傷害罪・傷害致死罪の量刑はどれくらいか?処分で重視される点についても解説

人に怪我を負わせれば傷害罪に、その結果、人を死に至らせれば傷害致死罪に、それぞれ問われます。

傷害罪の処分では何が重視されるのでしょうか。

また、傷害致死罪の量刑はどのような状況になっているのでしょうか。

傷害罪では、被害者との示談成立が、起訴不起訴の処分、公判請求か略式請求かの選択、判決の際の量刑において、最も重視されます。

傷害致死罪の量刑は、統計上(平成29年)、有罪の9割近くが実刑で、執行猶予は有罪の1割強にすぎません。

以下においては、傷害罪と傷害致死罪の内容、傷害罪と傷害致死罪の起訴不起訴の処分状況、傷害致死罪の判決結果を概観した上、傷害罪の処分では何が重視されるのか、傷害致死罪の量刑はどのような状況かについて、説明することとします。

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傷害罪と傷害致死罪の内容

犯罪の成立

傷害罪は、人の身体を傷害することによって成立し(刑法204条)、傷害致死罪は、人の身体を傷害し、よって人を死亡させることによって成立します(刑法205条)。

客体

客体は人です。

自傷行為は犯罪とされていないので、行為者以外の自然人を指すことになります。

行為

行為は、傷害罪では人の身体を「傷害」すること、傷害致死罪では人の身体を傷害して死亡させることです。

「傷害」とは、人の生理的機能を害する行為をいいます。

行為の方法に制限はなく、有形無形は問われません。

例えば、被害者に向けて連日のように大音量を流し続けるなどした結果、被害者の体調を損ねさせたような場合であっても、傷害となります。

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故意

傷害罪は、故意犯であるとともに、暴行の結果的加重犯をも含み、傷害の故意のある場合のほか、暴行の故意でも足り、傷害致死罪は、傷害罪の結果的加重犯なので、基本的行為としての傷害は、傷害の故意による場合に限られず、暴行の故意による場合を含みます。

刑罰

傷害罪は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられ、傷害致死罪は、3年以上の有期懲役に処せられます。

傷害罪と傷害致死罪の起訴不起訴の処分状況

2017年検察統計年報(平成29年の統計)によれば、検察庁が傷害罪及び傷害致死罪で送致を受けた者の起訴不起訴の処分状況は、下記の表のとおりです。

罪名 総数 起訴
(起訴率)
(起訴で占める率) 不起訴
(不起訴率)
(不起訴で占める率)
公判請求 略式請求 起訴猶予 その他
傷害 20,406 7,122
(34.9%)
2,563
(36.0%)
4,559
(64.0%)
13,284
(65.1%)
10,721
(80.7%)
2,563
(19.3%)
傷害致死 156 99
(63.5%)
99 57
(36.5%)
5
(8.8%)
52
(91.2%)

傷害罪の処分では何が重視されるのかについて考えてみましょう。

傷害罪を起こした場合、犯行に至る経緯に酌むべき事情がある、犯行態様が悪質とはいえない、生じた結果も比較的軽いという場合などには、在宅で捜査が進められることもあります。

しかし通常は、逮捕だけでなく、10日間の勾留、さらに、やむを得ない事情があれば10日以内の勾留延長がなされることになります。

そして、身体拘束からの解放はもちろん、検察官の不起訴処分が得られるためには、被害者との示談成立が最も重視されます。

被害者に対しては、心から謝罪の気持ちを伝え、怪我の治療費や慰謝料等の損害賠償の問題について、誠意をもって話し合いを重ねていけば、被害者もその誠意を認めて、示談に応じてくれることが期待されます。

示談が成立すれば、検察官が、不起訴処分(起訴猶予)とする可能性も高くなりますし、仮に起訴する場合でも、公判請求ではなく略式請求も考えられます。

また、示談の成立によって、検察官は、事件の早期処理が可能になり、被疑者を早期に釈放することも考えられます。

そして、示談が成立した場合には、その結果は最終的な判決において有利な情状として量刑上斟酌されますし、保釈の許否の判断でも有利な材料になるといえるのです。

このように、傷害罪では、示談の重要性は高いのです。

傷害罪の場合、示談金は、財産的損害と慰謝料の金額となりますが、実務上、民事交通事故の損害算定基準が参考とされる場合が多いのです。

ただし、実際の事件では、被害感情の強さや被疑者・被告人側の支払能力が決定的な要素になることも少なくありません。

そこで、具体的にみてみましょう。

傷害の結果が発生しているわけですから、財産的損害については、積極損害として、治療費、付添看護費、入院雑費、通院交通費、弁護士費用(被害者に弁護士が付いた場合)が、消極損害として、休業損害、逸失利益が、また、慰謝料については、傷害についての慰謝料と後遺障害についての慰謝料が、それぞれ含まれることになります。

傷害致死罪の判決結果

平成30年版犯罪白書(平成29年の統計)によれば、第1審(裁判員裁判)における傷害致死罪の判決結果は、下記の表のとおりです。

総数(108) 実刑(有罪の実刑率)
87(87%)
(実刑で占める率)
執行猶予
(有罪の執行猶予率)
無罪 免訴
量刑 15年を超え20年以下 10年を超え15年以下 7年を超え10年以下 5年を超え7年以下 3年を超え5年以下 3年以下 13
(13%)
7 1
人数 1
(1.1%)
5
(5.7%)
28
(32.2%)
19
(21.8%)
27
(31.0%)
7
(8.0%)

裁判員裁判における量刑判断は、行為責任の原則(量刑を「被告人の犯罪行為に相応しい刑事責任を明らかにすること」と捉える考え方)から、まず犯情(犯罪行為それ自体に関わる事実)の評価をもとに、当該犯罪行為に相応しい刑の大枠を設定し、次いで、その大枠の中で、被告人に固有の事情等の一般情状を、刑を調整させる要素として被告人に有利ないし不利に考慮し、量刑の一般的傾向ないしいわゆる量刑相場を踏まえながら、最終的な刑を決定するという手法が採られています。

そして、傷害致死罪の場合、犯情としては、行為態様、結果、動機、凶器の有無・種類、被害者との関係、共犯関係が主に重視されます。

傷害致死罪の量刑は、統計上(平成29年)、刑期には幅があるものの有罪の87%が実刑で、執行猶予は13%にすぎません。

まとめ

傷害罪、あるいは傷害致死罪を犯した場合、その処分がどうなるのか、起訴されるとして、罰金ということもあるのか(傷害罪の場合)、執行猶予がつくのか、実刑は免れないにしてもその刑期はどのくらいなのか(特に、傷害致死罪の場合)、心配になるものです。

傷害罪では、示談の重要性がお分かりいただけたものと思います。

傷害致死罪の量刑は、犯情と一般情状が考慮されて、最終的な宣告刑が決められているものの、9割近くが実刑となっています。

傷害罪にしろ、傷害致死罪にしろ、被害者との示談を含む、情状立証は欠かせませんので、刑事弁護に精通した弁護士に相談、依頼するようにしましょう。

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