
- 税金等の未払の有無を調査する
- 債務者からの依頼に基づき信用情報機関に開示請求を行う
まとめ
自己破産の債権者一覧表に記載漏れがあると、その借金の支払義務が免除されない可能性があります。特定の債権者をわざと債権者一覧表から外す行為は免責不許可事由に該当するため、債権者一覧表に記載のある借金もすべて免責されないおそれもあります。
このようなリスクを回避するためには、申立前の段階で十分に債権調査を行わなければなりません。
弁護士に依頼すれば、債務者ご本人が見落としがちな債権者を可能な範囲で調査できるので、債権者漏れが発生するリスクを最小限に抑えられます。
自己破産をご検討中の方は、ぜひ一度ネクスパート法律事務所にご相談ください。